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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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芳醇なパン

 私はイーリスさんにライバル心を燃やし、これからの仕事も頑張っていこうと意気込む。


「ショウさん、一応大麦の方もありますけど、見てみませんか?」


「ああ、そうですね。大麦の方も見せてください。少なからずお菓子にも使えますし」


 ショウさんは大麦の方を見る。そのまま食し、目を見開いた。


「こ、こりゃ凄い……。生で食べても美味しいなんて……。こ、こんな心地いい触感と香り高い大麦なら、生地に練り込まなきゃもったいない。お菓子の上に掛けてもいい風味を出してくれそうだ。うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ! お菓子の想像が膨らむっ!」


 ショウさんは大麦を口いっぱいに含み、咀嚼して飲み込む。


「今から、金貨八枚を持ってきます。あ、大麦の方は一〇キログラムお願いしますね!」


 ショウさんは部屋を出て行き、金貨八枚をイーリスさんに渡した。


「ありがとうございます。検査が終了しだい。持ってきます!」


「じゃあ、ショウさん。牛乳の方の代金をお願いしますね。各食材は倉庫の方に運んでおきますから」


「了解です!」


 私はショウさんから牛乳と生クリーム、乳油の代金を中金貨で支払ってもらい、転移魔法陣に入れておく。


「ああー、私のお菓子たちが進化していく……。この感覚、たまりません!」


 ショウさんは良品を使い、自分のお菓子がさらにいい品になっていく快感を噛み締めていた。もう、お菓子作りが仕事ではなく趣味と言っても過言じゃない。まあ、多くの人をお菓子で笑顔にしているのだからいいか。


「じゃあ、ショウさん。今度から、イーリスさんは一人で来ると思いますから、その時は優しく対処してあげてくださいね」


「わかりました! 任せてください!」


 ショウさんの元気っぷりを見れば、大金を支払うなんて全く気にしていないとわかる。逆に、お金を払うのが当たり前と言った感じだ。でも、儲けがしっかりと出るのだから、美味しいお菓子はやはり恐ろしい……。

 

 私とイーリスさんはショウさんのお店を出た。


「はぁ、はぁ、はぁ……。や、やりました。すごい大口契約ですよ。私、来年はもっと頑張って麦を育てます! 仕事がこんなに楽しいなんて、思いませんでした!」


「ですよねですよね。こういうドカンとくる時があるから、仕事は止められないんですよ。これでイーリスさんは少なからずお金の恐怖から脱却できたと思います。あとはどれだけ良い品を作れるかの勝負です。他の農家さんも生活が懸かっているわけですからね。一生懸命良い品を作れるように、互いに頑張って行きましょう!」


「はいっ! 頑張りましょう!」


 私とイーリスさんは生産者同士の絆を深めていく。なんなら、今回、彼女は自身の一番の特性であるスキルすら使っていない。そんな状態で大金を稼いでいた。これに加え、鑑定スキルを使ったSランク野菜を売り出したらいったいどうなってしまうのか……。もう、怖くて怖くて仕方ないねー。


 私とイーリスさんは小麦を一番使うと言っても過言じゃない、パン屋さんに向かう。そう、オリーザさんのパン屋さんだ。

 私達は荷台に乗り、レクーに引っ張ってもらった。


「今から向かうパン屋さんの店主の腕は街一番です。普通の小麦を使っても驚くほど美味しいパンを作ります。イーリスさんの小麦を使ったパンを作ったら、もう、多くの者の舌が唸るでしょう」


「な、なんかすごい方なんですね……。緊張してきました……」


「大丈夫ですよ。見かけは怖いですけど、優しくて熱い方ですから。ただ、超が付くほどのパン好きで、仕事人間です。なので、今でも過労死しそうなくらい働いているようです。今日は休みだと思うんですけど……、どうですかね」


 私はオリーザさんのパン屋さんに近づいた瞬間、芳醇なパンの香りが漂ってきた。


「ああ……、完全に焼いてます。ほんと休みの日にもパンを焼いているって……。ほんとパンバカですね……」


 私は呆れた声を漏らし、オリーザさんのパン屋さん近くにレクーを止め、お店に足を運ぶ。扉の前に本日休みと書かれた看板が立てかけられており、コロネさんがしっかりと休ませるように作ったと思われる。


