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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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不安が募る

 私は朝に学習をして知識を付けた後、動きやすい服に着替えて体を動かす。


 シャインとガンマ君は今でも毎日鍛錬をしており、剣の腕を磨き合っていた。

 その中にセチアさんの姿もあり、スキルを貰った手前、自分の力を高めておきたいと思ったのか、シャインの辛すぎる鍛錬に付き合っている。

 そのかいあって、四カ月前に比べ、体の動きが異様によくなった。シャインの教え方がいいのか、セチアさんの体質なのかはわからないが格段に戦えるようになっている。


 セチアさんが貰ったスキル『武器使い』の内容がわかってきており「触った物が何でも武器になる」と言う効果と「触った覚えが無い武器でも使いこなせる」と言う効果だった。武器に特化したスキルのようで身体能力を上げれば、そのぶんスキルの恩恵が大きくなるようだ。


 剣にしても、真面に振った覚えがない長剣や短剣、扱いにくい折れた剣ですら戦える。物凄い多くの戦法が取れるいいスキルだった。多くの者が一つの武器に絞り、鍛錬を繰り返す中、セチアさんは体を鍛えれば鍛えるだけ、多くの武器が達人の域にまで上達できる。何ともお得なスキルで羨ましい。男の人が持ったら絶対に駄目なスキルだ。


 触った物に見境は無く、髪の毛や空気、水と言った物質、気体、液体も手が触れていれば武器に出来る。どうも、魔力操作に似たスキルでもあるらしい。


 私が河川敷に向かうと、セチアさんとシャインが戦闘訓練を行っていた。


「はあっ!」


 私の妹であるシャインはセチアさんに向って木剣を振りかざす。


「ふっ!」


 セチアさんは触っている空気を武器に変え、光っている障壁を張った。シャインの剣が空中で止まっている。どうも、空気を固定しておけるらしい。どこでも障壁を張れるとなると、相手からしたら戦い辛いったらありゃしない。

 でも、スキルなので魔力を消費する。魔力がスッカラカンになれば戦闘不能だ。まぁ、皆、魔力が無くなれば力が出ないので、一律平等である。スキルを使った戦いの練習を続けることが大切になってくるだろう。


 シャインの攻撃を止めたセチアさんは空気の塊を武器に変え、投げる。空気砲、空気弾、と言うべき攻撃がシャインの体に当たり、弾き飛んだ。


「く……。光っているのに見えにくい」


 空気の弾は光を散り散りにするらしく、スキルの効果を得ている部分が見えにくい。感覚が鋭いシャインでも当たるのだから、相当だ。


 私の眼は魔力が良く見えるので、結構はっきりと位置を認識できる。ライトも魔力が良く見えるはずなので、練度が高い魔法使いには効果が無いと考えられた。シャインは魔力操作が苦手なうえに、魔法が嫌いだ。なので、見えにくくても仕方ない。


「おらおらおらおらおらおらっ!」


 セチアさんは空気弾をシャインに投げまくる。 


 シャインは防御するのではなく、走って躱し始めた。魔法を敵の体に当てるために必要なことは相手の体を狙うことだ。

 なら、相手が知覚できないくらい速く動いて攻撃が当たらないようにすればいい。何とも脳筋な考えだ。でも、実際に効果はあり、セチアさんの攻撃は動きが早すぎるシャインに当たらない。


 木剣が曲がって見えるほどの速度で打ち込まれた剣戟は寸止めした風圧だけでセチアさんの体を吹き飛ばす。川が海の岩礁に打ち付けられたように水しぶきをあげてキラキラと光る水滴を辺りにまき散らした。


「はぁ、はぁ、はぁ……。危なかった」


「はぁ、はぁ、はぁ……。も、もう。シャインちゃん。本気出しすぎ!」


 全身が砂まみれになったセチアさんは両手をあげて怒りだす。


「そう言われても、本気で動かないと攻撃が当たっちゃいそうだったんだもん」


 シャインは息を整え、少し伸びた茶髪を耳に掛ける。


 私は彼女らの鍛錬にとてもとてもついていけないので、体を自主練で鍛えていた。


 自主練ならば誰かと競う必要はない。自分の限界を少しずつ超えて行けばいい。そう自分に言い聞かせて一日一センチメートルでも限界を超える練習を続けた。


「学園の試験まで一年を切った。勉強の方は大分進んだけど、実技は大丈夫かな……。学園にシャインみたいな化け物がいっぱいいたらどうしよう……」


 日が経つにつれて私の不安が大きくなっていく。自分の実力を信じることが出来ないのは昔からだ。少なからず、不安が勉強の邪魔になっている点はあり、仕事で失敗する時が増えた。不安による集中力の低下を確実に被っている。


