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パン粥を食べてもらう

「お爺さん、これはパン粥です。今すぐ食べてください、少しでも栄養を取らないと…死んじゃいますよ」


「あ…ありがとう…もう、3日飲まず食わずだったもんでな…助かるよ」


――3日間も飲まず食わずで過ごしてたの…!そんなギリギリの状態で…良く生きてたな…。ということは…他の人たちも。


どうやら持つことが出来ないようなので、私はお爺ちゃんにパン粥を1口食べさせる。


すると、少し元気が出たのか、1人でもスプーンを持って食べてくれた。


「キララさん早く!お母さんが!」


――デイジーちゃんが慌ててる、何かあったんだ。


「分かった!すぐに行く」


私はデイジーちゃんの後を追い走った。


息を切らしながらも走り続け、立ち止まりそうになるのを何とか堪え、大きく深呼吸しながら肺に空気を入れるが…何故か肺に入ってくる空気が重い…。


「お母さん!お母さん!大丈夫!」


「ん…で、デイジー…」


「お母さん!良かった…」


どうやら弟君の方は意識があったらしいが、お母さんの方は意識が無かったらしい…。


相当ギリギリの状態だったのだろう。


――ベスパ、お皿2個!


「はい!ただ今!」


お爺ちゃんに作ったパン粥をもう2つ作り、デイジーちゃんのお母さんと弟君に食べさせた。


「パン粥美味しい!」


「あ…ありがとうございます…ほんと…何とお礼を言ったらいいか…」


「いえ…気にしないでください。このパンは貰ったものですから…」


「キララさん!他の人達、皆倒れてるよ!」


「え!!」


――いったいどうなっているの…。この村は、たぶん私の村と山1つ違うだけだと思うんだけど。こんなに状況がひどいなんて…。私はお医者さんじゃないからちゃんとした治療はできないけど…。見過ごすわけにはいかないよね。


「分かった。その人たちを見せて!」


私は、デイジーちゃんに連れられ他の家に回って行った。


皆の症状は大抵が栄養失調又は脱水症状だった。


水はあまり持ってきてなかったため、皆に飲ませてあげられた水の量はほんの少し…。


「川の水は飲めないんですか?」


村の隣には比較的大きな川が流れていた。


「ここの村人は井戸水と川の水を飲んでたんだが…どちらも異臭がするようになってな。飲まないようにしとったんだが…どうしても喉が渇いだんじゃろうな。井戸水と川の水を飲んじまった奴が追って、河原で死んじまっとった…。問題は井戸水と川の水どちらかだと思うんだが…」


「助けを呼ばなかったんですか?冒険者とか?」


「そんな金を払える奴はとっくにこの村には居らんかった…。皆時間が経てば元の状態に戻ると思っとったからな。しかし…事態はどんどんと悪くなっていった…。そして村の金はすっからかんの状態になってしもた」


――そうか何か問題が有るんだ…。でも水が原因なのは間違いなさそうだし…、それにここの村何か空気が凄く悪い気がするんだよね。


「ベスパ、ここの村…何か空気がおかしくない?すごくムカムカするというか凄く嫌な空気を吸ってる気がするんだけど」


「そうですね、確かにここの空気は相当悪いと思われます。風もありませんし、山から下りてきた空気がそのまま溜まっているような感じでしょうか…」


「それじゃあ、山に原因があるかもしれないってこと?」


「その可能性はありますね。ただ…この山を調べようにも、生き物が居りません。『ビー』もさっき手伝って頂いた方たちで全員だったのですが…。亡くなってしまいました」


「それじゃあ、私達が調べに行くしかないんじゃない?早く原因を突き止めて、誰かに知らせないと…」


「ですがキララ様…それは危険です!まだ何が原因か分かっていないのですから。考えなしの行動はやめた方が…」


ベスパは最大限大きな羽音を鳴らしながら私の頭上を飛ぶ。


「でも…こんなに苦しんでいる人たちがいるんだから。少しでも役に立ちたいよ」


「キララ様がそう言われるのなら仕方ありませんけど…。キララ様とレクーさん、私だけでも2手に分かれれば、捜索範囲は広くできるでしょう…」


「ありがとうベスパ」


「キララさん…どうなっちゃうの?」


デイジーちゃんが、お爺ちゃんの背中をさすりながら、私に問いかけてくる。


「心配しないで、ちょっと見てくるだけだから。あと、この果物がどこに生えていたか教えてくれる」


「うん!こっちだよ」


デイジーちゃんは疲れているはずなのだろうが…その疲れを一切感じさせない。


――何でだろう…デイジーちゃんはこの村にいたんだよね…。どうしてあんなに走ったりできるんだろう…。


私はデイジーちゃんの後を付いていく。


「ほらこれ!」


そこは川の近くだった。


周りの草木は萎れ、弱りきっている中、その木だけは青々と元気に育っており、そして多くの黄色い実を付けていた。


「どうしてか、この木だけ全然枯れてなかったんです。だから私がこれを売りに行って冒険者さんを雇えるだけのお金を集めようと思ったんですけど…。全然売れなくて…凄く酸っぱくて、いつも怒られちゃいました『こんなもんを売るな!』て。でもこの実を食べてから、私…なんか元気になった気がするんです。だから皆にも食べて欲しかったんだけど…『それは食べられる実じゃない』ってみんな食べてくれなかったんです…」


「ねえ、デイジーちゃん。その実はなんていうか知ってる?」


「え~と…確か、レモネってお爺ちゃんに教えてもらいました…」


――レモネ…レモンとそっくりな名前。でも、デイジーちゃんだけ症状がマシなのはこのレモネのお陰かもしれない。まだ断定はできないけど。


私はレモネを搾り、レモネ汁を飲む。


一応、レクーにも飲ませる。


相当嫌な顔をされたが…効果がある可能性があるため仕方ない。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


毎日更新できるように頑張っていきます。


よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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