表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

651/1188

バレルさんとルドラさん

「ベスパ、ネアちゃんの糸を最大限強くしておいて。私の火力が出る魔法が使えないなら糸で戦う」


 私は革製の手袋を空中に浮いているベスパに渡す。


「了解です」


 ベスパは手袋の内部に仕込まれたネアちゃんの糸をネアちゃんと共に強化した。


 私は使い慣れた手袋を返してもらい、手に嵌める。

 本来はバートンの手綱を握るための物だが、今回、私が使える重要な武器だ。内部にネアちゃんが強度を保ちながら極限まで細くした糸が仕込まれている。

 肉眼で見ることが難しいほどの細い糸を使い、敵を捕獲するのだ。

 ちなみに、この糸はピアノ線よりもよく切れて耐久性も高い。魔力を流しただけで耐久性と伸縮性、切れ味まで増加した。

 あやとりをしているぶんには見えにくくて脳の鍛錬になる。ただ、糸を木に巻き付けて引っ張れば簡単に細断できてしまう。


「扱うのは慣れてないけど、仕方がないか。人込みがいる中で魔法を使うのはあまりにも危険だ。敵は剣。普通の剣じゃなくてとんでもなく早い。ライトの無詠唱なら太刀打ちできるかもしれないけど、私の無詠唱は威力が低い。きっと確実に倒しきれない。剣を奪ったあとなら、戦えるけど……」


 私は緊張をほぐすためにブツブツと独り言を呟いていた。


「キララ様。ルドラさんとバレルさんが鉢あいます」


 ベスパは他のビーから情報を貰い、私に伝えた。

 

「じゃあ、私達も行こうか」


 私はレクーにまたがり、ルドラさんとバレルさんが鉢あう市場に直行した。


 現在地から近く、ほんの三分で到着した。レクーはビー達の光学迷彩で隠れてもらう。


 裏道から何かが爆発したような音が鳴り、足にネアちゃんの糸が巻き付けられた状態のバレルさんが宙を舞う。

 一瞬、ちらりと見えた銀色の光が細い糸を切断し、バレルさんは何事もなかったかのように人込みの中に溶け込む。周りの人も、爆発音の方には驚いていたが、上に人が舞っている場面を見る者はおらず、忍者? と表現したくなるほどの隠密だった。


 だが、残念。ベスパが指揮する八億匹以上のビーの目からは逃れられない。

 なんなら、ネアちゃんの糸に引っかかった時点で落下地点を予測し、その場にルドラさんを配置していた。

 バレルさんの驚いた表情が寝起きの犬と同じだった。頭が真っ白になっている状態と言うのか、落下地点にマドロフ家の坊ちゃんこと、ルドラさんがいた。


「や、やあ。爺や。空から降って来るなんて珍しいね」


「いはやは……、ルドラ様こそ、このような市場におられるとは珍しいですね」


 両者共に、ぎこちない会話から始まる。

 ルドラさんの手足は震えており、バレルさんに何か気づかれないかと必死に我慢しながら話していた。


 いっぽうバレルさんは早く王子を殺しに行きたいのか、ソワソワしている。トイレに行きたい子供のようだ。まあ、場を離れたい理由が王子の暗殺とはことが大きすぎるけど。


「爺やは、なぜ市場に?」


「私は古い恩人に会いに来ました。少しばかり遅れているようで……、探していたんですよ」


「古い友人か~。私もあってみたいな。少し同行するよ。二人で探した方が早く見つかるかもしれないし」


「いやいや、ルドラ様に合わせるような者ではありません。お仕事もあるでしょうし、気になさらず」


 ルドラさんの誘いを、バレルさんはもちろん断る。受けるわけにはいかないのは、待つ相手がいないからだ。

 バレルさんは額に脂汗を掻き、少々、焦っている。今の心境はどんなものだろうか。まあ、探しに行ってもアレス王子はすでに空の彼方。絶対に見つけられない。


「こういう時は無駄に歩き回らず、じっと待っていた方が見つかりやすい。近くの喫茶店に入って紅茶でも飲みながら待とうじゃないか」


「う……、わかりました……」


 立場が上の者からのお誘いを断れなかったバレルさんは近くの喫茶店に入り、紅茶をたしなむ。

 はたから見たら品の良い貴族とイケメンなおじ様が一服しているだけにしか見えない。

 ただ、ルドラさんの心の中は「早く逃げたい」と、バレルさんの心の中は「早く殺したい」と言う心がぶつかり合っている。だが、両者共に顔には出さず、にっこりとした笑顔で話しをしているようだった。


 私は窓ガラス越しにいるビーの視線を介して二名の状況を見ているが、進展はない。


 バレルさんは剣をずっと握っており、どうしても放そうとしない。肌身離さず握っている。


「なるほど……『安定(ステーブル)』の魔法陣が刻まれた魔道具の力で心の安定を保っているのか。だから、顔に心が現れないんだ。でも魔力を消費している状況は美味しい。長時間続けば疲れが溜まっているはずだ。老人になればなるほど魔力の量と質は落ちていく。そうなるとバレルさんの残り魔力はどれくらいだろう……、調べるか」


 私はベスパの視界を借り、魔力を覗くと手の平に大量の魔力が移動していた。『安定』の魔法があまりにも強く発動し、心を無理やり抑え込んでいる。そこまでしなければならないほど、バレルさんは追い込まれていた。


