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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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重苦しい空気

 一月八日。聖典式が全国で一斉に行われる日がやって来た。


 私は午前三時三〇分ごろに目を覚ます。外はもちろん暗い。


「ふぅ、しっかり眠れた。体の動きや体調は悪くない。喉の調子も完璧に近い。これなら、十分行ける」


 私はベッドから降りて両手を握ったり開いたりする。


 頭上を見ると、ネアちゃんが糸で作ったハンモックに横たわって眠っていた。加えて、右端の方を見ると私の魔力で作った魔力体のミツバチがせっせと動いている。


「ふわぁーん」


 ベスパは木の穴で私と同じ時刻に起き、体を伸ばして眠気を覚ます。


 私はベッドから降りて綺麗な服装に着替える。

 派手過ぎないドレスで、白と黄色を基調にした色彩にしてある。まぁ、聖典式を受ける人以外は綺麗な服を着る必要は無いのだが、気持ちを上げるために身なりを整えるのは元日本人の特性だと思う。


 服の裏側には『ヒート』の魔法陣があるので寒くはない。


 周りから不審がられるのも嫌なのでローブを一応羽織って行く。


 自作した太ももに巻き付ける用の試験管ホルダーに試験管を入れ、太ももに巻き付ける。腰に巻き着けるホルダーはあまりにもドレスに合わなかったので今日は却下だ。

 両脚に四本ずつ付けられるので、計八本。必要になって来るかわからないが、緊急時に備えておくことは悪いことじゃないはずだ。


 私は鏡の前で太ももに巻き付けた試験管ホルダーを見る。


「な、なんか諜報員(スパイ)みたい……。これが武器だったらまさしく綺麗な仕事人だ」


 私はスカートの丈を降ろし、試験管ホルダーを隠す。


 私が準備を整えて部屋を出ると、紳士服(タキシード)に似た服を着ているお父さんとライトが居間にいた。


「お父さん、全然似あってないね……。うん、ほんと驚くぐらい似合ってない」


「に、二回も似合ってないと言わなくてもいいだろ。仕方ないじゃないか、こんな服を着るのは今回が初めてなんだ」


 お父さんは田舎者臭がすごく、タキシードが浮いている。まぁ、顔は悪くないのできっと着ている間に馴染んでいくだろう。


「姉さん、僕の方はどうかな?」


「うん、ライトはビックリするくらい似合ってるよ。本当に貴族になったみたい」


「エヘヘ……、そんなに褒められると困っちゃうな~」


 ライトはお世辞抜きでカッコよかった。自分の弟フィルターにかけなくても二度見しそうなくらいに似合っている。杖ホルダーを腰から下げ、すぐに抜き出せる位置にあり、警察の警棒のようだ。まぁ、警棒よりも断然、危険な代物なんだけどね。


「うぅ、お姉ちゃん……。私、この格好で行かないといけないの……」


「おぉ……、シャイン。改めてみると凄いね……」


 シャインは女性用のタキシードを着ている訳だが、私のぺったんこな胸とは違い、しっかりと形がわかる大きな胸を持っているので、胸元が膨らんでいた。

 背丈が低いのに大きな武器をすでに持ってしまっているのだから、羨ましい。

 腰にシャインの身長にあった短い剣が二本掛けられており、タキシードとの相性が良かった。警備にしっかりと当たってもらえそうだ。


「キララ、シャインにもドレスを着せた方がいいんじゃないの?」


 お母さんは私と同じように目立たない淡い色のドレスを着ていた。とても大きな胸とお尻が映え、若々しい顏も相まって美人過ぎる。


「シャインは動き回るから、ドレスよりも動きやすい方が良いと思ったんだよ。実際、シャインがドレスよりタキシードの方が良いって言ったからね」


「そう、なら仕方ないわね」


 私達家族は安い生地から服を仕立てて着用しているので見かけによらず安い価格で澄ませている。ネアちゃんとお母さんの裁縫技術があれば大抵の服は作れてしまったのだ。


「よし、朝食をさっと得て牧場に向かおう」


「了解」


 皆は頭を縦に振り、完璧に合わせる。


 ――ベスパは荷台の準備をしておいて。あと、街に行くまでの通路で危険が無いか再度確認。私の荷物も木箱に入れて荷台に積んでおいて。


「了解です」


 ベスパは光りながら家の外に出て行った。


 朝食はパンと牛乳、干し肉にビーの子と言った調理しなくてもすぐに食べられる品ですませ、出発の準備を再度確かめてから家を出る。

 外は暗いので、ライトにお願いして魔法で道を照らしてもらい、牧場に歩いて行った。牧場に向かうと途中で子供達と合流する。


 子供達は皆、そこはかとなく綺麗な恰好をしていた。制服という訳ではないが、女子と男子で分かれ、ほぼ同じ服を着て作業員らしくなっている。ただ主役のセチアさんとメリーさんだけはキラキラの衣装だった。


