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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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戦闘訓練

 夕食を終え、私は部屋に戻る。フルーファやベスパも部屋に入ってきた。


「ふぐぐーっ、はぁー。休日なのに、休んでいる感じがしない……」


「キララ様が休もうとしないからでは?」


「もう、そんな当たり前のこと言わないでよ……。でも、私が休もうとすると絶対グダグダしちゃうんだよな。そうなったら一日が物凄くもったいないし、自己嫌悪に陥るから嫌なんだよ」


「まあ、キララ様は仕事中に寝てるときもありますし、休みと仕事が混ざった状態になっていると言っても過言じゃないですね」


「まあね。はあー、仕事と休日の境目が無いと言うのが自営業の辛い所だよな。纏まった休みが欲しい。でも、たくさん休んだら子供達を養っていけないし、お金が集められない。そうなったら、また食い倒れを恐怖する生活に逆戻り……」


 私は恐怖から行動を起こすと思っている。

 小さな小さな恐怖心を感じた時、それを回避しようと人間は動くのだ。

 恐怖の原動力は恐怖心が強ければ強いほど大きく、動かしにくいと言う特性がある。

 ただ、慢性的に恐怖を受けていると、うつ病になるのであまり考えないようにするのが得策だ。ふと思い出した時にやらないとやばいと言う気持ちにさせてもらえれば十分。


「勉強しないと……」


 私は眠たそうにしているフルーファの頭を撫で、少し元気を貰ったあと椅子に座り、勉強に励む。出来ることを精一杯することが、この先の人生をよりよくすると信じて……。


 一〇枚の紙に魔法陣を描き、文字と呪文の勉強をした後、各学園の過去問を解き、解き方を徹底的に覚える。

 もう、ほぼ覚えたと言っても過言じゃないが、まだ入学試験まで一一ヶ月ある。でも、一一ヶ月なんてあっという間だ。詰め込み過ぎて頭がパンクする寸前と言うくらい追い込む必要はないが、不安が薄れるくらい勉強した。

 ざっと四時間くらい勉強した後、さすがに眠くなりすぎたので、寝る準備を整えていてよかったと思いながらベッドに倒れ込む。薄手のシーツを肩まで羽織、すぴーっと眠りに落ちた。


 次の日。


 私は目を覚ましたあと、朝っぱらから、鍛錬している者達に練習試合を持ち掛けた。


「え? キララさん……、そんなことを……」


 事情を少し知っている元剣神のバレルさんは私の危険行為に叱ってきたが、ほんの数分で終わり、今は私の話を聞いてくれている。


「バレルさんとセチアさん、ガンマ君、シャイン、私の五名は今からブレーブ平原にいる盗賊たちと戦いに行きます。えっと、盗賊と言っても元盗賊なので、殺し合ったりはしません。そのあと、バレルさんに司令塔の方を指導してもらいたいんです」


「キララさんの考えが何なのか、まだうまく理解できてませんが、尽力しましょう」


 村の仕事着がすっかりと板についたバレルさんは木剣を腰に掛け、頷いた。

 クレアさんはすでに仕事に行っているため、安全は保障されている。そのため、バレルさんも外に出られるのだ。


 私はフルーファの背中に乗り、他の四名はフルーファに走って追いついてくる。フルーファは背後から迫る恐怖のせいで泣きそうになっていた。


「ほ、本当に来た……」


 運動しやすいように、薄着を着ているハンスさんが、朝っぱらからブレーブ平原に立っていた。他の盗賊たちは見当たらない。


「ハンスさん。他の方はどこに行ったんですか?」


「そ、それが……。寝心地が良すぎて起きられないそうだ……」


「ああ……」


 バレルさんとシャイン、ガンマ君、セチアさんは納得の声を上げていた。どうやら、近くに建てられている集合住宅を見て察したようだ。ほんと、剣士たちは察しが良いな……。


「起きないと食事抜きにしますよー。早く出てきてください~!」


 私が叫ぶと、ベスパが音声を増幅してくれた。そのまま、大音量で集合住宅に響き渡る。

 すると、牢屋から囚人が出てくるように全力で走り、元盗賊たちが五人一六組に分かれ、ハンスさんの後方に並ぶ。


「じゃあ、盗賊の皆さん。五人一組でここにいる四名の剣士たちと稽古してもらいます。一組ずつですが、待っている間はウォーウルフ達と戦ってもらいます。もう、実戦経験の連続ですから、とても辛い日々になるでしょう。ですが、経験値を得られる速度は半端ではありません。輝かしい未来のために、今、頑張りましょう!」


 私の声掛けで、元盗賊たちの地獄の日々が始まる。もう、盗賊なんてしていなければよかったと思うほどの地獄の日々だ……。


「はああああっ!」


 バレルさんは三名の前衛を、木剣で吹き飛ばし、中距離、遠距離の者を同時に倒す。どうして人間が簡単に吹っ飛ぶのか理解できない……。


「おらあっ!」


 シャインは黒剣を振り、木々が靡き草花が巻き上がるほどの突風を物理的に起こして五名全員を吹き飛ばす。台風以上の風が生み出せるって魔法なんじゃ……。


「ふっ! はっ! やっ!」


 ガンマ君は細かい動きで前衛をほんろうし、堅実に倒す。一番剣士っぽい。


「ふっ! そいやっ!」


 セチアさんは石を武器に変え、後衛に向かって投げ、爆発させたあと意表を突かれた前衛を崩す。


 ――四名とも、性格に沿った戦い方で何とも個性があるな。


「は、はは……」


 ハンスさんは森の中で繰り広げられている人外に近い者達の戦いを見て苦笑いを浮かべていた。右眼の瞼が痙攣しているので、もう疲れているのかな?


