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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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犯罪者で犯罪者を倒す

「あなたは盗賊なのに私と普通に話せている。若い見た目に寄らず、大分賢いようですね」


「盗賊は賢くないと生き残れないからな。悪知恵を働かせないとすぐに捕まる。油断なんてもってのほかだったが……、まさか、ここまでの力の差があるとは」


「あなたの敗因は力量を見極める目が肥えていなかったことと、この村を襲ったことです。何か弁解することがあれば、聞きますよ。殺人しているのなら、問答無用で騎士団に送りつけます」


「弁解か……。俺は今まで善人を殺してはいない。悪人は殺した。あと子供と女は殺していない。売りつけはしたが、殺していないだけマシだろう」


「善人と悪人の判断があなたに出来るんですか?」


「は? いい人間と悪い人間くらいすぐにわかるだろう。何を言っているんだ」


「じゃあ、善人と悪人の基準を教えてください」


「基準って……。そうだな、俺を殺そうとしてくる奴は悪い人間。俺を助けようとしてくる奴はいい人間だ」


「はあ……。なんてガバガバな線引き……。それだけこの世界の法律が甘いってことか」


 私は額に手を置き、天を仰ぐ。

 日本の法律の厳しさに比べたら、この世界の法律なんて警察が銃で悪人を乱射しても無罪になるくらい甘そうだ。

 でも、それだけ甘くても国が成り立っていると言うことは何かしらの抑止力が働いているのだろう。やられたら同じようにやり返されると言う気持ちが犯罪を抑制しているのかな。


「はてさて、あなたは今から、どうなりたいですか? 私は普通にあなたを騎士団に送りつけたいと思っていますが、自分の立場をよく考えて発言してくださいね」


「俺はこんな所でくたばるわけにはいかない。少しでもビースト共和国に支援してやらねえといけないんだ……」


 青年は何かしら抱えているようだ。ビースト共和国関連の話はよくわからないが、恩がある方でもいるのだろう。


「あなたが出来ることは何ですか?」


「俺に出来ること……。なんだろうな。特に無い……」


「じゃあ、騎士団に行って罪を償ってもらいましょうか」


「ま、待て。俺をすぐに騎士団に突き出さなかったってことは、お前は何かしら考えがあるんじゃないか?」


「そうですね。あるには、ありますけど……」


「聞かせてくれ」


「はあ……。あなたのスキルは魔法を打ち消すと言う能力ですか?」


「そうだな……、魔法を打ち消すと言うよりかは魔力を消すと言うスキルだ」


「なるほど、どのぐらいの魔力を消せますか?」


「どのくらい? わからん。試した覚えが無いからな」


「じゃあ、試してもらいましょうか」


「え?」


 私は体内に溜まっていた大量の魔力を魔力体にして男性の顔の前に差し出す。魔力体が見えるように顕現させた。


「この小さなビーは何だ?」


「今、私の体の中に入っていた余分な魔力です。これを消せますか?」


「体に触れていないと消せない」


「そうですか。じゃあ、口を開けてください」


 青年は口を開ける。私は魔力体を青年の口の中に入れた。


「えっと、言ってませんでしたけど、その魔力は家を容易に吹き飛ばす火力の一撃を八〇〇回くらい撃てる魔力量です。何か変なことをしたら、魔法でボッカンですよ」


「はは……、やばいなそりゃ……」


 青年は笑い、口内を光らせる。どうやら、スキルが発動したようだ。


「はぁ、はぁ、はぁ…………。こ、こりゃ、やばい……。多すぎて消しきれない……」


 スキルを一回使っただけではすべての魔力が消えなかった。何度も使用し、八回目で全ての魔力が消えた。その頃には男性の疲労が限界を迎え、気絶するように白目をむいている。

