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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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やっべえらしい

「俺の名前はハンス。よろしくな」


「『ファイア』」


 私の後方から、詠唱が聞こえた。

 ハンスさんは目の前に飛んできた炎の塊を右手で払い、消した。その際、スキル特有の光が放たれており、スキルを発動したとわかる。

 後方を振り返るとハンスさんに魔法を放ったのはライトだった。


「やっぱり消された」


「おいおい、キララの仲間には物騒な奴しかいないのか?」


「あはは……、すみません。遊びたい盛りなもので」


「遊びにしちゃ、威力が普通の『ファイア』と違う気がするんだが……」


 ハンスさんは苦笑いを浮かべ、頬を掻く。


 私達は購入したブレーブ平原にハンスさん達を連れて行くことにした。村の中に元盗賊を入れるのは流石に他の人が、怖がると思ったので、監視してくれるウォーウルフ達の住処に向かわせる。

 その前に、デイジーちゃんとバイバイしなくては。


「ううー、ガンマー。もう、行っちゃうの……」


「ごめんね、ルイ君。もう夜遅いから、帰らないといけないんだ」


「じゃあ、また来て一緒に遊んでね」


「うん、また来るよ。デイジーさんに迷惑をかけ過ぎないようにね」


「うんっ!」


 ガンマ君はデイジーちゃんの弟君であるルイ君と抱き合い、離れた。その光景を見ていたデイジーちゃんはルイ君を羨ましそうに見つめた後、ガンマ君の方に視線を向ける。

 ガンマ君はデイジーちゃんの方に歩き、包み込むようにギュッと抱きしめた。

 デイジーちゃんは顔がぼっと赤くなり、硬直してしまったのかと思うほど動いていないように見える。


「デイジーさん、今日もとても楽しかったです。また、ルイ君に会いに来ますね」


「う、うん! 会いに来て! ん? ルイに……」


 デイジーちゃんは目を丸くし、ぽけーっとしていた。

 どうやら、ガンマ君がデイジーちゃん宅に来る理由が、彼女目的ではなく、ルイ君目的と言う事実を知り、現実を受け止められていない様子だ。

 そうなると、ガンマ君はデイジーちゃんに本当に興味が無いっぽい。悲しきかな……。


「しゃっ!」


 ガンマ君がデイジーちゃんに興味が無いと悟ったシャインとライトはデイジーちゃんが見ていない所で、超喜んでいた。

 だが、まだ油断はできないぞ二人共。


「ガンマ君っ! 今度は私が遊びに行くね!」


 デイジーちゃんはガンマ君の背後に抱き着き、眩い笑顔で言い放った。


「はい、いつでも遊びに来てください。大歓迎です」


 ガンマ君はデイジーちゃんの甘い笑顔を易々と受け止め、逆に清らかな笑みを返して見せる。


「うぐっ!」


 シャインとライトは油断したのがあだとなり強力な一撃を食らい、跪いていた。あまりの精神的ダメージに立ち上がれない様子だ。


「こいつら、なんなん? 強いのか弱いのかどっちだ?」


 ハンスさんはシャインとライトのやられ具合を見て、私に質問してきた。


「まあ、戦いの強者であり、恋愛の弱者と言ったところですね」


「年齢は?」


「八歳です」


「八歳って……、まだまだ子供だろう……。なにをそんな慌てているんだか」


「ですよね……」


 私はデイジーちゃんと軽くハグして別れた。そのあと、イーリスさんのもとに向かう。


「イーリスさん。今度、一緒に街に言って小麦と大麦の宣伝をしに行きましょう。私の人脈を使えば、卸先は決まると思います。あとは、イーリスさんの努力次第です。一緒に頑張りましょう」


「は、はい! 話す練習を子供達や知り合いに頼んでたくさんしておきます!」


 イーリスさんは両手を握り、意気込んだ。そのやる気に満ちた顔がとても可愛らしい。

 やはりデイジーちゃんのお母さんなだけある。ただ、豊作だった手前、今回のように盗賊がネード村を襲ってくる可能性も無きにしも非ずだった。

 なのでライトには村に付けている警報の魔法陣とバリアの魔法陣を張ってもらう。そうすれば、幾分か安全になるはずだ。


 ハンスさんはウォーウルフの親玉に乗り、他の盗賊たちも親玉が連れてきたウォーウルフの背中にしがみ付いていた。


「ライト、私はブレーブ平原にハンスさん達を連れて行くから、皆と先に帰っておいて」


「わかった。早く帰ってこないと、母さんがまた雷を落とすから、急いでよ。僕、姉さんと母さんだけには敵う気がしないから……」


「うん。じゃあよろしくね」


 ライトは荷台の前座席に座り、手綱を握ってレクーを走らせた。


 私はクロクマさんが入っているサモンズボードを取り出し出口となる『転移魔法陣』を展開する。

 すると、三〇センチメートルほどのブラックベアーのぬいぐるみ……、ではなくクロクマさんが落ちて来た。


「なんだ? ぬいぐるみ?」


 ハンスさんは目を丸くしているように見える。

 ただ、ウォーウルフの親玉は少々たじろいで地面に伏せる。賢いのでクロクマさんの方が強いとわかるのだろう。


「『女王の輝き(クイーンラビンス)』」


 私はクロクマさんに魔力を流した。すると、通常の大きさに戻り、四メートルほどの巨体となる。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオッツ!」


