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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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用務員のおじさんと戦う

「『ファイアボール』」


 学生が魔法を放ち、攻撃すると相手は剣で魔法を弾く。弾かれた魔法が私達の方に飛んできた。


 私はディアを手の平に張り付けて相殺しようとしたが、用務員のおじさんが杖の先で止めた。そのさい、杖先が白く光っており、スキルを発動しているようだ。


 炎の球体は空中で止まり、全く動かない。


 用務員のおじさんが杖で炎の球体を軽く叩くと魔力の粒子に変わり、跡形もなくなる。


「周りを見て鍛錬をするように!」


 用務員のおじさんは三年生の生徒に向って大きな声で言う。

 

「は、はい! すみませんでした!」


 二名の生徒は頭を深々と下げ、とても謝ってくる。そんなに謝らなくてもいいのにと思うほどだ。


「さて……、皆そろそろ温まって来た頃か。じゃあ、わしも混ざるとするかな」


 用務員のおじさんは手すりに靴裏を押し付け、高く跳躍する。空中三回転大捻りを繰り出し、地面に着地。どう考えてもただのおじさんではない。


「よし、今日はおじさん、良い所を見せたいから、皆も本気で掛かって来てくれ」


 用務員のおじさんは生徒の前に立ち、体を曲げ伸ばししながら準備体操をしている。


「は、はい! よろしくお願いします!」


 生徒たちは大きな声で返事をした後、次々と構え始める。


「では、この硬貨が地面に落ちたら試合開始だ」


 用務員のおじさんは金貨を一枚取り出して、握り拳を作り、親指の上に置く。


「はい!」


 生徒達は大きな声を出し、理解したと用務員のおじさんに伝える。


「用意、始め……」


 用務員のおじさんは硬貨を親指で弾き、空中に飛ばした。


 金貨は高速で回転し、金色の球体が浮かび上がる。そのまま重力に従って金貨が地面に落ちた。甲高い金属音がドーム内に響いた途端、用務員のおじさんが学生たちの背後に立っている。加えて学生たちが軒並み倒れた。


「むむむ……。なっとらんよ。全くもってなっとらん」


 私は用務員のおじさんが何をしたのかさっぱりわからない。


 ――ベスパ、用務員のおじさんは何をしたの?


 私は目が良いベスパに訊いてみた。


「ここら一帯の時間の流れをゆっくりにしました。加えて、杖先から、ごく小さな魔力の塊を打ち出し、生徒の眉間に命中させて気を失わせました。どうやら時間の流れる速度をほぼ停止にすると大量の魔力を消費するようですが、アラーネア程度の速度にさせるのはそれほど難しい話じゃないようです」


 ――つまるところ、ここにいる三年生の人達がアラーネアくらいの速度にされたあげく、洗礼された魔力操作で眉間を打ち抜かれたということ?


「そうなりますね。あれは相当化け物ですよ。初見殺しすぎます」


 ――空間はまったりしているのに、用務員のおじさんは効果を受けないから、滅茶苦茶早く動いているように見えるのか。この広い空間内の対象全てを遅くさせることもできるなんて……。停止させる気じゃなければ、魔力消費が少ない。えっと弱点どこ……。


