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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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少年に甘々なバートン

「す、すごい、キララさん……。私、ここで働きたくなっちゃったわ……」


 クレアさんは私に一番言ってほしい言葉をつぶやいた。


「ありがとうございます。他の人に働いてもらいたいと思ってもらえるのは経営者としてとても嬉しいことです」


 私はクレアさんに頭を下げる。


「ほんと、こんな場所があったとは……。どれもこれも、キララさん達の努力の結晶なのでしょうね。私も、出来る限り働かせてもらいます」


 バレルさんも頭を下げ、働きたくなってくれたようだ。


「じゃあ、今日は企業説明だけと言うことで、明日から一緒に働いてみましょう。朝は牛乳配達から始まります。午前四時三〇分には起きて午前五時くらいには配達が出来るように心掛けてください」


「ご、午前四時三〇分……」


 クレアさんは苦笑いを浮かべ、若干引いていた。


「始めの内は起きるのが辛いかもしれませんが自然と慣れます。その後に朝食、朝会があり、牧場の仕事。昼食と昼休憩が正午から午後一時まで。昼休憩後は午後一時から午後五時までの仕事です。残業はしたい方だけ、してもらって構いません。その分の給料は払いますから午後遊びたい方は早めに上がってもらっています。午後七時には完全に終わってもらって夕食を配らせてもらいます。風邪を引いた時は誰かに連絡してくれれば構いません。何か質問はありますか?」


「え、えっと……。朝、昼、夜の食事がついているの?」


「はい。まあ、パンとスープ、牛乳、チーズなどの簡単な品ですけどね。もちろん自身で買って夕食を作っていただいても構いません。王都の料理と全く違うと思いますから、自分の舌に合うように調節してください」


「わ、わかったわ。ほんときっちりかっちりしているのね。時間をしっかりと決めているなんて珍しい……」


「時間を決めていた方が効率が上がります。少人数ですし、集中できる時間も限られていますから、効率をどれだけ上げられるかが肝になります。もちろん商品の質を落とさないように維持しながら。この加減がとても難しいので、苦労していますよ」


「…………キララさん、本当に一一歳なんですか?」


 バレルさんは鋭い切り裂きを入れてくる。


「も、もちろん。正真正銘の一一歳ですよ。ここまで一一歳っぽい子はどこにいますか?」


 私は苦し紛れに呟いた。そうでもしないとぼろが出る。


「まあ、ライト君やシャインのお姉ちゃんだと考えたら、妥当っちゃ妥当よね」


 クレアさんは私の発言を信じてくれた。ほんと、私の弟と妹がぶっ飛んでいてくれてよかった。


「では、今日は村の中を好きに見て回ってください。教会もありますから、拝んできてもいいですよ。安全性は先ほどのライトの魔法陣を見てもらったのでわかると思います。魔物が近づいてきたら、警報が鳴りますし、村の中にいる魔物は安全と言うことですから、攻撃しないようお願いします」


「わかったわ。じゃあ、バレル。行きましょう」


「承知しました」


 クレアさんとバレルさんは牧場から歩いて行き、村を見て回る。


「はぁー、何とか乗り切ったー」


 私はクロクマさんを倉庫近くにある檻に返す。魔物の群れと戦ってくれたお礼の品として卵を八個与えると、クロクマさんは美味しそうにバリバリ食していった。卵液が付いた手をぺろぺろ舐める姿が可愛らしいが、あれが人の血でも可愛く見えるのだろうか……。いや、無いな。


 私は久しぶりの仕事を行う。と言っても見回りする程度。今まで、私がいなくても牧場がしっかりと回っているのだから、見て回る程度でも問題ない。


 私は商品を販売している、牧場近くの出店に移動した。


「ガンマ君、ガンマ君。仕事を早く終わらせてバレルさんって言う方に剣を教わりに行くよっ!」


「シャインさん以上に強い剣士なんて本当にいるんですか?」


 一番お兄ちゃん気質で頼りがいのあるガンマ君は一緒に仕事をしているシャインに疑いの目を向ける。


「そりゃあ、何人もいるよ。バレルさんはフロックさんよりも強かった。もう、師匠と呼んでもいいくらい強かったの。あの人に剣を教えてもらったら、今以上に強くなれる。だから、一緒に頑張ろうっ!」


 目をキラキラと輝かせているシャインはガンマ君の手を無意識に握っていた。


「は、はい。一緒に頑張りましょう!」


 ガンマ君はシャインの手をしっかりと握り返し、意思を見せる。


「…………あ、ご、ごめん」


 シャインはガンマ君の手をこれでもかとしっかりと握っていた状況を知り、恥ずかしくなっていた。だが、ガンマ君はシャインが照れているなど知らず、今もなお、握り続けている。


