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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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マドロフ商会のお店

 ――ベスパ、盗む物なんて乗って無いけどバートンやバートン車が盗まれないようにビー達で警戒しておいて。あと、レクーにもお願いしておく。不審者が来たら追い返して。


「了解です」


「わかりました」


 私はアレス王子とバレルさんが接触しないようにと願いながら歩く。


 周りは冒険者ばかり。なのにクレアさんと私はドレスと燕尾服だ。場違い感がすごい。加えて私は子供、クレアさんは大人。されど周りの人に比べればまだまだ子供っぽさが抜けていない。

 周りの人たちは皆、死地を潜り抜けて来たと言わんばかりの精鋭ぞろい。体に傷があるのが当たり前、のほほんとしている冒険者は一人もいない。


 ――な、なんか、バッファー団のドルトさんが可愛く思えてきた。


「キララ様、目の錯覚ですよ」


 ベスパはドルトさんの顔を映し出す。確実に人を殺している顔つきに、スキンヘッド、もうギャングだよ。


 ――目、目の錯覚だった……。ごめんなさい、ドルトさん。


 私はドルトさんの怖さを再確認し、周りの人が可愛く見えてきた。


「もう、ラッキーさん。怖がり過ぎよ。堂々としていればいいの。そうした方が舐められないわ」


 クレアさんは場違いなのを承知で、胸を張り、凛々しく歩いていた。こういう場面でクレアさんの姉気質はとてもカッコよく見える。


 ――クレアさんは生まれてくる場所を間違えたのではないだろうか。


 私達はランナウェイを歩くように、冒険者達の間をスタスタと移動し、大きな門の前にやって来た。


「ウルフィリアギルド……。ここのギルドの名前か。さっきの冒険者さんも言ってたな。ウルフィリアさんって言う人が創設者なのかな」


 大きな門の扉に狼が口を開けているような絵が描かれており、私はそれを見て少しちびりそうになる。こんな大きな魔物がいたら嫌だな……としか思えない。いったい何のために書かれているのだろうか。魔除けかな。


 多くの人は大門ではなく、隣の小さな扉から出入りしていた。開かずの扉……、そんなふうに思っていたが、中に入ってわかった。


「…………わ、わぁお」


 小さな扉からウルフィリアギルドの敷地内に入ってみると高さ八メートルほどもある真っ白な犬……ではなく狼……、いや、ウォーウルフっぽい生物が眠っていた。先ほどの門の絵は注意事項だったようだ。いきなり飛び出してくるかもしれませんって言いたかったのかな。


「この子はいったい……」


「巨大なフェンリルよ。何度見ても圧巻ね~。このウルフィリアギルドを創設した元ギルドマスターの愛犬らしいわ」


 クレアさんは腰に手を当ててデカい生き物を見た。


「フェンリルが愛犬……。なかなかぶっ飛んでますね……」


「…………グルル」

(…………何者だ)


 閉じていた巨大な瞳がぎょろりと開いた。眼玉だけで私よりもデカい。縦長の黒い瞳と琥珀色の薄膜。眼球の周りの血管が私の腕くらいあって真っ赤に血走っている。黒い鼻をひくつかせ、巨大な白い牙をむき出しにしながら口角を釣り上げていく。笑っているのか怒っているのかわからない顔だ。


「あら、目を覚ましたわね。おはよう~、フェンリルさん! 私、クレア。よろしくね!」


 クレアさんは両手を持ち上げ、フェンリルに挨拶をした。


「…………グルルルル」

(…………われの眠りを妨げたのはお主か)


「あら、あなたも挨拶を返してくれるの。いい子ね~」


 クレアさんは勘違いしており、フェンリルは物凄く怒っていた。


「あの、眠りの邪魔をしてしまってすみません。彼女には何の悪気もないんです。許してあげてください」


 私はクレアさんの口に手を置いて喋らせないようにした後、フェンリルに向って頭をペコリと下げる。


「…………グルル」

(…………わかればよい)


