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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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舞台の準備

「レイニー、自分で考える癖をつけた方がいい。何でもかんでも私に聞いていたら駄目。本当にわからない問題は、私も一緒に考えてあげるから、自分で解決できると思ったら自分で解決した方が力が付くよ」


 私はレイニーに自己解決能力を付けてもらう。


「そ、そうか……。言われてみたらそうだよな……。キララにばかり頼っていたら意味がない……。じゃあ、考えてもわからないことを聞いてもいいか?」


「なに?」


「剣に魔法を纏わせるにはどうしたらいいんだ?」


「あぁ……。えっとね、手っ取り早いのは剣自体に魔法陣を描き込むの。すると魔道具って言う道具になるんだけど、一度描き込むと描き換えるのが難しい。私やライトみたいに、魔力で描き込めば何度も変えられるんだけど、レイニーは無理だよね?」


「ああ、無理だな。俺はキララやライトみたいに何も見ないで魔法陣を描くのは絶対に出来ない。それ以外の方法だとどうなる?」


「ん~、現実的なのは呪文から唱えて魔法が剣に纏わりつくように制御するしかないかな。そうすれば剣に魔法を纏わせられるよ」


「なるほど……。ありがとう、試してみる」


 レイニーは木剣を握り、ブツブツと呪文を唱えた。やはり呪文を短縮した詠唱を放つよりも時間が掛かる。


 呪文が終わると木剣に雷のような電撃が発生する。空気を震わすほどの振動が伝わってくる。雷電剣なんて中二病みたいだが、本当に雷を待った剣に見えるのだ。


「ふぅ……、きついな……」


 レイニーは雷電剣を一度振った。すると空中で魔法のメッキがはがれ、剣先が地面に向くころにはただの木剣に戻っている。


「くそ……。魔法が木剣に纏わっているだけで振ったら魔力が剥がれた。これじゃあ、使い物にならないな。キララ……じゃなかった、自分で考えろ、自分で答えを導きだすんだ」


 レイニーは私の方を見て頼ろうとしてきたが、頭を振り、自分と真剣に対峙している。


 ――うんうん、私がいなくなっても成長できるように自分で学ぶ姿勢を忘れてはいけない。レイニーならもっと強くなれる。頑張れ。


「レイニー、聖典式の準備を始めてもいいかな?」


「ああ、構わないぜ。俺にも手伝えることがあったら教えてくれ」


「わかった。子供達にも手伝ってもらうよ」


 私は教会のすぐそばにある広い空き地を使い、即席の舞台を作る。ベスパに頼めば簡単な作業だ。


「じゃあ、ベスパ。ネアちゃん。よろしくね。一番重要なのは地盤だから、耐震の調査をした後、建物を立ててね」


「もちろんです。私はすでにいくつもの建物を作っているのですよ。どんと任せてください」


 ベスパは自分の胸を叩き、翅をブンブンと鳴らす。


「私の糸で強風が吹いても絶対に壊れない建物にしますね」


 ネアちゃんは糸を手に巻いており、頼もしい。


 二匹は建築作業に取り掛かった。時間が掛かると思うが、私が村に帰るころには終わるだろう。


 大きさは横一〇メートル、奥行き七メートル、天井は一応着けるが晴れたら吹き抜けにしようと考えているので、取り外せるようにしてもらう予定だ。ただの舞台では面白みもなく、木製の神社みたいに見えてしまうので、華やかさを出さなければと思った。


「さてと~。私は垂れ幕を作ろうかな。子供達にも手伝ってもらおう」


 私は子供達がいる教会の中に入っていった。


「キララお姉ちゃん!」


 何人もいる子供達は私の方を見て足音をどかどかと立てながら近づいてきた。


 病気だった子達は皆元気になり、後遺症もなさそうだ。窓が開いており、換気中だったのだろう。でも『ヒート』の魔法陣が光っているので室内はとても暖かい。


「皆、手伝ってほしいことがあるの。良いかな?」


「キララお姉ちゃんのお手伝い、した~い!」


 子供達は皆ノリノリで、私に手伝うと言ってくれた。可愛い子達だな、全くもう。


「私は垂れ幕に聖典式って書くから、皆は文字の周りに好きなように描いて行ってね」


「は~い!」


 私は大きな筆で垂れ幕に聖典式とデカデカと書いた。もう、習字のパフォーマンスとでも言っていいくらい大胆な字体だ。


 子供達は色が付いた岩石をガリガリと砕き、粉々にしてニスと混ぜ合わせる。そのあと、垂れ幕に好きな文字や言葉、絵、など自由に描いてもらった。大きな垂れ幕なので、子供達全員の思いが込められる。


 ――街が変わって初の聖典式だ。絶対に成功させなくては……。


 後、三日しか猶予がない。でも、舞台以外の準備はすべて完了している。街に住んでいる一〇歳の数は約一八〇人。私の住んでいる村とは比較にならない。

 加えて、ここは田舎の街だ。王都だといったいどれくらいの人数が聖典式を受けるのだろうか。

 

