瘴気の進行を食い止めろ
「何とか…動かないと…」
私の体は瘴気にむしばまれ、所々変色してしまっている。
さっきまで何とかレクーにしがみ付けていたのだが…ここまで来て気が緩んだのか、一気に瘴気が体に回ってしまったらしい。
「何…これ指が…痺れて上手く曲げれない…」
指先が黒く変色し、先端の感覚がおかしくなっていた。
私がパニック状態になっていると、ベスパが私に話しかけてくる。
「キララ様!キララ様の中にある瘴気を魔力に乗せて私に移動させてください!レクーさんの中にある瘴気も今から私が吸いだします!」
ベスパは自身の針をレクーに突き刺した。
すると見る見るうちにベスパの色が変わっていく…黄色だった体は次第に黒く変色してしまった。
疲労と瘴気にむしばまれ、地面に倒れ込んでいたレクーの体に揉所々あった黒い箇所が消えて無くなっている。
私もベスパに言われた通り、指先に魔力を大量に流した。
瘴気は魔力にくっ付く様にはがれていき、放出した魔力が黒く変色していく。
私から放出された黒い魔力は薄く伸びていき、ベスパに流れていく。
ベスパの体は、私の魔力を吸ったことでさらに黒く染まってしまった。
「すごい…体が軽くなった…指も動く…」
「はい…僕もですさっきまで体が動かなかったのに…」
「だい…じょうぶ…ですか…キララ様…」
「私の方は大丈夫だけど…、ベスパの方が体真っ黒になってるよ…それ大丈夫なの…」
何時もならベスパの事なんてまったく気にしないのだが…その姿があまりにも異様過ぎたため…心配になる。
「キララ様…私は…今から、上空に飛びます…。キララ様の…射程距離ギリギリで…停止しますので…私を爆破してください…」
ベスパはそのままフラフラと上空へ飛んで行く。
「なるほど…そういう事ね」
フラフラと飛んでいたベスパは私の射程距離ギリギリで停止した。
ベスパに狙いを定め最も得意な魔法を放つ。
『ファイア!』
無風の状況下で風の影響を受ける事無く放たれた『ファイア』は、その赤い炎を尾に引きながら一直線にべスパへと向かって行く。
『ドッゴーンン!!!』
『ファイア』は見事ベスパに命中し、黒雲を晴らすほどの大爆発を起こす。
爆風によって多少なりとも瘴気の流れが止まった。
「これなら…時間を稼げるかもしれない!レクー、お願い!私が手紙を書くから、手紙をリーズさんに届けて!」
「わ…分かりました!必ず届けます!」
私はレクーのサイドバックに詰められた紙袋を取り出し、文字を書こうとしたが…。
「インクが無い…仕方ない!」
自分の指先を少し噛み切り、血を出す。
どうしてこんな事が出来たのか分からないが、この時、私の脳内でアドレナリンが大量分泌されていたのだろう。
血で文字を書くなんてやった事が無いため文字が滲む…しかしギリギリ読める字で何とか書くことが出来た。
「これなら…」
[リーズさん!お願いです!至急、冒険者と聖職者の増援をお願いします!2人では全く効果がありませんでした。前よりもひどい状態になっています!どうやらアンデッドも発生してしまったみたいです。時間がありません。どうか迅速な対応をお願いします!]
「良し!」
手紙をレクーに咥えさせる。
「レクーお願い!リーズさんに届けて!」
「はひ!ひっへひはふ!」(はい!行ってきます!)
レクーは地面を駆けだし、私ではもう見えない所にまで行ってしまった。
「良し…あとは私が…あのどす黒い瘴気を食い止めればいいって事だよね…」
私がアタフタしているうちに、瘴気がまた此方側へと流れてくる。
そして私のスキルである、爆発物の方も復活する。
「キララ様!行けます!」
いったい何処から出てきているのか知らないが、私の魔力から生まれてきている、ベスパは元の黄色いノーマルな姿で再度この場に現れた。
「良し!ベスパ、ここら辺に倒れている人たちから瘴気を吸い出しておこう。少しでも状態が良くなるかもしれない!」
「了解です!」
しかし…元々小さい体のベスパでは大人2人分の瘴気を吸い出すのが限界であった。
最初の2人に選んだのは、冒険者の女性と聖職者の男性だった。
この2人は一番瘴気の濃い所に長く居てしまったから、即座に瘴気を吸い出す必要があると思ったからだ。
「キララ様…行ってきます!」
「うん!任せた!」
ブラックベスパは自身と同じ色の瘴気へ、真っ直ぐ飛びこんで行く。
『ファイア!!』
本日2回目の『ファイア』は先ほどよりも火力が高まってしまった。
力んでしまったことが原因かもしれない。
しかし、2回目もしっかりとベスパに命中させ、爆発が起きる。
『ドッゴーンン!!』
「良し!今回も成功…ッ」
――少し加減しないと…魔力持たないかも…。
ベスパが復活しだい、すぐさま3発目の爆発を起こしたが…。
加減した火力では、瘴気を吹き飛ばすことが出来なかった。
毎回、出せるだけの全力を出し続けなければ、瘴気の進行を食い止めることが出来ないらしい…。
「はぁはぁ…これで…5発目…」
4度目の爆発を起こし瘴気を食い止めたが…見るからに先ほどよりも進行を速めてきた。
私もすぐさま魔法を放つ体勢に入り、丁度今5発目の爆発を起こした所だ。
「キララ様…大丈夫ですか、魔力も…だいぶ減ってきてます…」
「分かってる…でも、このままじゃ、ここに居る人たち…皆のみ込まれちゃう。ほら、また来るよ!」
再度体の中に残っている魔力をかき集め、魔法を放つ準備を整える。
「はい!」
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