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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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バレルさんとの肉弾戦

「どこまでって言われても……。私はバレルさんについて全然知りませんよ」


 私は右手をバレルさんの太もも付近に持っていく。


 ――『サンダーボルド』


「んンッツ!」


 私はバレルさんの脚に無詠唱で行える最大火力の電撃を放った。人は電気に逆らえない。剣を振ろうにも、電撃が体に流れるせいで筋肉が上手く動かないのだ。なんせ、脳から送られる信号は電気信号だからね。電撃で信号が狂ってしまうんだよ。


 私はバレルさんの右手を持ち、一本背負いでぶん投げる。その間に両手に嵌めた手袋の甲に仕込んでいた糸を魔力で操り、バレルさんの体に巻き付けた。


 ――ベスパ、バレルさんの右手の内側でゼロ距離爆撃。


「了解です」


 ベスパは魔力体のまま、バレルさんの手の内側に入り、具現化。その瞬間、私の指先に転移魔法陣と『ファイア』の魔法陣が浮かび上がる。


「『ファイア』」


「グああっツ!」


 バレルさんの右手の内側で爆発が起こった、手榴弾のピンを抜いた後、右手で握り続けていた状態に近いため、剣を握っていられず落とす。

 私はディアに剣を拾わせる。そのまま、剣身ごと食わせた。


「いったい、何が起こった……。今の一瞬で、いったいいくつの魔法を……」


 バレルさんはネアちゃんの超絶切れにくい糸で体を拘束されかけている。


「すみません、バレルさん。あなたが何をしようとしていたか、私は全て知っています」


「はは、そうか……。知られていたか……。だが、私の手の内は知らないようだ」


「……いたいけな少女を本気でいたぶらないでくださいよ。泣いちゃうので」


「ほんと、油断はするものじゃないな……」


 私は両手を引き、バレルさんの体に纏わりついた糸をピンと張る。すると辺り一面に配置されたアラーネアたちによって大量の糸が噴射された。

 バレルさんの体は繭のようになっていき、完全に身動きが取れない状態になった。ここまでして現状を覆せるのなら、やってみてほしいものだ。


「教えてください。なぜ、今回の依頼を受けたのか」


「なら、私を倒して負けを認めさせるんだな」


「負けをって……、バレルさんはもう」


「『ファイア』」


「うそ……。そんな状態で糸を燃やしたら」


 バレルさんは手の平で『ファイア』を発動させ、全身を包む糸を焼いていく。

 だが、糸は私の魔力がねりこまれているため、通常よりも燃えにくい。そのせいで逆にバレルさんの体が焼かれ、地獄の痛みが襲うはずだ。自らその判断をするなんて、さすがに肝が据わりすぎている。


「キララ様、大通りに向かいましょう」


 ベスパは私の頭上に飛び、話し掛けてくる。すでに警戒しており、真っ赤な瞳になっていた。耳障りな警報音が鳴り響き、逃げたくて仕方が無くなる。


「うん。早く、キースさんのところに」


 そう思ったが、やはり元剣神。大通りに繋がる通路に全身焼けた状態で上空から落ちてくる。


「いや、熱い熱い……。ほんと、面倒だ」


 バレルさんは火傷一つしておらず、前髪をたくし上げる。イケメン度が一気に増す。加えて上半身の服装が燃えたせいでバッキバキの良い体が露出した。


 私は「本当にお爺さんですか!」と叫びたかった。


「児童暴力反対……」


「老人虐待反対……」


「撲殺は確実に捕まりますよ」


「拘束からの放火も十分犯罪だ」


「ああ言えばこう言いますね」


「お互い様じゃないかな?」


 私はじりじりと後方に下がる。あの元剣神を突っ切って大通りに向かうのは流石に無理がある。

 バレルさんは『ファイア』が使えるのでアラーネアの糸は効果が薄い。

 きっとビー達で捕まえてもすぐに燃やされてしまうだろう。だが当初の目的の一つ、剣を奪うというのは達成した。

 

 ――拳だけなら、シャインと鍛錬で打ち合ってきた経験が私はある。シャインより洗練された動きなのは間違いない。でも、攻撃を受けたら死ぬという恐怖はシャインと行ってきた鍛錬で何度も味わってきた。だから、私は戦える。大丈夫、大丈夫。


 私は自分で自分の心を落ち着かせる。


「ふうぅ……。さあ、やりましょうか」


 私は右脚を引き、両手を軽く持ち上げて柔道の構えをする。護身術を習ってきた手前、ここでつかわなくてどうするよ。


「おや、逃げるんじゃないのか?」


「逃がしてくれるんですか?」


「ふっ……。確かにな。逃がしはしない」


「なら、キースさんがすぐ近くにいるここでやり合ったほうが、効率がいいかなって」


「ほんと、頭の回る子共だ。あのキース殿とすぐに仲良くなるのも口が達者な成果かな?」


「褒めてくれてありがとうございます。私、お爺さんに滅茶苦茶好かれるんですよ。バレルさんも、私のこと、大好きですよね」


「ははっ……。そんなふうに見えていたか。ほんと当時の娘を見ているようだ……」


 バレルさんは眼がしらを押さえ、数秒沈黙した。何かしら思い出しているのだろうか。


「さっさと終わらせる。剣の無い状態でキース殿と打ち合うほど愚かな真似はしない」


 バレルさんの方から、私に殴り掛かって来た。

 右、左、右脚、左脚、私を壁際に追い込むように的確な位置に攻撃を打ち込んでくる。だが、バレルさんは無詠唱を嫌っているのか、私の手に触れないように心掛けていた。そのため手を翳し、触れようととすればバレルさんは退く。


