友達感覚
「いやー、たった一年で料理の品質がどんどん上がっていくな。にしても、イーリスさんの麦は検査を受けているのか?」
「いえ、まだなので、今日、お願いしに行きます。でも、麦なら、検査なしでも使っていいんじゃないですかね」
「いやいや、そんな甘い考えをしていたら、騎士にとっ捕まえられる。検査が終わるまで料理の研究に使わせてもらおう」
「なるほど……。確かに、そうした方が良いですね」
私はウロトさんから大金を受け取り、転移魔法陣の中に入れる。
――にしてもほんと、彼はいったいどれだけ儲けているのだろう。普通、金貨八〇枚なんてポンポン出せる額じゃない。私にも多くの材料費を払っているし……。
私はお店の料理が掛かれているメニュー表を見て驚愕した。
一食金貨五枚やら、八枚などと書かれており、ぼったっくりを疑われても仕方がないくらいの値段になっている。去年は金貨一枚から二枚くらいだったのに……。ここまで値上げされていたんだ。でも、これくらいしないと私たちにお金を払えないか。
一日一〇食出せば金貨八〇枚。でも、材料費が掛かっているから、利益は半分も行かないか。
「ウロトさん。儲かっていますか?」
「何とも率直な質問だな。んー、儲かっているかと言われると、そうでもない。食材を買うだけで、稼いだ金が飛んで行く。でも、俺はそれでいいと思っていてな。いい品を買えば、味見などをする時に味わえるだろう。だから、自分の料理を食べて幸せな気持ちになり、他の者に食べてもらって幸せになることもある。そう言う関係が成り立っているから、今頑張れているんだ。儲けようと思ったら、もっと材料費を下げて値段を下げながら利益率を上げるしかないが、俺はそんなことを考えるより、美味い料理方を考える方が好きなんだよ」
ウロトさんは生粋の料理好きらしく、入って来たお金を全て趣味に使ってしまう人種だった。でも、お店が回っているのなら、何ら問題ない。
でも、料理が作れなくなったらどうするんだろうと言う気持ちが湧き出てくる。
「じゃあ、ウロトさん、これからよろしくお願いします」
イーリスさんは頭を下げ、ウロトさんに感謝した。
「こ、こちらこそ、末永くよろしくお願いします」
ウロトさんは鼻の下を伸ばしながら頭を下げる。何と下品な……。まあ、料理バカでも美人でエロイ体を持っている人には弱いか。
「…………」
私はウロトさんを、虫の死骸を見るような目で見つめる。
「な、なんだよ、キララ」
「イーリスさんはすでに結婚していますから、狙わないように」
「なっ! べ、別に俺は狙ってたわけじゃねえよ……。うん、全然狙ってなんかない……」
ウロトさんは普通にしょげ、顔を暗くした。案外本気だったのかも。
「も、もう、キララさん。何を言っているんですか。ウロトさんには関係ない話ですよ」
「いえいえ、人妻に手を出したら犯罪ですから、先に言っておこうと思いまして」
「な、なんか、キララさん。子供っぽくない発言していますけど、意味がわかって言っていますか?」
私はイーリスさんの傍にいると居心地がいいので、ついつい当時の口調っぽく話してしまい、子供感が完全にぬけていたようだ。
「え、えっと、神父に聞いたんですよ。可愛い女性に寄りつくウォーウルフは振り払うようにって。あとあと、ちょっとした犯罪行為も教わりました!」
私は教会にいる神父を出し、嘘の話しに本当っぽさを醸し出させる。
「そ、そうなの? なら、ありがとうと言うのが正解なんですかね……」
イーリスさんは私の頭をなで、感謝してくれた。なんて心が綺麗な大人なんだろうか。誰もが振り返りそうな美人で幼さがちょっと残っていてエッチな体を持っているのに純粋な心の持ち主って……。このままじゃ、美味しそうなイーリスさんを狙う悪いウォーウルフがわんさか寄って来ちゃうよ。ちゃんと守らないと駄目だな。
私とイーリスさんはウロトさんのお店を出て、ぐぐーッと伸びをする。
「いやー、キララさん。すごいですね。もう大口契約が取れてしまいました! ありがとうございます。四年もあれば、デイジーの学費も貯められそうです!」
イーリスさんは私に抱き着き、感謝してきた。大きな胸が顔にグイグイ押し付けられ、心地いいが苦しい……。
「い、イーリスさん。胸当て(ブラジャー)は付けていますか?」
「え? はい、胸の突起が服に浮き上がらないようにするためだけなので軽めに着けてますけど」
「それじゃあ、胸が動いて生活しづらくないですか?」
「もう、昔からなので慣れちゃいました」
イーリスさんは芋娘っぽく笑う。
