『探知スキル』
そしてようやく、聖職者たち一行が到着した。
「すまない!準備が難航し遅れてしまった。状況は!」
「はい、今目の前に広がっている黒いドーム状のものすべて瘴気です…」
「なに!あれ全てが瘴気だと…どうなっている、なぜあれほどまで大きくなっているのだ!」
「分かりませんが、こちらに流れてきたアンデッドたちは駆除できたのですが…まだおそらく中に瘴気を作り出している大本が残っている可能性が高いです」
「ではその大本を叩かんことには解決せんな…。あのドームを消したところで根本的な解決になっとらん…。何としてもその大本を見つけ出さなければ…、しかし…あの濃度になってしまっては…例え瘴気に耐性がある我らとて中に入っての調査は難しいぞ…」
「そうですよね…。しかし、我々冒険者の中で『探知スキル』を持っている者はいないのです…。魔力反応を探る魔法はあるのですが、瘴気自体微量な魔力を持っているため…。例え魔法を使ったとしても真っ黒に塗りつぶされたような感覚を味わうだけなのです…」
「なるほど…、そうなってはどうするか…。我々の聖水も数が限られている。一瓶飲み干したとて、あの濃度内では持って1~2分が限界だろう…それでは探索など不可能だ」
「しかし…それ以外に方法が…無いのであれば、今すぐ『探知スキル』を持つ冒険者を呼び出し、待つしか…ありませんね」
「キララ様!私達の出番みたいですよ!!」
――そうか…ベスパなら私の視覚と共有できる。ドーム中に入り込んで原因の究明を行えるかも…。
「でも…ベスパ瘴気を吸っちゃうんじゃないの、動きも悪くなっちゃうし」
「キララ様。私は、キララ様の魔力で出来ています。つまり私を構成するものは、魔力なのです…。となれば、キララ様に掛けられた外部からの魔法付与も私へと繋ぐことが可能なはずです。今は、キララ様と魔力の繋がりを切っていますが、また何時でも繋げなおす事は可能ですので、キララ様自身が『クリア』を掛けてもらい、その魔力を私に流してもらえれば私も『クリア』が掛けられた状態になるはずです。そうすれば、多少なりともあのドーム中で移動できると思われます!」
「なるほど…そういう事か…分かった!今、掛けてもらってくる」
私は、すぐライトのもとへ向かう。
「姉さん、どうしたの?もう1回『クリア』を使った方がいい?」
――この子はあんなでっかい魔法を使っておきながら、ケロッとした顔で…もう1回放つ気力があるのか…凄いな。
「ううん、今回はあんなに大きくなくていいの、お姉ちゃんの魔力に『クリア』を掛けて欲しいんだ、出来るかな?」
「たぶんできるよ、さっきよりも全然範囲が狭いし、すぐやっちゃうね」
そう言ってライトは杖を回し先ほどの詠唱よりもだいぶ早いスピードで魔法を私に掛けた。
「よし!成功したよ」
私の体は淡い緑色に光っている。
――ベスパ!魔力を送るから、魔力の繋がりをつなげて。
「了解です!」
私の魔力はベスパへと流れてゆく、血液を送り込むのと似ているが、私自身の魔力が減るだけで貧血などは起こったりしない。過度に送り過ぎると頭痛がしてきそうだが…今回は大丈夫なようだ。
元々ベスパに使われる魔力量が少ないからかもしれないが…。
何とか魔力をベスパまで送ると、その体は私と同じように淡く光だした。
「これだけあれば…キララ様、他の『ビー達』も呼びます!」
その場では音を鳴らし、周りに合図を送ると、待機していたであろう『ビー達』が草むらから飛び立ち、ベスパまで集まってくる。
ベスパの周りに集まった『ビー達』もまた淡く光り出し、まるで蛍のように淡い光が灯っていた。
今が夜中だったのなら凄く幻想的なのだろうが…私は遠慮しておこう。
「それではキララ様!行ってまいります!合図をしましたら視覚共有をお願いします!」
「分かった!良し、行ってこい!」
「了解です!!」
光り輝く『ビー達』も一緒に真っ黒な瘴気の中へと飛び込んでゆく。
その姿は黒いドームが夜空に見立てられ、流れる流星の輝きを放っていた。
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