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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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嫉妬深い奴ら

「ぶ、ブラットディア……。気持悪い……」


 ジリオン先輩はブラットディアへの嫌悪感を持っているらしく、育ちの良さを感じる。


「気持ち悪いとは失礼ですね! 私はこれほどまでにカッコよく美しく無駄がない姿をしているというのに!」


 ディアは食べている途中にジリオン先輩の方を向き、大きな声で反論した。


 ――喋らずに食べる。行儀が悪いでしょ。


 私はディアの頭を人差し指でケーキに突っ込ませる。


「す、すみません……。でも、キララ女王様に押さえつけられるの……ゾクゾクします!」


 虫たちはM気質な奴らが多すぎる。使えば使うだけ喜ぶのだから困る。私にそう言う趣味は無いのに……。


 ディアは一気に完食し、床が光るほど綺麗に食べた。ディアがブローチに擬態したので、私は広い上げて胸に付ける。


「さてと、ジリオン先輩。いくつか質問があります。お菓子の販売は最近始まったのですか?」


「う、うん。そうだよ。僕が入学したころから始まったってポリシス先輩が言ってた」


 藍色髪の艶が戻り、目の下のクマが薄くなったジリオン先輩は言う。


「そうなんですね……。じゃあ、お菓子が販売されたころはどんな印象でしたか?」


「ん~。そう考えたら、あんなに人が集まっていなかったと思う……。貴族の方も多いし、お菓子は日常にある普通の品だから、あんなに人が集まるのはおかしい。値段が破格だからだと思っていたけど、他に理由があるのかな?」


 ジリオン先輩は顎に手を置いて考え込んでいた。先ほどよりも知的で凛々しく見え、カッコイイ。


「えっと、ジリオン先輩はお菓子の販売を許可している人を知っていますか?」


「それなら、学長なんじゃないかな? それか副園長とか? やっぱり位が高い方が許可しないと販売は出来ないよ」


「なるほど、となると学園長や副園長にお菓子の販売を止めてもらう必要がありそうですね」


「あの、キララさん。お菓子を食べることは別に悪いことじゃないよ。なのに、安いお菓子の販売を中止するのはどうして?」


 ジリオン先輩は当たり前の疑問を私に訊いてくる。


「このまま放っておくと、フリジア魔術学園が崩壊します。簡単に言うと先ほどのお菓子に危険な物質が含まれているんです。速効性はありませんが、体をじわりじわりと痛めつけ、最後は狂人のようになってしまいます。なので絶対に止めないといけないんです」


「危険物質……。そんな、あんなに美味しいお菓子の中に毒物の味なんてしなかったよ。自慢じゃないけど、僕、いろんな素材を使っているから危険物かどうかはすぐにわかる。なのに全然平気だった。いったいどんな危険物が入っているの?」


「お話するわけにはいきません。言ってしまったらジリオン先輩にも魔の手が忍び寄る可能性があるからです」


「魔の手……。キララさんはいったい何が目的?」


「私はフリジア魔術学園を見学しに来ただけです。なのに事件の香りを醸し出すお菓子にまた出会ってしまった……」


「また……。じゃあ、初めてじゃないってこと……。でも、お菓子の事件なんて聞き覚えが無い。あまり大きな事件になっていないんじゃないの?」


「まあ、奇跡的に死亡者はゼロ名でしたが、街が半壊しました。ジリオン先輩が知らない決まった名すら無い小さな街です。でも、多くの者が死の危険にさらされたのは事実。同じような事件が王都で起こる可能性がある。絶対に阻止しなくては……」


「あぁ、話がチンプンかんぷんだよ~」


 ジリオン先輩は頭を使い過ぎて疲れ切っていた。


 ――ベスパ、ドリミア教会は動いていないんだよね?


「そのはずです。ただ、表立った動きをしていないだけで、裏で暗躍している可能性は十分にありえます。王都の菓子職人に魔造ウトサを流している可能性もゼロではありません」


 ――ほんと、どうしようもない人たちだ。自分達は逃げて王都の人間に暴動を起こさせる。何が狙いかはわからないけど、止めないと王都がめちゃくちゃになる。


 私は一番の手がかりである、菓子職人を調査する。今、購買の中で後始末をしているはずだ。


 ――ベスパ。菓子職人が魔造ウトサを知っているのだとしたら、自分で食べたりしないよね。


「そりゃあ、当たり前ですよ。ショウさんですら、食べるのを躊躇していたんです。何かを知らされているのなら魔造ウトサの危険性がわかっているはずです」


 ――じゃあ、購買の中にいる菓子職人さんの状態を調べてきて。


「了解しました」


 ベスパは購買に入っていき、すぐに戻ってくる。


「キララ様、菓子職人に魔造ウトサの反応がありました。どうやら、魔造ウトサの効果を知らないようです。ただの安いウトサとしか認識していないと思われます」


 ――そ、それはまずな。お菓子を作り学園に来てまで売りに出すなんて面倒な仕事を自らやってくれている相当いい人だ。安く仕入れた魔造ウトサでお菓子を作り、高額で貴族に売りつければ、大儲けが出来る。なのに魔造ウトサでも赤字になりそうなくらい安い値段で学生に売るなんて……。止めないと。


