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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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男っぽい副会長

「えっと、銀貨一枚って本当ですか?」


「ええ、本当ですよ。安いですよね。もう、私も毎日ここで食事していますよ。いや~、食費が浮いて助かっています」


 騎士の方も利用してしまうほど、格安の定食……。おいしいのだろうか。


「私も購入できますか?」


「ええ。見学者なら、購入していただいても構いませんよ」


 私は騎士の方に了承を貰い、長い列に並ぶ。どうやら、給食のおばちゃんならぬ、学食のおばちゃんに商品名を言って取り分けてもらう方式らしい。


 ――食券が欲しい……。話さなくてもいいから楽なのに。


 私が、列に並んでいると周りからの視線を感じる。


 ――何だろう。周りからの視線……、私を見ているのかな。まあ、服装が違ったら見たくもなるか。


「なあなあ、君は見学しに来たのかい?」


「え? ああ、はい。そうですよ」


 私は後ろに並んでいた男子に話かけられた。


「うちの学園を回ってみてどうだった?」


「そうですね……。私の率直な意見としては学生が学生しているな、と思いました」


「はははっ、確かにな。俺達は真剣に物事に取り組んでいる。争いごとは滅多に起こらない。そんなことしていたら単位を落として留年まっしぐらだからな。君は見たところ貴族だと思うけど、誇りが高いなら、この学園はあまりお勧め出来ないかな。貴族の誇りを捨てて学ぶ場所。それがこのエルツ工魔学園なんだ」


「なるほど。学生の率直な意見が聞けてとてもありがたいです。感謝します」


 私は頭を下げる。


「な、なんか、女みたいなやつだな……。さすがに美形すぎないか……。なんか爽やかで花みたいな良い匂いするし……」


「あ、えっと……。男とか女とかどうでもいいじゃないですか。ここは学ぶ場所なんですから、性別のしがらみもありませんよね」


「ま、まあ……。そうだな。そうなんだが……。あ! 副会長様~!」


 男性は別方向に声を上げる。すると、多くの男子生徒が振り向き、食堂に入って来た方を見る。胸の膨らみからして女性だ。


「副会長様!」


 一人の男子学生が声を上げると、何名者男子学生たちが叫ぶ。


「はいはい、うるさいうるさい。食事に集中しなさい」


 副会長様と言われている方はナイスバディで、短髪の女性だった。でも、手を叩き、注意を反らす。どうも性格がさばさばしており、仕事ができる女性の雰囲気を醸し出している。


 ――女の人だからって様付けしちゃうの……。男子、女の人に飢えているんだな。


 私が苦笑いをしていると、おばちゃんがいる場所まで移動していた。


「えっと、日替わり定食を一人前お願いします」


「はいよ~。じゃあ、銀貨一枚ね」


 私は革袋から銀貨を一枚だし、おばちゃんに渡す。すると、さすが仕事人、私が日替わり定食と言った瞬間に後方の人たちが一食作り終えていた。

 銀貨を手渡した途端に料理が盛られた皿がお盆に乗った状態で出てくる。


 ――どこで食べようかな。開いている席があればいいんだけど。あ、あった。


 私は様付けされていた副会長の周りに誰も寄りついてないのを見て、丁度いいと思い、座る。


「はぁ、こんなに人が多いのに座れるなんて幸運だな~、なんて」


「君は見学者かい?」


 案の定、副会長は私に話しかけてくる。この人は何でこの場所に座っているのだろう。食事を買いに行かないのかな。


「はい、見学者です。副会長さんはこの場所で何をしていたんですか? 食事なら、おばちゃんに言わないと貰えませんよね」


「ああ、私はあんな長蛇の列に並びたくないから、男が減るのを待っているだけだ。気にしないでくれ」


「そうですか」


 お盆に乗っている料理の内容は、野菜サラダ、白パン、水、煮込み肉、フルーツの盛り合わせ。と言った何とも豪華な定食だった。学園だからこそ銀貨一枚という破格の値段で売れているんだろうな。


 私は手を合わせて『クリーン』をしてから、食事を始める。


 多くの学生がいるのだから、感染対策はしっかりしないとね。でも、杖を使っていたら両手を綺麗にするのに手間取る。だから、拝むふりをして手の平を綺麗にした。口内もあくびを手で隠すように魔法を掛けておく。


「いただきます」


 私はフォークとナイフを持って煮込み肉を食べる。


「んっ!」


 私はパンをちぎって口の中に放り込む。


 ――や、やっぱり濃い……。でも、白パンと合わせたら丁度いい具合の味になった。この味は何だろう。いろんな野菜を煮込んで、ソウルとウトサ、ミグルムで味付けしたソースかな。醤油は使っていなさそう。でも、銀貨一枚の料理にいくつもの調味料を使っているなんてさすが王都。


