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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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王都を出る

 ――あの、フェンリルさん。私に言ってますか?


「われはお主の傍を飛んでいる羽虫に語りかけている。耳が繋がっているのだろう。聞こえているのなら、われに魔力をありったけ食わせろ」


 ――私のスキルを理解している。賢いお方のようですね。魔力くらい好きなだけあげますよ。


 私は魔力操作で一日分の魔力を魔力体(ミツバチ形)に変え、光り輝く魔力体をフェンリルさんの口もとに飛ばした。


「はー、っぐ! んんんんっ!」


 フェンリルは魔力体を一匹食べると、体の毛が逆立ち、爆発したかのように膨らんだ。


「こ、これほどとは……」


 フェンリルは頭をもたげていたが、地面に倒れ込む。


「キララ様の魔力を大量に摂取した影響ですね。満腹を通り越して倦怠感を得ているようです」


 ベスパは胸を張り、勝ち誇ったかのような表情を浮かべていた。ベスパはただ話を聞いていただけだと言うのに。


「久々に満腹になった……。感謝する」


「いえいえ。でも、飼い犬にえさを与えてしまってもよかったんでしょうか」


「飼い犬だと……。われは八〇〇〇年を生きる神獣ぞ。人間風情に飼われる犬ころではない。今回は食事を貰った手前、食わないでおいてやる。感謝するがいい」


 フェンリルは体がデカく、態度も大きかった。やはり重鎮になるとこうなるのかな。


「大変失礼しました。フェンリルさんですもんね、私の発言をお許しください。では、またいつか」


 私はフェンリルに頭を下げ、大きく手を振っているクレアさんのもとに駆ける。


「もう、キララさん。いったいなにをしていたの?」


「強面の重鎮にちょっと絡まれて……」


 私はクレアさんにやんわりと伝える。フェンリルの言葉がわかると言うのはあまりにも周囲の目を引きそうだったので控えた。


 私達は道を歩き、レクーが待っている駐車場に到着した。買った荷物を荷台に乗せる。

 クレアさんは荷台の前座席に座った。

 私はクレアさんの隣に座り、手袋を嵌めて手綱を握り、レクーに合図を送った。


「レクー。南門に行くよ。安全走行でお願いね。ベスパはレクーを南門に案内して」


「わかりました」


「了解です」


 レクーとベスパは、互いに返事をする。レクーは歩き始め、ベスパはレクーの前を飛ぶ。


 王都の大通りでは爆走することが出来ず、周りの速度に合わせる必要があった。そのため、ほぼ中央付近にあるウルフィリアギルドから南門まで行くのに、八時間かかった。いや、道込みすぎっ!


「バレルさん……。大丈夫ですか?」


「はい……。この程度、ブラックスネークの腹の中にいた時に比べれば何ともありません」


「そ、そうですか」


 ――いや、なんで生きてるの? ブラックスネークがどんな魔物かしらないけど、お腹の中にいたと言うことは飲み込まれていたということでしょ。やっぱりおかしいな、この人。


 私はバレルさんの武勇伝をまた一つ知り、苦笑いを浮かべる。


 八時間移動してやっと南門が見えて来た。


 ――ベスパ、バレルさんの周りを覆っているブラットディアの周りをビーで覆って。光学迷彩で隠して王都から脱出させるよ。


「了解です」


 私は背後に怖気が走る感覚を得ながら、身を震わせた。バレルさんの体をしっかりと覆えたらしい。ビーの存在は見なくてもわかるので、バレルさんが完全に姿を消したこともわかった。


「さてと……。王都を出ますか」


 私は見栄えが良い鎧を着た騎士達のもとに向かう。今回はルドラさんがいないが、代わりにクレアさんがいる。その付き人と言う内容で王都を脱出するつもりだ。


「クレア様、お久しぶりです。今日はどこかへお出かけですか?」


 騎士の中にクレアさんの知り合いがいたようで、気さくに話しかけて来た。運が良い。


「わたくし、社会見学に行きますの。遠い所ですから、帰って来るのに時間が掛かると思うわ。あなたも仕事、頑張ってね」


「そうでしたか。私も仕事を頑張りますゆえ、クレア様も社会見学、頑張ってください」


 クレアさんは貴族の身分証明書を出し、検問と同様に記録される。

 荷物はお土産とクレアさんの旅行鞄、私の衣服類だけだ。

 魔法の光を荷台の中に当てていた。どうも、スキルや魔法に反応する光らしく、姿を消す魔法やスキルなどは発見されてしまうらしい。

 紫外線で鞄を見る空港の設備みたいだ。バレルさんが気づかれないか心配だったが、何も言われなかった。どうやら、ビー達の羽は光を屈折させるので効果を受けなかったのだろう。


 私達は無事に南門を抜けた。ずっと心臓が鳴っており、声が出せなかった。声を出したら女だと知られてしまう。男女がわからないだけでも、五割相手を惑わせられる。それだけでも大分違うだろう。