 私は購買の部屋に入り、片づけをしていた男性のもとに駆けつける。


「すみません。少しお話をしてもいいですか?」


「は、はい。どうされましたか?」


「あの、お菓子なんですけど、あの甘さはどうやって出しているんですか?」


「えっと普通にウトサですよ」


「普通のウトサなのに、銀貨一枚で焼き菓子を売って儲かるんですか?」


「ウトサの買い取り値段は多少下げてもらっていますけど、売り上げはほぼ無いですね。でも皆さんが喜ぶ顔が見れるなら、万々歳です」


 菓子職人の男性は不健康な笑顔を向けて来た。


 ――なるほど、本当にいい人が偽物のウトサを買わされているんだ。ベスパ曰く、魔造ウトサとウトサの味の違いはほぼ無い。危険か危険じゃないかくらいだ。王都の菓子職人が騙されるなら、多くの菓子職人が騙されてもおかしくない。まして食べるだけの一般人や貴族だって気づくわけない。


「あの、言いにくいんですがあなたが使っているウトサは偽物です」


「え? 偽物……。どういう意味ですか」


「詳しくは説明できません。でも、今使用しているウトサはもう、絶対に使用しないでください。あと、燃やしたり水に流したり、土に埋めたりするような行為も絶対にしないでください。私が破棄しますから、ウトサの保管場所を教えてください」


「え、えっと、その……、いきなり言われても」


 ――まぁ、そうだよな。いきなり出会った少女にウトサの保管場所を聞かれて動揺しない訳がない。高級品のウトサが盗まれたら大変だ。


「あの、どうしても不穏に思うのなら、あなたが使っているウトサを少量燃やしてみてください。黒煙ではなく大量の瘴気が現れるはずです。何かに練り込まれている状態で瘴気が発症すると、お菓子が瘴気を吸って最悪な状態になります。本物のウトサを見分けるのは味じゃなくて燃やして瘴気が出るか出ないかで見分けてください」


「燃やしたら瘴気が出る……。わ、わかりました……」


 菓子職人の男性は頷く。


 私は特効薬の入った試験管を男性に渡す。


「この水を飲んでください。だるい体に効きますよ」


「は、はあ……」


 男性は試験管を手に取り、少し飲んだ。すると、顔色が忽ちよくなる。


「お、おお……。すごい、気分がよくなりました。なんですか、この水……」


 男性は試験管を私に返してきた。


「私が言ったことは守ってください。瘴気を発生させたウトサは捨てない、料理に使わない、もう買わない。いいですか」


「わ、わかりました」


「じゃあ、誰から買ったのか教えてください」


「ウトサは商人から買いました」


「商人……。名前は?」


「その、名前は教えてもらっていなくて商会名だけを名乗っていました。確か、マドロフ商会の商人だと言っていましたね」


「え? マドロフ商会……。そんなバカな。ルドラさんの実家が魔造ウトサを売りつけるなんて……」


「キララ様、落ちついてください。まだ、確定している訳じゃありません。商会名を名乗っているからと言って本当にマドロフ商会の人間が魔造ウトサを売りつけているか不明です」


 ――た、確かに。じゃあ、何でマドロフ商会なんて名乗って魔造ウトサを高い値段で売りつけているんだろうか……。


「私の推測ではマドロフ商会に恨みを持っており、金欠な組織の犯行だと思われます。加えて魔造ウトサを持っている者となると自ずと敵が見えてくるはずです」


 ――あ……、マドロフ商会が売っている石鹸。確か、メイドさんが正教会と揉めたって言ってた。石鹸のせいで患者数が減り、正教会に入るお金が少なくなった……。まさか、だから……。


「可能性は大いにありますね。このまま放っておくとマドロフ商会の地位が地の底に落とされるかもしれません。小貴族であれば、中貴族や大貴族に潰される可能性も十分あり得ます。正教会に歯向かった商会が良い目を見るはずがありません。民からは支援されている商会だと思いますけど、貴族の力は絶大でしょう。その点に正教会まで加われば潰されます」


 ――ど、どうしよう。とりあえず、ルドラさんに伝えないと。


「そうですね。マドロフ商会の内部に敵の幹部が紛れているのかもしれません。一度、全員を調べた方がいいかと」


 ――ほんと、嫉妬深い奴らだよ。正教会。


「ありがとうございました。もう、大丈夫です。えっとマドロフ商会の悪い噂は流さないようにお願いします。質の悪い品を売りつけるような組織ではありません。その点を重々承知してください」


「は、はい……」


 私は菓子職人の男性にお願いしておいたが、初めて会った相手に信用なんて出来ない。噂話は簡単に広がるのだ。

 王都の中でマドロフ商会を名乗り、魔造ウトサを売りつけている輩がどこかにいる。そいつを捕まえたいのはやまやまだが、今捕まえたら私が敵に感づかれてしまうため大きく動けない。でも、このままほうっておいたら王都の人々が魔造ウトサの虜にされて高いお金を払った後、死ぬまで苦しんでしまう。


 私は購買から出てジリオン先輩のもとにどうすればいいか考えながら向った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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