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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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心を浄化する

「物凄く闇っぽく聞こえますが、正反対です。あなたに、とある魔物と組んでもらって魔物を倒してもらいます」


「訳が分からん……。魔物と組む? 魔物を倒すってどういう仕事だ?」


「ん-、まあ、見てもらったほうが早いですかね。ベスパ。ウォーウルフの親玉を呼んでくれる」


「了解しました」


 ベスパは光り、親玉を呼んだ。すると、八〇秒もしないうちに角が切られた大型のウォーウルフが姿を現す。


「で、でっか……。なんだ、なんだ……。しかも黒い。見た目からしてウォーウルフだろうが、ありえないだろ……」


 藍色髪の青年は二メートル近いウォーウルフを目撃し、口が塞がらない。悪寒がするのか、額から冷や汗を掻いていた。


「キララ女王様。どうかしましたか?」


 親玉はのっそのっそと歩き、私の前で止まる。お座りをした後、話かけてきた。


「ちょっとお願いしたいことがあってさ。彼らと一緒に魔物を討伐する旅に出てほしいんだよね」


「以前言っていた仕事の話ですね。キララ女王様の命令とあれば、私はどんな仕事でも請け負います」


 ウォーウルフの親玉は頭を下げ、私にしたがった。


「どうやら、この子は仕事を引き受けてくれるそうです。あとはあなた次第ですよ」


「も、もっと具体的に教えてくれて。俺は何をしてどうしたら……」


「具体的に言うと各地を回り、暴走しそうな魔物を倒して掃除してほしいんです。その時に取れた魔物の素材やお金はあなた達の取り分で構いません。ですが、この子の貸し出し料として情報収集もしてもらいます」


 私はもふもふの親玉をぎゅっと抱きしめて頭を撫でる。


「う、ウォーウルフを従える少女……。ここで俺が断ったら?」


「問答無用で騎士団に飛ばします」


「俺がそのウォーウルフを殺して逃げるかもしれないぞ」


「んー、この子達は頭がいいので、何かしでかしたら逆に食い殺されますよ。あと運動能力がものすごく高いですし、魔力が豊富なので強いです。親玉、後方回転宙返り三回ひねり」


「はい」


 親玉は高く跳躍し、後方に回転しながら体を三回ひねって着地した。普通の犬が出来る芸当ではない。


「す、すげえ……」


「ウォーウルフの背中に乗れるので移動は楽ですし、見張りにも持ってこいです。旅のお供に完璧と言ってもいいくらい、良い子ですよ。ウォーウルフと一緒に各地を回り、魔物を倒してくれると言うなら、私は皆さんを見逃しましょう」


「く……、契約期間はどれだけだ」


「そうですね。世界が平和になるまでです」


「長すぎるだろ……。でもまあ、どちらも良いことがあるって言うなら、良いか。試しに乗ってやるよ」


 藍色髪の青年ははにかみながら言う。やる気になってくれたらしい。


 私は大人の労働力を八〇人分、手に入れた。

 冒険者パーティーなら、なかなかの規模になる。バルディアギルドに所属させたらさぞかし感謝されるだろう。


「じゃあ、土から早く出してくれ」


「わかりました」


 私は地面に触れ、土属性魔法で土を盛り上げる。すると、ネアちゃんの糸にグルグル巻きにされた男性が出て来た。あとは糸に魔力を流して切るだけだ。


「ふっ!」


 私が糸を切ったとたん、体にナイフの刃が向けられる。どこかに隠し持っていたようだ。服をひん剥いておくべきだったかな。


「すまねえな。俺は誰かの下に着くのが心底嫌いなんだ。俺はお前を上司だと認めない」


「そうですか……。まあ、別にいいですよ。上下関係なんていりません。対等でいましょう」


「ナイフを見せられてもビビらないガキがいるなんてな……。驚きだ」


 青年はナイフを下げ、上着のナイフホルダーに差し込む。そのまま土埃が付いた服を軽く叩き、手を差し出してきた。


「ハンス・バレンシュタインだ。一八歳。よろしく」


「キララ・マンダリニアと言います。一一歳です。よろしくお願いします」


 私はハンスさんの手を握り、関係を結ぶ。


「一一歳……。成人もしていなかったんだな」


「一八歳。妥当ですね。久しぶりに見かけが妥当な人に出会いました」


 ハンスさんは高校生っぽい雰囲気を放っているが、背丈は一八〇メートルあり、大学生っぽくもある。顔が小さく手足が長いため、なかなかいいプロポーションだ。韓国風イケメンと言えばわかりやすい。


「で、俺の仲間はどうなったんだ?」


「ああー、そうですね。そろそろ降ろさないと、死んでしまうかもしれません。ベスパ。降ろしてきて。途中まで、自由落下させてあげてね」


「了解です」


 ベスパは光り、上空八八八八メートルから、盗賊たちを真っ逆さまに落とした。三〇秒もしない間に地面に衝突し、九九パーセントの確率で死ぬだろう。もう、悪いことなんて一生したくなくなるくらいの衝撃のはずだ。

