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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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王都一の学園

 ドラグニティ魔法学園は門と園舎が物凄く離れていた。園舎の中にすぐに入れない設計だ。まあ、学生の誰を捕まえても身代金を取れるくらいの貴族が通っているのだから当然か。


 貴族の馬車が大きな大きな鉄の門を潜り、広大な土地の学園内に入っていく。


 ――登園している者達かな。学生は寮に入るって聞いたんだけど、許可を取っているのかな。


 私は貴族に悪がらみされるのは面倒だったので最後尾に着く。急いでいる訳ではないので構わない。


「学生証明書を見せてください」


 門にいる騎士に言われたが、私はドラグニティ魔法学園の生徒ではないので持っていない。


「えっと、私は学園に見学しに来た者です……。一応、推薦状も持ってます」


 私はルドラさんから貰った推薦状を騎士に手渡す。


「拝見します」


 騎士はナイフで蝋印を切り、中身の手紙を見た。


「マドロフ家……、ルドラ・マドロフ様からの推薦状ですね。なるほど、少々お待ちください」


 騎士は他の騎士に場を任せ、大きな建物の中に入っていく。


 ――学務課かな。いや、学園の外にあるし、騎士が住んでいる建物かも。だとしたら警備会社が学園のすぐそばに設置されているようなものか。警備が厳重すぎるな。さすが王都で一番を張るだけある。


 八分ほど待っていると、騎士が戻って来た。


「見学を許可します。外部者の厩舎は園舎のすぐ近くにあります。くれぐれも学生のバートン場と間違えないよう、お願いいたします。園舎近くで迎えが来ますのでこの推薦状を持って少々お待ちください」


「わかりました」


 私は騎士から推薦状を返してもらい、大きな門を潜る。学園内に入ると、もう異界だった。広い土地と様々な建物、初見では何が何だか全くわからない。最先端技術を搭載しまくった勝手がわからない乗り物に乗った気分だ。


「と、とりあえず、進もう」


 私はレクーを走らせ、園舎近くまでやって来た。生徒らしき人物がちらほらとおり、メイドさんや執事を連れていた。もう、他の学園とは異色の場所だ。


「や、やばい所に足を踏み入れている気がする……」


 私は外部者用の厩舎を探す。だが、敷地内が広すぎるのに加え、厩舎がいくつもあってどれがどれだかわからない。


「あぁ、もう。ベスパ。外部者用の厩舎はどこ?」


「今、見つけました。こちらです」


 ベスパは私達を案内し、少々ボロイ厩舎に案内した。入口付近に外部者用と記載されているので間違いなさそうだ。


「じゃあ、レクー。大人しくしててね」


 私は餌箱に牧草を大量にいれ、水もバケツに入れておく。


「わかりました」


 私はレクーを厩舎に置いてドラグニティ魔法学園の園舎に向かう。もう、異彩を放つ風貌、見上げるほど巨大な建物、初めて東京スカイツリーを見上げたような感覚に陥る。


「おい、田舎者がいるぞ……」


「ほんとだ、何で敷地内に入って来てるんだろうな。迷子なんじゃね……、だっせ~」


「あいつ女みてえな顏してるぞ。気持ちわりい」


 学生たちが私の姿を見て陰口を言う。貴族だからって何を言ってもいい訳じゃないだぞガキども……。


 私は額に静脈が浮かび上がりそうになったが、ぐっと堪える。相手は一二歳から一五歳の子供だ。まだ中学生のガキじゃないかと精神を落ち着かせる。


「にしても、誰が来るんだろう……。優しい人だといいな……」


 私は園舎の前で待っていた。だが、待っても誰も来ない。


 ――まさか、忘れられている? それとも、見学者なんて放っておけと思われてる?


 私は学生たちの態度を見て、そう言う校風なのかもと思い始めていた。


「お~、お~、すまないすまない。遅れてしまった」


 私の元にやってきたのは用務員のおじさんみたいな人だった。おじさんというかもうお爺さんと言ったほうがいいかもしれない。


「君が見学者さんかな?」


「はい。ラッキーと言います、よろしくお願いします」


 私は偽名を名乗り、男性に頭を下げる。


「はい、じゃあ。わしのことは用務員のおじさんと呼んでくれ」


「え? よ、用務員のおじさん……」


「みんなそう呼んでくれるんだ。だから、ラッキー君もそう呼んでくれて構わんよ」


 私は温厚そうな男性。見かけは六五歳くらい。でも、この世界の顔では年齢がわからないので、もっと上かもしれないし、下かもしれない。


 服装は上の服と下のズボンがくっ付いているつなぎだ。何度も着ているのか、結構くたびれている。髪は短く清潔感があった。ただ、黒と白が右と左で分かれている変わった髪色だ。


