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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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親睦を深める

「くっそ! いったい誰が悪質な品を売っとるんだ!」


「お、親父(おやじ)。今は夕食の時間なんだから、もう少し静かに……」


「バカ者。世間に悪質な品を流すなど商人としての大恥じだ! お前には商人としての誇りはないのか! わしらを侮辱されたようなものだぞ!」


 ルドラさんのお爺さんが燕尾服を引き裂こうとするくらい大激怒していた。怒りの矛先はテーブルに向かう。握り拳を硬い木のテーブルに叩きつけ過ぎて血を流すほど、血が頭に上っていた。


「御父様、手から血が……。すぐに手当てしなくてはなりません」


 ルドラさんのお母さんが手の傷に気づき、メイドさんを呼んで手当させようとする。


「ええい、今は傷の手当などどうでもいい。ルドラ。あの報告は本当なのか?」


「ただいま調査中ですが、本当の可能性が高いと思われます。何者かがマドロフ商会を名乗り、悪質なウトサを王国内で売り回っているようです」


「く……。はぁ……。面倒くさいことしやがって……。ウトサの質なんて見たら一目瞭然じゃねえか。なんで菓子職人共は気づかねえんだよ!」


 ルドラさんのお父さんは髪を掻きむしって怒鳴る。


 ――魔造ウトサは純白だ。ぱっと見たら、普通のウトサよりも質が良く見える。加えて甘みも強い。そりゃあ、見て味わっただけで良い品だと間違えるのは仕方ない。


「幸いなことに、まだこの事実は世間に知られていない。でも、国中に悪質なウトサが流れているのは確かだ。どこかの者が体調被害を訴え、広まっていけばどうなるかわからない」


 ルドラさんのお父さんは一瞬で冷静になり、ブツブツと呟いていた。


「うむ……。ウトサが健康に害をなしていると気づく者がどれだけいるかわからないが、菓子を食べている者が大勢苦しんだら食材を提供した我々が疑われる。例え偽の商人だったとしても、マドロフ商会を名乗り、売り出したと知っていれば剣先は商会に向けられるだろう」


 ルドラさんのお爺さんは両手を握りしめ、歯を食いしばり、目から血を流しそうなほど怒りを露にしていた。


「皆さん。今、食い止めなければならないのはマドロフ家を名乗る偽の商人から悪質な品をお店側の者が買ってしまわないように対策を取ることです」


 私はお爺さんから気にせず発言してもいい権利を貰っているので食事中にも拘わらず話した。


「そうだな。だが、今でも商人たちに家紋の印を持たせている。店側もその印を見て判断するんだ。これ以上に安全な方法があるとは思えんが……」


 お爺さんは印を見せて来た。ルークス王国第一王子のアレス殿下から貰ったような品と同じで家紋が掘られた印だ。だが、とても作りが簡単ですぐに模倣できそうな形をしている。


「ん~。すみません。それでは安全性に欠けると思います。どうせ作るのなら……、もっと精密に作らないと模倣されますよ」


「これ以上に精密に作るなど、今の技術では不可能だ。スキルを使っても考えられる形にも限界がある」


「印をちょっと見せてもらえますか?」


「あ、ああ。構わない」


 私はお爺さんから家紋の印を見せてもらった。八方位に向かう木柱を円で囲ったような形をしている。簡単に言うなら車輪だ。だが、私でも掘って作れそうな形であまりにも粗末。


「えっと、この印をもう少し精密にしてみますね」


「なに……、そんなことができるのか?」


「まあ、やってみないとわかりませんが、一応試してみます。その間、皆さんは夕食をお楽しみください」


 ――ベスパ。この印を物凄く精密に作りたい。車輪の奥に人の顔でも彫ってくれる。


「了解しました。すぐに作成してきます」


 ベスパは外に出て行った。


「では、三〇分を目度にお待ちください。あ、お爺さん、手の傷を手当てしなければいけません。少し見せてください」


「あ、ああ」


 私はお爺さんの右手を触り、濡れた布で血を拭き取る。木のテーブルに拳の底を思いっきり叩きつけた影響でぱっくりと裂けていた。どれだけの力で殴ったんだ……。血があふれ出てきて普通に危険だ。


「すぐに止血します」


 ――ネアちゃん、お願いできる。


「はい。お任せください」


 私は布でネアちゃんの姿を隠しながら、お爺さんの手の傷を縫い合わせてもらった。そのまま特効薬をしみこませたガーゼ替わりのハンカチを当て、包帯で固定する。


「完了しました。痛みの方はどうですか?」


「い、いや、まったくない。魔法を使わずに傷を治すなど、どういう手品だ……」


「い、いえ。手品じゃなくて手術と言いますか……。あ、新しい魔術です。手を巧みに使った治療魔術ですよ」


「なんと……。その歳で新たな魔術を考案するとは……、ラッキー。お主は天才なのだな!」


「あ、あはは……」


 ――や、やべぇ……、嘘にもほどがある。まあ、手術と言えばそうだけど、あまりにも語呂合わせだ。ルドラさんなんて頭を抱えていらっしゃる。手品と言っておいた方がよかったか。