 私達は大人数で移動し、牧場に到着した。


 すでにバートン達と荷台が繋がっており、出発の準備が全て整っている。


 レクーが引く荷台に今日の主役であるセチアさんとメリーさんが乗り、ライトとシャインが護衛につく。


 ウシ君が引く大きな荷台に子供達とお父さん、お母さんが乗って移動する。


 今回は二台で街に向かいサモンズボードに入れてある品を街で出して準備を進める予定だ。


 私は荷台の前座席に座り、革製の手袋をはめる。


「よし、レクー。安全走行でよろしく」


「わかりました」


 私が手綱を持ち、少し動かすとレクーは歩き出した。


 ――星が綺麗に見えてる。今日は晴れかな。


 私は綺麗に輝く星を見上げながら街に向って行った。


 その間に、セチアさんとメリーさんに聖典式の流れを話す。もう、二人共緊張しており、冷や汗が止まらない様子だった。

 人数が多いから気負う必要は無いはずだと説明すると少し落ち着いてくれた。


 街まで進む道の状態が良くなっており、難なく移動できている。このまま行けば予定の午前七時にはつきそうだ。


 私がうきうきした気分で街に向っているとベスパが話しかけて来た。


「キララ様、街の様子が少々おかしいかもしれません」


 ――え、どういうこと?


「いえ、深刻な問題ではないと思うんですが、雰囲気が暗いと言うか聖典式の日に気分が下がっているというか」


 ――よくわからないな。行ってみないと状態がはっきりとわからないし、聖典式の延期は出来ないから、今日、行わないと。


 私はベスパの意味真な発言に少々焦りが現れる。


 ――空気が悪いと気持ちが下がるからな。風通しが悪いせいか、それともまたほかの原因があるのか……。


 私は考えても仕方のないことで悩んでいた。今、悩んでも無駄な活力を減らすだけなので街に到着してから考えよう。


 三時間後、私達が街に到着すると雰囲気が暗かった。門の前からでもどんよりとしているとわかる。


 私は辺りを見渡して何か原因があるのかと思い、ビー達に探させた。


「ん~、姉さん。これは異常だね」


 私が街に入るのを渋っていると顎に手を置いたライトが私の横に歩いてきた。


「やっぱり、そう思う? でも、原因がよくわからない。誰が街を重苦しい状態にしているのかな?」


「原因はわからないけど、街全体に空気よりも重い魔力の粒子が蔓延している。そのせいで重苦しくなっているんだと思う」


 ライトは杖ホルダーから三〇センチメートルくらいの杖を取り出した。


「『気流(エアフロウ)』」


 ライトが詠唱を放つと下からの風が上に向かって吹く。どうやら上場気流を発生させたらしい。


 日が差してくると重苦しい空気の色がはっきりとしてきた。黒っぽく、瘴気に近しいが、瘴気ではない。ライトの発生させた上昇気流のおかげで黒っぽい魔力は上空に集まった。


「『消失(クリア)』」


 ライトは空中に魔法陣を展開し、重苦しい空気を消し去った。


「よし、とりあえず応急処置は終了かな。あとは発生源を探さないとね」


「それなら任せて」


 ――ベスパ、街の中か外で何か魔法を発動した形跡のある場所とかない? 発生させた可能性のある人とかでもいいけど。


「探してみます」


 ベスパは無数のビー達で街の中を捜索した。何者かが街で聖典式を行わせないようにしたのか、はたまた、ただの不慮の災害だったのか。


 アレス王子がいると言う情報が他の人に気付かれている可能性が高いので街ごと消すと言う考えも出来なくはない。

 聖典式なら多くの者が動くし、敵も入り込みやすいはずだ。そうなると、王子や騎士達を弱らせておき、一網打尽にしようと言う作戦の可能性だってある。


 ――私の知らない敵も常に動いているのなら、痕跡がある。数の力を舐めるなよ……。


 私達は荷台に乗り、門に近づいていき、兵士のおじさんに話かけた。


「おはようございます、今日は聖典式の日ですね」


「おぉ、嬢ちゃん。今日は綺麗な服を着ているんだな。それだけで見違えるとは、大したもんだ」


「えへへ、ありがとうございます。えっと、さっきまで気分が悪かったとかありませんか?」


「ん? ん~、ああ、確かにな。胃もたれに頭痛が合わさったような感覚だったな。でも、今は治ったぞ」


「そうですか。じゃあ、聖典式のお勤めを頑張ってください」


「ああ、嬢ちゃんもな」


 兵士のおじさんは私に手を振って門を通してくれた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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