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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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黒い木偶人形

「キララ様っ!」


 光り輝くベスパは八本の根が中央に集まるまえに上空へと到着。あまりの移動速度にさすがの一言だ。


「ゼロ距離爆発!」


 ベスパの尻に出口となる『転移魔法陣』が展開。後方から、私が放った高密度な『ファイア』が空間を飛んで出現する。同じく高密度な魔力を持ったベスパは、内部エネルギーの膨張を経て爆発。木の根が弾き飛び、黒煙と青空が見えた。


「ビー達、上昇っ!」


 ビーは命令に従い、時速八〇キロメートルで浮上。黒煙を突っ切り、広い広い空へと出た。


「あ、あっぶな……。死ぬところだったよ。さっきのトロントより、更に黒い根……。もう、黒い個体は危険だって直感しちゃうよね……」


「おお……。おぉ……」


 トロントが地面を均しながら移動してきた位置に、黒い木偶人形のような者がいた。頭、手足、胴体。どれも人っぽいが、木で出来ており、うめき声を上げていた。


「何あれ……。気味が悪い……。魔物?」


「魔力……、欲しい……、魔力……、欲しい……」


 木偶人形は人の言葉を話し、よたよたと移動している。だが、人とは思えない化け物の雰囲気がぷんぷんした。


「ベスパ……。あの、黒い物体は何?」


「わかりません。ただ、通常の魔物とはまた別のようです」


 復活したベスパが、私の頭上に現れた。


「魔力……、欲しい……、魔力うううううっ!」


 先ほど爆破した黒い木の根が再生し、魔力量が一番多い私を狙って目にも止まらぬ速さで襲いかかってくる。

 訳も分からぬまま、私はベスパにお願いして黒い根を躱しながら空を飛び、皆から距離を取る。私の近くにいたら巻き添えを食らってしまうと考えたのだ。


「魔力……、魔力……」


 黒い木偶人形は私を追い始め、進行方向を南東から北西へと変えた。


「ベスパ、避けるのは全部任せた。私は体を狙ってみる」


「了解ですっ!」


 私は移動をベスパに全て任せ、矢筒から矢を取り出し、弓に掛けて弦と共に引く。人差し指に掛かっている木の矢がやけに震えた。もう、ジェットコースターに乗りながら弓を構えている状況と思ってもらって差し支えない。


「ビー達、軌道修正よろしく!」


 私は魔力で強化した矢を放つ。もちろん、黒い木の根が矢の進行方向に現れる。だが一匹のビーが矢の先端をほんのすこし持ち上げた。すると、黒い根を掠るように矢が飛び、直撃を避ける。他のビーが矢の中心を押し、軌道修正。速度を保ったまま、黒い木偶人形へと突き進む。


「魔力……。魔力……。魔力だぁあ……」


 木偶人形は手を伸ばし、光る矢を魔力と勘違いしているのか嬉しそうにしていた。

 私は木偶人形の腕や足を狙っていたので好都合。そのまま手に直撃してくれと、何ならそのまま進行を停止してくれと願った。


 矢は木偶人形の黒い腕を貫通し、威力を失うことなく胸の中心に突き刺さる。矢の勢いは止まらず、胸を貫き、直径八センチメートルほどの穴を作った。


 威力が高すぎた……。万が一、木偶人形が人間で生きていたら私は人殺しになってしまう。そう思っていたが、ぽっかりと開いた胸の穴から黒い血液が流出した。

 どうやら、人種ではなく魔物と考えて間違いない。

 もしかしたら、ものすごく賢い魔物で、人の言葉を聞き、理解したのかもしれない。だが、殺されそうになっているのだから私も戦っていいはずだ。

 相手が元人間だろうが、魔物だろうが関係なく、正当防衛で戦わせてもらう。


「何かしらの情報を持っていたら幸運。ただの自然現象なら、私の運が悪すぎる。どちらにせよ、生き残るためには戦わないと」


 私は矢を持ち、弓に掛ける。すでに右腕の握力が弱まってきた。ほんと貧弱な体だ。まだ、八本も撃っていないのに、体が悲鳴を上げている。


 ――高火力だけど、全身の疲労がたまるんだよな。筋肉の疲労は魔力の疲労と違って回復しづらいし、体をもっと鍛えないと。


「ふぅ……。しゅっ!」


 息を整え、精神統一させた魔力の鋭さは一級品。矢先に折れぬ矢尻が生まれ、弦を離す。魔力で出来た弓のしなりと、弦のしなりが矢に運動エネルギーを与え、私の魔力が貫通力を上げながら空気抵抗や摩擦力を極限まで減らす。

 矢に纏わっている魔力は移動中に奪われることなく、敵の体に向かった。


「魔力……。魔力うううううううっ!」


 黒い根が木偶人形の周りから発生し、黒い血液を吸って漆黒になる。本数と太さも増し、自分で垂れ流した魔力を利用し、根を強化したようだ。

 先ほどの一.八倍ほど大きくなった根が矢を襲った。ビーに軌道修正されないよう、タコが獲物を捕獲するように八本の根が全方位を囲み、襲い掛かる。


「ごめん、意味ないんだ。『転移魔法陣』」


 私は矢の進行方向に『転移魔法陣』を出現させた。矢は魔法陣に吸い込まれていく。黒い根の防御を抜け、木偶人形の後方にすでに位置取っていたビーのもとに展開している出口の『転移魔法陣』から出現した。