 ――何と甘々なんでしょう。お姉ちゃん、鼻から血が出そうだよー。


 私は妹がガンマ君と手を繋いでいるだけでモジモジしている姿を見て、微笑みが生まれていた。ほんと、初心で可愛い奴め。


「キララ様、仕事と言えば、冬ごろに植えたトゥーベルが収穫時期だそうですよ。数が多いですし、収穫してもいいかと」


 ベスパは私に仕事をしろとでも言いたそうに、頭上に飛んできた。


「クレアさん達の家の掃除は終わったの?」


「はい。完璧に仕上げてきました。以前、クレアさんのお部屋に入った時の光景をなるべく再現しておきましたよ。ベッドの大きさや棚の位置、椅子、丸テーブル、絨毯など、作れる品は全て真似ました。マットレスだけキララ様が使用している品と同じ品を敷いてあります」


「うん、本当に完璧だね。トゥーベル掘りは子供達が楽しみにしているし、私一人で行う訳にはいかない。だから見回りが終わったら、昼寝でもしようかなー、って思っているけど、そう言う訳にもいかないだよね」


 私はバートンの厩舎に向かう。先ほど、クレアさんとバレルさんを案内した時にはいなかったバートンが大好きなカイト君とお爺ちゃんがバートン達の散歩から帰ってきていた。カイト君は気性が荒い姐さんのお世話をしていた。それだけ懐かれていると言うことだ。

 

 私は荷台を引いていたレクーの手綱を持ち、厩舎の中に入る。


「キララか?」


 お爺ちゃんが私に気づいた。


「ただいまー。無事帰ってきたよー」


「そうか。元気そうで何よりだ。レクーの方も王都へ行って帰ってきたわりに調子が良さそうだな。さすがの体力だ」


 お爺ちゃんは微笑みながら言う。


「ま、レクーに掛かればこれくらい楽勝楽勝。本当によく頑張ってくれたよ」


 私はレクーの頭を撫でながら、頬擦りする。そのまま、レクーを定番の位置に帰す。その後、餌箱に大量の干し草を、水入れに新鮮な水を入れた。


 レクーは干し草を子供のようにモグモグと食し、移動の疲れを癒す。


「キララさん、レクー、お帰りなさい」


 若干六歳のバートン大好き少年ことカイト君は姐さんから離れ、レクーのもとに行こうとした。だが、姐さんがカイト君の首根っこを噛み、小屋から出さない。


「も、もう。ビオタイト、どうしたの?」


「まだ私のブラッシングが終わってないでしょ。浮気する男は嫌いよ」


 姐さんはカイト君のことが気に入っているらしく、尻尾で体を叩いている。あの姐さんがツンデレのようになっていて、背筋に怖気が少々襲って来た。


「むむ……、母さん。カイト君を独り占めするのは駄目だと思うな」


 レクーは姉さんの方に視線を向け、喋りかけた。


「あら、あなたにはキララさんがいるじゃない」


「母さんにもお爺ちゃんがいるだろ。カイト君は皆の者だよ。独り占めはずるい」


「別に独り占めをしているわけじゃないわ。カイト君が私の体をまだブラッシングしていないから、引き留めただけよ」


 レクーと姐さんは端と端の部屋にいるわけだが、視線を合わせ睨む。


「お爺ちゃん、レクティタとビオタイトが喧嘩してる」


「ま、どっちもカイト君が好きなんだよ。だから、独り占めしたくなるんだ」


 お爺ちゃんはカイト君の頭を撫でた。


「僕はどっちも好きだよー。だから、どっちも喧嘩しちゃ駄目」


 カイト君は今年でまだ六歳なわけだが、とてもしっかりした子だった。


「じゃあ、ビオタイト。しっかりブラッシングしてあげるからね。座って座って」


「はーい。よろしくね、カイト君」


 姐さんは可愛らしい声を出しながら、膝を折り、座る。バートンは馬同様に足を動かしていないと血液が回らなくなり、死ぬ。眠る時や体が痒い時などは寝ころぶが、長い間、膝を曲げているわけにはいかない。カイト君は手早く綺麗に姐さんの体をブラッシングしていった。


「ああー、気持ちいいー。そこそこ、そこがいいのー。やっぱり、カイト君、私の気持ちよくなっちゃうところ、わかるのね。ほんと将来が恐ろしいわー」


 姐さんはひんひん、ぶるるーと言いながら、何とも甘ったるい声を出していた。食事をしているレクーが少々お怒りになるくらい、心地よさそうな声を出している。


「ふむ……。やはりカイト君は手際がいいな。バートンの気持ちがよくわかっている」


「もちろん。ビオタイトはお腹とか背中をブラッシングされるのが好きなんだよ。すごく心地よさそうにしてるのがわかるの」


 カイト君が姐さんに寄り添うと姐さんがカイト君の頬を舐め、とても仲が良くなっている。暴君として有名な姐さんが、厩舎の中にいるボス的存在のあの姐さんが、カイト君に対して甘々なのだ。

 私にも少々厳しいのに……。それだけ、カイト君のバートン愛が伝わっていると言うことかな。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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