「すみませーん。オリーザさんはいますか」


「あ、キララちゃん。いらっしゃい。素材を運んできてくれたの?」


 私が声を出してお店に入ると、奥からオリーザさんのお嫁さんであるコロネさんが歩いてきた。


「はい。素材を持ってきました。あと、新しい食材の話しをしようと思いまして」


「そうなんだ。ん、後ろの方は?」


「初めましてイーリスと言います。キララさんの紹介で来ました」


「初めましてコロネ・サティバと言います。キララちゃんの紹介……。とりあえず、二名とも店長に会ってください」


 コロネさんはお店の奥にある料理場まで私達を案内する。


「わかりました」


 私とイーリスさんはカウンターの横を通りながら、美味しい匂いがする料理場に移動する。靴は履き替え、体から塵や埃などを完全に落としたあと、料理場に入った。


「ああ、嬢ちゃん。と、超綺麗な方……。イでっ!」


 オリーザさんがイーリスさんに眼を奪われると、コロネさんにお腹を殴られていた。どうやら、一瞬で嫉妬したらしい。コロネさんも十分可愛いからそんなに嫉妬する必要ないのに……。


「初めましてイーリスと言います。今日は麦を見てもらいたくて来ました」


「初めまして。オリーザ・サティバと言います。嬢ちゃんが連れてくるくらいだから、相当良い麦なんでしょう。今すぐに見せてください」


 オリーザさんは良い品なら、とことん使う者なので、気に入ってくれると思うが、初見はどうだろう。


「はい、小麦がこちらに入っています」


 イーリスさんは慣れた手つきでオリーザさんに袋を渡す。


「では、拝見……」


 オリーザさんは袋を開け、中身を見た。すると目を見開き。言葉を失う。


「こ、これが小麦……。なんて白さだ……。綺麗すぎる。小麦を育てている方が超綺麗だとこうなるのか、いでっ!」


 オリーザさんはまたもやコロネさんから打撃をくらった。

 そのまま、小麦を一粒口の中に入れ、食す。生の小麦を食べるのはあまりよろしくないが、一粒程度なら問題ないだろう。


「匂い、肌触り、風味、何もかも素晴らしい。今すぐ小麦粉にして使わせてもらいます!」


 オリーザさんは石と石を擦り合わせて小麦粉を作る。そば粉を作るような装置で、すり鉢で粉を作るよりよりも確実に早かった。


「よしっ! パンを作るぜ!」


 オリーザさんは小麦粉を作ってから、目にも止まらぬ速さでパンを作る。色々時間がかかる肯定を私の魔法で短時間に収め、一時間でパンがふっくらと焼き上がった。

 石窯から出された段階ですでに輝いており、見るからに美味しいとわかる。形はバターロールのようで菱形だ。

 黄金色に輝いたパンは私達の食欲をそそる香りを放ち、無意識に手を伸ばさせる。


 神に感謝を込めた後、オリーザさんとコロネさん、イーリスさんは食した。パリッと言うほど外側がこんがり焼き上がっており音から美味しい。歯が要らないほど柔らかそうな生地で、内側は空気がふんだんに入っておりモチモチ……。見ているだけで、お腹がすく。


「んんんんんんんんんんんんんんっ!」


 オリーザさんとコロネさん、イーリスさんは言葉に出来ないほど、美味しかったのか、喋るよりも、ただひたすら食べる。もう、腹をすかせた獣のようだ。


「じゃあ、私もいただきます」


 私は両手を合わせ、パンを手に取り、半分に割る。内側から白い湯気が立ち昇り、小麦の香ばしい匂いがふわりと広がった。

 良い匂い過ぎて、鼻にパンの内側を付けるように嗅ぐ。出来立てほやほやの芳醇なパンの香り……。焼かれた小麦と溶けあったバターの匂いを嗅いで、お腹が空かない者はいないだろう。


「あーん。んんんんんんんんんんんんんんっ!」


 私は大口を開け、パンを食す。サクッとした表面を歯で突き破るとおっぱいかと思うほど柔らかい生地に当たり、頭を後方に移動させるだけで簡単に割けていく。

 オリーザさんの技術もあるが、小麦自体が相当美味しく、普段のパンとレベルが数段違った。香り、味、触感、どれをとっても高水準。

 日本で食べていたパンに近い。ここまで美味しいパンをこの世界で食べられるとは……。あまりの出来栄えに、握り拳を作り過ぎて手の平がじんじんと脈打つ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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