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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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人質をとっている男

「はぁ、はぁ、はぁ……。お前ら、動くんじゃねえ……。このガキがどうなってもいいのか」


 額から滲み出るように汗を掻き、ナイフを少女の首に当てている男性が声を絞り出す。黒いローブを身に纏い、顔がいかつい。見るからに悪い人だ。


「ま、待て! 人質になら私がなる! だから、その子を解放しろ!」


 とある赤髪の美人な女性が同じく美人の女性を宥めながら狂乱している男性に声を掛ける。


「うるせえ! おい! 泣いてる女! お前もこっちにこい! さもないと、このガキが死ぬぞ!」


「メアリー……」


 泣いている女性が少女の名前を口にする。泣いている顔も美しいと思ってしまった。


「奥様、いけません。ここは我慢を……」


 赤短髪にきりっとした表情の美人な女性は泣いている女性に耳打ちし、何らかの関係を持っていると思われる。


「どうした! さっさとしろ! こちとら時間が、ねえんだよ!」


 人質をとっている男性は時間が無いらしい。何に追われているのだろう。わからないが、とにかく焦っていた。彼以外に立っている者はおらず、お店の中央で辺りを見渡しながら、少女の首にナイフの刃を当て続けている。


「お、お母様……。た、助けて……」


 少女が涙で掠れた声を出す。


「メアリー。メアリー!」


 泣いていた美人な女性は少女のもとに駆けてしまった。


「奥様!」


 赤髪の女性も向かうが……。


「来るんじゃねえ! 動くなと言っただろ!」


 男性は少女の首に刃を食い込ませ、真っ赤な血を雨の雫ほど流させる。


 美人な女性が少女のもとに移動した。


「む、娘を放してください。私が人質になりますから」


「そこで大人しくしていろ。何かしでかしたら、この娘ごと殺す」


 男性はニンマリと笑って勝ち誇ったような表情をした。


 私は状況を整理する。


「ん~。考えうる限り、最悪の状況……」


「嬢ちゃん、何かわかったか?」


 外で見張っていた筋骨隆々の男性が言う。


「今、人質にされているのは金色の長髪にとんでもなく可愛い美少女と、絶世の美女が人質に加わりました。周りに人はおらず、赤髪の女性が動こうとしましたが犯罪者に指し止めされています」


「な、何ということだ……。今すぐ旦那様にお伝えしなければ……」


「いや、だが。ここから騎士団までは遠い。もたもたしている場合じゃないぞ」


 ガチムチの男性たちはてんぱっており、四人で口論会が始まった。突撃して助けるという者、戻って誰かを連れてこうとする者。意見が分かれ、時間だけが過ぎていく。


 ――ベスパ。ショウさん達はどこにいるの?


「ショウさんは調理場で別の仲間に武器を突きつけられて動けない模様。見渡したところ、一人が人質の確保、もう一人がショウさん達などのお店の人を抑制し、あと一人が脱走経路を確保しています」


 ――つまり三人がお店の中にいるんだね?


「はい。脱走経路をまず塞ぎに行った方がいいかと」


 ――うん、気づかれないようにしないと……。あと、予備も必要だね。


「あの、すみません。お店の中には三人の敵がいます。脱走経路を確保している者がいるんですけど、逃げ口の周りと入口に二手に分かれてください。あとは私が何とかします」


 私は両手でピースしながら、カニのように指の間を広げたり狭めたりする。


「な、何を言っているんだ?」


「そうだぞ。これはお遊びじゃないだ。このままでは……」


「このままだと、少女と女性が攫われてしまいますよ」


 私は男性たちに気圧されることなく、言い放った。普通の少女なら、怖がって何も言えないだろう。だが、私は超巨大なブラックベアーと戦って死地を掻い潜ったと言う経験がある。

