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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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女王の下僕

「光ったけど、これがどうかしたの?」


「振ってください」


 ベスパは手をブンブンと動かす。


「振る……」


 私は木剣を縦に振った。すると刃が割れ、ネアちゃんの糸が伸びる。鞭のように撓り、私が振り切ると、もとの形状に戻った。


「な、なにこれ……。気持ち悪い……」


「伸びる剣です。ただの木剣にしたら面白くないじゃないですか」


「い、いや。私はシャインように作ってほしかったんだって」


「シャインさん用の木剣も作りました。その品は余った箇所を継ぎはぎにして作ったキララ様の木剣ですよ」


「ええぇ……。こんなへんてこな武器を使わないといけないの……」


「へんてこな武器って何ですか。すごく使い勝手が良いんですよっ! 威力だって高いんですから!」


 ベスパは両手を振り、翅をブンブンと鳴らしていた。


「こんな鞭みたいに撓ったら、威力なんてたかが知れてるでしょ」


 私は周りに人がいないか確認し、木剣を真横に振る。すると剣身が割れ、巻はしごのように伸びた。剣身の一部はネアちゃんの糸でつながっており、飛んで行ったりはしない。

 最大八メートルも伸びるらしく、縄のように枝に巻き付ければ戻る伸縮性を利用し、移動できた。まあ、肝心の威力が……。


「ふぅっー。伐採伐採。あー、この木はきっとものすごく柔らかいんだよ。だから、こんなに簡単に切れるんだよー」


 私はバッドを振るように木剣を振るう。すると木が切れる切れる。私を中心に木剣を振るえば、八メートル範囲の木が全て丸太になった。

 もう、訳がわからない。全てネアちゃんにくっ付けてもらい、魔力を流してあげると木の幹はくっ付いた。

 

 危なかった。あのまま行っていたら楽しすぎて森に大きな穴が開いていただろう。でも、バレルさんのせいで、森に大量の切り傷が生まれたのは事故と言うことで多めに見よう。


「はあ……。確かに威力は高いけど、私にこんな木剣を持たせてどうする気?」


「キララ様も見たと思いますが、学園の生徒は皆、剣を持っていました。きっと必要なんですよ。なので、一本は持っておいた方が良いかと」


「むぅ……、言われてみたらそうか。仕方ない。ありがたく貰うよ」


 私は漆黒の木剣を手に入れてしまった。どうせならもっと可愛い剣がよかったのに中二病満載だよ……。黒剣。ブラックソード。んー、何という名前を付けようか。まあ木剣だし、名前なんて必要ないか。


 魔力を流していない状態で木剣を振ると、ただの剣と変わらず、硬い状態で使えた。だが、威力は健在だった。ネアちゃんの糸のせいかな……。わからないが、危ないので適当な木で作ってもらった鞘に入れる。


 私は木剣の性能を確かめた後、バレルさんのもとに戻った。


「は……。少し、と言うか、だいぶ疲れました……」


「なら、私がおぶりましょうか?」


 バレルさんはしゃがみ、背中を差し出してきた。


「でも、ここから村まで八〇キロメートルくらいありますよ。私は子供ですけど……、おぶりながら、走るのは流石に……」


「キララさんの魔力を受け取ってから調子が良いんです。ささ、遠慮せず」


「じゃあ、お言葉に甘えて……」


 私はバレルさんの広い背中に乗った。お父さんと似た安心感がある……。バレルさんの背中から新品の服のにおいがする……。森のにおいと言うのか。ベスパが作った品だからしょうがない。


「では、ウォーウルフ達がいる場所まで戻ってください」


「わかりました」


 バレルさんは地面を踏みしめ、走り出した。一歩で三メートル以上跳ね、木の枝を踏み台に地上から一八メートル付近にまで跳躍している。

 空から広場の位置を確認すると身を捩り、木の枝を手で掴んで方向転換。猿かと言いたくなるほどの身体能力によって私の眼が回った。背中にぎゅっと抱き着いていないと振り落とされそうになるため、力いっぱい抱きしめた。もうジェットコースターで死を感じ、安全バーを目一杯握る少女そのものだ……。


