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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
王都の学園 ~学園の雰囲気を味わいに行っただけなのに編~

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着せ替え人形

 クレアさんは満面の笑みで私の手を取り、応接室から出ようとする。


「え、ちょちょっ! ちょっと待ってください。お誘いは嬉しいんですけど、私は行きたい場所があってですね。今、時間を使い過ぎてしまったので、外に向かいたいんですが」


「あら、外食の方がよかった? なら、外食に行きましょう!」


 クレアさんは自分勝手な性格だった。加えてその自分勝手が相手も嬉しがると思っているようだ。


「く、クレアさん。男性はぐいぐい引っ張るよりも、後ろからおしとやかについてくる女性の方を好む傾向があります。なので、ルドラさんに対してもそのような対応をすると、少し幻滅されてしまうかもしれません。なるべくおしとやかに接して相手の意見を尊重する姿勢も大切ですよ」


「そ、そうなの? じゃあ、私は毎回毎回ルドラ様をお食事に誘っても断られるのはそう言う理由……」


「ん~、可能性はあります。あと、あまりおてんばすぎると子供っぽい印象が強まりますから、めんどくさがられていたのかもしれません」


「そ、そんな……。でも、確かに表情の裏が硬かったような印象を受けた気がする……。ラッキーさん、ありがとう。私、もう少しおしとやかになってみる! 皆! ついてきて、お母さまのもとに行って花嫁修業のやり直しよ!」


「はっ!」


 メイドたちはクレアさんの部下かと言うくらい大きめの声で返事をした。


 クレアさんは両手をブンブン振って、床を思いっきり踏みつけながら走って行く。すでにおしとやかという言葉を忘れているようだが、大丈夫だろうか……。


「はは……、ルドラさんが苦労するのもわかる」


「ラッキー様。この度はクレア様のご指導、誠にありがとうございます。大変感謝しております」


「え?」


 私は数名のメイドさんに頭を下げられた。皆、中年くらいの女性で顔に小じわが少々目立つ。でも、皆さん優しそうでメイドさん達の上司っぽかった。


「えっと……、感謝されるようなことはしていないんですが……」


「いえ、クレア様は見てもらった通り、おてんば少女という言葉が似合う、元気なお方です。性格は良いのですが貴族としてはあまりにも元気過ぎて、皆、困っておりました。私達もどうにかこうにかして、おしとやかさを手に入れてほしいと思っていたんです。音楽、芸術、勉学……。何をもってしても、いい成績なのですが……、おしとやかさの欠片もない状況でして……」


 メイドさん達は頭を縦に動かし泣きそうになっているところを見ると、私は苦労を察する。


「まさか、ラッキー様のご指導でクレア様があそこまで大人の女性に見えるようになるとは思ってもおりませんでした。あの調子なら、ルドラ様も目を引いてくださるかもしれません」


「まあ、どうなるかはクレアさんしだいです。私はちょっとした技術を教えてあげただけにすぎません。あと、どんなに見繕ってもわかる相手には見透かされます。嘘は必ず気づかれるんです。なら、クレアさんの気持ちをしっかりと組んであげる方がいいですよ。あと、ルドラさんもクレアさんの気持ちに気づいていると思いますし、時間の問題です」