田舎出身田舎育ちなので危機感が薄いのか、服装も体の形がわかってしまうような薄手の服を着ており、お尻のでっぱりもわかってしまう柔らかいロングスカートを履いている。
大きな胸は少し歩いているだけでスライムのようにぷるんぷるんと弾んでいるし、お尻も雄モークルを誘っているのかと言うほど振られている。
ボン、キュ、ボンの大人らしすぎる体は変態の神様が絶対本気で作っていると思うくらい完璧に近い。
人当たりや面倒見がよく、感謝と謝罪まで出来る。ほんと性格が良いから、誰にでも好かれるだろう。逆に、その甘い部分を狙ってくる不届き物がいるかもしれない。彼女一人で街の中で働かせるのはとても危険だ。
――誰か、用心棒にした方が良いよな。でも、そんな調子いい人いるのかな。とりあえず、胸の方を何とかしないと、他の男の人が簡単に悩殺されちゃう。ベスパ、イーリスさんの胸に合わせたブラジャーを作ってきて。
「了解です」
ベスパは森に飛んで行き、ブラジャーを作って持ってきた。やはりデカい。もう、私の頭がすっぽりと入ってしまいそうな大きさだ。Jカップ、Kカップ、Iカップ……。
この世界の女の多くが凶器じみた乳を持ち合わせていると言うのに、私は未だに膝が見えるくらい絶壁……。なんと言う差……。神許すまじ……。
「これが胸当て……。すごい形ですね」
「荷台の中で付けてきてください。生活が一変しますよ」
「ええ? 生活が一変する……」
「はい。何もかも変わります。なので、すぐに付けてください」
私はイーリスさんの背中を押し、荷台の中に詰め込んだ。三分ほどすると、声が聞こえる。
「あのー、キララさん、どうやって付けたらいいんですか?」
「あ、説明するの忘れていました」
私は荷台の中に入り、イーリスさんの素肌が曝された背中を見る。真っ白ですべすべ……。うなじが見える角度がエロく、もう、若いって良いね! と言いたくなった。ブラジャーのホックを付けるとイーリスさんはいななく。
「おおおおおっ! か、軽い! すごい、肩と胸が軽いですよ!」
イーリスさんは満面の笑みを浮かべ、胸を張りながら少し動く。ブラジャーが乳を持ち上げるようにして支えているため、軽く感じるのだろう。そう思ってもらえるだけでも付ける価値は十分あるはずだ。
「大きさは間違っていませんね?」
「はい、完璧です。もう、これ以上ないって言うくらい綺麗に収まっています。苦しくないですし、服を着ても目立ちません。最高です!」
イーリスさんはお日様のように輝いて見える笑顔を私にくれた。それだけで心が熱くなる。
やっぱり、友達感が強く、同級生と遊んでいるようだ。一一歳が抱く感情ではないが田中真由美は物凄く楽しんでいる。
「じゃあ、次の場所に行きましょうか」
「はいっ! 行きましょう!」
イーリスさんは大きな声で返事をした。どうやら、ブラジャーを相当気に入ってくれたようだ。
私は前座席に座り、イーリスさんは隣に座る。朝食をとっていないのでお腹が空いているが、今の時間帯が一番空いているカロネさんの喫茶店に向かった。
お店の前にバートン車を止め、イーリスさんと一緒にカロネさんの喫茶店に入る。今の時刻は午前九時過ぎだ。なのに、結構多くのお客さんがおり、盛況していた。
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
白と黒が基調のメイド服を着た可愛らしい子共の店員さんが私達のもとに駆け寄って来て、訊いてきた。
「えっと、カロネさんに用があってきました。キララ・マンダリニアです。カロネさんと話せるか訊いてもらっても良いですか?」
「わかりました。少々お待ちください」
可愛らしい店員さんは頭を下げ、料理場の方へと歩いていく。私達は他のお客さんの邪魔にならないよう、通路を開けるように立ち、返答を待った。
八〇秒ほど経ち、私達のもとに子供が戻ってくる。
「通してもいいそうです。料理場の方にお進みください」
「わかりました。ありがとうございます」
私とイーリスさんはカロネさんがいる料理場に足を運ぶ。
「あ、キララちゃん。いらっしゃい。あれ……。知らない人……」
まだお客さんを回せる時間帯なのか、カロネさんは焦っている様子ではなかった。
「初めましてイーリス・ラベンスと言います。今日はキララさんの紹介で立ち会わせていただきました」
イーリスさんはカロネさんに向って自己紹介する。
「は、初めまして。カロネ・ローズです。よろしくお願いします」
カロネさんもイーリスさんに向って自己紹介した。
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