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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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究極の選択

「どうする……。俺達はあいつの下で一生働くのか……」


「そ、そんな……。なにをしてくるかもわからないのに、どうしたら……」


「あのおっさんも滅茶苦茶強そうだぞ……。俺達で掛かって行ってもさっきのやつらみたく首を一刀両断されるだけだ……」


 ウォーウルフはなまじ頭がいいので、動ける個体がほぼいなかった。なんせ、目の前にいる老人が強いと野生の勘でわかってしまうのだ。戦いに行けば死ぬ。止まれば生き残れる。だが、何をされるのか見当がつかない。そう言った間に立たされ、逃げ出す個体が現れた。


 私は手に持っている光る弓を構え、矢筒から矢を一本取り出した。


「逃げるのは規則違反です」


 ――ベスパ、矢が変な所に飛んで行ったら、照準を合わせてくれる。


「了解しました」


 私は木々の隙間を塗って逃げ出した個体目掛けて矢を放つ。木など関係なく、私が放った矢は貫通していき、最短距離でウォーウルフの体を突き破った。やはり、威力がぶっ飛んでいるが、彼らにとって逃げられないと言う恐怖心を与えられたからいいだろう。

 今、彼らは生きるか死ぬか。どちらかの選択しか取れない。戦って勝つか。死ぬか。負けを認め、得体が知れない人間の下で働くか。

 私としては厳しい選択をウォーウルフ達にしいている。だが、こうでもしないと人族を殺めた魔物を雇用することは出来ない。犯罪歴がある人間を雇うのが難しいように、一度でも人を手に掛けている魔物を仲間に引き入れるのは危険が少なからずある。だから、この場で絶対的存在を植え付ける。犯罪をしたら死ぬと知らしめるのだ。人を殺した魔物は同じように人を殺すだろう。だから、逃がすわけにはいかない。


「な、なんだあの矢……。威力がおかしい。全く見えてなかったのに、なんで当たるんだ?」


「知るか、そんなのっ! だが、逃げられないんじゃ、前のおっさんを倒すか、したがうかしかないだろ。俺はあんなガキに仕えるなんてまっぴらごめんだっ!」


「お、俺だって嫌だが……、家族が……」


「お前、それでも雄かっ! 自由に生きられなくなるんだぞ。俺達の命はあのガキにずっと握られたままだ。そんなの、死んでるのと同じじゃねえか!」


 ウォーウルフたちは自分達で考え、答えを導き出そうとしている。生きるか死ぬか。もう、究極の選択と言ってもいいだろう。

 私は裏切らない労力が欲しい。丁度、労力不足だったのだ。家に帰ったら新たな新天地に農場を作らなければならない。なら、番犬は必要だろう。目には目を、歯には歯を、ハンムラビ法典っぽく言うのなら、虫には虫を魔物には魔物をと言ったところか。


「おい、小娘っ! お前は本当に子供と雌を助けてくれるんだろうなっ!」


 一頭のウォーウルフが強い口調で叫ぶ。


「ええ。そのつもりです。弱い者いじめをするつもりはありません。ですが、あなた達は動物ではなく、魔物。多くの人間から恐れられていると言うことは理解していると思います。主な理由として、意思疎通ができないから。でも、私はそうではありません。このように話し合えます。不満に思うことがあれば話しを聞きましょう。改善できるのなら改善しましょう。でも何でもかんでも聞くと言う訳ではありません。あなた達が危惧しているのは子供達の命でしょうから、私が魔力を与えましょう」


 私は寝そべって、ぐったりとしているウォーウルフの子供をビーに前に持って来てもらい『女王の輝き(クイーンラビンス)』を掛ける。

 すると子供のウォーウルフは丸目をぱちくりと開け、巨大なクロクマさんが目の前にいる状況に驚き、すってんころりんと後方に転がってしまった。そのまま駆け、親玉の背後に隠れる。その一部始終を見ていた多くのウォーウルフたちは息を静めた。


「あなた、あの人は子供を治せるのよ。従いましょうよ」


「グ、グぬぬ……」


「ママ……、パパ……、お腹……空いたよぉ……」


「グ、グぬぬ……」


 多くの雌が雄を説得し始める。雄は誇り(プライド)が高いのか、なかなか頷けない。

 周りが静かな空気となっている中、またしても逃げ出そうとした個体が現れたので矢を放つ。バレルさんは未だに立ち尽くしており、精神を静めていた。もう、誰も直径八メートルの範囲に入れない。入ったら、確実に切られる。そう、想像できてしまう。


「う、うぉおおおおおおおおおおおおっ!」


 プライドを捨てきれなかった雄が、前に飛び出してきた。あまりにも強気な雄叫びを上げ、バレルさんに大口を開けながら飛びかかる。


「うろああっ!」


 バレルさんの背後から闘志が吹き出し、右足を引いて抜剣。目の前にいたウォーウルフの雄はバラバラのこま切れ肉になった。いったい一振りの間にどれだけの斬撃が放たれたのか、私の肉眼では理解できない。


