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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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ファニーとイカロス

「私はバートン術の大会がどのような規模で行われるのかわかりませんが、出たいと思うなら出た方がいいです。後悔したとしても出た方が自分の経験になりますよ」


「それはわかってるんだけど……、本番が近づいてくるとどうしても緊張しちゃってさ……。一人だとどうしても怖気づいちゃうんだ」


 マルティさんは視線を下げ、呟いた。


「なら、仲間を見つけたらいいじゃないですか」


「仲間……」


「はい。私は貴族じゃないですけど、バートン術部に興味がわきました。まだ乗バートン部を見に行ったわけじゃないのでどちらがいいのかと判断できませんが、人が集まっているところに行って勧誘をすれば、八〇〇人に一人くらいバートン術部に入りたいと思ってくれる人が来るかもしれません」


「そ、そんな……。僕の話しなんて誰も……」


「好きなことはとことん突き進めばいいんです。他人を気にする必要はありません。さあ、私と一緒に乗バートン部に行きましょう! 乗り掛かった舟です。私も手伝いますよ。イカロス、マルティさんを背中に乗せてついてきて」


「はいよ~」


 イカロスはマルティさんの首根っこの服を咥え、背中に放る。


「ちょ! イカロス。ラッキー君の命令をそんな簡単に」


「ブロロロロロ~」

(いつまでもうじうじされてると、めんどくせえんだよ。お前が育てた俺が信じられねえのか?)


 イカロスはイカした発言をする。


「マルティさん、イカロスは戦いたくてうずうずしているようです。マルティさんが育てたイカロスはあなたを相当信頼しています。すでにマルティさんは一人じゃありません。イカロスも一緒なんです」


「ど、どうしてそんなことがわかるんだい?」


「勘です。バートンに懐かれているのは事実ですし、信頼関係も強い。マルティさん、あなたは仲間よりも頼もしい相棒をすでに手に入れているんです。怖がる必要はありません」


「相棒……。はは……、相棒か……。そうだね、確かにイカロスは僕の一番の相棒だ」


 マルティさんはイカロスの頭を撫でる。


「ブルルルルウウ~!」

(ちっ……、相棒だと? 勝手に決めつけやがって。最高にイカした関係じゃねえか)


 イカロスの足踏みはリズミカルになり、気分が向上している。仲がいい二名だ。


 ――ベスパ、乗バートン部のある場所に案内して。


「了解です」


 ベスパはすでに道順を覚えていたらしく、先導した。私はブラットディアに乗って地面を滑るようにして移動する。その速度はイカロスが走っていても余裕で並走できるほど速い。


「ら、ラッキー君はどうやって移動してるの?」


「えっと……、足が速い生き物に乗ってます」


「?」


 マルティさんは首を傾げた。


「気にしないでもらえるとありがたいんですけど……」


 ――ブラットディアに乗って地面を滑りながら移動しているなんて言えないよな。


「わ、わかった」 


 私達は大きな大きな建物の前に来た。四限目に来た、バートン場だ。もう、先ほど見たバートン術部との差が大きすぎる。会場入り口に向かうと、バートンに乗った多くの人が建物内の芝を優雅に走っていた。


「けっ、気持ち悪い走りしやがって。あれでもバートンかよ」


 イカロスは唾を吐くように綺麗な走りをするバートン達をけなす。


「はぁ……、つまらない……。ただ走るなんてつまらないよ……」


「僕はなんで走ってるんだろう。同じ所グルグル回ってるだけなんて……」


「ふわぁ~、ねっむ、走りが甘すぎて眠すぎる……」


 バートン達の声を聴いてみると、皆、つまらなそうにしていた。そりゃあ、人間の脚になって元気よく走るのが彼らの幸せなのに、人が走るくらいの速度でしか走らせてもらえないんだから、つまらないよな。


「あ! ラッキーさん。ようこそ! 乗バートン部へ」


 私のもとに走ってきたのは真っ白なバートンに乗ったリーファさんだった。服装は動きやすいように体操服? っぽい、無地の半そでと短パンを履いている。他の人はドレスや燕尾服、制服を着ながら走っているのに、この人だけ異常だ。


