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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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アレス王子の保護

「キララ様、こっちは笑えない状況です。アレス王子を追うバレルさんはすさまじい剣技で罠を掻い潜っています。今のところ止められる気がしません」


 ベスパは深刻な状況だが、私に冷静に話しかけてきた。


 ――な……、そうなんだ。仕方ない。アレス王子を安全な場所に非難させてバレルさんとルドラさんを鉢合わせよう。剣を奪ってから再度拘束に掛かるよ。私も向かったほうが良さそうだし、クレアさんはここに少し残ってもらおう。警ビーを付けさせて何かあったらすぐに離脱させられるよう、注意を怠らないようにね。


「了解です。レクーさんとバートン車を結んでいる紐を解き、連れてきます」


 私は人込みを抜け、ウルフィリアギルドの入り口まで走った。大通りにレクーが止まっており、すぐに跨る。


「ベスパ、私をアレス王子のもとに連れて行って」


「了解です」


 私はビー通信を使い、ルドラさんと連絡を取る。


「あー、あー、ルドラさん。聞こえますか?」


「はい、聞こえます」


「今、バレルさんが罠を潜り抜けてアレス王子を追っている状況です。市場にバレルさんを誘い出しますから、一時の間を稼いでください」


「わ、わかりました。やってみます」


 ルドラさんからの意気込みを聞き、一〇分は持ってくれるかなと淡い期待をかける。


 レクーでアレス王子のもとに向かうこと八分。

 ベスパの指示通りに裏道にやってくるとアレス王子と思われる変装した男性が壁に貼り付けにされていた。どうやら、アラーネアの糸に引っかかり、抜けさせなくなっているようだ。


 バレルさんはビー達がアレス王子の体を模し、映像を映し出すことで本物と大差ないマネキンを追っているとのこと。


「は、放してくれ。何者かに追われているんだ」


 アレス王子の格好は全身を黒いローブで包み、金色の髪をフードで隠している。あまりにも怪しげな姿だ。


「安心してください。私です。キララ・マンダリニアですよ。カロネさんの喫茶店で一度会いましたけど、覚えていますか?」


「キララ……。あの牛乳の……販売者?」


「はい、そのキララです。牛乳で覚えていてくれたんですね。ありがとうございます」


 私は頭を下げて感謝する。


「これはいったいどういうことだ、説明をする前に早く放してくれ。私は一刻も早く、テザーロの菓子が食べたいのだ!」


「テザーロ? いったい誰のことですか?」


「テザーロを知らないのか? ルークス王国随一の菓子職人だ。もう、あいつの菓子が食べたくて食べたくて仕方なくてな。あいつは気まぐれで、次期国王の俺にすら、菓子を持って来ない。そんな時、手紙が届いたんだ。『新作の商品を作ったから食べに来てくれ』とな」


「じゃあ、今回は何かを調べるために王城から抜け出したわけじゃないですね」


「な……、どうして俺が王城から抜け出していると……。完璧な変装をしていたはずだ」


「完璧な変装をしても気付かれるときはすぐにわかってしまうんですよ。アレス王子みたく超絶美形だともう雰囲気だけでわかってしまうんです。顔や姿を隠してもにじみ出る雰囲気があるんですよ。なので、気づけました」


 私はほんとっぽい説明をしてアレス王子の機嫌を取る。そのまま、アレス王子に私の魔力を流し、ネアちゃんの糸を外した。


「何という強力な罠……。こんな罠を仕掛けるなんて相当な魔力が必要なはずだ。なんせ、俺が動けなかったんだからな」


 アレス王子は体を叩き、砂埃を落としながら呟く。


「ま、私が張ったというよりかは張ってもらったと言ったほうが正しいですね。あと、早くこの場から移動しましょう。そうしないと追手に殺されてしまいます」


「あんなにしつこい追手は初めてだ。この俺が逃げ切れないのも初めて……。剣を交えてみたいが、どうも勝てる未来が見えなくてな」


 アレス王子は右眼を光らせていた。どうやら、スキルを発動しているようだ。


 ――未来が見えない? じゃあ、見える時もあるってこと? 何それ、チートですか。


 私はアレス王子の発言に強者感を得ながら、いったん落ち着く。


「追ってきている相手はバレル・アルレルトさんと言う、元剣神の方です」


「なっ……、バレルだと……。父上とも顔見知りのあの、バレルか?」


 アレス王子は眼を見開き、私の肩に手を置き、揺すってきた。


「えっと……、アレス王子が想像している方だと思います。アレス王子はバレルさんと顔見知りなんですか?」


「あ、ああ……。顔見知りと言うほどではないが、父曰く、過去に王家直属の近衛騎士の指導をしていたと言う。今の近衛騎士団長と対等以上に渡り合っていた化け物だ」


「なるほど……、そこで繋がりがあったと」


 バレルさんは近衛騎士団と関係を持っていた。騎士団は正教会の犬。まあ番犬だ。つまり、その接点があって今、バレルさんは何かしらの弱みを握られながらアレス王子を狙っている可能性が出て来た。


「そうか、相手があのバレルだったか。なら、勝てる未来が見えなくて当然だな」


 アレス王子は吹っ切れ、苦笑いを浮かべながら剣の柄を持ち、少し出してかちんとしまう動作を繰り返す。緊張しているのかな? 