「どわあっ! ぶ、ブラックベアーっ! き、キララ、何してやがる!」


 どうやら、ハンスさんもブラックベアーの恐怖を知っているらしい。なので、目玉が飛び出そうなほど驚いていた。


「安心してください。この子は私の……友達」


「うわーい、キララさーん」


 クロクマさんは私に抱き着き、ブンブン振りまわしてくる。もう、彼女にとって私は大きめの人形と変わらず、容易く持ち上げられてしまうのだ。


「滅茶苦茶襲われているように見えるんだが……」


「あ、安心してください。彼女なりの愛情表現なので……」


 私はクロクマさんを落ち着かせ、背中に乗る。


「おいおい……、ブラックベアーを従えている子供とか、訳がわからないぞ。キララのスキルか?」


「まあ、そんなところです」


「そんなところって……。まあ、いい。危険が無いなら、どうだってな」


 ハンスさんは気持ちの切り替えが早かった。盗賊で生き抜いてきただけのことはある。

 何も言わず、私とクロクマさんの後ろをついてきた。


「ま、まじか……」


 ブレーブ平原に到着すると、ウォーウルフの群れがピシッと座って待っていた。もう、魔物の置物が陳列されていると思ってしまうくらい綺麗に整列している。


「皆、お腹空いたでしょ。今から、魔力をあげるからね」


 私は大量の魔力を水に流し、光り輝かせる。これを飲めばウォーウルフ達は生きていけるのだ。


「き、キララ。お前は村や国を落とそうとしているわけじゃあるまいな……」


「え……、そんな気は全く無いですよ。そもそも、そんな馬鹿な行いを私がすると思いますか?」


「いや……、この数のウォーウルフにデカすぎるブラックベアー。魔物をこれだけ使役していることじたいおかしいだろ。全員、お前に懐いてるっぽいし、命令はどこまで聞くんだ?」


「まあ、このウォーウルフ達は自害まで聞くんじゃないですかね。させずに、永遠とこき使いますけど」


「はは……、やっべえなおい……」


 ハンスさんは苦笑いを浮かべていた。どうも、私はやっべえらしい。


「元盗賊の皆さんもお腹が空いていますよね。ベスパ。食べられる木の実とキノコ、山菜を持って来て」


「了解です」


 ベスパはビー達と協力し、食事になる食べ物を平原から取ってきた。


「調理は焼くだけですけど、何も食べないよりはましですから、どうぞ」


 私はベスパが集めた食材を焼き、ビーの子を添えて元盗賊たちに与えた。食事の力は大きく、彼らの廃れた心を癒す。

 食事が得られるだけで、多くの者が仕事を頑張って働こうとするのだ。人だけでなく、魔物や動物、虫までもがね。


「キララさん、エッグルが食べたいですー」


「もう、エッグルばかり食べていたら、クロクマさんが太っちゃうよ」


「わ、私は太ってませんよ。ちょっとぽっちゃりしているだけですー」


 クロクマさんは硬い木の実をせんべいのようにバリバリと食し、腐った魔物の肉と脳を美味しそうに頬張っていた。

 その光景を見た盗賊たちは震えあがり、私に逆らったらブラックベアーの餌にされるとでも思ったのか、従順になった。


「はぁ、今日だけで俺の人生が一八〇度変わりやがった。どうしてくれるんだ」


 ハンスさんは栄養価の高そうな草をむしり、私に聞いてくる。


「どうもしませんよ。盗賊なんて言う野蛮な職業で生活していたのが運の尽きです。今は私に捕まったことを後悔してください。あとあと私に感謝してくれればそれで構いませんよ」


「はぁ、まったく。お前はどれだけ先を見越しているんだ。で、ちゃんとした概要を話してもらおうか」


「ええ。そのつもりでここにいますからね」


 私は食事を終えたクロクマさんの胡坐の上に座り、ハンスさん達に話し始める。


「じゃあ、まず。確かめさせてください」


「ん?」


 私は魔造ウトサを封印しているサモンズボードを持って出口となる『転移魔法陣』を展開し、純白で超おいしそうな魔造ウトサを小皿に落とした。


「グルルルルルルルルルルルルルルッ!」


 ウォーウルフは魔造ウトサの匂いに反応し、警戒心を強めていた。やはり、敏感に反応してくれる。

 私は小皿をハンスさんに渡した。


「これはいったいなんだ?」


「魔造ウトサと言う、危険なウトサです。口に含むだけで、甘いという感覚を得られます。ですが、幻覚魔法と感覚魔法のせいで、本当は甘味なんてありません。加えて、副作用がきつく、大量に摂取したくなるというおまけつきです。大量に摂取した者は狂暴化し、誰彼構わず襲います」


「な……、キララ、そんな危険な品を作ったのか?」

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