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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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老人と老人の長話

「暇って……、学園長は暇じゃないですよね。毎日毎日必要な仕事が沢山あるはずです」


「仕事は部下にやらせているから問題ない。仕事から逃げ出す丁度いい口述になってくれてありがとうな」


 学園長はさぼり癖がついているらしく、いい年しながら他人に仕事を任せているようだ。自由気ままなのか、面倒臭がりなのか、どっちだろうか。


「ラッキー君。君は素質がある子だ。是非、わがドラグニティ魔法学園で学ばせたい逸材。だが、君が他の場所で学びたいと言うのなら……、何としてでもドラグニティ魔法学園で学んでもらえるように全力でお願いしよう。なんなら、特別推薦枠でも使って……」


「はは、学園長から直々に……。でも、私だけ優遇されるわけにはいきません。他の学生と一緒に試験を突破し、自力で入学します。この試験にすら合格できなかったら、学園に入っても生きていけません。なので、お気遣いは無用です」


「なんと……。最も難しいと言われる入学試験を無しにしてやろうと言う甘い言葉に食いついてこないか。すでに他の者よりも高みに達しているようだな」


「わ、私はただ、実力の伴わない場所に入っても辛い目に会うだけだと知っているので……」


 社長の息子が父の会社に入っても、成功するとは限らないのと一緒で、私は自分の実力と同じか、がんばったらギリギリ突破できるかもしれないと言うくらいの入学試験を行っている学園に入学したい。


 ドラグニティ魔法学園の入学試験で落ちるようならば、私はその程度だと言うことだ。試験を突破できる優等生たちに国の未来を任せ、私は国の行く末を見据えながら、別の学園で楽しい学園生活を送れればいい。


「ますますほしくなってきた……。わしにも一杯食わせる実力を持っているにも拘わらず、心がすでに大人のように冷静沈着、甘い言葉にも惑わされない信念すら持っている。ううん、実に欲しい。容姿端麗な所も別の点でいい……」


「学園長、子供の前でそんなことを言ったら捕まりますよ」


「んんっ、そうだな。だが、ラッキー君がドラグニティ魔法学園を受けると言うのであれば、わしは心の底から応援しようじゃないか。ところで、ドラグニティ魔法学園以外の学園はどこを受けようとしているのかな?」


「私はエルツ工魔学園とフリジア魔術学園、ドラグニティ魔法学園の三学園を受けようと考えています」


「なんと……。ルークス王国の上位から三学園を選ぶとは……。男子でフリジア魔術学園を選ぶのは肝が据わっているのか、顔に自信があるのか。まぁ、いい。他の学園には見学に行ったのか?」


