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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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皆を笑顔にさせる才能

 踊っていると会場から、お~! うわ~! きゃ~! などと歓声が上がる。物凄く気持ちいい。

 二曲目のサビを歌いながら踊りを織り交ぜると、会場の人々は前の方に押し寄せてくる。跳躍する者や、手を振る者、大きな声を上げる者など様々だが、私の公演を楽しんでくれているようだ。


 ライトやシャイン達は楽しみたいと言う気持ちと警備しなければならないと言う一番辛い役割になっており、私と街の人々を何度も見回していた。


「キララ……、あんなこともできるのか……」


 料理人のウロトさんは料理を作る手が止まり、私の方を見ている。


「はは……、キララちゃん、なんて子なんだ……」


 研究員のスグルさんはなぜかアレス王子の奥さんと娘さんの近くにいた。


「まぁ……、なんてカッコいいのかしら……」


 超絶美人な奥さんからの嬉しい言葉に私は熱が入る。


「きゃ~! こっち見て~、こっち見て~! キララちゃ~ん!」


 娘さんはウサギのようにピョンピョン跳ね、私に熱烈な視線を送る。


 私はもちろん……。


「ありがとうっ、超可愛いお嬢さん!」


 私はファンサービスとして娘さんに向ってウィンクを送った。


「きゃあああああああああああああっ!」


 娘さんは私のウィンクに撃ち抜かれ、後方に倒れる。その体をトーチさん、ロミアさん、マイアさん、フレイさんの女騎士が支えた。


「お嬢様! 大丈夫ですか!」


 赤髪の女騎士は娘さんの目がハートになっている姿を見て、苦笑いをしている。


「キララちゃん……。女の子なのに女の子の心、奪っちゃったよ」


 女騎士のロミアさんは自分も奪われちゃったと言わんばかりに呟いていた。


「ああ……。物凄くカッコいいな。さすがライト君のお姉さんだ」


 男性っぽい女騎士のトーチさんも私の方を見つめてくる。


「キララちゃん、何で、あんなにカッコいいの……。さっきはすごく可愛かったのに」


 女性らしい女騎士のマイアさんはパ~っと表情を明るくしている。


「キララちゃんの裏の顔……。もしそうなら、今までのキララちゃんはいったい……」


 フレイさんの意味深な発言は少々怖かったが、私の心に裏や表が無いと言うことを知ってもらいたくなった。


 二曲目が終わり、私は街の皆から大きな歓声と拍手を受け取った。ほんと、私のことを知らない人でも虜にしちゃうなんて、やっぱり、私はアイドルの才能があるのだろうか。

 前世も今も、人を笑顔にすることが得意なんて……運が良いこった。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。皆~! ありがとう! 二曲目は「キララキランド」。皆の心の熱を湧き立たせるために歌ったよ~! 楽しんでくれたかな~!」


「うおおおおおおおおお˝っ~!」


 多くの者が熱狂し、会場の熱気が冬の寒さを吹き飛ばすほどに沸き立っていた。


「うん! すっごく楽しんでくれているみたいだね。こんなに喜んでもらえて、キララ、すごく嬉しい!」


 ――はぁはぁはぁ、や、やばい。心臓が、心臓が破裂しそう……。二曲目に「キララキランド」を持ってきたのが間違いだったかな。さすがにぶっ続けで行う曲じゃなかった。で、でも皆の心が盛り上がってる。このまま、続けて歌うか。でも、私の体が持つのかな。最悪、口パクもありか……。いや、やっぱり生歌じゃないと響かない。


「よぉ~し! キララの心も轟轟と燃えているよ~! 寒さなんて吹き飛ばしちゃうんだから! 皆~! もっと盛り上がっていくよ~!」


「うおおおおおおおおおおおおおっ!」


 会場にいる人々は大声を出し、私の掛け声に反応した。


 天幕が降りてきて私は衣装を変える。


 今回はお姫さまっぽく、フリルでフワフワした丈が長い黄色のドレスを着て上品に歌う。観客たちがノリノリになり、皆も踊り出し始めた。歌の流れが良いのか、それぞれ独自に踊っている。ま、一番うまかったのはお姫様の二人だけどね。


 舞踏会のような雰囲気が辺り一帯に広まり、私は誰も相手がいない寂しい役柄。でも、相手を想像させるような動きをして、会場を沸かせる。


 ――ここで体力の温存……。生憎、皆が楽しそうに踊り出してくれてよかった。会場に一気に一体感が生まれたぞ。そろそろ体力の限界だし、全員の心を奪いに行かないと。


「はぁ、はぁ、はぁ……。私の三曲目は全員で楽しめるように歌いました。曲名は「キラキラしたい」です。はぁ、はぁ、はぁ……。ほんと、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますね。私に、もっと体力があればよかったんですけど……、もう限界が近いです」


 私は自分の状態を皆に話した。その方が感情移入してもらいやすいからだ。


「でも、私は最後まで全力で頑張ります。皆さん、最後の最後まで一緒に盛上っていきましょう!」


「うおおおおおおおおおおおおおっ!」


 会場はすでに一体化しており、私が叫べば、同じように皆が叫ぶ。皆で盛り上がると言うのは人間の共感性を刺激し、高揚感を湧き立たせるのだ。実際、大声を上げている者の中に、辛そうな者はいない。


 天井から天幕が降りてきて私の衣装がまたもや変わる。


 今度は初めと同じアイドル衣装。ふわふわのレースに短めのスカート。黄色と白色を基調にした明るめの服装だ。遠くから見たら魔法少女に見えるかもしれない。ま、今は魔法が使えるから魔法少女か。


 私が着替え終わると、白色の光が後方から照射され、私の神々しさを際立たせる。音楽はゆっくりと流れ、私の歌い出しまでの間、足踏みと拍手をして会場にいる人々に盛り上げてもらう。


 ――さあ、四曲目……。やっぱり三〇分が限界だったかな。少し休憩すればあと一曲くらい行けるか。いや、そんな後のことは考えず、全身全霊! この場にいる人を全員笑顔にするのが私の役割。歌い終わったら倒れても良い。その覚悟で四曲目に臨め!