「ルドラ、お主も息子の子とは思えんほどの秀才っぷりだったが、お主の弟子もまた、驚くほどの天才児だな」


「え、ええ。私も頭を毎回悩まされております……」


 ルドラさんの視線が痛い。あまり目立ちたくなかったのに「何目立っているんですか」と言いたげな表情だ。


「ルドラだけの弟子にしておくのも惜しい人材だ。わしの元で働いてほしいぐらいだな」


「い、いや、さすがにまだ早すぎますよ。まだ一般的な知識も覚えていないんですから」


 ルドラさんは精一杯、私を庇う。そうしないと、私がお爺さんの元に行ってしまうと考えたのだろう。


「えっと……、私は皆さんと友好な関係を築きたいと考えています。そのためにはまず名前を知らないといけませんよね」


「うむ。そう言えば、わしたちはまだラッキーに自己紹介をしていなかったな」


「ああ、そう言えばそうだな。あまりにも自然にいすぎて元から知り合いだったような気分だった」


「ええ……。驚きよね。私も名前を言ってなかったと今になって思い出したわ」


 ルドラさんのお爺さん、お父さん、お母さん共に、本当に忘れていたと言わんばかりの表情をして驚いていた。


「ん、んんっ。あー、おっほん。わしの名前はマルチス・マドロフだ。年齢は六八歳、なかなかに年老いているがまだまだ若々しいだろ~。わしはマドロフ商会の取締役を務めておる。まあ、昔は放浪ばかりしていたが、最近は歳のせいで王都でこもりっきりだ」


 マルチスさんはスベスベの顎を左手で摩りながら、眼を細めて決め顔をしてくる。もともとカッコよかったんだろうなと思うイケメンのお爺さんで、小じわは多いが七〇歳手前とは思えない若々しさだった。

 この世界の平均寿命を完全に超えている。とても健康的な方なんだろうな。

 背丈は高く、一七五センチメートルほどある。まあ、ルドラさんが高かったから予想はしていたが、マルチスさんも十分高身長だ。


「あ~、俺の名前はケイオス・マドロフ。三八歳だ。この親父から産まれたのしちゃあイケているだろ~、なんてな。俺はマドロフ商会の会長をしている。早く辞めてルドラに座を譲りたいところだ。色々持ち上げられている今の面倒な生活からはやくおさらばしたい……」


 ケイオスさんは少々ハゲかけている男性で、ルドラさんを小太りにして背を少し縮めた感じだ。マルチスさんに比べて大分老けているように見える。仕事が多忙なのかな。


「改めまして私はテーゼル・ディ・マドロフ。このひねくれた夫の妻よ。あと、優秀な子の母でもあるわ。年齢は秘密よ。主に、夫の補佐官としてマドロフ商会で仕事をしているの。よろしくね」


 テーゼルさんはとても綺麗な方だった。もちろんと言ってもいいほど胸はデカく、腰は細い。小じわやほうれい線が目立ちそうな雰囲気に差し掛かってきているが、首すら未だに肌の張りがしっかりとあり若々しかった。もう、美魔女と言ってもいい。


「えっと、この場にはいませんがあと一人、マルティ・マドロフと言う私の弟がいます。今はドラグニティ魔法学園に通う二年生です。話を通せば明日にでも会えると思いますよ」


 ルドラさんは私の方を向いて弟がいると暴露した。そんなこと一切話さなかったのに……。まあ、いいか。って、ルドラさんの弟もドラグニティ魔法学園に通っているのかよ。ほんと優秀な一家だな。二年ってことはカイリさんの妹さんと一緒だ。どんな人なんだろう……。


 私達は親睦を深め、夕食を談笑しながら得ていた。


 ざっと二八分後。ベスパが戻ってくる。


「キララ様、マドロフ商会を示す印が完成しました」


 ベスパは私の頭上から、キラキラと輝く弁護士バッチのような印を落とす。


 私は片手で取り、模様を見た。すると、車輪の奥にマルチスさんの顔が印刷されているのかと言うほどの技術で彫られており、車輪を作っている八本の木材にもマドロフ商会会長のケイオスさんの名前が彫られていた。加えて、全ての作りが精巧で、人の手で行うなど、ほぼ不可能なのではないかと思ってしまう。言わば、日本のお札と同じくらいの巧妙さだった。これを模造できるなら、してみてくれと言いたい。鉄ではなく木材なのもえげつない。ほんと、手先の器用な虫達だ。


「マルチスさん、マドロフ商会の新しい印が出来ました」


 私は印を持ってマルチスさんのもとに向かう。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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