「ディア。食べて」


「わかりましたっ!」


 ブラットディア達が細切れになったウォーウルフをすべて食い尽くす。もう、黒い血痕、毛の一本すら残されることはなく、全てブラットディアの体内へと消えていく。


「さあ。決めてください。戦うか、私の下で働くか。選ばせてあげますから、好きな方を自分で選んでください」


「ぐ、ぐぅ……。なんで、なんでこうなった……。ふざけるなよっ!」


 ウォーウルフの雄が泣き叫ぶように吠える。


「なぜこうなったのか。私にもわかりかねます。あなた達が森の奥へと行けば、こうならなかった。親玉さん、なぜ森の奥に行かなかったのか、訊いてもいいですか?」


「……臭い。何もかもが腐っているように感じる。魔物、動物、草木まで駄目だ。食った者は狂い、激しく元気になった。確実におかしい。だから、向かわせなかった」


「なるほど……」


 ――ベスパ。森の奥の方に生息している魔物や動物達に魔造ウトサの痕跡があるか調べてきて。


「了解です!」


 ベスパはロケットのように一瞬で上昇、そのまま、戦闘機みたく急発進。八〇秒後には私の下に戻って来た。


「キララ様。魔物から魔造ウトサの痕跡がありました。じわりじわりと広がっているようです。おそらく、森の奥で実験し、漏れた魔造ウトサが時間をかけて広がっていったと思われます」


 ――やっぱり……。それにしても、ウォーウルフたちは魔造ウトサのにおいに敏感に反応出来るんだ……。へぇ……、仕事以外にも使えるかもしれないね。


「皆さん。親玉の言うことは正しいようです。人を食べるよりも死が早まっていたでしょう。皆さんは生きるべくして今ここに生きている。このまま命を捨てるか、少しでも長く生き伸びるか。答えはもうすぐそこにあるはずです。私は皆さんを理由もなく殺したりはしません。それだけは保証しましょう」


 私はウォーウルフの子供達を指さした。魔物だってこの世に生きているわけだから、何かしら生態系を維持している存在のはずだ。増えすぎた兎を駆除したり、鹿を駆除しているのかもしれない。彼らが何の役割があるか知らないが、生きてはいけない理由はないはずだ。


「皆さん。キララさんはいい人です。嘘は滅多につきません。ですから、子供達のためにも、ここで無駄死にしないでください」


 クロクマさんは子を持つ親として叫んだ。種族は違えど、意思を持つ者同士、意思疎通が出来ている。言葉が違うはずなのに、叫び声が届いているのだろうか、ちらほらと脚を折り、かがんでいく者が増えた。周りをみわたせば、ほぼ全員が地面に伏せ、忠誠を誓うように頭を下げている。


 最後に残っていたのはプライドが捨てきれない雄たちと親玉のみ。


「俺は、俺は……。自由だ、自由に生きてこそ俺なんだっ!」


「くっそ、くそ、くそ……。なんでなんでなんで……、俺は誇り高きウォーウルフの戦士なんだ。一生働き詰めなんて絶対に嫌だ……」


「ああ……、俺は彼女いねえし、妻いねえし……。どうすっかな……。仕事漬けの日々じゃ、どうしようも無いよな……」


 自由が大好きな者、戦うのが大好きな者、彼女や妻がいない者が残っており、仕事詰めの日々を嫌っていた。


「皆さん、私はまだあなた達にどんな仕事をさせるか言っていません。ですが適材適所は見極めるつもりです。無理やり嫌な仕事をさせたりはしません。ずっと座っていろとか、鼠の駆除をしろとか、そんなことを言うつもりはありませんから、自分に合った仕事ができると思ってください」


「自分に合った仕事だと……。自由に生きたい俺達にどんな仕事をさせる気だ」


「そうですねー。世界中を駆け回って情報を集めたりとか?」


「な……。なんだそりゃ……。めっちゃ面白そうじゃねえかっ!」


「なら、戦士の俺達はどんな仕事をさせる気だっ!」


「んー。荒れ狂う、魔物達を狩る仕事とか、悪い人がいたら戦うとかですかね」


「……めっちゃ戦士やん」


「なら、ならっ! 彼女と妻がいない俺達はっ!」


「………………」


「なんもないんかーいっ! やっぱ、死のかなーっ!」


 ウォーウルフは漫才の才能でもあるのか、なかなか話していて面白い。殺人魔物にしてはユーモアがありすぎる。


「はあ……。彼女や妻がいない者は強くなればだれか付き合ってくれる相手くらい現れると思いますから、せっせと働いて家族を養えるだけの力があると証明してください。なんなら私のペットにしてあげもいいですけど」


「尻に引かれるのはごめん被りたいな……。だが、交尾はしたい……。うん、今思ったら死んだら交尾できひんやん」


 立っていた魔物は親玉以外伏せた。


「あとは親玉だけですよ。さあ。選んでください」


「ふぅ……。皆、すまなかった。私の頭が足りないばかりに、無駄な者を多く死なせてしまった。最後の選択を皆に許容したのも、私に自信が無かったからだ……」


 親玉はのそのそと歩き、バレルさんのもとに向かう。


「吾人よ、私の角を折ってくれ。生涯の忠誠を誓おう……」


 親玉はバレルさんのもとで膝を折り、長い角を切りやすいように下に向ける。


「バレルさん、根本から親玉の角を切ってください。忠誠を誓うようです」


「わかりました」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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