 考えただけでも、胃が痛くなる。なんせ、今回の費用は全てで金貨八〇〇〇枚以上だ。一人当たり金貨四四枚必要になり、親が出す場合もあれば、街が工面してくれる場合もある。多くの者に振舞う食事などでお金がかさみ、服代や教会に入るお金の分もあるらしい。

 確かに人数が増えれば増えるほど面倒になる。感じたくなかったが、ドリミア教会の苦労も何となくわかってしまった。


 垂れ幕が完成する頃には舞台もほぼ完成していた。ほんと、どれだけ建築が早いんだか……。


 ビー達は釘やネジを使っているわけではないので、ほぼ木造。接着剤にモルタルを使ったりしていないので耐震にも強い。なんせ、割れ目がないのだ。どこにも亀裂が入っておらず、罅が広がる心配がない。


「ん~。やっぱり質素……。でも、これはこれでいいのかな」


 私は舞台を見て本当にただの木の建物だと思った。逆に、これだけ質素なら、私の煌びやかな姿が映えるかもしれない。


 ――ベスパ、垂れ幕を横に掛けてくれる。


「了解です」


 ベスパと他のビー達は垂れ幕を横長に持ち、舞台の中央に掛けた。


 私の書いた聖典式の文字がはっきりと見える。何とも文化祭の時みたいで懐かしい……。って、私の高校生の時なんてほとんど良い記憶がなかった。


 周りからはぶられてだいたい一人ボッチ。仲が良かった子もギャル化しちゃったし、一人寂しくアイドル活動してたな……くらいの感覚しかない。


 私は顔をパンパンと叩き、気合いを入れ直す。


「ベスパ、もう少し、右……」


「はい」


「あぁ、ちょっと行き過ぎかな。左に八センチくらい移動させて」


「了解です」


 完璧な位置に垂れ幕があると舞台のカッコよさが引き締まった。


 何というのだろう。歌舞伎……とはまた違うが、文字の雰囲気と木造の舞台のおかげで日本の古風な感じがにじみ出ている。やはり建築物は作った者の心が出ると言うのは本当なのかもしれない。


「ん~。なかなかいいね……。よし、その垂れ幕は綺麗に保管しておいて。あと、舞台が濡れても大丈夫なように細部までしっかりと補強しておいて」


「了解しました」


 ベスパはせっせと働き、乾いた垂れ幕をクルクルと丸め、保管場所に持っていく。ネアちゃんと他のビー達は舞台の補強に取り掛かった。


 ――ディア、あまり食べすぎたら駄目だよ。きめられた範囲内の雑草だけを食べてね。


「わかってます!」


 私は冬になり枯れ切っているが辺り一面に生えている背丈の高い雑草の排除をディアたちにお願いしている。


 舞台のある空き地は広いがあまりにも牧草だらけで足の踏み場もなかった。その地に舞台を建て、雑草を駆除するとサッカー場とまでは行かないが二五メートルプールが二カ所ぶんくらいの野外舞台が完成した。

 あとはこの場にお客さんが来るのかどうかだけど……。少なくとも一八〇人の一〇歳の子供達はやってくる。その親も来るとなると三倍で五四〇人くらい。

 他にも街の人がぞろぞろとやってくるわけだから、人が滞りなく入れるようにして……、感染症対策もしないとな。ま、感染症対策と言う名のライトがいるから、あまり心配する必要もないか。


「キララ、本当にもう作っちまったんだな……。お前の力どうなってるんだよ」


 レイニーが私の後方にやって来た。


「ほんと、どうなってるんだろうね。でも、こういうお助け要素は沢山持ってるよ」


「スキルがそんなに万能になるものなんだな……」


「レイニーの方だって新しいスキルの使い方を知れたでしょ。それと同じだよ」


「まぁ、確かにな」


 レイニーはバートンと友達になれるスキルを持っている。私のように他の生き物と話せるわけではないが、バートンと出来ることなら大概上手くできる。

 騎乗しながらの戦いはレイニーに勝る者なんていないのではないかと言うくらいだ。


「レイニー、あと三日で聖典式だけど、病気が未だに王都で流行しているみたいだから、気を引き締めて病気に掛からないような生活を続けてね」


「ああ。こんな大切な時期に風邪なんて引いてられねえよ。手洗いうがいを子供達に徹底させる。あと、換気と掃除もな」


「うん。もし、病気っぽい子がいたらすぐに休ませて私があげた特効薬を飲ませてね」


「わかってる。任せておけ。聖典式は国中で行われているんだ。他の場所に負けないくらい最高の聖典式にしようぜ」


 レイニーは拳を私に差し出してきた。私も小さな拳を差し出し、ぶつけ合う。


 私とベスパ、ディア、ネアちゃんはウシ君のもとに戻り、前座席に座った。クロクマさんが自分の仕事が無くて悲しいと言っているような雰囲気をサモンズボードの奥から感じる。


 クロクマさんは何かを作るよりも壊す方が得意だと思うので、今は仕事がない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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