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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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麦の収穫

 私達はイーリスさんの畑にやってきた。

 穂先が垂れ下がり、パンパンにつまった実を着けている麦が視界一面に広がっていた。

 イナゴのような飛蝗(バッタ)は飛んでいない。たとえ、麦を食べようとする虫がいたとしてもビー達が全て肉団子にしてビーの子達の餌になっただろう。そのおかげで、黄金に輝く麦畑が風に揺られて幻想的な雰囲気を放っていた。


「ここまで豊作になるなんて……、私、産まれて初めての経験です。夫にも見せたかった……」


 イーリスさんは豊作の光景を見て、瞳を潤わせながら微笑んでいた。言葉を少々かけにくい雰囲気になるが、私は皆に伝える。


「麦はここまで成長したら、水に触れると品質が落ちます。なので、雨が降る前に全部収穫し、貯蔵できる段階まで加工します。地面から四センチメートルほど上の茎を切り、麦を収穫してください」


「はいっ!」


 私達が種を植えた場所は私達で収穫する。ビー達が種を植えた場所はビー達にお願いした。


 涼しい時間帯に一気にやってしまったほうが楽なので、すぐに取り掛かった。


 私達は鎌を使い、手の平で握れるだけ茎を掴み刈り取る。機械で行えば、脱穀と刈り取りを一緒にやってくれるのに、と思いながら手間をかけて食の大切さを体感した。


 シャインやガンマ君達は木剣を使おうとした。でも、止める。万が一、麦に傷が付いたら質が落ちてしまうからだ。


 腰が痛くなるような作業を続け、私達が八分の一の面積を刈り終えたころ……。


「キララ様。全て終わりました」


「…………は、はっや」


 視線を隣の畑に向けると、あまりにも綺麗に切りそろえられた穂と大きな袋に入っている麦の粒、モークルやバートンの餌に使いやすいよう、グルグル巻きにされた茎や葉……。

 まだ一時間もたっていないのに、ビー達は出来る限り終わらせてしまった。

 私達が手作業で行っているのが、ばかばかしくなるくらい、彼らの仕事速度が早すぎる。


「はあ……。ありがとう。ビー達に魔力を与えておいて」


「了解です」


 ベスパはビー達に魔力を与え、感謝の意を表する。

 畑に私の体よりも大きな袋が八袋置かれていた。

 私は全ての袋に『乾燥(ドライ)』を掛ける。麦の粒に水分が残っていると痛みやすく、長期保存が出来ないのだ。逆に水分を抜けば、滅多に腐らない。


「これでよし。ベスパ、麦が水に濡れないよう、屋根付きで乾燥した場所に置いて来て」


「了解です」


 ベスパは麦が入った袋を浮かばせ、どこかに持っていく。


「さてと……。私達も頑張りますか」


 私達は人の手で作業を進め、全ての麦を刈り取れた。すでに四時間以上たっており、お昼時になっている。

 私とライト、イーリスさんは途中から倒れ、ずっと休憩していた。この時間で終われたのは、体力お化けのシャインとガンマ君、デイジーちゃんがいたからだ。

 麦を茎から外すのは私とライトの仕事だ。手作業より魔力を使った方が、効率がいい。刈り取り作業をサボっていたと言う罪悪感も一部ある。


「じゃあ、ライト。麦を茎から外すよ」


「うん。やっと僕でも手伝える仕事が回ってきたよ」


 私とライトは麦の粒を茎から外し、袋に入れていくと言う単純作業を魔力操作で行う。

 魔力操作で自動化すると、三〇分もしないうちに、終えた。こちらも八袋パンパンにつまり、豊作だ。乾燥させ、麦が腐るのを防ぐ。


「あとは選別だ。さすがにこれは私達がやったら時間が掛かりすぎるから、私のスキルにやってもらうね」


「お願いしまーす」


 ライトとシャインは私のスキルの有能さを知っていた。


「ベスパ。小麦と大麦の粒の品質が良い品と悪い品に分けてくれる」


「了解しました!」


 ベスパはビー達を呼び寄せ、一粒一粒、良質な品と質の悪い品を分けていく。分別方法は魔力がどれだけ含まれているか、傷の有り無し、質量などで決められた。


 ベスパ達が選別している間に、私達は麦の茎と葉を家畜の餌にするために集めた。大量に持って帰れば、お爺ちゃんの負担が少しでも減らせるはずだ。


「仕事続きじゃ辛いだろうし、お昼にしよう」


 私達はお昼休憩に入る。パンや牛乳、ビーの子など、質素な食事だったが、食べられるだけでもありがたいと心の中で呟き、私達は神に拝む。


 昼食が終わった後、子供達は遊び、私とイーリスさんはビニールハウスに向かう。


「おおー! しっかりと育っていますね。ここまでくれば、畑に植えても問題ありません」


 私の視界には大きく育ったソラルム(トマト)、ククーミス(キュウリ)、メロンゲーナ(ナス)の三種類の野菜がしっかりと茎を伸ばし、大きく育っていた。あとは畑に植え、さらに大きく成長させるだけだ。


