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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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箒移動

「学生たちを戦い合わせる意味ってあるんですかね……」


「うむ……、無い」


 用務員のおじさんは腕を組みながら言う。


「なら、何で戦い合わせているんですか?」


「世の中が戦いの連続だからだ。人は戦いが好きなんだよ。だから何でも競い合う。互いに高め合ったほうが成長できる。だが本能的に強い者に勝ち、成長したいと思う気持ちの方が強い。強い者を見て弱い者は自分の実力を知る。弱くともあの場所に行くために必要な練習は何か、と考える者がいる。学園は強い者とくじけない者、要領が良い者を求めている。言うなれば選別だ」


「なんともむごいやり方ですね……。でも理にかなっています」


「彼らは学年が上がり、自分の実力を再確認する時期だからな。自分の弱さを見つめ直し、さらに成長してほしいものだ」


 用務員のおじさんは頷きながら、温かい目で学生を見守っていた。と思っていたら、魔法学演習教授の露出度が高めな女性の胸をガン見していた。ただの変態やんけ。


「ん~、視界がかすむな……、あまり良く見えぬ……」


「…………」


 ――何がだよ。デカい乳を追ってるのが視線で丸わかりなんじゃ、変態爺。絶対に見えてるだろ。視力二.〇以上あるだろ。眼が血走りすぎてるんだよ。


「キララ様、落ちついてください。大概の男はこうじゃないですか。メリーさんの胸を見ている男の人が何人もいるのを知っていますよね?」


 ベスパは頭上から降りてきて冷静に話す。


 ――はぁ、そうだね。やっぱりどこに行っても男は胸が好きなんだよね。


 私は開き直り、ため息をついて組手を見た。


 最後に残った二人は図体のデカい男達で、ああ強いわって思う男達だった。なんて言うのだろう、柔道の試合の時、目の前にいる相手が強そうとか、ホームランばかり打つ甲子園球児などを見ても、あ、こいつ打つなと思ってしまうような人。見ただけで強いとわかる人間はいる。そんな人間が戦っていた。


 剣と槍がぶつかり合って火花が散る。もう、四試合目くらいなのに、両者ともまだまだ元気そうだ。審判役の教員が食い入るように見守り、他の生徒たちも試合を見ていた。

 男達は悔しそうに睨みつけ、女達は眼を輝かせている。


 剣と槍が打ち合って勝つのは槍だと誰もが思うかもしれないが、そうでもない。使い手によって大きく変わってくる。


「はあっ!」


「おおらっ!」


 槍は広い攻撃範囲と安定した動きが出来る。剣は攻撃範囲が短いが、素早い動きが出来る。両者共に、鍛錬しているんだなと想像できる動きをしており、素人ではないとわかった。


 最終的に剣が相手の喉元に突きつけられ、勝敗が決まる。


「遠くから見ると全体像が見えますね。白熱しているかどうかはあまりわかりませんでしたけど、体の動かし方を学べました」


「そうだな。綺麗な一本勝ちだ」


 三限目の講義は戦いが終わり、皆の目にした動きや技の意見を言い合うという形をとっていた。男女関係なく、あの時どうしていれば、などと想像しながら復習をする。いい反復練習だ。失敗や経験を思い出し、対処法を見つける。

 何個も見つけ、自分に使えそうな方法だけ残し、あとは捨てる。そんな消去法が成長には必要だ。


 三限目が終了し、走って戻る者や箒に乗って移動する者、バートン車で移動する者と色々別れていた。


「箒で空が飛べるんですね……」


「魔道具だからな。練習すればだれでも乗れるようになるさ。まあ、一本の値段が高いがな」


 ――自転車みたいな品かな。貴族用の自転車か。絶対に高い。私にはレクーがいるし、わざわざ高いお金を払って落ちたら危なそうな箒に乗ったりしなくていいか。


「ラッキー君は箒に乗った覚えはあるかね?」


「い、いえ。ありません。始めて見ました」


「そうか。じゃあ、乗ってみるかい?」


「え?」


 用務員のおじさんは杖を振る。すると校舎の方から、ほうき星のように魔力を放ち、何かが飛んでくる。黒く、とても質素な箒で道端を掃除する用の竹箒とは何もかも違った。スーパーカーとおんぼろ中古車くらいの差がある。