「えっと、失礼ながらラッキー様はおいくつでいらっしゃるのでしょうか?」


「私ですか? 一一歳ですよ」


「一一歳?」


 メイドさん達は目を丸くしていた。


「ま、まさか、学園にもまだ通われていない年齢だとは……」


「あはは……。すみません、だましていたわけじゃないですけど、まだ学生でもないんです」


「い、いえ……。驚いてしまっただけですので、謝らないでください。あと、一つ聞いてもいいですか」


「はい。別に構いませんよ」


 メイドさん達は物凄く眼を鋭くして、私の周りにやって来た。じろじろと見つめられる瞳は警察官の職務質問にそっくりだ。


「ラッキー様、少し動いてもらっても構いませんか」


「え、ええ……。わかりました……」


 私は立ち上がって歩く。いったい何を見ているのだろう。メイドさんの特殊能力か何かか。鑑定スキルとかを持っている訳でもなさそうだし、そもそも光ってないし。


「やっぱり……。歩き方が女性だわ……。手先も細いし、何より可愛すぎる」


 ――ぎゃっつ! そ、そう言うことね……。しくったあ……。も、もう少し歩き方を工夫すればよかったか。


「ラッキー様、本当に男性ですか?」


 メイドさんは物凄く怖い顔で私に聞いてくる。眼の奥が笑っていない。もう、見透かされてしまっている……。


「あ、あの……。こ、このことはルドラさんと話し合った結果でして……」


 私はメイドさん達に女であると気づかれた。その理由が可愛すぎるからって。なんかうれしいな……。


 私は縛っていた髪を解く。頭を動かし、長めの髪を下ろした。


「きゃぁ~! 可愛い~!」


 メイドさん数名の黄色い声が室内に響く。その後、私は両腕を掴まれ、衣裳部屋に連れ込まれた。


「………………」


 私は絶賛、お人形状態だ。メイドさん達に服を何着も着せ替えられている。ほんと、着せ替え人形の辛さがわかった。可愛いと言われるのは嬉しいが、体を締め付ける服が苦しい。


「まさかこんな逸材がいたなんて……。ラッキー様、どうかお願いが……」


 メイドさん達が何着もの服を持って私の前に並ぶ。


「さ、さすがに構いきれません~!」


 私は服を脱ぎ捨てて、被服室を出る。もう、下着姿とかどうでもいい。さっさと離れないととことん遊ばれてしまいそうだ。


 ――ベスパ。私の服、取って来てある?


「もちろんここに」


 ベスパは私が着ていた服を顔に被っていた。どこの変態だよ。


 ――燃やされたいの?


「いえいえ、キララ様が脱がされている時に私の方に飛んできたのでそのままにしてあるだけですよ。すは~すは~、何とも麗しい花の香り……。キララ様の服で間違いありません」


 ――後で燃やそう。


 屋敷の廊下に私の服が浮いていた。ビー達が浮かせているらしく、手を伸ばすと袖を腕に通してくれる。ライブ講演の際、服の早着替えを行った要領で、踊るように全て着込んだ。


「な、なんか変身した気分……。というか、ここどこかわからないから、ベスパ、レクーがいる厩舎まで案内して」


「了解です!」


 ベスパは私の前を飛び、先導した。

 私はベスパに着いていき、追ってくるメイドさんから逃げる。泥棒だと間違われたくないので、応接室に手紙を残し、レクーが待つ厩舎に向かう。

 ただ、厩舎までが物凄く遠かった。庭が無駄に広いせいだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。やっと着いた……」


 私は広い庭を走り、小さめのバートン場を見つけ、厩舎に入るとレクーがむしゃむしゃと牧草を食べて待っていた。


「キララさん、どうしたんですか?」


「ちょ、ちょっと色々あってね……。食事中で悪いけど、今から走れる?」


「ちょっと待ってくださいね」


 レクーは食い意地を張り、餌箱に入っている牧草を全て平らげた。八秒の間だったので、驚く間もない。


 私はレクーを厩舎から出し、背中に乗る。手綱を握ってバートン場を数回周り、レクーの脚を慣らしたら、柵を飛び越えて庭を走る。

 そのまま、出入り口に向かうと、先ほど扉を開けてくれたイケオジが立っていた。


「す、すみません。王都の中を見に行きたいので、扉を開けてもらってもいいですか?」


「了解いたしました。ルドラ様からある程度お話は聞いております。学園に行かれるのですね」


「はい。夕方までには戻ってきます」


「では、貴族の者となるべく拘わらないよう、お気をつけください」


 白髪交じりのイケオジは扉を開け、私を外に出してくれた。ルドラさんが話しを通しておいてくれたおかげでとても滑らかな脱出。


 私はレクーで大通りに出るわけにはいかず、細い裏路地を使って移動する。レクーは目立ちすぎるのだ。一国の王子様が乗っていそうな見かけだから仕方がない。


「ベスパ、ルドラさんの屋敷から一番近い学園はどこ?」


「そうですね……。ほとんど同じですけど、強いて言うならエルツ工魔学園です。案内します」


「お願い」


 私はベスパに連れられて王都の入り組んだ道を進む。もう、迷路すぎて頭がこんがらがりそうだ。でも、どんな難解な迷路も、数の前では無力。

 大量のビー達が王都にも生息しているので、ベスパの頭の中に王都の地図がすでに完成していた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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