 八メートルの高さから飛び降りるのも怖いのに、ざっと一〇〇〇倍の高さから補助なしで真っ逆さまなんて、魂が死んだも同然。


「うわああああああああああああああああああああああああああ! いやだああああああああああああああああああああああっ!」


 盗賊たちは情けない声を上げながら落ちてきた。


「あ、あちゃー、相当堪えてるな。ざまーねえ」


 ハンスさんは空を見上げ、悪い顔で笑っていた。血も涙もない。


 ビー達は盗賊たちを捕まえて地面にゆっくりと降ろす。


「あ、ああ……。ああ……。ま、ママ……」


 盗賊は恐怖体験を受けすぎて心がまっさらになったようだ。顔が赤ちゃんみたいに無垢になっている。


「皆さーん、悪いことがまだ大好きな人はいますか? 大好きな人がいたら手を上げてくださーい。楽しい空の旅にもう一度招待しますから~」


 私は腰が抜けて地面に這いつくばる大きな子供に向って歌のお姉さんのように語りかける。


「どうやら、いないようですね。じゃあ、皆さんの頭からお話があります」


 私はハンスさんに話を振る。


「おい、お前ら。俺を笑ったのはどいつだ? 手を上げろ」


「…………」


 盗賊は全員が手を上げた。


「ははははははははははっ! ざまあねーなっ!」


 ハンスさんはものすごーく悪い顔で、言い放つ。

 盗賊はむっとして、怒りを飲み込んだ。きっとさっきならすぐに口答えしていただろう。


「大仕事が舞い込んできた。盗賊ごっこ、なんかするよりも俺達らしい仕事だ」


「仕事……?」


 盗賊たちは首を傾げ、ハンスさんに訊き返す。


「この少女から、魔物を討伐して各地を回れと言う仕事を受けた。報酬は魔物の素材。理由は知らないが、魔物を倒して回ってくれればいいだけだそうだ。こんな良い仕事はないだろ」


「おいおい、ハンス。ガキの話しになに本気になっているんだ。正気か?」


「そうしないと、俺達は騎士団に突き出されるらしい」


「ま、まじかよ……」


「捕まりたくない奴は手を上げろ」


 ハンスさんが言うと、盗賊の皆が手を上げた。悪いことをしているのに、捕まりたくないと白状するとは、とても潔い。


「じゃあ、全員が仕事を受けると言うことでかまわないな」


「あ、ああ……」


 盗賊たちは頷く以外の選択肢が無かった。


「なら、決まりですね。今から皆さんは盗賊ではなく冒険者団になったと言うことで、服装や髪型を綺麗に整えて印象を良くしてもらいます。髭を剃られなくないとか、服装に誇りを持っていると言う方は事前に言ってださい。じゃあベスパ、よろしく」


「了解です」


 盗賊たちのボサボサで伸びた髪や髭はビー達によってあっという間に切りそろえられ、アラーネア達の後処理で別人になった。やはり髪型と髭の手入れは清潔感に重要なんだなと改めて感じる。


 服装はビーとアラーネアが作った冒険者服が支給された。

 皆がほぼ同じ服装になり、団体感が出る。

 団体行動させると、個人は吐出した行動が出来なくなる。よくも悪くも、上の命令を聞きやすくなるのだ。

 なので、ハンスさんの命令はしっかりと聞いてくれるのを見るに、悪さをする者は滅多に現れないだろう。現れたらウォーウルフに捕まえてもらえばいい。


 八分後……。あら、何ということでしょう。汗や皮脂、砂に泥が付着し、伸びすぎて見るも絶えなかった盗賊たちの髪や髭はそれぞれの雰囲気に合わせて完璧に整えられました。

 加えてボロボロで臭いが酷く、けもくじゃらの盗賊服は質素で質が良い冒険者服に変わり、胸当てや肘当てなど、革製の防具まで付けられたおかげで清潔感が一気に増したではありませんか。

 ハンスさんも、口をあんぐりと開けるほど驚き、盗賊たちは自分の代わりように恐怖していた。


「こ、これが俺達……。そんなバカな……。カッコよすぎるだろ……」


「先ほどの心が汚れた皆さんは空から落ちてくる間に死にました。今、新たな一歩を踏み出し、道を進み出したのです。これから、せっせと働いてこの世界の役に立ちなさい」


「おお……。キララ女王様……」


 盗賊たちはスカイダイビングで心が浄化され、姿を整えたことにより、身も心も綺麗になった。だが、私を女王と呼ぶのは止めてもらいたい。


「ど、どうなっているんだ。あんな野蛮人だったのに、こんなあっさりと言いくるめられるなんて……」


 ハンスさんは未だに盗賊の格好だ。一人だけ完全に浮いている。


「ハンスさんも着替えますか?」


「俺は、この格好が気に入っているからいい。あと、ウォーウルフに乗った時、一番カッコよく見えそうだろ」


 ハンスさんは親玉の背中に乗る。親玉は何不自由なく動き、感覚を確かめていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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