「こんにちは、リーファさん。乗バートン部はすごい人気ですね」


「そうですね。貴族の方が多いけど、楽しい部活ですよ。ん? 黒いバートンにマルティさん。乗バートン部の建物に何か用ですか?」


「あ、い、いやぁ……、その……」


 マルティさんは顔を赤くしながら視線を右往左往させて話す。その仕草だけで、私はピンっときた。


 ――なるほど、マルティさんはリーファさんが好きなのかな。


「はぁ、またすぐ恋愛にしようとする……」


 ベスパは頭を振りながら、ため息をついた。


「よ、よう……。久しぶりだな……。ファニー。元気だったか……」


「イカロス……。何? また私のお尻でも追っかけに来たの? あんたみたいな弱虫には興味ないの」


「お、俺は弱虫じゃねえぞ。イカした走りが出来るんだ」


「へぇ~。大勢の前ではビビりまくってちびっちゃうくせに。よくそんなことが言えるわね~」


 ――おやおや? イカロスとリーファさんのバートンは知り合いなのか。


「えっと、マルティさんがバートンに乗ったままだと言いにくいそうなので、降りて話しあってもらえますか?」


「あ、そうですね。バートンに乗ったまま話し合うなんて少し無礼ですものね」


 リーファさんは白いバートンから降りる。マルティさんもイカロスから降りた。


「じゃ、マルティさん。一人目の勧誘、頑張ってください。私はこの子達の面倒をみるので、お構いなく」


「ちょ、ちょっと、ラッキー君!」


 私はマルティさんとリーファさんから離れ、イカロスと白いバートンを引き連れて歩く。


「えっと……。ついて来ちゃったけど、あなたは?」


 白いバートンから話し掛けられた。


「初めましてキララ・マンダリニアと言います。今は偽名でラッキーと言う名前を使っていますけど、バートンの言葉はほぼ誰もわからないので、キララの方で呼んでください」


「わ、わかりました。あ、私も自己紹介。私の名前はファニーシアと言います。リーファさんはファニーと呼んでくれるので、キララさんもファニーと呼んでください。って……、何で会話が出来ているんですか?」


「えっと、この子のおかげです」


 私はベスパの方に視線を送った。


「どうも、初めまして。ベスパ・マンダリニアと申します。キララ様の従者兼スキルです」


「あ、スキル。だから、会話が出来ているんですね」


「そう言うことです」


 私は乗バートン部の皆さんの邪魔にならないよう、ファニーとイカロスを連れて休憩所に移動した。


「ちょっと、イカロス。背後に回り込まないで」


「い、いや、体が勝手に……」


「そんな訳ないでしょ。蹴り飛ばすわよ!」


 ファニーとイカロスは犬同士が尻尾を追いかけまわすようにクルクルと回っていた。


「お二方はどういう関係なんですか?」


「どうもこうも、同じ牧場で生まれた義姉弟と言うか、幼馴染と言うか、昔から知っている者同士ってだけです」


「なるほど、同じ牧場の幼馴染ですか。つまるところ、リーファさんとマルティさんも幼馴染って解釈でいいですかね?」


「はい、リーファさんのお兄さんとマルティさんのお兄さんが知り合いで、家族ぐるみの会食やらいろいろしていたみたいです。バートンの購入も一緒にするくらいなので、交友が深いようですね」


「じゃあ、リーファさんに選ばれたのがファニーで、マルティさんに選ばれたのがイカロスと言うことか……。お二方に血のつながりは?」


「ないです。別に親が同じ姉弟と言う訳じゃありません。特に仲もよくないですし」


「そ、そんなこと言うなよ。一応幼馴染だろ。互いの裸を見せ合っている仲じゃないか」


「別に見せたくて見せてるわけじゃないわ」


 ファニーとイカロスは仲がいいのか悪いのか、わからないくらい会話が続いていた。逆にリーファさんとマルティさんの会話は全く進んでいない。


「はぁ……。どうしたものか……」


「ああ~、もうじれったい。イカロス。そんなに私が欲しいなら勝負しなさい! 私に勝てたら少しくらい遊びに付き合ってあげる」


「やっとその気になったか。望むところだぜ!」


 ファニーとイカロスは私が気にしていない間に、戦うことになってしまった。


「勝負の形式は乗バートンで会場を沸かせた方が勝ち」


「ちょ! それじゃあ、お前に有利すぎるだろ。バートン術で勝負だ!」


「バートン術で戦ってもあなたの方が有利になるじゃない」


「じゃあ、どうすればいいんだ」


「三本勝負にすればいいんですよ」


 私ははにかみながら呟いた。


「え?」


 ファニーとイカロスは私の方を同時に向いた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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