「そんなに電撃が怖いですか?」


「そりゃあ、怖いさ……。だが、キララさんが私に対抗できるのは魔法しかないと見た」


「はは……。さあ、どうでしょうね」


 ――詠唱を叫びながら攻撃すれば、十分有効な火力になると思うんだけど。一言すら言わせてもらえなさそうだよな。


「格闘技の経験がないので、バレルさんにご指導お願いします」


「こんな状況で、とんだ冗談を……。まあ、いい。見て盗め」


 バレルさんは右足から踏み込み、跳躍。左脚が天高くピンと伸びて静止。その形で固まってしまったかのような綺麗なI字バランスを空中でしている。だが、飛んで落ちてくるまでの時間は一秒足らず。


 私は前方回転受け身で地面を粉砕するほどの威力がある踵落としを回避する。立ち上がりぎわ、バレルさんは即座に攻撃してきた。


 ――私の予想通り、洗練された動き。


 バレルさんは右拳を放ってからの左回し蹴りを繰り出してくる。あまりにも早く、突風で窓ガラスを粉砕するほどの威力があった。


 バレルさんの攻撃は先を予測しないと躱せない。でも、私は躱せた。


「この攻撃を躱す子供に初めて会った。凄いな」


 バレルさんは呼吸を整え、いったん力を抜く。


「はは、お褒めの言葉、どうもありがとうございます」


 私はバレルさんの攻撃の予測が出来た。理由は単純に綺麗な型だったのと素早い攻撃に目が慣れていたからだ。


 バレルさんは空手道に似た格闘技を習っていたのか、一撃一撃がとても綺麗であと隙が少ない。だが、逆に洗練されまくった日本の格闘技をいくつも経験してきた私だからこそ、次の手が読める。あと隙が多くハチャメチャな戦いをされる方が面倒だったが、一撃一撃の流れが読みやすい型に嵌った攻撃なら、カウンターも決めやすい。


「ふっ!」


 バレルさんは呼吸を整え、再度攻撃してきた。先ほどよりも初速が早く、いつの間にか私の右頬に男性の剛腕から繰り出されるストレートが撃ち込まれる。頬を擦るほどの距離だったが先読みしていた私は半歩前に出て攻撃を躱した。


「やっぱり、流れからして右拳ですよね」


「なっ……。これを躱すか!」


 私は左拳に魔力を溜めまくっていた。そのため無詠唱によって溜めていた魔力が金色の電撃に変化し、空気中に放出される。バチバチと音が鳴り響き、バレルさんの黒っぽい瞳を眩い光で染めた。


 私はシャインが放つ威力の八〇分の一程度の威力でバレルさんの顎にカウンターを打ち込む。

 私のただの殴りでは何の効果もない。だが、人の体に強烈な電撃を浴びせながら殴れば威力は大幅に跳ねあがる。


「ぐぬぬぬぬぬぬああああああああああっ!」


 バレルさんの顎から全身に雷の八分の一程度の電撃が流れる。全身の毛が逆立ち、電気ショックをあびたように身が痙攣する。


 私は追撃でもう一発打ち込もうと考えたが、体が止まった。ネアちゃんの糸が体にくっ付いており、これ以上進んではいけないとネアちゃんが言っている。


 その言葉どおり、私の右側からバレルさんの左ひざが持ち上がっていた。殴られる前に反撃の一手を打っていたようだ。


 私はネアちゃんの糸がピンと張った状態で静止、体が動かなくなるものの力は抜けない。そのため、バレルさんが攻撃を振り切ったあと、もう一度反撃に出る。


「くっ!」


 バレルさんの左ひざは空を蹴り、足先が私の鼻をかすめた。


 バレルさんは体勢を立て直す必要があり、振り抜いた左脚に力を溜めてもう一度打ち込んでくる可能性もある。

 なので、私はラグビーのスクラムを組むように突進。ネアちゃんの糸で吐出する力が溜まっていたので、糸が離れた瞬間に一気に加速した。

 バレルさんの脚に抱き着いて柔道の反則技。足車を掛ける。まあ、簡単に言えば、脚を持って相手をひっくり返す技だ。体勢が元から崩れていたバレルさんには十分効果的な一撃になる。そう思っていた。


「舐めるなっ!」


 私の体が軽すぎてバレルさんが左脚を振り上げられただけで中に浮く。だが、すでにこの場は私のフィールド。

 アラーネアたちの見えない糸が至る所に張り巡らされている。私の魔力が流れているわけだから、私の眼にははっきりと映って見える。加えて良く伸び、力を吸収するため、レスリングのバーのように休むこともできる。スパイダーウーマンな訳ではないが、近しい。

 

 私は細い糸に上手く乗れないので足の甲を使い、ぶら下がる。長い髪が、重力によって地面に垂れさがって少々うっとおしかった。


 バレルさんから見れば、少女が空中で逆さまで停止しているように見えるだろう。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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