ライトの魔法
「はぁはぁはぁはぁ…もう魔力が…持ちそうもないですね」
「くっそ!こいつら、どれだけいるんだ!」
「チキショー!聖職者はまだか!!
リーズと冒険者達は既に限界の状態だった…。
皆の前に広がるは暗黒の瘴気…。
冒険者たちが切り捲った、アンデッドから発生した瘴気も全てネ―ド村の方に流れ込んで行っている。
濃度の高い瘴気が、薄い瘴気をかき集め、さらに瘴気の濃度を増していく。
「リーズさん!連れてきました!」
「キララちゃん、いったい誰を…て…こ、子供…しかもその顔は…シャインちゃんかい?」
「違います!ライトですよ!シャインと間違えるなんて!僕はあんなに、バカっぽい顔してません!」
「ああ!ライト君か、大きくなったね。全然分からなかったよ…。それにしても、どうしてライト君をこんな場所に連れてきたんだ、キララちゃん。すぐにここも危険区域になる!危険だから今すぐ非難するんだ!」
――そりゃあ…子供が子供を連れてきたら、そう言った反応するよな…。でも試してみないと…。
「もしかしたらライトの作った魔法が瘴気に効くかもしれないんです!」
「ライト君が作った…?瘴気に効く…?いったい何を言っているんだ。奇跡でも使えるのかい?」
リーズさんは首を傾げ、私の言った言葉を何とか理解しようとしてくれているが、全くのお門違いだ。
「姉さん!もしかして…あの魔法のこと」
察しの良いライトは、この状況下を見て一瞬で理解したらしい…。
「そう、牛乳中の細菌を消したように、動物中の瘴気も消せるかもしれない」
「なるほど…確かに試してみる価値はあるかもね。良し!今日はまだ一発も魔法を使ってないから、結構な量の魔力が残ってるよ!よいしょっと!」
ライトはレクーから飛び降りると、自前の魔法杖を左手に持ち、意識を集中させる。
「――標的は、あのアンデッド化した動物たちの中に入り込んでいる瘴気…」
ライトの周りの空気が次第に上昇していく…。上昇していく空気に髪が持ち上げられる。ゆらゆらとたなびかせながら、いつもより大分長い、詠唱を口ずさんでいる…。
ライトから発せられる魔力が風を生み出し、周りの木々や草花は既に枯れているが…まるで生きているかのように揺れ動く…。
ライトの緑色をした魔力によって空間が緑色を取り戻していき、植物たちが今すぐ生き返るのではないかと錯覚させた。
空は青く透き通り、瘴気は黒く光を吸収する…。
その前に立つライトは名前の如く淡く輝きだし…円を描くように杖先を回し照準を定めてゆく。
ライトの立っている地面に緑色の魔法陣が展開された…あまりにも明るいため、相当量の魔力を練り込んでいるに違いない。
――いったいどれだけの魔力を練っているのか…。私にもそれだけ出来る才能が有ればな…。
ライトは未だに詠唱を口ずさんでいる。
徐々に光がハッキリとして、魔法陣の明かりが空間一帯を一気に照らす…。
「な…これは…。いったいなんだ…!」
「おい!この光はなんだ!地面がいきなり光り出したぞ!」
「見てください!アンデッド達が…、凄い勢いでのたうち回っています!」
巨大化した魔法陣は冒険者さん達のいる地面にまで広がり、そしてアンデッド化した動物たちも飲み込んで行った。
そして、ようやく詠唱が終わったのか、静かに目を見開き持っている杖を天高く突き上げる。
「ふ~良し…。行くよ!姉さん!」
「うん!お願い!」
私の声を聴き、ライトは天高く突き上げていた杖を一気に地面へと振り下ろす。
「『クリア!!』」
魔法を唱えた…。
するとアンデッド化した動物達を呑み込んでいる魔法陣から、光の柱が出現した。
光の柱がいくつ出現しているか分からないが、その数は更に増していく。
どうやらアンデッド1体1体が柱となって…私たちの眼に見えているらしい…。
地面の魔法陣が消えた時にはアンデッド化した動物たちが普通の動物となり、死骸に戻っていた。
肉は鳥に啄まれたようにボロボロだが、その肉の色は綺麗なサーモンピンクだ。
さっきまで液体化し、黒く紫に変色していたとは思えない程、綺麗になっている。
「はぁはぁはぁはぁ…何とか…成功ですね…」
「す…凄い…」
周りの冒険者さん達は、何が起こったのか理解できず、その場で呆然としている。
『ファイア!』
私は、すかさず、動物たちの死骸を『ファイア』で焼き払い、死骸の処理を行った。
大分油の多い動物だったのか激しく燃え上がり、次第に炭となって地面に消えて行った。
瘴気の外にいるアンデッドたちは、ライトの魔法によって全て死骸に戻り、地面に倒れている。
「皆さん!今すぐ焼き払ってください!再度瘴気が混入した場合、すぐアンデッド化してしまいます!」
素早いリーズさんの指示に従い、アンデッドたちの対処していた冒険者達が1体1体確実に燃やしていく。
「良し!今、ここに居たアンデッドは全て燃えカスにしてやったぞ!」
どす黒い瘴気からは今の所、アンデッド化した動物が現れる気配はない。
しかし…リーズさんは何かおかしいことに気づく…。
「あれだけのアンデッドを倒したにも関わらず…目の前の瘴気は薄まるどころか…さらに濃さを増している…。まだ、中に大本となる何かが居るという事ですか…」
――え…まだ終わりじゃないの…。
「リーズさん、アンデッドたちの駆除を完了したため、瘴気の進行を食い止める方向にチェンジします。今魔法を使っている人達とまだ魔法を使っていない僕たちで交代しましょう」
「そうですね…。では、今魔法を使っている冒険者は交代し、少し休憩を取ること。多少の魔力が回復しだい再度交代し時間を稼ぐ。アンデッドたちにも警戒をしつつ聖職者たちが到着するまで持ちこたえましょう、もう少しの辛抱ですよ!」
「はい!」
その後、数刻が経ち何度か交代を繰り返しながら瘴気の進行を風魔法で食い止めていた…。
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