 私は味に驚き過ぎて肉の味をしっかりと楽しめなかった。もう一度、肉をナイフで切り、パンの上に乗せてから食べる。


「んん……。脂身が多め……、でも、しっかりと煮込まれているから肉の繊維がほろけていく……。元は硬い肉だったのかな。噛めば噛むほどうま味が出てくるよ……」


 私は目を閉じながら口を動かし、味蕾が受けた刺激を脳にしっかりと覚え込ませる。


 ――とんてきっぽい味がするから、豚肉っぽいよな。いったい何の肉を使っているのだろう。品書きをもっとよく見ればよかった。


 私は肉からソースを削ぎ取ってなるべく味がつかないよう配慮する。まぁ、肉がすでに煮込まれているから、味を吸ってしまっているのだけど……。肉とパンを半分ほど食べた後、野菜サラダの入っている器を手に取る。


 ――野菜はソラルムとククーミス、あと、レタスっぽい葉野菜にソウルを振りかけてあるだけか。でも、みずみずしく色も悪くない。良い品を使っているんだな。


 私がフォークで野菜を刺すと細胞壁が割れる快音がジャキっと鳴る。それだけで新鮮さがうかがえる。

 野菜を口内に入れ、噛み締めるとソウルの塩味が野菜の水分と溶け合ってうま味に変わる。もう、ただの野菜サラダなのに感動して泣きそうだ。

 肉を食べるよりもこっちのほうが美味しく感じてしまうのだから、味覚が少し変わってしまったのかな。


「君、美味しそうに食べるんだね」


 近くに座っていた副会長が私に話しかけてくる。


「いや、美味しいので美味しそうに食べるのは当たり前じゃないですか」


「へぇ~、ここの学食は庶民の舌に近づけているから貴族の君にとっては薄すぎるんじゃないかな?」


「う、薄すぎる……?」


「私は貴族出なんだけどさ、家で出てくる料理の味よりも大分薄味なんだよね。でも、私はこっちのほうが好きなんだ」


 副会長は貴族らしい。でも、太っている訳でもなく綺麗な体型だ。


「副会長さんは何か誤解しているかもしれませんけど、私は貴族じゃありませんよ」


「え? そうなのかい。いや、もう貴族の貫禄を醸し出していたから疑いもしなかったよ」


「はは……、貴族の貫禄って……。まぁ、嫌な気はしませんけどね」


 私は学食の料理の味でも十分に濃いと思ったのだが、上には上があるようだ。王食と呼ばれる濃い味付けの料理は毎日食べる訳ではないらしいが、常日頃から濃い味付けなのは変わらないだろう。


「君は何でエルツ工魔学園に見学に来たんだい?」


「理由はですね、学園の雰囲気を知りたかったからです」


「学園の雰囲気……」


「はい。実際に入ってみて思っていた学園じゃなかったら嫌じゃないですか。なので、実際に授業は受けずとも、雰囲気だけでも味わってみたいと思ったんです」


「つまり、君は他にも見学に行っているということかな?」


「まだ行っていないですけど、行くつもりです」


「へぇ~、エルツ工魔学園に見学に来たということは、ドラグニティ魔法学園も視野に入れてるんじゃないかい?」


「その通りですよ。まあ、あとフリジア魔術学園にも見学に行ってみたいと思っています」


「男の君がかい?」


「あ……。あはは、えっと、私の妹がフリジア魔術学園に興味があるというので、見に行っておこうかなと……」


「なるほど、そう言うことか。まあ、毛嫌いされるかもしれないけど、見学だけなら何とも言えないな」


 副会長は腕を組み考えながら呟く。周りが男だらけだからだろうか、女性の副会長もどこか男っぽい。


「君、学園に入る時の専攻や学科などは考えているかい?」


「え……、特に考えてませんよ。逆に主な専攻って何があるんですか?」


「それを知らずに見学していたのか……。まあ、いいだろう。エルツ工魔学園の主な専攻は三種類ある。一、特殊専攻。二、基本専攻。三、応用専攻だ。まあ、応用専攻は一と二を合わせた学科だと思ってもらえばいい。学生はこの三種類に分かれ、さらに分岐していく。ちなみに私は応用専攻の魔道具学科だ」


「なんか、複雑ですね……。色々と分かれているなんて頭がこんがらがりそうです」


「ま、それがエルツ工魔学園の特徴の一つだな。本当に一点突破の学園だ。何かに突き抜けたいと思っている者が学び競い合っている」


「へぇ……。すごい熱量……。副会長はどんな魔道具を作っているんですか?」


「おぉ、聞きたいか!」


 ――あ、スイッチを入れてしまった。これはまずいな……。


 私は副会長が話したくて仕方がないという表情に逆らえず、黙々と聞くことにした。フルーツの盛り合わせを摘まみながら……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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