 スキルを使うにも魔力が必要なので魔力切れを起こしたようだ。


「私の魔力を八回で全部消せるってなかなか凄いよね」


「そうですね。キララ様の魔力量は恐ろしいですからね。八回に分けたとしても消滅させるのはなかなか凄いです。魔法使いが絶対に会いたくない相手だと思われます」


「そうだよね……、ライトでも殺されそうになっていたし、ライトを追い詰めるくらい強い。なかなか有能そうな人だよ。でも、盗賊っていう職業がなー」


「ウォーウルフと相性が良さそうですね」


 ベスパは顎に手を置き、にやりと笑う。何と不吉な笑いだろうか。私が笑っている時と似ているのが癪に障る。


「……はは、もしかして、やらせる気?」


「ウォーウルフだけではどうしようもありませんが、人手と彼がいればなかなか優秀な組み合わせになります。彼らに金品を与えて働かせましょう」


「……上手くいくかな」


 私とベスパは以前から話し合い、各地に広がった魔造ウトサの除去をどうするか考えていた。

 放っておいたら、多くの場所で魔物の暴走が起こると知った去年の夏から少しでも減らさないといけないと思っていた。


 今、フロックさんとカイリさんが危険地帯を洗いだし、調査してくれている。もうすぐ一年経つが、彼らはまだ村に帰って来ていない。

 生きているのか、死んでいるのかわからないが、彼らなら大丈夫だと信じて待っている。

 加えて、正教会などの動きも監視してくれているので、危険極まりない。でも、悪魔などの話しを聞かないため、大きな動きが無いのだろう。


 フロックさんとカイリさんだけでは世界に散らばった魔造ウトサを根絶させるのは不可能だ。少なからず、人手がいる。

 ブラットディアに死体を処理させることは出来るものの、生きた状態の魔物を倒して食すと言うのは攻撃力皆無のブラットディアには出来ない。

 そのため、魔造ウトサを取り込んで生きている状態の魔物を倒し、広がらないようにする処置が必要だった。

 

 ウォーウルフは魔物から発せられる臭いで魔造ウトサを感知できる。そのため魔造ウトサに侵された魔物を見つけられるが噛み殺すと、どうしても魔造ウトサに犯される可能性があった。


 刃物で倒す行為はウォーウルフに難しく、人の手が必要だったのだ。

 そんな時、現れた魔力を消せる青年に盗賊たち。ガラは悪いが使えないことはなさそう……。

 ただ、盗賊の頭が悪いと言う点だけが不安だ。

 人間は動物と違い、簡単に性格を変えられない。加えて、バカな人はとことんバカなので、全員の頭を良くさせることなどできない。最悪、再犯する可能性もある。そうなったら、私の責任だ。


「はてさて……。信用してもいいのだろうか……」


「難しい所ですか、人手は欲しいと言うのが事実ですし、やりがいを持たせれば何とかなるのではないでしょうか?」


「んー、悩むな……」


 私は今もなお、鼠算に増えている魔造ウトサの被害を考えていた。

 以前、森の中で経験した魔物たちの暴走。あの時は手数があったから対処できたが、ただの村が八〇〇体を超える魔物の大群に襲われたら終わりだ。

 加えて突然変異種のような狂暴な魔物が暴れ出すようなことがあれば、もっと悲惨な結果になる。

 やばいと思い始めたころにはすでに手をくれなんて言う癌のような存在で、早く切除しないと人々の生活が危ぶまれるのではないか。


「スゥ……ハァ……。少しでも抵抗するためには暴走を起こさせないように要因を排除するのが得策。そのためには人手が必要で魔物を倒せるだけの力がいる。子供にやらせるわけにもいかないし、簡単に働いてくれるような大人を見つけるのも難しい。盗賊なら、集められるし、従えられる。でもなあ……。犯罪者を使うって言うのも……」


「犯罪者が犯罪者を倒すのも一興じゃないですか?」


「はは……、なるほどね。そう言う考え方も出来るのか」


 私とベスパが話していると、頭痛がするのか、目をぎゅっと瞑り、歯を食いしばりながら青年が起きる。


「はぁ、はぁ、はぁ……。久々に魔力枯渇症になった……。まじで気持ち悪いんだよな……」


「お目覚めですね。あなたは騎士団に捕まりたくないと言うことですから、こちらであなた達の処罰を決めました」


「な、なんだって……」


「あなた達には国の危機を救ってもらいます!」


「訳が分からん……」


「わからないでしょうね。でも、あなたにはそれが出来るんです。そのスキルは世界を救うために使うべきですよ!」


「俺はおこちゃまの考えなんかに加担している場合じゃないんだ。少しでも金を稼いでビースト共和国に持って行かねえと」


「お金なら稼げます。魔物を倒し、魔石などを売ればいいんです」


「そんな効率の悪いことがやっていられるか遭遇するかもわからねえのに、色々時間が掛かるだろ」


「私がお願いしようとしていることを実践してくれれば、時給金貨八〇〇枚も夢じゃありませんよ」


「な、お前……。どんな闇の仕事を俺達にさせようと……」


 青年は当たり前の反応をした。そりゃあ、時給金貨八〇〇枚とか、普通に考えたらあり得ない。

 大富豪とかなあり得るかもしれないが、一日八時間働いて金貨六四〇〇枚。さすがにそこまで稼げないが、冒険者なら時給金貨八〇〇枚は夢じゃないはずだ。

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