 用務員のおじさんは一メートルほど宙に浮いている箒の上に飛び乗って靴裏を乗る。箒の前部分に優雅に立ち、完璧に決まっていた。


「またがるか、足を乗せるか。好きな方で乗ってみなさい」


「は、はい……」


 私は二人乗りをするなんて人生初めてだ。その相手が用務員のおじさんなのは癪だが、またとない機会なので乗せてもらおう。


 私は箒にお尻を乗せる。お姫様座りとでも言うのか、またがるわけでもなく立ち上がるわけでもない。ただただベンチに腰掛けるような感覚で座る。


「よし、じゃあ、行くぞ」


 用務員のおじさんは杖を振り、箒を操作する。おじさんは立ちこぎ状態なのに、全く落ちない。なんて安定感なんだ……。

 私の方も鉄棒に乗っている感覚なのに、落ちそうで落ちないのが不思議だ。


「なかなかに早いですが、私の速度の方が上ですね」


 ベスパは箒の速度に張り合い、後頭部で腕を組みながら、余裕そうに飛んでいる。眼を瞑っていても、魔力体の間なら物体をすり抜けるので何にもぶつかったりしない。


 逆に箒移動は障害物を避けながら飛ばないといけないので、それ相応の技術が必要だった。


 初めは地上から二メートル付近を飛んでいたのに、いつの間にか、三、四、五、六メートルと増えていき、いつの間にか二〇メートル以上の地点を飛んでいた。もう、六階建てのビル相当の高さを移動するなんて恐怖でしかないが、落ちないんだろうなという謎の安心感のおかげで気球に乗っているような優雅な気分になる。足をぶらつかせても地面には全く届かず、雲が近い。


「用務員のおじさんは箒に良く乗るんですか?」


「昔はよく乗っていたな。バートンじゃ越えにくい山なんかをすぐに越えられるから重宝したよ。まあ~、昔の箒は今と違って安全性がゼロだったから、何度も落ちて死にかけた。いや~、懐かしい」


 用務員のおじさんは箒によく乗る人物だったようだ。つまり、昔から魔法の扱いが上手いということになる。


 ――用務員の仕事をするような人が昔から箒を持っているなんて……。この男性、ますます怪しい。


 私はスカイダイビングと同じくらい爽快な時間を過ごし、校舎の前に移動してくる。


「ふぅ、たまに飛ぶのも悪くないな」


 用務員のおじさんは箒を立て、乾いた布で靴のあとを拭きとる。そのまま杖を振ると、箒は飛んで行った。自転車よりも有能じゃん。


「さて、次の講義に行くとしようか」


「はい。お願いします」


 私は用務員のおじさんに連れられ、広い広いバートン場にやって来た。もう、バートンの戦いができるというほどで、競馬場顔負けだった。


「ここは?」


「ここはバートン場だ。バートンに乗れないと移動するのが大変だからな。移動手段として有能なバートンの練習をする講義がある。まあ、ルークス王国の民ならば、バートンに乗れないと恥ずかしいという風潮もあるくらいだ」


「へぇ。バートンに乗る講義があるんですね。これで単位が貰えるのなら、美味しいんじゃ」


「そうだな。まあ、ただバートンに乗るだけじゃなく、使いこなせないと意味がない。最終試験で障害物を越えながら走るという、難しい試験を経て、単位の取得となる」


 ――自動車を練習する講義みたいなものか。学園でそんなことまでしてくれるなんて……。まあ、私はレクーに乗れているから取る必要もないけど、得意なことで単位が取れるならありがたいな。


 私は観客席に座る。中央にいる者達の中に、カイリさんの妹である、リーファさんがレクーと同じく綺麗な白色のバートンに乗っていた。飼い主が綺麗な方だと、やはり似るのだろうか。私にバートンの顔の良さはわからないが、毛並みから立ち姿まで品がいいというのはわかる。


「ん~、やはり綺麗な脚だ……。あの筋肉、素晴らしいな」


 用務員のおじさんはまた変態発言をしていると思ったが、今回は普通にバートンの脚を見て言っており、私は反省する。


 教授の方がバートンに乗って走り出した。その後ろから生徒たちが追っていく。慣らしだろうな。


 リーファさんは余裕の表情で黄色い髪を靡かせながら楽しそうに走っていた。眠っていても走れそうなほど洗礼されている。

 他の生徒はバートンの背中に跨っている最中に体が動き、上手く乗れていない。きっとバートン車にばかり乗っており、バートン本体にあまり乗っていないのだろう。


 リーファさんだけ他の生徒を置き去りにしながら、教授の後ろにぴったりと張り付く。風よけをしているのか、あまりにも綺麗なバートンさばきだ。


 一周走り切ると速度を落としていき、皆、止まった。


「え~、今日は五回目の講義ということで、軽い試験を行う。バートンを走らせ、一周一八〇〇メートルの道を駆け抜けてもらう。初めて走ってもらった時よりも速度が上がっていれば、合格だ。では、自信のある者から出発地点に付きなさい」


「はい!」


 堂々と手を挙げたのはもちろんリーファさんだった。バートンの方も落ち着いており、足が軽そう。


「よし、じゃあ行くよ。ファニー」


「ブルル~」(ええ、私達なら大丈夫。絶対に合格できるわ)


 リーファさんがバートンの頭を撫で、宥める。その後、背中にまたがり、出発地点に移動する。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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