 一八〇秒後、バレルさんの人間ジェットコースターは終わり、私は靴裏を地に付けた。疲れた体が、さらに疲れた気がする……。


「キララさん。大丈夫ですか?」


 クロクマさんが私に近寄り、頬擦りしてくる。私もお返しし、立ち上がった。


「うん、疲れたけど元気だよ。って……、うわ、素材だらけ」


 ウォーウルフの子供達が魔物の魔石を咥えながら遊んでいた。想定していた八〇〇体の魔物よりも多く、最終的に八八八個の魔石が手に入った。

 一個金貨一枚だとしても金貨八八八枚。大金だ。まあ、一緒に戦ってくれた子達が二〇〇体くらいいるとしても彼らにお金は必要ない。欲しいのは魔力だ。バレルさんにだけ給料を払えば、ウォーウルフに人件費ならぬ魔物件費は掛からない。


「ウォーウルフの皆さん。お疲れ様でした。疲れたと思いますけど、今から皆さんには住む場所を移動してもらいます。ここから遠いですから、しっかりとついてきてください」


「ついて来てと言われましても……、私達は魔物ですし、人の目に見られたら確実に駆除されます」


 ウォーウルフの親玉は正しい意見を言う。


「その点は考えてあります。まあ、皆さんには屈辱かもしれませんが……、首輪をつけてください」


「く、首輪……」


 ウォーウルフの雄たちはプライドが高いため、首輪をつけると言う敗北の証を突きつけられて動揺していた。魔物なのに首輪と言う言葉を知っているのだろうか。


「私の下僕としてみっちり働いてもらいます。もう、ひいひいいうほどね」


「はわわわ……、喜んでっ!」


 ウォーウルフ達は尻尾を大きく振り、口角を上げながら動きたくてうずうずしている。


「え?」


「キララ女王様! 早く下僕にしてください!」

「キララ女王様! 下僕の証をください!」

「キララ女王様の下僕になりたいです!」


 ウォーウルフ達は皆、首輪を欲しがった。私の下僕に成りたいと自ら言ってくる。


 ――何なんだ、この魔物達。そんなに私の魔力が好きなのか。甘かったりするのだろうか。


 私はベスパとネアちゃんに首輪を作ってもらった。特に変哲もないただの首輪だ。首に巻くベルトと考えてもらっても構わない。


「はぁ、はぁ、はぁ……。キララ女王様の下僕……。なんて良い響なんでしょう……」


 ベスパはウォーウルフ以上に気持ち悪く呼吸を荒くしていた。

 今すぐ燃やしてやろうかと思ったが、森の中では火気厳禁なので、やめておく。


 バレルさんと一緒に、ウォーウルフ達に「私達は安全です」と言う意味を込めて首元に『安全第一』と彫られた首輪をつけていった。

 私はバレルさんのスキルでウォーウルフを操っているんですと言う嘘で誤魔化せないかなーと甘く考えていた。

 ただ、子供のウォーウルフならいいが、一体一体の大きさが二メートル近くあるので、二〇〇頭ともなると、可愛いよりも恐怖が勝る。


「きゃうんきゃうんー。きゃうんきゃうんー」

(やっべぇ~! 超気持ちぃっ~! もっともっと~っ!)


「…………」


 私がお腹を撫でてあげると、ウォーウルフ達は嬉しそうに尻尾を振りながら悶える。

 ものすごく可愛いが、事情を知らない者がこの光景を見たら、確実にやばい少女だと思われる。でも、スキルと言う逃げ道があれば、普通の人は騙せる。まあ、危険が無ければうるさく言う者はいない。

 ただ、魔物に家族を殺されたバレルさんからすれば、私の姿が憎たらしく見えるかもしれない。


「バレルさん、すみません。このような形で魔物と触れさせてしまって……」


 私はバレルさんの前に出て頭を下げながら謝る。


「いえ、気にしないでください。キララさんは頭が良いですから、私の心情を読み取って謝ってくれたのでしょうが、あの時の原因は私にあります。魔物が悪い訳ではありません。なので、ウォーウルフやブラックベアーに嫌悪感を抱いてはいませんよ」


 バレルさんはグローブを外し、ウォーウルフを撫でる。

 私はウォーウルフ達に人に危害を加えないように言っているので、ウォーウルフ達はバレルさんに噛みついたりしない。


「バレルさん……」


 ――物凄く良い人じゃんっ! うぅ……。悪魔め、善人の心を弄びやがって……。正教会のやつらも、バレルさんを出しに使うとか許すまじ。


 私は悪魔さんと正教会に鬱憤を募らせる。


「キララ様、そろそろ帰らないと空が暗くなってしまいますよ。クレアさんも心配しています」


 ベスパは空を見上げて恒星を指さした。真上にあったころから結構傾いており、移動から素材採取に至るまで時間を結構使ってしまった。

 クレアさんを荷台に置き去りにしているのは少々まずい。早く帰らないと。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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