「ハンスさん、彼らと一緒に鍛錬して、強くなってくださいね。簡単に死なれても困るので競り合えるくらいに成長してもらいます。ハンスさんは魔法使いにめっぽう強いと思うので、魔導士との戦いは省きますけど、戦いたくなったら私に言ってくだい。相手しますよ」


「キララとは一番戦いたくねえんだが……」


「ぐ、ぐあああっ!」


 元盗賊たちはウォーウルフにことごとく地面に叩き潰されていた。


「は、はは……。出発する前に死にそうだ……。だが、ここで生き残らないと生き残れないのは明白……」


 ハンスさんは笑い、木剣の柄を持ちながら駆けだす。

 一番に突っ込んだ相手はバレルさんだった。一番強い者に挑みに行く姿勢は評価しよう。


「ふおらっ!」


 ハンスさんは前衛が吹き飛ばされてしまったがもう一度挑もうとしていた元盗賊たちの後方から飛び出し、バレルさんに木剣を頭上から振りかざす。


「ふっ!」


 バレルさんは微笑みながら木剣を振るい、ハンスさんと打ち合った。


「はっ! おらっ! そらっ!」


 ハンスさんは両手で柄を持ち、バレルさんの体に切り込んでいく。


「脇が甘い、そんな振り方じゃ、剣を簡単に奪われるぞ」


 バレルさんは軽い身のこなしで、攻撃を軽々かわして行く。指導する余裕があるということは、木剣を奪う余裕があると言うこと……。

 力の差を見せられ、ハンスさんの木剣がバレルさんに当たる気が全くしなかった。


「はは、そうだなっ!」


 ハンスさんは後方にいる元盗賊たちに指で指示を出した。盗賊の時の意思疎通方法が何とも戦いっぽい……。


 前衛の三人がバレルさんの後方に回り、退路を塞ぐ。


「うむ……、連携は取れているようだ。だが、まだまだ甘い!」


 バレルさんは地面を蹴り、高く跳躍。だが、ハンスさんの後方に遠距離武器を持った敵が一人いた。矢を放たれ、防ぐために剣を振っていた。

 その場面を予測していたかの如く、ハンスさんも跳躍し切りつける。

 すると、バレルさんの手から木剣が離れた。


「しゃっ!」


 ハンスさんは少年のように叫び、着地際に追撃を放とうとしていたが……。


「剣にとらわれすぎだ」


 バレルさんは空中で体をひねり、ハンスさんの顔を蹴りつける。


「ぐはっ!」


 ハンスさんは勢いよく飛び、地面を擦りながら転がっていた。

 バレルさんは着地と同時に空中から落ちて来た剣を持ち直し、三人の元盗賊たちを一振りで跳ね飛ばした。


 ――やっぱり、あの人強すぎ。五対一でも全く歯が立ってない。


「連携は悪くないが、攻め手に欠けている。加えて感情に左右されすぎだ。戦いのときは冷静にならなければ、すぐに死ぬぞ」


 バレルさんは右手で木剣を持ちながら姿勢正しく構えていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。いって……、顔に似合わず、バカみたいにしなやかな動きだな。こりゃ、倒すのに骨が折れそうだ……」


「骨が折れても治してあげますから、気にしないで良いですよー」


 私はハンスさんに声を掛ける。


「本気で折る気じゃねえよ!」


 ハンスさんはバレルさんとくたくたになるまで戦っていた。なんなら、バレルさんはハンスさんと小隊を同時に相手し、戦っていた。

 体力の衰えを感じるとか言っていたのに、普通に昼頃まで戦っていたのだから、やはりまだまだ現役バリバリの剣士だ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。全然当たらね……。なんで、こんなに当たらないんだ」


「ハンス君、君の攻撃は良くも悪くも読みやすい。冷静、正しさ、どことなく感覚で振っている。そうなると、狙ってほしくない部分を狙ってくるとわかるのだよ」


「何言っているかわからねえ……」


「つまり、もっと考えて剣を振りなさい。一歩一歩考えながら動きなさい。感覚に頼っているばかりでは勝てる相手にも勝てないぞ」


 バレルさんは一歩たりとも動かず、剣を右手で持ち、姿勢正しく構えていた。

 あそこから一歩でも動いただろうか、覚えていないが、ハンスさんばかり動いていた気がする。


 日が真上に来た頃、私は昼食を差し入れた。


「うおっ! うおおっ! なんだこれ、なんだこれっ! うっま!」


 ハンスさんはただ焼いたパンにバターを塗っただけの品を美味しそうに食べた。

 スクランブルエッグに、トゥーベルのふかし、ビーンズのスープに牛乳、レモネ果汁が入った天然水と言った具合に栄養価が高めの昼食だ。

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