「はぁ、何度も暗殺される側を経験しているが、今回はあまりにも身の毛がよだつ。奴以上の適任者はそういない。今日が俺の命日か……、妻と娘に愛していると伝えておくべきだったな」


 アレス王子は死ぬ気満々。いや、死ぬ覚悟を持っていた。一矢報いようとしているのか、逃げられないと悟り、足を震わせている。


「アレス王子、そのテザーロさんと言う方のお店は安全ですか?」


「そ、そうだな。誰にも見つからないようにしているとのことだが……、実際のところはどうかわからない。俺にだけはこの地図に記して教えてくれた」


 アレス王子は手紙に挿入されていた地図を私に見せてくる。円形の王都の南部に点が入っていた。


 ――怪し。ベスパ、調べられる?


「おやすい御用です」


 ベスパは光り、ビー達に命令を送った。


「キララ様、その地図の場所はテザーロと言う方の家ではありません。いかにもと言った場所ですが、中には敵兵が待ち構えています。どうも、以前、街の騎士団で捕まえた組織と同じ暗殺者たちです」


 ――やっぱり。こんな簡単な罠に掛かりそうになるなんて、アレス王子はテザーロさんのお菓子が相当好きなんだな。


「アレス王子、残念ながらその場所はテザーロさんの居場所ではありません」


「な……。では、この手紙は……、まるっきり罠だということか?」


「そう言うことになります。なので、地図に記された場所に向かうのは危険です。私が一番安全だと考える場所があるんですけど、避難してもらえますか?」


「一番安全な場所……、それはいったいどこだ?」


 私は真上を指さす。


「上……、うわああああああああああっ!」


 私はアレス王子の背後に警ビーを付け、はるか上空に移動してもらう。空に移動してもらえば、敵はそう簡単にアレス王子を殺せない。

 この世界にスナイパーライフルがあったとしても風の吹き荒れる空に打ち込んだところで弾がぶれる。加えて止まっている的ではないのでほぼ不可能だ。高度八八八八メートルは高すぎて生存できないので、一八八八メートル地点で漂ってもらうことにした。ビーに囲わせ、光学迷彩で空と同化してもらう。もう、誰にも見つからない。


「あー、あー。アレス王子、聞こえますか?」


 私はアレス王子にビー通信で話しかけた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。い、いったい何が起こった。訳が分からない。と言うか、なぜキララの声が聞こえる?」


「空気の振動を魔法陣で再現し、アレス王子のもとに送っているだけです。特に難しいことはしていません。それよりも、頭が痛かったり、吐き気がしたりしませんか?」


「あ、ああ。問題ない。それより、ここはいったいどこなんだ?」


「地上から一八八八メートル上空です」


「なに……、そんな高さにいるのか? 俺はどうなる?」


「バレルさんはアレス王子の偽物を一生懸命追いかけています。加えて、アレス王子を狙っている敵の大本は正教会で間違いありません。敵の目を欺くために、少々その場でじっとしていてください」


「正教会……、くっ。キアンのやつがまた俺を……」


「キアン?」


「キアンは俺の弟だ。俺よりも優秀で賢い。だが、素行が悪い……。王になりたいからと俺と何度も殺そうとしてくる厄介な弟でな。長い長い兄弟げんかの真っ最中だ」


「殺し合いが兄弟げんか……、あまりにも過激的過ぎて私にはついて行けません。その話しはまた後で聞きましょう。まずはバレルさんを止めます」


「キララがあのバレルを止めるのか?」


「いえ、剣を奪います。それだけで弱体化するはずです」


「そりゃ、まあ。するだろうな。だが、簡単じゃないぞ。なんせ、相手は元剣神なんだからな。強さは通常の人と別格だ。気づいた時にはもう切られているなんて当たり前。気を付けろ」


「わかりました。私も本気で戦います」


 敵が元剣神であり、手を抜いていたら確実に死ぬとわかるほど力の差がある。なので、こっちも本気を出さざるを得ない。

 正教会が見張るこの王都で、私は力をふんだんに使うのだ。危険極まりない。でも、そうせざるを得ないのだ。切られて死んだら本末転倒だもの。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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