 あの時の恐怖に比べたらビビっているガチムチの男性四人などそこらへんにいる子共に過ぎない。


「く……、ここで考えていても仕方がない。君の指示に従おう……」


「ありがとうございます。では、この入口と反対側にある裏口に二手に分かれてください」


「了解」


 四人の男性は二人一組になり、迅速に動く。


 命令する人がいるとしっかりと受けるのは何とも騎士っぽいな。まぁ、自分で考えるのが苦手な人たちなのだろう。いわゆる脳が筋肉の人達だ。


 ――さてと、やることはさっきと同じだ。でも、人質を持っている男性を刺激するわけにはいかない。ディア、ネアちゃん。お仕事だよ。


「わかりました!」


「人質をとるなんて許せません」


 ディアはネアちゃんを背中に乗せて、お店の裏口に向う。


 ――じゃあ、とりあえず脱走経路を確保している者とショウさん達を押さえている者の二人を捉えて。迅速にね。


「了解!」


 ディアとネアちゃんは裏口の扉を食い破り、小さな穴を開け、するすると入っていく。そのまま、扉の向こう側にいた者を糸でぐるぐる巻きにして身動きをとれなくさせた。

 そのまま床をスーッと進み、調理場に到着。

 敵がナイフを店長のショウさんに首筋に突きつけており、周りの料理人も身動きが取れない状況だ。


 ディアは持ち前の素早さで敵が持つナイフまで移動すると、ネアちゃんがナイフを糸でぐるぐる巻きにする。何が起こっているのかわかっていない敵は声を出そうとした。

 ディアが敵の口もとまで移動し、ネアちゃんが口をすぐさま縫い付け、叫ぶのを封じる。そのまま体をグルグル巻きにして二人の敵を抑止完了。


「キララ様。ディアとネアちゃんが二人の敵を捕獲しました。残るは中央で少女と女性を人質にとっている男だけです」


 ――問題はその人だよね。まぁ、ベスパの『ハルシオン』で即座に眠らせるのもありだけど……。針を刺された瞬間に少女の首が切られたら大惨事だ。別の方法で行かないとね。


 私は荷台に戻り、前座席に座っているクロクマさんを抱きしめて戻って来た。


「えっと……、その黒いぬいぐるみは何に使うんだい?」


「あと一人の男を捕まえるために手伝ってもらいます」


「手伝ってもらう?」


 入口で陣取っている二名の男性が首をかしげる。


「はい。えっとですね……、私、こう見えてもテイマーなんです」


 私は首にかけている銅のプレートを見せた。


「ほ、本当だ……。でも、ビーって書いてあるぞ? あの雑魚のビーなのか?」


「こ、この子がビーと言う名前なんですよ……。あはは……」


 私は苦笑いをして誤魔化す。


 ――クロクマさん、一連の話は聞いていましたか?


「はい。お店の中に悪い男性がいるのですね。懲らしめなくては……」


 クロクマさんもやる気十分だった。


「ふぅ……。えっと、お二人は回りにいる人達を避難させてください。少し、怖い思いをすると思うので出来るだけ人は捌けてください」


「あ、ああ。了解した」


 二人の男性はショウさんのお店の周りにいる人達を捌けさせる。


「よし、じゃあ、喜劇を始めよう」


 私はクロクマさんに魔力を流し、もとの状態に戻す。


「なっ! ど、どうなっているだ! 何でブラックベアーがいきなり!」


 男性の二人はパニックになっており、武器を向けている。剣なのでクロクマさんにも効く攻撃だ。


「大丈夫です。私の仲間なので、危害は加えません。今から、中にいる悪い男を捕まえるんです。では、私の名演技……、お見せします」


 私は思いっきり走り、ショウさんのお店の扉をドンドンと叩く。


「助けて! 助けてください! ふっ! ふっ!」


 大きな声で叫び、扉に体当たりを繰り返す。


 ――ベスパ、扉を開けてくれる。


「了解です」


 ベスパが、鍵がかかっていた扉を瞬時に開けると、扉が内側に開き、私がお店の中に飛び込んだ。


「な、何だ……。ただのガキか……。おい! ガキ! さっさと出て行け!」


 男性は私の方を見て子供だと思い込み、安堵している。


「た、助けてください! ぶ、ブラックベアーが!」


「ブラックベアーだと……。馬鹿が、そんな魔物がこの街の中にいるわけ……」


 ――ベスパ、女性と少女に『ハルシオン』を打って眠らせて。さすがにトラウマになる。


「了解です」


 ベスパは少女と女性にお尻の針を一瞬で打ち込み、眠らせる。すると、立つ力などあるわけなく、人質はお荷物と化した。


「お、おい? どうした……。おい、起きろ!」


「た、助けてください! 助けてください……」


 私は男性の方に走って行く。


「くっ! だから、そんな魔物どこに……、へぇ?」


 私が敵の真ん前に行くころにはクロクマさんが扉をバキバキと壊しながら歩いてきた。のっそのっそと鉞を担いだ少年がいてもおかしくないほどの速度。だが、三メートルほどの巨体の陰が男性を覆う。


『グラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』


 クロクマさんは咆哮を軽く放つ。軽くと言ってもお店の壁に亀裂が入り、建物が軋んでいた。


 私は両耳を塞ぎ、咆哮が終わると同時に赤髪の女性に指を刺した。


 赤髪の女性は倒れ込んでいる少女と女性を担ぎ、お店の端に寄せる。


「あ、あが……。あぁ……」


 男性は涙と鼻水、涎をらたし、耳からは血を流す。どうやら両方の鼓膜が破れてしまったようだ。下半身からは尿が漏れ、脚がガクガク……。そのまま、両膝を床に付け、倒れる。私は首元に手を当てると生きており、失神しただけのようだ。


「ふぅ……」


「君! 早く逃げなさい!」


「へ?」


 赤髪の女性がクロクマさんの前に立ち、剣を抜いて立ち向かっていた。

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