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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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少し栄えている村

「いやー。この紙とても柔らかくて肌があれずに済みそうです。使いやすくて最高でした」


「喜んでもらえて良かったです。毎日する行為ですし、少しでもいい品を使ったほうが気分が良いですよね」


 マドロフ家のトイレは水洗式だった。ただ、紙が硬かった。それが原因でお尻が痛む。なんなら、痔になってしまいそうなくらいだ。だが、ベスパの作ったトイレットペーパーはとても柔らかいので、お年寄りであるバレルさんに大変喜ばれた。


「じゃあ、バレルさん。クレアさんは眠っていますが、早速出発しましょう。時間は無限ではありませんからね」


「わかりました。ウォーウルフは夜に狩りをしますから、昼間は出会わないはずです。他の魔物に注意しながら進みましょう。加えてこの場を通るバートン車がいたら、ウォーウルフに気を付けるよう、注意喚起をしておいた方がいいかもしれませんね」


「確かに、そうですね」


 ――ベスパ、大きめの表記を作ってくれない。


「了解しました」


 ベスパは、大きな板がついた棒を道の端に突き刺した。


 私はバレルさんに支えてもらいながら大きな板に指先を熱して焦がしながら文字を書いていく。


「器用ですね……。指先で文字が書けるとは……」


「木を焦がしているだけですよ」


 『この先、ウォーウルフ注意!!』と書き、目立つように黄色と黒色で枠を塗る。黄色い花の塗料と炭から得た染料で派手にした。警戒色と言うやつだ。


「これでよし……。こんな感じで大丈夫ですよね?」


「はい。知っておくのと知らないのとでは生存率が全く違います。ウォーウルフがいるかもしれないとわかっていれば、それ相応の対策を立てるので、無事に王都へ向かえるはずですよ」


「じゃあ、問題ないですね。早速出発しましょう」


 私はバレルさんを荷台に乗せ、少々眠ってもらう。不眠状態のご老体は危険だ。


「ベスパ。バレルさんが目を覚ますまで、辺りの警戒を怠らないようにね」


「は、はい……」


 ベスパは居眠りしていたのが知られ、私に恐怖しきっていた。バレルさんがいるから安心なんて言う気持ちがベスパにも伝わってしまったようだ。まあ、私の落ち度でもあるので、燃やしはしない。


「ふわぁーあ。ん? あれ……、もう移動しているの……」


 クレアさんは私がレクーを走らせ始めてから二時間後に眼を覚ました。時刻としては午前九時頃。遅すぎず早すぎず丁度いい時間だ。まあ、学校がある人は遅刻だけど……。


「おはようございます、クレアさん。よく眠れましたか?」


「おはよう、キララさん。ええ、よく眠れたわ。でも、よくよく考えたら走っている荷台の中で眠れるってすごいわね……。それだけ、振動が少ないのかしら……」


「まあ、揺れが少なくなるように道のガタガタ道をできるだけ均していますからね」


 ブラットディア達が地面を食し、走る場所を確保していた。そのおかげで車輪が跳ねず、荷台が安定している。

 バネとかがあれば、スプリングを作って揺れを軽減する装置でも作りたいのだが、ベスパ達に金属を持って来させることは出来ない。素材を渡せばある程度作れるはず。ただルークス王国の王都には金属の素材が多くあったが街には少ない。きっと貴重品なんだろう。


 そうこうしているうちに出発してから三時間ほど経ち、前の方に村が見えて来た。ルドラさんと来た時は通り過ぎたが、今日は寄ってみることにする。素材が売れれば御の字、朝食やレクーの休憩に厩舎でも使わせてもらおう。


 村の近くに来ると柵が覆ってあり、扉の前に人が座っている。見るからに門番だな。


「すみません、村で休憩させてもらってもいいですかー?」


「ああ、構わんよ」


 おじさんは椅子から立ち上がり、門を開く。柵の高さは三メートルほど。素材は木材で、縄を使い、補強されていた。

 村に入ると木製の家屋が並び、畑仕事や木材の加工を行っており、王都から近いとは思えないほど質素な暮らしをしていた。まあ、村なんてこんなものだ。小さな市場もあり、私達の住んでいる村よりは大きく、栄えていた。


 バートンの厩舎を借り、笑顔と交換で牧草を軽く分けてもらって餌箱に入れる。その後、魔法で水を器に灌ぐ。


「じゃあ、レクーは休憩してて。私はちょっと散策してくる」


「わかりました」


 荷台とレクーを離し、私とクレアさん、バレルさんは素材を持ちながら、市場を目指す。


「ああー、なんか、もう社会見学をしている気持ちになって来たわーっ!」


 クレアさんは身震いしながら、足踏みをする。実際、貴族の女性はあまり働かないらしく、ルドラさんのお母さんのような存在は珍しいと言う。クレアさんは働くのが嫌いではないらしく、テーゼルさんのような出来る女になりたいそうだ。


