アンデッドの倒し方
「う…うぅ…僕はいったい…は!そうだ…瘴気を浄化するためにネ―ド村に向った後、山に入って行って…そのまま瘴気に…。ってあれ?…瘴気に侵されてない…」
白服を着た聖職者は意識を取り戻し、自身が瘴気に侵されていない事を不思議に思いつつ、本当に瘴気に侵されていないか再度全身をくまなく見舞わす。
「あ!気づきましたか…お願いです!ここに居る人たち…何とか別の場所へ移動させてください。私はあの瘴気を何としてでも食い止めますから!」
聖職者は、いきなり声を掛けられ、体をビクつかせたが、声の主が女性だった為、声のした方向へ目線を向けると、大人ではなくまだ幼い少女の姿を目の当たりにする。
少女に目を取られ、事の重大さに気づけないでいる…。
しかし…目線を少しずつ上へ持って行くと…そこでようやく事の重大さを理解した。
「え…子供…、え…瘴気…って、どわ!何ですかあの量の瘴気は!」
「すみません…聖職者さんですよね…。どうして瘴気がああなったか分かりますか…。今増援を呼んでいるんですけど…」
――子供の顔色は悪い…、魔力の使い過ぎだ…、いや…まずこんな子共が魔法を使えるのか…凄いな。
「確かに僕は聖職者です。確か…森の中で瘴気の発生源を見つけて…。聖水と奇跡を掛けたはずなんですが…。いつの間に山に充満してしまうほどの瘴気が…あ!もしかしたら…」
「何か思い出したんですか…」
「瘴気と言うのは、簡単に言えば病気を発生させる空気のようなものです。その発生源はいくつかあり、『魔法によって生み出される場合』『魔石から発生する場合』そして『動物が死んだ後、腐った時に発生する』場合です。それぞれに瘴気の発生を止める方法があるのですが…魔法の場合は術者を止めること、魔石の場合は魔石の破壊または封印、一番厄介なのが動物の死骸です…。この場合に瘴気を止める方法はアンデッド化した動物たちを駆除するしか方法がありません。そうしない限り、永遠に瘴気を発生させ続けます。しかもアンデッド化した動物たちは簡単に殺せません、聖水か奇跡しか完全に倒すことはできないのです」
「聖水と言う水と…奇跡しか効かない…。聖職者さんは聖水を持っているんですか、それと奇跡も使えますか?あの瘴気を食い止めたいんですけど…私の魔力…もう尽きちゃいそうなんです…」
「え…君があの瘴気を食い止めてるの…いったいどうやって…」
「キララ様!準備できました」
「よし!ここからは気合いだ、魔力量なんて…気合いで何とかする!」
「え…何…何するき…!」
目の前にいる少女から溢れんばかりの魔力が全身から沸き立ち、指先に赤色の巨大な魔法陣が展開されている。
『ファイア!!!!!』
その呪文と共に、巨大な爆発が目の前で起こった…。
光りに目をやられ、目を細めた瞬間聞いたことの無い轟音と爆音が共鳴し合い耳の奥を劈く。
「ゴアワァァァァァァァァ!!」
「あ!聖職者さん!」
爆風によって、聖職者さんは地面を転がり落ちていく。
「な…なるほど、爆風で瘴気の進行を妨げているのか…。でも『ファイア』だけじゃあれほどの爆発は発生しないはず…」
「ちょっと、最弱な虫に助けてもらってます…。だいぶ魔力持っていかれちゃうんですけど…」
「虫って…。は!聖水…聖水は確かここに…余ってたはず…。あ…」
聖職者さんが手にしているのは割れた試験管ガラスだった…。
「あの…すみません…。僕の聖水が…割れて地面に吸い込まれてしまいました…。最後の最後まで残しておいた最後の1本だったのに…」
聖職者さんは濡れている地面の湿り気をなめとるように眺め…全財産を失ったかのような顔をして泣いている…。
「立って…ください、聖職者さん…貴方にはまだここに居る人を運ぶだけの体力はありますか、私は今…立っているだけでも精一杯ですので…。何とか時間を稼ぎますから…」
聖職者さんは地面を這いずりながらよじ登り私の背中に手を触れる。
「?何ですか…」
「僕のなけなしの魔力です…もう、一発の奇跡も打てませんから…。少しでも足しにしてください」
――背中から何かが流れ込んでくる感覚がある…温かい…体の中を血液みたいに巡ってる。
「ありがとうございます!まだまだ撃てる気がしてきました!」
――ベスパ!
「はい!」
「まだまだ行くよ!」
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