「はあー、何とか抜けた……」


「なにをそんなに緊張しているの? と言うか、バレルはどこに行ったのかしら」


 クレアさんは辺りを見渡し、バレルさんがどこにいるのかを探した。


「ここですよ、ここ……」


 バレルさんは荷台から声を出し、クレアさんに知らせる。


「え……。誰もいない荷台から声が聞こえた……。そ、そんな……、バレルの亡霊……」


 クレアさんの顔がどんどん青ざめていく。この世界でも霊的存在は恐怖の対象なのだろうか。クレアさんの反応からするに間違いなさそうだ。


 レクーは一時間以上ほどかっとばし、王都から八〇キロメートルは離れた。ここまでくれば、正教会の目が少なからずかすむはず。


「バレルさん、もう出て来てもらってもいいですよ」


 私はビーとブラットディアを退かし、バレルさんを自由にした。


「ぷはっ……。いやはや、虫に囲まれて蒸し蒸しでした」


「…………」


 あまりのおやじギャグに場が凍り付く。


「ははははっ! もう、バレル、何言ってるのー、って、バレル!」


 ただ、クレアさんだけは大爆笑。どうも、笑いのツボが浅いらしい。加え、突然現れたバレルさんに眼をひん剥きながら驚いていた。


「クレア様。このような場所から申し訳ございません。今回、私はクレア様とキララさんの護衛に着くことになりました。加えて私はもう、マドロフ商会の執事ではなく、ただの放浪人になったのでお知らせいたします」


「あら、仕事を辞めたの……。いきなりね。でも、バレルもいい年だし、そろそろ仕事を辞め時だったのもわかるわ。だってもうお爺さんだもの」


「…………」


 バレルさんの表情が少々こわばる。クレアさんの発言に言い返したそうだ。


「まあまあ、クレアさん。バレルさんはまだまだこれから長い人生をまったりと暮らしたいだけですよ。だから仕事もします。お爺さんではなく一人の男性です」


 私はクレアさんの言葉を補助し、バレルさんの鬱憤を少し減らす。


「そうね。どれだけ年をとってもお金が湧いて出てくるわけじゃないものね。じゃあ、バレルはどうやってお金を稼いでいくの?」


「…………どうしましょう?」


 バレルさんは普通に困っていた。会社からいきなり首切り(リストラ)と言われた定年を越えたお爺さんは目を丸くし、考え込んでいる。


「バレルさん、村に着けば嫌と言うほど仕事があるので、気にしなくても結構です。ただで食事や寝床が貰えると思ったら大間違いですからね」


「もちろんです。働かせてもらえるのなら、身を粉にして働きます」


 バレルさんは物分かりがよく、誠実だった。市場を破壊したほど荒れ狂っていたなんて誰が想像できるだろうか。


 また一時間ほど移動すると、お腹が減って来た。もう、夕方なのでお腹が空くのも仕方ない。


「よくよく考えたら食事を用意してなかったな……。レクーは道草を食べれば事足りる。でも、私達は何を食べようか……。んー、仕方ない。ビーの子でお腹を満たそう」


 ――ベスパ、新鮮だけど、亡くなってしまったビーの子を持って来てくれる。


「了解しました」


 ベスパは荒野に広がる土地の真上で光り、ビー達に亡くなったビーの子を運ばせる。高たんぱく、高脂質。手の平一杯食べたら十分お腹は膨れる。見かけは最悪だけど……。


 私達はいったん木陰で休憩する。レクーはベスパが集めた安全な草を食す。


「キララ様、お待たせしました。山もりのビーの子です」


 ベスパは木製の皿に塩盛かと思うほど大量のビーの子を乗せ、持ってきた。


 ――ありがとう。これで空腹を紛らわせられるよ。


「ああ、死してなお、キララ様の血となり肉となる我が子達……。何と健気なのでしょう」


 ベスパは胸に手を当てて、悲劇に見舞われたように崩れ落ちる。本当は虫の命など人の命の数万分の一にも大切だと思っていない。


「き、キララさん……。これはいったい何なの……。白いぷにぷに……。芋虫かしら?」


「その解釈で間違いありません。ただ、土の中で暮らす芋虫ではなく、動物の死骸や草木など食しているので臭みはありませんから、見た目を我慢して食べてください。小腹くらいは満たせます」


「では、いただかせてもらいます」


 バレルさんは躊躇なく食した。やはり元冒険者なだけはある。口に入れば何でも食べられるのだろう。


「んんっ、美味い! この触感、溢れ出てくる内容物のうま味、これはなかなかいけますよ」


 バレルさんは手で掴みながらピーナッツの大食いかと言うくらい食べ進めていく。


「そんなに美味しいの?」


 クレアさんは虫が嫌い系女子ではなく、好奇心が旺盛な行動女子だった。やはり私と性格が似ている。そのため、ビーの子にも臆することなく口に放り込む。


「あら、ほんと。意外と美味しい。これなら、無理なく食べられるわ」


 クレアさんも取り分けられたビーの子を食し、美味しい美味しいと言いながら食べていく。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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