「スキルも魔法の一種ですから、魔法耐性を持つ生き物には効果が無いと思われます。なので、ブラックベアーやブラットディアで攻めるのが最善策なのではないでしょうか」


 ――なるほど。一理ある。あと、敵よりも早く動いて先制攻撃を決めるとかもありだね。


「はい。スキルが発動するまでの時間は一秒ほど。ならば、その間に攻撃して攻め立てるという作戦も有効でしょう」


 ベスパは顎に手を置き、私の頭上を飛びながら考えていた。


「あの、用務員のおじさん。私にも戦いを教えてもらえませんか。丁度皆さん寝ていますし、安全な場所に移動させるので」


 私はビー達にお願いして気絶している生徒たちをドームの観客席に移動させた。その後、階段を降りてステージに繋がる扉を押し、地面に靴裏を付けた。


「ふむふむ……ビーか。つまるところ、ラッキー君の使役対象はビーということだな?」


「ははは……、お恥ずかしながら、ビーなんですよ」


「戦いを教えると言っても、ラッキー君は戦えるのかね?」


「強くはなりたいので、戦いの技術なんかを学びたいと考えています。見たところ、用務員のおじさんは相当強い方なので、一度戦ってみたいと思いまして」


「はははっ! いい向上心じゃないか。よかろう、一度手合わせしようじゃないか!」


 用務員のおじさんは口を大きく開けて笑う。


「ありがとうございます。では、さっきと同じはじめ方で構いませんか?」


「うむ、よかろう」


 用務員のおじさんは地面に落ちた金貨を取り、親指に乗せる。


 私は卑怯かもしれないが、魔力操作で弓を作り、弦を引いた。


 ――ディア、矢先にくっ付いてくれる。ブラットディアとスキルが打ちあったらどうなるか見たい。ベスパ、私達の戦いを離れた場所から見ていて。


「わかりました!」


 ブローチになっていたディアは矢先に移動した。


「了解です」


 ベスパは地上五〇メートル付近を飛ぶ。 


「すでに何かやる気満々だな。よかろう、受けてみようじゃないか」


 用務員のおじさんは金貨を弾く。それと同時に、私は矢に練り込みまくった魔力を纏わせる。輝かしい光が放出され、日よりも明るかった。


「なんと……」


 金貨が地面に落ちた瞬間、私は手を放す。撓っていた弓が戻り、光の矢が発射される。この瞬間が一秒もかかるとは思えない。


「うぉっ!」


 用務員のおじさんはぎょっとした表情で仰け反り、矢を回避した。

 矢はドームの壁に当たった。その瞬間、壁が弾き飛び、大穴が開く。


 矢がスキルと打ち合わず、用務員のおじさんの身体能力で躱されると言う事態は想定外だった。


 私はベスパをドームの一番高い場所に移動させておいたので、意識をベスパに移す。するとベスパから見える私の体は止まり、用務員のおじさんが歩いていた。


 ――うん、ベスパの頭を借りれば思考ができる。ここの高さは五〇メートルだから、少なくとも今はこの範囲まで用務員のおじさんが使っているスキルの効果が届いてない。ディア、今の空間内を普通に動ける?


「はい、動けます!」


 矢と共に外に出て行ったディアだが、地面を移動してすぐに戻って来た。

 ドーム内でも普通に動けているということは、ディアが用務員のおじさんに意識されていないからなのか、普通に魔法耐性の影響か。どちらにせよ、ディアなら移動が可能ということには変わらない。


 私はベスパの体で出口の『転移魔法陣』を展開する。すると本体が着ている服に入っていたサモンズボードが私の魔力に反応して光り、出口の『転移魔法陣』から滝の如くブラットディアが現れた。


 ――ブラットディア達、おじさんを飲み込んで。


 津波の如く大量のブラットディアが用務員のおじさんに襲い掛かる。


「んんんんっ! ぎゃわわわわわわわっ!」


 用務員のおじさんは幽霊でも見たのかというほど絶叫し、泡を吐いて倒れた。


「あ……、なんか気絶しちゃった……」


 私は自分の体に意識を戻し、体を動かしてみる。


「うん、普通に動く。常時発動している訳じゃないっぽい。用務員のおじさんが気絶したらスキルの効果も消えるのか」


 私は地面が真っ黒なブラッドディアに埋め尽くされたドーム内を見る。用務員のおじさんはブラッドディアに呑み込まれ、完全に砂風呂状態だった。まぁ、ブラットディア風呂と言ったほうが正しいか。


 私はブラットディア達をサモンズボードに戻し、地面で泡を吹いて気絶している用務員のおじさんを見る。完全に伸びていた。


「あれ~、なんか思っていたよりも弱い?」


「いや、キララ様の初撃を回避していたのでさすがの実力ですよ」


 ベスパは五〇メートル上空から降りてきて呟いた。


「だよね。と言いうか、あの大穴どうするの……」


 私が矢を放った方向をもう一度見ると巨大な砲弾でもぶち当たって破壊したのかというほどの大穴がドームの壁に開いていた。直径八メートルくらいの穴が開いていると空が余裕で見える。壁は硬い石で作られており結構頑丈そうだったのに……。


「えっと……、一応直しておきましょうか」


 ベスパはアラーネアとビー達に命令し、大穴を塞ぎ始めた。


「う、うぅ……。ブラットディア!」


 用務員のおじさんは全身をくまなく叩き、飛び起きる。


「えっと、用務員のおじさんはブラットディアが嫌いなんですか?」


「あ、ラッキー君……。ん、んんっ、ブラットディアなんて特に恐怖する対象ではない」


 用務員のおじさんは咳払いをして腕を組み、私に背を向けた。


「…………用務員のおじさん、ちょっとこれを見てください」


 私はブローチに擬態しているディアを手の平に乗せて用務員のおじさんに見せる。


「むむ……。漆黒で恰好がいいブローチじゃないか。これがどうかしたのかね?」


 用務員のおじさんは光沢があるディアの外骨格を見ていた。


 私は用務員のおじさんの手の平にディアを置き、不意に裏返す。


 ディアは六本の手足を広げ、動かす。あまりにも気持ちが悪い。六本の脚にとげとげがついており、全て真っ黒。頭から伸びる長い触覚が動くと、手に持っている用務員のおじさんの顔が真っ青になって後方に倒れた。


「あぁ……、やっぱり。用務員のおじさん、ブラットディアが嫌いなんですね」


 用務員のおじさんはまた気絶しており、ブラットディアを怖がっているようにしか見えない。


 用務員のおじさんが気を失ってから八分ほど経ち、勢いよく起き上がった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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