「畑は後で再度耕して使い回しますから、二毛作と言う栽培方法になります。土の栄養が心配になりますが、魔力を大量に流せば土地の豊かさが保たれるはずです。三種類を一緒に並べるのはあまりよろしくないですけど、距離を離せば問題ありません。今日中に植えてしまいましょう」


「ええ……。そんな早く……」


「何事も、すぐに行動を起こすことが大事です。今始めれば八月ごろに収穫できるはずです。その後、麦を植えてまた作業を繰り返す。普通は出来ませんけど、私の魔力があれば可能ですから、来年に使えるお金を蓄えるためにも頑張りましょう」


「は、はい! 頑張ります!」


 イーリスさんはデイジーちゃんの学費を賄うと言う大きな夢がある。入学金と授業料三年分で金貨一〇〇〇枚くらい掛かると考えると、あと三年の内に半分の五〇〇枚は貯めておきたい。

 麦や質が良い野菜を景気の良い今の街に売り出せば、お金が相当儲けられるはずだ。

 株のように、売り時と買い時を見極め、市場に流す。今は景気がいいのでお金が入ってきやすい。なら、作らない手はないのだ。


「キララ様、小麦と大麦の選別が終わりました」


 ベスパはビニールハウスにやってきた。


「ありがとう。じゃあ、オメちゃんを呼んで畑を耕してくれるようにお願して」


「もう、次の野菜を育てるのですか?」


「うん。今は稼ぎ時だからね」


「了解しました」


 ベスパはオリゴチャメタのオメちゃんをイーリスさんの畑に呼ぶ。麦の根や栄養の無い土を食し、沢山糞を出して栄養一杯の良い土にしてもらうのだ。畑の広さがバカにならないので、オメちゃんの子供達も全員呼んで、畑を耕してもらう。


「さてさて、私の魔力を食らうがいい!」


 私は魔力を土に大量に流した。

 すると、地面が黄色く光り、黄金色に輝いているように見える。

 魔力を大地に返し、水分や栄養と共に野菜に溜めこんでもらう。そうすれば美味しい美味しい野菜が出来るはずだ。


 オメちゃん達が耕し終わったのは午後四時頃。この時間帯から、苗を畑に植えていく。数が多くないので、一時間も掛からない。


「同じ種類の苗は同じ列に植えていく。種類が違う苗は五〇メートルくらい離してっと」


 私はソラルム、ククーミス、メロンゲーナの苗をできるだけ放して植えた。風や雨の影響を受けても耐えられるように棒やネットで補強を施し、大きく成長してくれることを祈る。


「ふーっ。久しぶりにたくさん働いたな。まあ、趣味みたいなものだし、全然苦じゃなかった。ビー達がいなかったら今日中に絶対終わらなかったよ」


「ほ、本当に一日で終わった……」


 イーリスさんは全て完璧に終えた畑を見て、口を開けていた。今日中に終わる量ではなかったので、当たり前か。でも、まだ売ると言う作業が残っている。


「今のところ、事が完璧に運んでいます。でも、ここからはイーリスさんがお金を稼いでいかないといけません」


「は、はい。そうですよね。食材があっても買ってもらわないと意味がありません」


「では、そのためにどうしたらいいと思いますか?」


「そうですね……。まずは小麦や大麦を使っているお店に持って行かないといけません」


「その通りです。小麦を使っている場所はあまりにも多いです。料理屋さん、お菓子屋さん、パン屋さんなどなど、小麦から作られるパンやケーキの生地、焼き菓子など庶民の生活には欠かせませんからね」


「はい。だから、小麦を作ったと言っても過言じゃありません」


「ですが、同業者が多数存在します。小麦や大麦は多くの村で作られていますし、質が良い品も沢山あるでしょう。その中でイーリスさん印のネード村産小麦を買ってもらうためには、それ相応の味が必要になります。多くの村が安さで勝負する中、イーリスさんは味相応の値段を貰おうとしているわけですから、厳しい戦いになります」


「うう……。私が上手く売れるでしょうか……」


「小麦の味は食べてみないとわかりませんから、小麦粉を使ってパンケーキを焼きましょう」


「パンケーキ……」


「えっと、小麦粉と卵、モークルの乳、乳油を混ぜて焼いた簡単なお菓子です。甘味を出すためにウトサが欲しいですが、無いので仕方なく素材そのままの味を楽みましょう」


「わ、わかりました」


 ☆☆☆☆


 私達は少し遅めのおやつにする。イーリスさん宅に戻り、コンロやフライパンを借りた。


「イーリスさん。今回採取した小麦以外の小麦はありますか?」


「今、使っている品は全く違う場所で取れた小麦です。それでもいいですか?」


「はい。構いません」


 イーリスさんは戸棚から、小麦粉が入った木箱を持ってきた。


「ベスパ。今日収穫した小麦のもみ殻をとって種の部分を持って来て」


「了解です!」


 ベスパはコップ一杯分の小麦を持ってきた。とても白く、一粒一粒が大きく、香りがすでにとてもいい。

 なんて言うのだろう。焼き立てのパンの香りと言うか……。

 麦の香りなのだけど、採取したてだとやっぱり香り豊かだな……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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