 私は先輩アイドルの言葉を思い出し、全身全霊! 今の私の全力をこの場にいる人々にぶつける。


 私の全力と言うことで、ベスパや他のビー達の体に拍車がかかり、大音量と光の量、赤子へのノイズキャンセリングなどなど、完璧な配慮を行っていく。


「ふぅ……。今の私にできる最後の曲! みんな~! いっくよ~!」


 私は天にピースを掲げ、伝えた。


「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 会場の人々が叫ぶと少々曇っていた空が、パーッと晴れて神々しい光に包まれる。


 皆は私しか見ていないから気づいていないだろう。でも、空は青色ではなく白っぽい黄色になるほど輝いていた。


 ――そう……、女神様も見てるんですね。楽しんでくれているようで何より。今の私は過去の私よりも輝いているだろうか。ま、目の前の光景を見れば、一目瞭然。気にするな!


 私は歌の入りを小さく歌い、皆の心を引き込む。透き通るような私の歌声が会場にいる人皆に届き、グイグイと引き寄せる。

 女王蜂のフェロモンに寄ってくるおバカな雄のように、無意識に近づかせて相手を鷲掴みにするのだ。


 サビ前に笑顔を少々抑え込む。私の感情の絶頂は一番盛り上がるところまで温存する。その方が周りの期待と私の感情が合わさり、爆発するような心の煌めきを得られるのだ。


 サビは全力の笑顔と歌、踊りで見せる。私は会場にいる全員が発する応援や叫ぶ声が、聞こえないくらいの集中力を発揮し、ライトとシャインのオタ芸がとんでもなく眼に入ってくる。


 その無条件の笑いが笑顔に加わり、八〇点だったのに八億点にまで跳ね上がった。


 一番と二番で歌い方を少々変える。一番は初々しい感じ。二番ではこなれた感じ。


 でも最後のサビは初心を思い出したプロの歌と笑顔、踊を行い、会場をライブ一番の盛り上がりにした。ほんと、会場にいる全員が笑顔で、この世界に来てからこんな光景を見た覚えがない。


「うおおおおおおおっ! キララさ~ん! 輝いてるよ~!」


 菓子職人のショウさんはビックリするくらいの雄叫びを上げて私を呼んだ。


「にゃぁ~! とんでもないにゃ~! にゃぁ~! 凄すぎて! 言葉が思いつかないのにゃ~!」


 冒険者ギルドの受付嬢のトラスさんは大きな胸をバインバインと揺らしながら跳躍している。


「キララちゃん……。この前よりすごいよ……」


 真っ赤でキラキラのドレスを着ているメリーさんは両手を握り締め、胸に置いている。眼が乙女で愛らしく、子どもっぽかった。


「キララちゃん……。私を応援してくれてるんだね……。なら私も、応援しないと。うおおおおおおおっ! キララちゃ~ん! 頑張れ~!」


 黄色っぽいキラキラのドレスを着ているセチアさんは両手を口の横に当て、メガホンの応用で声を大きくしながら叫ぶ。


 私の名前を呼ぶ声にはファンサービスを忘れない。投げキッスにウィンク、決めポーズにジャンプ。出来る限りの感謝をして皆を楽しませるのだ。


 ――やっべぇ、息が出来ない……。でも、ここで止まるわけにはいかない。あと、三〇秒。もって、私の体!


 声を出しながら踊ってファンサービスまで行っていたら息つく暇など無い。無呼吸運動に近しい状態になり、脳が酸欠になり始める。もちろん視界はぼやけ、足下もおぼつかなくなるが、ふら付くと、ネアちゃんが体を支え、ディアたちが台替わりになる。


 ほぼ死にかけの状態で天にピースを掲げ、私の決めポーズをとった。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………。いぇい……」


 私の苦し紛れの笑顔とウィンク、ピースサインを観客に向ける。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 地面や舞台が揺れるかと思うほどの雄叫びが会場全体からあがった。皆の周りにキラキラとした光が生まれ、空に浮かび上がっていく。あれが神達の力となるのだろうか……。まあ、そんなことはどうでもいい。見たところ、どうやら街公演は大成功したようだ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁん! ねえさ~ん! ガッコ良いよぉ~!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁん! お姉ちゃん! 大好きだよぉ~!」


 ライトとシャインが両手を振りながら盛大に泣いている。でも、満面の笑みで、嬉しいのは変わらないらしい。


「はぁ、はぁ、はぁ……。み、みんな~。どうもありがと~う! 四曲目は「キラキラ・キララ」。皆が輝けるようにって歌いました。私はすごく楽しかった。皆は、楽しんでくれたかな?」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 会場にいる人々は私に返事をする。もう、ブラックベアーの雄叫びなんて目じゃない。


「うんうん、皆、楽しんでくれたみたいだね。キラキラ・キララ。初の街公演は皆のおかげで大成功! これで、一八〇人の皆もキラキラな人生になるよ! あ~、私に掛かっている魔法の効果が切れちゃう。じゃあ、皆。またどこかで会おうね~! バイバイ~!」


 私が皆に手を振ると空の光が何度も瞬きしたくなるほどの眩しさを放つ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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