 その結果、木偶人形の首に矢が突き刺さり、跳ね飛ぶ。頭が自分に落ちると、ボーリング玉が床に落ちたような鈍い音が鳴り、気分が悪い。黒い木偶人形の首元から噴水のように黒い血液が吹き出し、黒い根の動きが止まる。


「……やりましたか?」


「ば、バカ。ベスパ、それはフラグ……」


 ベスパのフラグを回収すべく、当たり前のように黒い木偶人形の頭が溶け、魔力となる。頭が無くなった体に、頭部が再生され、また動きだした。


「魔力……。欲しい……」


「第二形態はなさそう。でも、あいつはいったい何なの。バレルさんに聞いたほうがいいかな……」


 黒い木偶人形は私のことを追ってこなかった。どうやら、私が大量の魔力を持っているとわからなくなっているらしい。そう考えると頭部が情報を持っていたのは確かだ。頭を破壊したら、木偶人形の記憶はゼロに戻る。丁度休憩したかったのもあり、私は他のビーに見張らせ、バレルさん達の下に戻る。


 大量にいた魔物はほぼ討伐されており、ウォーウルフ達が嬉しそうに尻尾を振り、褒めてほしそうににんまりと笑っていた。ただ、口もとが真っ黒で、あまりにも恐ろしい。

 皆は、魔造ウトサを含んだ魔物の血液を口にしてしまったため、少なからず影響を受けると思ったが、私の魔力を飲んでいたおかげで耐性が出来ていた。だが、豹変されても困るのでライトの特効薬を水でうすめ、全員に飲ませる。


「うぉおおおおおおおおおおおおっ!」


 ウォーウルフ達の歓喜の遠吠えが響き渡る。どうやら、勝利の美酒感覚になり、超絶美味しかったようだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。もう、運動不足ってやーね。すぐ、ばてちゃう……」


 クロクマさんは傷を全く負っておらず、全てビンタの一撃で敵を葬り去っていたが、息を荒げ、体の無駄な脂肪を燃焼させていた。先ほどよりも筋肉が浮き上がってガチムチになっており、恐怖が増す。


「クロクマさん、お疲れさまです。いったん、休んでください」


 私は特効薬が含まれた水をクロクマさんに飲ませた。


「はぁー。美味しいー。軽い運動後の水分補給は最高ですねー」


 八〇〇頭の魔物の討伐が軽い運動らしい……。ブラックベアーの体力が化け物なのがわかった。


「キララさん、先ほど、爆発音がしたんですが、いったい何が起こっているんですか?」


 私はバレルさんに魔力が含まれた水を飲んでもらい、体力を多少回復させる。


「えっと私もバレルさんに訊きたくていったん戻ってきました。少し来てください」


 私はバレルさんを誘導し、黒い木偶人形が見える位置にやってくる。茂みに隠れ、息をひそめた。


「バレルさん、あの個体が私の魔力に反応して襲ってきたんです。トロントが魔物達の親玉かと思ったんですけど、あの黒いのが親玉っぽくて……、首を跳ねても倒れないですし、一体何なんでしょうか?」


「ムムム……。あれはマンドラゴラの疑似の姿です。あそこまで黒い擬態は初めて見ましたが、人をおびき寄せたりするときに使うんです。本来は花のにおいで人を釣りますが、あのように自分から動いて魔力を求める個体もいます。本体は地面に潜っていてあの人形をいくら壊しても意味はありません」


「なるほど……。あの木偶人形は偽物で本体は地面に潜っていると……。そうなると倒すのが厄介ですね」


「はい……。本体を地面から引き抜かないといけませんから、骨が折れる魔物です。あそこまで大きくなってしまったら、森の生態系が壊れてもおかしくないでしょう」


「ふむふむ……。あのマンドラゴラは倒さないと被害が出ますよね?」


「そりゃあ、あそこまで大きな個体だと魔力がある者は根こそぎ食べられます。放っておけば、近くを通った者は見境なく食べられるでしょう」


「じゃあ、駆除するしかありませんね……」


 ――ベスパ、土の中に潜って本体がどれくらい大きいか調べてくれる。


「了解です」


 ベスパは魔力体のまま、地面に侵入。壁同様に地面もすり抜け、マンドラゴラと思われる魔物の情報を調べに向った。


 八〇秒後、ベスパは私のもとに戻ってくる。


「大きさは二メートル。胸の部分に魔石があります。フリジア魔術学園で見たマンドラゴラとはだいぶ形状が違い、人型のようです。地上から、八メートル下におり、土の中を移動しています。根のような管が地上と繋がっており、呼吸しているようです」


 ――わかった。ありがとう。なら、窒息させて無理やり出てきてもらおうか。


「バレルさん。今から、マンドラゴラを窒息させます。なので、出て来た個体の牽制、又は駆除をお願いします」


「わかりました」


 バレルさんは小さく頷き、剣の柄に右手を持て行く。


 私は浮上し、地上一八メートルで木偶人形に手を翳した。


「『ウォーター』」


 木偶人形の周りに直径三メートルの水球が出現し、包み込む。これで窒息させられると思ったのだが……。


「魔力……。魔力……」


 水が黒い木偶人形に吸収され、綺麗に消えてなくなった。


「魔法が吸収される……。面倒……」


 どうやら、通常の魔法では魔力が吸収されてしまうようだ。お腹が空きすぎている故、底なしの胃袋だと思われる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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