「クレアさん、貴族の女性って仕事をしないんですか?」


「仕事をしないと言うか、男は仕事。女は家事育児って言う風潮があるの。でも、貴族の女はメイドや執事に丸投げするのが普通。まあ、他の貴族との社交辞令を行い、夫との仲を取り持つのが主な役割かしら……。一番大切な仕事と言ってもいい長男を産むと言う使命さえこなせば、だいたい自由よ」


「なるほど……。男は仕事をして稼ぎ。女は跡継ぎを産めと……。そう言う話ですか」


 ――考え方が古いっ! わからなくもないけど、昭和、大正時代の考え方ですか……。


「でも、私はバリバリ働いてルドラ様の子供も産んで! 完璧なお母さんになるの!」


 クレアさんは目を輝かせ、遠くの空を見つめる。若干一六歳にも拘わらず、何と大きな夢だろうか。あなたは日本だとまだ高校生なんだけどな……。


「あまり張り切りすぎると体が悲鳴を上げてしまいますから、ほどほどに。特に体力に自信がないルドラ様が倒れないよう手加減をしてあげてくださいね……」


 バレルさんはクレアさんに助言した。だが、何か卑猥に聞こえる。


 私達は村の市場に到着した。売り物は野菜と工芸品が主だ。

 金額は銅貨一枚から銀貨数枚まで。金貨の品は無かった。


 冒険者を目的にせず、村の中で売り買いをする程度と言ったところか。お金持ちの村を標的にするのが、商人として大成する近道なんだろうが……、気にする必要はない。金持ちと貧乏の両方の思考を理解しなければ、品を売ることができない。なら経験を沢山詰んだほうが後々大成する確率は高いだろう。


「まあ、私は商人になる気なんて全くないんだけどね……」


「キララ様。心の声が漏れてますよ……」


 ベスパは口を押え、もごもごと呟いた。私もはっとして口を手で塞ぐ。


 少し歩くと毛皮を使って品を作り、売っている職人さんらしき人物がいたので、売り込みに行く。


「すみませーん。ウォーウルフの毛皮はいりませんかー?」


「あ? ウォーウルフだって……。糞ったれっ!」


 職人さんらしきお爺さんは鉈を木に叩きつけ、額に静脈を浮かべる。そんなに怒らなくても……。


「す、すみません……。気に触ることを言いましたか?」


「ウォーウルフと言う単語が憎たらしくて仕方ないだけだ……」


 お爺さんは気力を一気に無くし、椅子にグデっと座り込む。白髪で服装は自分で作ったのか、何かの毛皮製の服を身にまとい、山賊と言う単語が一番しっくりくる見た目をしている。別に悪い人ではなさそうだ。


「なにかあったんですか?」


「最近、ウォーウルフの被害が多発していてな……。夜な夜な見回りをしている男どもが消えていく。冒険者を雇ってみたが、未だに帰ってこない……。金は払っていないから、何か巻き込まれたか、死んだか……。そんなこんなで今、俺の機嫌が物凄く悪い!」


「そうでしたか。ウォーウルフの被害を受けていると言いましたが、いつからですか?」


「そうだな……。一ヶ月前辺りか」


「結構最近ですね。ウォーウルフが生息しているのは森の方ですか、荒野の方ですか?」


「森の方だと思う。ウォーウルフの姿を見た者が言うには体長が異様にデカいらしい。荒野の方は俊敏性が高いから、小さめだ。だから、森の方に生息している個体だろう」


「なるほど……。少し調べて見たくなりました」


「ちょ、キララさん?」


「キララさん……。この件は危険ですよ……」


 クレアさんとバレルさんは何かしら察したのか、耳元で呟いてくる。


「はぁ……、キララ様の性格、首を突っ込むのはいつものことですけどね」


 ベスパは私の頭上で首を横に振っていた。


「魔物の被害を受けている村を放っておくわけにはいきません。増えすぎた魔物は駆除しなければ人に被害が出ます。悠長なことはしていられません」


「ウォーウルフは賢いですし、警戒心が強いですから、人を襲うことは普通しません。ただ、勝てるとわかってしまっている場合は襲ってきます。どうやら、この村を襲っているウォーウルフは人に慣れてしまっているようですね」


 バレルさんは顎に手を置き、考え込んでいた。


「森の中で何かが起こっているのかもしれません。冒険者の行方も気になりますし、私が少し調べてみましょう」


 バレルさんは自分が調べると言い、真っ先に森へと向かってしまった。あそこまで正義感の強い人だったのかと思ったが、人を殺していたかもしれないと言う自分の醜さを少しでも払拭したいのかもしれない。ただ、あなたはもう若くないと知ってほしい……。まあ、あの元剣神は聞かないだろうな。


「クレアさん、バレルさんが戻ってくるまでこの村で少し休みましょう」


「はぁ、バレル。ほんと頭まで筋肉のおバカね。一人で行って何ができるのかしら」


 クレアさんは腰に手を当て、首を横に振っていた。


「キララさん、私達も行くわよっ!」


「行きませんよ」


 私はクレアさんの手を引き、危ない行動をとらせないように抑制する。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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