「自分と不安が敵ってよく言うしな。不安を少しでも解消させたい。そのために必要なのは現地に行って情報を得ることだけど……。村から王都まで八日以上かかるし、一ヶ月は仕事を休まないといけない。そんなことできないよな……」


 私は自分の不安を解消するための時間が無かった。全部他人任せにしてしまえば良いと言うのに、出来ない。

 他の人を信用していないんだろうか。誰かに頼めば引き受けてくれる気もする。そんな無駄な思考を頭の中でぐるぐるさせているのも、私の悪い癖だ。


 長距離を走っていると、無駄な感情が頭から抜けて行って疲れるけどすっきりすると言う変わった感覚を味わえる。

 毎日毎日、サウナに入る経営者や長距離走をしている小説家をおかしいなと感じる人もいるだろう。だが、きっとあれは無駄な思考を消すための行為なのだ。

 私も同じようにして思考を消して走っている。この時間がないと不安で押しつぶされそうなのだ。だから、苦しくても走っている。苦しいと言う感情より、不安の方が強い。この不安が少しでも納まるのなら、私は毎日走ろうと思える。


「はぁ、はぁ、はぁ……。つ、疲れた……」


「お疲れ様です、キララ様。ビーの子入り牛乳です」


 ベスパは乾燥させたビーの子を粉末にして牛乳に混ぜた飲み物を私に渡してきた。


「ありがとう……」


 私はベスパから五〇〇ミリリットルほどの牛乳瓶を受け取り、液体をゴクゴクと飲む。ビーの子の粉末が入っているおかげで粉っぽいが、きな粉牛乳だと思えば問題ない。


「はぁ~。美味しい~。今日も昨日より少しだけ頑張った。昨日の私より、ほんの少し成長した。よし! まだまだ成長しているんだ!」


 私は自分の成長を大きな声で言う。そうした方が、自己肯定感が上がるからだ。自分で自分を褒めると言う行為はばかばかしいが効果はある。自分の体で立証済みだ。誰にも上げてもらえない自己肯定感は自分であげるしかない。

 その方法が自分で自分を褒めると言う行為だ。自分だけは自分の成長を見ている。だから、不安に思う必要はないと、言い聞かせて自己暗示をかけている状態とでもいうのだろうか、不安は少なからず消える。


「ふぅ……。じゃあ、ベスパ。ネード村に行こうか」


「出発の準備はもうできております」


 ベスパは頭を軽く下げながら言う。


「仕事が早いね」


「長所ですから」


 私は牧場に向かい、準備されている荷台に乗る。レクーはすでに荷台を引く準備を完了しており、すぐにでも出発できた。


 私は手綱を握り、レクーを歩かせる。ライトは先にネード村に向っており、シャインとガンマ君は走ってネード村まで行くそうだ。


 私は荷物があるので荷台を引いていく。転移魔法陣の中に入れれば移動は楽になるが、多くの人が驚いてしまうので自重して人がいる場所では普通に運ぶようにしていた。


「よし、レクー。出発進行!」


「はい!」


 レクーは走り出した。雪は全て溶け、草花が生い茂る道になっているため、走りやすい。


 ネード村に到着すると、麦の香りが物凄く広がっていた。イーリスさんの麦畑は広大なので、遠目からでもわかる。黄色っぽい穂が、大きくなっており、穂先が少しずつ垂れさがっている。収穫までもう少しのようだ。


 私はデイジーちゃんの家に移動した。


「キララさん。おはようございます! 今日は良い天気ですね!」


 私にも負けない笑顔が可愛い村娘のデイジーちゃんがお出迎えをしてくれた。私の弟であるライトは少々緊張しているのか、しどろもどろしている。


「おはようございます。キララさん。今日も来てくれてありがとう。感謝してもしきれないわ」


 超絶美人な未亡人のイーリスさんが家の中から出てきてデイジーちゃんの弟君であるルイ君を抱っこしていた。去年よりも成長して来ており、とても可愛らしい。


「じゃあ、早速、苗を作りましょうか」


「はい。そうしましょう」


 イーリスさんはビー達が作った笊の上に乗っている種を持ってきた。この種は去年の秋ごろに取ったSランクの野菜の種だ。イーリスさんのスキルは『鑑定(野菜のみ。回数制限一日一〇回)』という鑑定スキルだ。

 種を少しずつ見てもらい、Sランク以外の種は排除してもらった。そうしても、十分と言っていいほど大量の種が出来ている。植える野菜は夏野菜のソラルム(トマト)、ククーミス(キュウリ)、メロンゲーナ(ナス)の三種類だ。


 私達が話していると、後方からシャインとガンマ君が到着した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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