「じゃあ、ラッキー君。わしがこのドラグニティ魔法学園を案内する。ついて来なさい」


「はい。よろしくお願いします」


 私は用務員のおじさんに頭を下げ、後ろから着いていく。


「キララ様、この者、もの凄く怪しいですよ。どことなく普通のご老人ではなさそうです」


 ベスパは用務員のおじさんを見て呟く。


 ――そうだよね。なんか、普通じゃないもん。でも、別にどうでもいいかな。私は学園に興味があるわけで、おじさんに興味はないよ。


「そうですね。見たところ危害を加えてくるわけでもなさそうですし、私達は彼に学園を案内してもらうだけですので気にする必要もないでしょう」


 私達は用務員のおじさんの後ろを歩く。

 園舎の玄関から中に入り、だだっ広い空間を見上げる。

 二階、三階、四階と吹き抜けになっているのか、最上階の天井が点のようだ。


「は、はは……」


 あまりにも広いので笑いが出てくる。建物内部は高級な屋敷と言うか、焦げ茶の壁や大理石の床、もう建設費いくらだよと言いたくなるほどの高級感溢れる場所だ。


「用務員のおじさん、おはようございます!」


「お~っす! 用務員のおじさん、今日も仕事頑張ってくれよな」


「用務員のおじさん、これ、朝食のあまりです。どうぞ」


 用務員のおじさんは物凄く人気だった。もう、人気者のスキルでも持っているのではないかと言うくらい、学園にいる生徒たちから好かれている。それだけで、この人が悪い人ではないとわかった。


「皆、ありがとうな。今日の講義も頑張るんだぞ」


「はい!」


 学生たちは用務員のおじさんに鼓舞されて大きな声を出し、教室に戻っていった。


 ――ここに通っている学生は皆優秀なんだろうな。普通の子供達に見えるけど……。でも、王族や大貴族の子息とかもいるんだろうな。ひや~、話しかけにくい~。


 私は誰かに話しかけた時、その人が物凄く位が高い人だったらどうしようと思い、見つめることも出来ずにいた。


「ラッキー君はルドラ・マドロフ君とどういう関係なのかな?」


「え? 用務員のおじさんはルドラさんを知っているんですか」


「そりゃあ、しっとるよ。わしはこの学園で働いて長いからな。五年前に卒業したルドラ君のこともしっかりと覚えておるよ。彼は座学では常に上位だったから、印象が強い。そんな彼からの推薦状を受けた君がどんな子なのか気になってね」


 用務員のおじさんはルドラさんを知っていた。昔からこの学園で仕事をしていたら、そりゃあ人気者になるか。


「えっと、私とルドラさんの関係は持ちつもたれつ、対等な師弟です。私はルドラさんから色々教わって今に至ります」


「ほう、ほう……。師弟か。あのルドラ君が……。あの子が弟子にするのだからさぞ優秀なのだろうな~」


「あんまり期待されると困るのでやめてください。私は普通の人間です」


「まあ、そうだな。過度な期待は子供の将来性を壊す。だが、ルドラ君に認められているというのは事実だ。それだけの実力がラッキー君にはあるということなのだよ。あまり自分を低く見すぎるのもよくない。ただただ自分が生きたいように生きていればいい」


 用務員のおじさんは一人語りを始めた。こう言うところはやっぱり老人っぽいな、と思わざるを得ない。


 ドラグニティ魔法学園の中を少し歩き、用務員のおじさんは立ち止まった。


「ここが今年入学した子供達。ラッキー君が来年入学したら一個上の先輩と言うことになるな。中に入って見学させてもらおうか」


「そんなことをしてもいいですか?」


「ただ見るだけだからな。構わんよ」


 用務員のおじさんは扉を叩き、横に開いて中に入っていった。私はその後ろについていく。


 教室の中は段差になっており、大学の講義室に似ていた。人数は八〇人ほどで、なかなか多い。授業が始まったばかりだというのに、突っ伏している子や勉強以外のことをしている子が結構いた。


 教卓の後方に立ち、大きな黒板にチョークを使って文字を書いている教授は寝ている子に何か言う訳でもなく、淡々と授業を進めている。


「なんか、静かですね……」


「教授は怒ったり、けなしたりせず、自身の講義を聞いている者にのみ教えている。寝ている者は高い授業料をゴミ溜めに捨てている。ただそれだけのことだ。来年、再来年と単位が足りず、泣くのは今寝ている者達なのだよ」


「…………」


 ――き、厳しい……。意欲がある子以外はふるいに掛けられてる。こりゃ、ちゃんと勉強しないと卒業どころか進級も危ういぞ。


「えっと、今は何の講義をしているんですか?」


「今は魔法学基礎だな。魔法学基礎を四まで行い、魔法学は二年で習う。その魔法学も四まであって三年で魔法学応用を行い、技術が高い者を育て上げる方針を取っておる」


「一つの単元で学ぶことが多いんですね……」


「魔法学はこの学園で力を一番入れている教科だからな。他の学園とは学ぶ深さが違う」


「へぇ~、確かに魔法は奥が深そうですもんね」


 私が授業を聞いていると教授が手を止め、教卓の前に出てくる。

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用務員のおじさん、学園長っぽい?
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