少女の村
「あ…ありがとうございます。あの、銅貨1枚です。1個買ってもらえませんか…」
「うん!とりあえず1個、買わせてもらうよ」
私は銅貨1枚を少女に手渡す。
――とりあえず味見しないと分からないよね。
私はレモンを食べるには大きすぎる口で齧り付き絶叫する。
「よしゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
私の絶叫した声に驚いたのか、周りの人は一瞬その場で停止し、何もないことに気づくと何事もなかったかのように歩きだした。
――間違いない、レモンだ!…とうとう見つけたぞ!
「あと何個この果物あるの?」
「え…ええと…10個です他の奴は全部踏みつぶされちゃって…」
「よし!全部買った!」
「え!い、良いんですか!こんなもの…あ!違います、この果実スッゴク酸っぱいのに」
「勿論!私にはこれが必要だったの、はいこれ銀貨1枚」
「あ…ありがとうございます。これで、お母さんと弟にパンを買ってあげることが出来ます…」
何か事情があるのか、その少女の表情は少し明るくなり、血色が良くなった気がした。
「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」
「は、はい!何でしょうか?」
「どうしてこんな所で売ってたの?それに、やせ細ってるしちゃんと食べてないんでしょ?」
私は何故かその少女の事が気になり、色々と質問したくなったのだ。
「は…はい、最近は全然食べ物を食べれてません。お母さんも弟も凄く弱ってて…私しかお金を稼げなくなちゃって。私の村、前は凄く豊かだったんです。でも最近全然穀物や野菜が育たなくって、川の魚もいなくなっちゃうし。村の人たちは皆凄くお腹を空かせているんです…このままじゃ皆…」
――レモンを売っていたのは…この子だけ、これからレモンが必要になった時にこの子がいなくなったらレモンが買えなくて困るな…仕方ない。
「ねえ、あなたの村は何処にあるの?私、この果実のことをもっと良く知りたくて、連れて行ってくれない?」
「え…でもすごく遠くて、私も走って半日は掛かっちゃうし」
――何処から走って半日なんだろう…。でもまぁ、この子が走れる距離なんてたかが知れてるよね…。レクーならすぐ着けるよ。
「大丈夫!私にはすごい友達がいるの!」
「え…友達?」
私が大声を発したせいか、少女は目を丸くし疑問を問いかけてくる。
「そう、友達。えっと、まず…挨拶からだよね。初めまして私は『キララ・マンダリニア』、年齢はピチピチの10歳よろしく」
「わ、私は、デイジー・ラベンスと言います。歳は7歳です」
――7歳、やっぱり双子と同じ年齢だ。ちょっと強引ではあるが、レモンを手に入れるためには仕方ない。
「それじゃ、私の友達を紹介するね。こっち来て」
「わわ…ちょ、ちょっと」
私はデイジーちゃんの手を強引に引っ張りレクーの所まで連れて行った。
「お…おっきい…。この子がキララさんの友達…」
「そう!レクティタ。私は呼びにくいからレクーって呼んでるの、デイジーちゃんもレクーって呼んでいいからね」
「キララさん…この子は?」
「うん、ちょっとね。私の夢に必要な人材なの、だからちょっとレクーにも手伝ってもらいたいんだよね」
「今度はいったい何を考えているんですか…。まぁ、手伝いますけど」
「あの…、キララさん。誰と話してるんですか…?」
「え!あ…ああ、何でもない何でもない、私…ちょっと独り言が多いんだよね」
――そりゃそうだよね、普通喋ったりしない動物と話してるなんて。独り言だって言ったけど…恥ずかし…。
「独り言…そうなんだ!独り言って楽しいの?」
「た、楽しいとかそういう事じゃないけど…」
――何この子、凄く純粋に信じちゃったんだけど。でも普通の7歳児はやっぱりこうでしょ。やっぱり、うちの双子は何かネジが外れてるのかも…。
「まぁ、その話は置いておいて、今すぐ向かうよデイジーちゃんの村に」
「え…やっぱり行くんですか…でも私その前にパンを…」
「大丈夫!心配しないで、お土産はいっぱいあるから」
私はデイジーちゃんをレクーの背中に乗せた後、私自身もレクーの背中に乗る。
デイジーちゃんを私の前に座らせ、振り落とされないようにしっかり腕と足の太ももで体を押さえる。
「レクー大丈夫?重くない?」
「はい、全然大丈夫ですよ。まだまだ軽いくらいです」
「それじゃあ、デイジーちゃん、村に案内してくれる?」
「は、はい…あっちの門から出てもらって道を真っすぐ…」
「レクーあっちの門を真っすぐだって!」
「了解!」
「あ!私以外も乗ってるから、優しくね」
「は、はい」
――あれ…こっちの道って、私たちが来た方向と一緒だ。もしかしたら、私たちの村と結構近いのかも。
私はデイジーちゃんに言われた通りの道を走っていた。言われた道というか…ほぼ来た道を戻っているんですが。
「は…早い!早い!すごーい、レクーはこんなに早く走れるんだ!」
「デイジーちゃん、あんまり喋ると舌を噛んじゃうよ」
「うううう…シダがんじゃっだ…」
「言わんこっちゃない…」
こんな事がありながらも、一本道を走っていると。
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