 フェンリルはもたげていた首を地面におろし、また眠りにつく。


「も、もう。ラッキーさん。何をするの」


「すみません。クレアさんがフェンリルの眠りを妨げていたみたいで」


「あら……、そうだったの。すみませ~ん、フェリルさん……もが」


 クレアさんは大声で謝ろうとしたため、私は彼女の口をもう一度塞ぐ。

 フェンリルの大きな狼耳がピクリと動き、苛立ちを隠せていない。


「す、すみません、すみません」


 私は頭を何度も下げながらクレアさんと共にウルフィリアギルドの建物を目指して歩く。


 門から建物まで、異様に長く。露店らしき建物が並んでいた。

 武器や防具。魔道具に薬草、ポーションなど、冒険に必要な品ばかり。値段を見ると、金貨一枚から、金貨一〇〇〇枚とピンからキリまであり、自分の実力に合った品が買えるようだ。


「あ、マドロフ商会の店があるわ! 行きましょう!」


 クレアさんはマドロフ家の者にも拘わらず、マドロフ商会の別店舗を見て走り出した。他のお店よりも人気が少ない。悪質な品を売っているという噂が広がっているようだ。


 私達は一階しかないマドロフ商会のお店に入る。

 入店すると目の前に石鹸、右に向かうと薬草やポーション、奥に進むと意外や意外、避妊具が売っていた。

 冒険者はエチケットを考慮してくれるのかな? と言うか、こんな品始めて見た。そう思い、値段を見ると金貨五〇枚。


 ――誰が買うんだ! 技術はすごいが、値段がぶっ飛んでいる。


 私は避妊具から目を反らし、お店を回る。


 マドロフ商会に入った第一印象はドラッグストアの異世界版。薬品や生活用品、ちょっとした食べ物に武器など、痒い所に手が届くお店と言う感じだ。

 まぁ、悪く言えば器用貧乏。品ぞろえで他の店に負けている。


 村人なら飛んで喜びそうだが、王都の冒険者たちには必要がない品ばかり。

 きっと市民に寄り添った経営方針のたまものだろう。

 お店に入っているのは新人っぽい若者と田舎臭い若者、王都に夢を見て来た者達だ。他のお店の品はどれを買ったらいいかわからないと店員に伝えている。逆に、マドロフ商会の品は効果や効能、使用期間などきっちりかっちり書き込まれていた。言わば、説明書付きの商品なのだ。そのため新人にわかりやすく、銀貨一枚から金貨一枚までの間に納まっている品が多い。

 さっきの避妊具はぶっ飛んでいて目も当てられなかったが、他は質が良さそうな品ばかりだ。噂が流れていなければ繁盛していたに違いない。噂とは怖いな……。


「むむむ~。マドロフ商会の品は高品質で安いが売りなのに、質が悪くて値段が高いなんて噂を信じるバカなんて相手にしていられないわ!」


 クレアさんは大きな声を出し、怒っていた。


「クレアさん、確かにそうかもしれないんですけど、言葉にしてはいけません。グッと飲み込んで自分たちの方で印象を払拭するしかないんですよ」


 私はクレアさんの手を掴み、怒りを押さえさせる。


「う、うぅ……。ルドラ様は色々頑張っているのに、なぜ変な噂を流すのかしら」


「皆、自分たちの地位が脅かされるのが怖いんですよ。ルドラさんは優秀ですからね、そんな方が上に来たら自信が無い者は蹴り落とされるかもしれません。自分を守るために、小さい内から芽は摘んでおこうと言う魂胆だと思います」


 ――まぁ、ほとんどが正教会とバレルさんの仕業だけど。クレアさんに騒がれて印象がますます悪くなったら本末転倒だ。


「クレアさん、商品をお店の外に出してみませんか?」


「え? 商品をお店の外に出す……」


「はい。盗まれる可能性もありますけど、お店の中に入ると言うのは案外抵抗があります。始めはお店の外に軽く品を置いて中にお客さんを呼び込むと言う形態が有効です。高い品はおけませんから、初心者さんにお勧めとか、少し使える物、なんなら、乾パンでも黒パン、干し肉とかでもいいです。盗まれないように注意をして外に小物を陳列してみましょう」


「わ、わかった。少し交渉してくるわ」


 クレアさんは店員さんに話しかけ、了承を貰えたらしい。


 私は石鹸と暑さに強い食べ物、小さなナイフなど、丁度欲しかったんだよねと言う品と安い品を棚に並べていく。

 一律銀貨一枚だ。街だと高いが王都だとこのくらいが最安値になってくる。なので、あのお店安いのに質がいい、と言う印象を再確認してもらうため、作戦を開始する。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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