「はい。両者共に楽しそうな学園でした。すべてに受かる気持ちで勉強しています。最後は学園長たちに決めてもらおうと……」


「はは……、自分から決めるのではなくわしらに決めさせようとするとは……。相当な自信家だな。それ相応の実力を持っていないと中々考え付かないぞ」


 学園長は苦笑いをしながら呟いた。


「まぁ、私が考えたわけではなく、弟が考えた作戦なんです。自信はありませんけど、努力するのは好きなので、話しに乗っかってみたんですよ」


「弟がいるのか。これだけ優秀な兄を持ったらさぞかし、誇らしいだろうな」


「はは……。ど、どうでしょうね」


 ――私の弟の方が何倍も優秀なんですよね。うん……。ライトがスキルを貰ったらどうなるか私にもわからないよ。


「さてさて。もう、暗くなってきたし、王都とは言え夜道は危険だ。わしが送っていこう」


「い、いえいえ。私には頼れる相棒がいるので、安心してください」


「いやいや。優秀な者が不慮の事故で亡くなるのは見過ごせん」


 学園長は目を細め、少し怖い表情で言った。長い人生の中。私よりも多くの死を見て来たであろう、ご老人は私のような子共を失ってきた数も多いのか、話しを譲らなかった。


「わ、わかりました。じゃあ、レクーも一緒に運んでもらえますか?」


「ああ。もちろんだとも。送り先はルドラの屋敷で構わないかね?」


「はい。ルドラさんの屋敷でお願いします」


 学園長は杖を振り『フロウ』を無詠唱で発動させ、私とレクー、箒を浮かせた。


 レクーはペガサスになったように空を飛び、その背中に私は乗っている。学園長の箒に牽引されているような形だ。


 レクーで四八分ほどかかった道のりがものの八分で到着。やっぱり空を飛ぶのは楽だ。


 浮力が弱まっていき、ルドラさんの家の前に到着。上を見上げていたイケオジこと、バレルさんが顔を顰めた。


「これはこれは……、キース殿……」


 マドロフ邸の入り口を守っている門番のバレルさんが右手を胸に当てて軽く会釈した。


「懐かしい顏だと思ったらバレルか。そう言えば、冒険者を止めて護衛になるとか言っていたな……。ついこの間のようだが、老け具合からして相当な時間が経っているらしい」


「それは三八年ほど前の話ですよ。王都で数回すれ違っているではありませんか」


 バレルさんは剣に触れ、平常心を保っていた。


「はははっ、冗談に決まっているだろうが。冗談が通じない頑固な所は昔から変わらないな」


 ドラグニティ学園長は口を大きく開け、豪快に笑う。


「当時は大変お世話になりました。その御恩は今でも忘れておりません」


「よせよせ、堅苦しい。死地を潜り抜けたのはお主の実力だ。それ以外の何物でもない。にしても隙がないのぉ~。一歩でも踏み入れたら体が細切れにされそうだ」


「なにを仰いますか。私の剣ではあなたに届きもしませんよ」


 老人と老人の話が続く。何とも長い時間が過ぎた。私、家の中に入ってもいいかな……。


 ――バレルさんとドラグニティ学園長は昔からの知り合いだったんだ。この学園長の知り合いと言うだけでバレルさんが強い人だとわかってしまう。剣士と魔法使い。どれだけ早い剣速でも、時間をゆっくりにする学園長の前には無力なのかな? 魔力を消す魔剣でもあれば話は別だけど。


「おっと、話しすぎてしまった。これだから年寄りになるのは嫌だな……。募る話が多すぎる。じゃあな、バレル。また酒でも酌み交わそうではないか」


「はい、いつか……。その日が来ることを楽しみにしております」


 バレルさんは虚ろな瞳でドラグニティ学園長を見て、軽く会釈をした。


 ドラグニティ学園長は箒に立ち、ドラグニティ魔法学園のある北方向へと飛んで行く。


「お帰りなさいませ、ラッキーさん。キース殿に送ってもらえるとはさぞかし気に入られたのですね」


「はは……、王都でも暗いと外は危ないと言われてしまったので」


「そうですか。確かに、暗いと闇は良く見えませんからね。正しい判断だと思いますよ」


 バレルさんは門を開け、私が入れるように配慮する。


「バレルさんはドラグニティ学園長と知り合いだったんですね。どこで知り合ったんですか?」


「そうですね……。出会ったのはもう五〇年も昔ですかね……。魔王が復活する前、私は孤児でした。戦争孤児と言って親が戦争に行ったっきり帰って来なくなった者。それが私でした」


 ――あ、やっべ。散々長い話を聞いたのにまた話しを長引かせるような質問をしてしまった。


「飢えに苦しみ、泥水を啜る日々。何とか一〇歳まで生きてスキルを貰うのを目標にしていましたが、魔物の群れに襲われて死にかけました。初めて知った本当の死の恐怖。その時、当時、冒険者になりたてのキース殿が助けてくれたのです」


「へ、へぇ……。死地を助けてもらったんですね」


「その後、共に旅をして魔法を教えてもらいました。まぁ、私は魔法がてんで駄目なので、無意味な時間でしたがね……。一〇歳になるまで面倒を見てもらい、スキルを貰ったあと、別れました。冒険者を目指したのは彼がきっかけです」


「若いころのドラグニティ学園長って強かったんですか?」


「強いも何も、当時のドラグニティ魔法学園学園長の実子で、魔法の天才児でしたからね。相当な戦闘狂でしたよ。ともに潜った死地は数知れず。いやはや、今思えば楽しい日々でしたね……」


 バレルさんの表情からするに、本当に辛い日々だったようだ。どこか頭のねじが一本外れているせいで楽しいと上書きされている。


「バレルさんもドラグニティ学園長に認められるだけの実力者だなんて、驚きです。さぞかしきれいな剣を振るんでしょうね」


「はは……。そんなことありませんよ……。私はまだまだ未熟者です」


 バレルさんは苦笑いをして謙遜した。

 昨晩見せた超絶技巧は確実に剣の境地に達している。それにも拘わらず、謙遜する精神は流石の一言だ。でも逆に、この人が敵であった場合、どうすればいいか検討もつかない。


 私はバレルさんの横を通りながら、屋敷の敷地に入った。そのままレクーを厩舎に送る。その過程で、伝えておいた。


「レクー。さっきのおじさんがバートン達の餌に毒を入れているかもしれない。だから、餌から変な臭いがしたら食べないように皆に伝えて。水も極力飲まないようにね」


「わかりました」


 レクーはコクリと頷き、厩舎に入って行った。


 私は屋敷に入り、手洗いうがいをした後、借りている部屋に戻る。昨日と同様に、私がいた痕跡が無くなっていた。毎回ホテルの新しい部屋に入っているみたいで変な気分だ。


「ん~はぁ~。疲れた……。今日も一日大変だったよ……」


 私は硬いベッドに寝ころび、伸びをする。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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