「このまま、魔力を使わせ続ければ、バレルさんの魔力の回復速度から考えて、八分足らずでスキルが使えなくなります。その時が好機かと」


 ベスパもバレルさんの魔力量を見て好機を予測する。


「なるほど、スキルも魔力を使うし、あのまま魔道具に大量の魔力を使ってもらえばそのぶん戦いやすくなる」


 敵の戦艦や戦車、戦闘機がどれだけ強かろうと、エネルギー源となる石油や電力を奪ってしまえば強さも機能しない。

 敵国を倒すときに水源をせき止め、川を干上がらせた武将のように相手がしたいことをさせないという作戦が一番強力で、効率がいい。まあ、この作戦を遂行するためにはバレルさんをこの場に止めておく必要があるのだけど……。


「ベスパ、ドラグニティ学園長を誘拐してこよう」


「その考えはありませんでした……。完全に犯罪ですよ」


「でも、一国の王子が殺されるより、ルークス王国最強の魔法使いを誘拐した方がまだましでしょ。その魔法使いは死ぬわけじゃないし」


「まあ……。キララ様が言うのでしたら、誘拐しましょうか」


 ベスパは私の胸元に寄って来て、ブローチを取った。ブローチと言ってもディアなので、普通に動きだす。


「では、私とディアでドラグニティ学園長を誘拐してきます」


「なるべく穏便にね。話せばわかってもらえる。なんなら、バレルさんを捕まえる手助けをしてもらおう」


「そうですね。アレス王子が狙われていると知れば、手を貸してくれるかもしれません」


 ベスパはドラグニティ魔法学園がある北方向に飛んで行った。

 八〇秒ほど経ち、口から泡を吹いているドラグニティ魔法学園の学園長こと、キースさんがベスパに捕まって移動してくる。本当に最弱の虫二匹で最強の冒険者を誘拐して来てしまった。まあ、何となく方法はわかるけど。


 私はキースさんと共に裏口に入り、雷属性魔法『電撃(サンダー)』で静電気を起こし、気付けとして使う。


「あばばばばばばばばばっ!」


 キースさんから煙が上がり、再度気絶。


「あ、威力間違えた……」


 だが、さすが序列一位の冒険者。耐久力が半端なく、黒い煙をごほっと吐いたあと眼をぱちくりさせ、今の状況を整理する。


「さっき、ブラットディアが頭から落ちて来た夢を見た気がするが、なぜ市場の裏道に……。おや、ラッキー君ではないか。こんな所で何をしているのかね?」


「キースさん。お願いがあります。力を少しだけ貸してください」


「?」


 私はキースさんにアレス王子がバレルさんに狙われているとキースさんに教えた。すると、キースさんの顔が見る見るうちに皴が増えていく。老け皴ではなく、怒りすぎて眉間に大量の皴が作られていたのだ。


「バレル、何を考えているのだ。まだ、にわかには信じがたいが、この眼で確かめさせてもらおう」


 キースさんは立ち上がり、ローブ姿から用務員のおじさんに変身した。さすがに真っ黒なローブでは目立つと思ったのだろう。加えて用務員のおじさんだと、ドラグニティ学園長と周りの人に気づかれにくい。


 キースさんはルドラさんとバレルさんが話合っている現場に入ろうとした。


「キララ様! 離れてください!」


 ベスパは私の首根っこを持ち、ガラス窓の近くから離す。服を持たれただけなので、まだギリギリ気絶せずにすんだが、ベスパが緊急避難をするなんて。そう思っていたら。


 お店のガラス窓がガッシャンっと言う大きな音を立てて全て割れた。内部で爆発事故でもあったのかと言うほど一瞬でだ。

 お店の周りにダイアモンドダストでも生まれたかのような光の乱反射が起こり、通行人やバートンが悲鳴を上げる。私達はさらに裏道に入ったようだ。


「ベスパ、内部は大丈夫なの?」


「はい、キースさんが魔法を使ってお客を守ったようです。ただ、キースさんの気配に気づいた瞬間、バレルさんがお店から脱走しました」


「今、どこにいるの?」


「……背後です」


 ベスパの苦笑いの表情が私の視界に入る。ベスパの黒い瞳に白髪のイケオジの姿が映っていた。


「まさか、キース殿を呼んで来るとは思わなかった」


 私の首元にバレルさんの剣の刃が当てられる。とてもひんやりとしており、バイオリンを弦で弾くように一度擦られただけで絶命するだろうなと人間の危機感知でわかる。


 私は両手を上げ、抵抗しないと言う意思表示をした。


「え、えっと……。これはいったいどういう状況でしょうか……、あなたはいったい誰ですか?」


「嘘がずいぶんと達者ですね。何も知らないとは言わせませんよ……。キララさん」


 バレルさんは痴漢ギリギリの距離に立ち、私を抱き上げる。老剣士とは思えないほど腕ががっしりとしていた。


「あなたが私の邪魔をしているのは、勘づいていました。今回の件、ルドラ様があの場に現れて確信に変わりましたけどね。この時間、ルドラ様の向かう先は全く違いますから、不自然です」


「はは……。にしては、だいぶ動揺しているようでしたけどね」


「一応、子供のころから見守って来た方ですから、今回の仕事の件について知られたくなかったのですよ。で、キララさん。あなたはどこまで知っているのですか? 返答によってはこの場で消さなければなりません……」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。


毎日更新できるように頑張っていきます。


これからもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