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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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王子が騎士団に訪問

「よし、王子には驚いたけど、さっさと仕事の続きといこうか。ウシ君、スグルさんがいる騎士団に向ってくれる」


「わかった」


 私はクロクマさんがどっしりと構えて乗っている荷台の前座席に座る。バートン車から降りて、葉巻のような香りがする品で一服していた騎士が身震いして、動けなくなるほどクロクマさんは大きくなっていた。


「では、失礼しますね」


 私は騎士に頭を下げる。隣に一メートル五〇センチくらいの大きさになったクロクマさんがおり、転移魔法陣にすぐに入れて小さくした。どうも、私の魔力量が多いせいか、近くに寄っただけで大きくなってしまうようだ。


 ウシ君は騎士団のある方向に移動し始める。私は手綱を持ち、見かけだけでも御者を演じる。


「ベスパ、私の魔力量をもっと抑えてくれない?」


「今でもいっぱいいっぱいなんですよね……。すでに街の周りにいる生き物にキララ様の魔力を配ってしまっているので、これ以上魔力量を減らせないです。キララ様自身に魔力を消費してもらうか、制御してもらうかくらいしか、方法がありません」


「そうなんだ……。じゃあ、仕方ない。魔力を練り込んで、魔力体でも作るよ」


「はい、その方が合理的だと思われます」


 私は瞑想をして魔力を練り込み、高濃度にしたのち、手の平に圧縮して形を作る。いつものようにミツバチの魔力体が生まれ、家がある東の方向にぶ~んと飛んで行った。


「ふぅ……。これやるとすっきりするんだよな……。体に魔力が溜まりすぎるのも毒なんだね」


「そうですね。血の量が多すぎても少なすぎても行けないのと一緒です。人の体には限界がありますからね。限界値は鍛えれば高くなりますが、キララ様の場合、常に限界値を押し上げているような状態なので体が休まる時間が無いんです。なので、魔力を使ったほうが体の休まる時間になるという訳です」


「なるほどね……。魔力が溜まったらまた魔力体を作るか……。魔力の予備だし、いくら作っても無駄にはならないんだよな」


 私は自分の魔力をすべて魔力体にしたおかげか、肩の力が抜けて緊張が抜けた。仕事をするには完璧と言ってもいいくらいの身体で、やる気が漲ってくる。


 ウシ君は騎士団の前に到着した。私は物資を届けに来たと門の前にいる騎士のおじさんに伝える。


 騎士のおじさんに物資を見てもらい、通過しても良いという了承を得たので、私は騎士団の敷地に入り、地下倉庫に入れる右側の通路に移動する。


 若い騎士達とスグルさんが地下倉庫で待機しており、牛乳瓶一〇〇〇本を納品した。そのおかげで荷台がグッと軽くなり、私の気持ちも金貨一〇〇枚のおかげでウハウハだ。


「キララちゃん、今回もありがとう。皆、牛乳が無いと仕事をやっていけないと言っているよ。朝昼晩と三回の飲みたいという者まで現れた。加えて、料理にも使いたいという声も上がっている。もう少し卸せないかな?」


 スグルさんは体調が良いのか、イケメンの状態で話しかけていきた。


「ん~。これでもいっぱいいっぱいですよ。でも、今、牧場の規模拡大を計画しているので、その分、多くの牛乳を出荷できます。まだ、時間はかかりますけど、来年の八月までには完成させたいですね」


「そうか……。まぁ、仕方ないな。キララちゃんの牧場に少しでもお金を落として自分たちの生活を豊かにしなければ……。そのためにはもっともっと稼がないとな。仕事仕事!」


 スグルさんは仕事が嫌いだったはずなのに、牛乳のおかげで性格が変わったようだ。

 まぁ、仕事は牛乳を飲むための手段でしかない。そう割り切ったら楽しくなってきたのだろう。


 仕事はそう言うものだ。何かのために働く。お金を貯めて買いたい物を得るため、旅行に行くため、キャバクラに行くため、押し活をするため、様々な理由で仕事を頑張り、自分の好きなことをする。

 それが大人の楽しみ方の一つだ。

 昔の私は……、お金だけ貯まって好きなことをやることが出来なかった。だから、今、好きなことを優先している訳だ。

 

 人生楽しんだもの勝ち。でも、仕事はどんな形であれ行わないと生きていけないのも事実。自分の気持ちに正直になってみれば、案外、仕事は手段だと割り切って楽に働けるかもしれない。

 私はこの世界に来てから気づいたことだ。出来れば前世に知っておきたかったな。


「ところで、スグルさん。なんか、今日は皆さんソワソワしていますね。トイレにでも行きたいんですか?」


「ち、違う。今日はルークス王国の国王の第一子である、アレス王子がここの騎士団に訪問に来るんだ。加えてここで一泊されるそうで……、皆、気が気じゃないんだ。なんせ相手は次期国王と言われている存在だからな。何か粗相をすれば一発で打ち首なんてあり得なくない」


「そ、そうなんですか……」


 ――そう言えばさっき、若い騎士が騎士団に行くって言ってたな。早く退場してオリーザさんのところに行こうか。


「じゃ、じゃあ、私はお先に失礼します……」


「ちょ、キララちゃん。アレス王子を見て行かなくていいのか? こんな田舎の街に来るなんて滅多にないんだぞ」


「えっと……、興味ないので」


 ――さっき嫌ってくらい見たからな。もう、見なくてもいいや。


 私が帰ろうとするとどこからともなく声がした。


「キララちゃん! 絶対に見た方がいいよ! アレス王子はルークス王国随一のカッコいい男性なんだよ!」


「ろ、ロミアさん……。いったいどこから……」


 女性騎士のロミアさんは頭に布を撒いており、箒を持っていることから、地下倉庫の掃除をしていたと思われる。また何か怒られるようなことをしたのだろう。


「キララちゃん、アレス王子は国中の女性がうらやむほどの美貌の持ち主で、姿を見るだけでご利益があると言われているんだ! ああ、早く拝みたい!」


 男っぽいトーチさんまでも興奮している。


「と、トーチさんまで……」


 ――た、確かにカッコいい人だったけど、見ただけでご利益は流石に言い過ぎなんじゃ……。神様じゃあるまいし。


「キララちゃん、ここで見て行かなかったら一生後悔しますよ! なんなら、アレス王子を見たというだけで話しのタネになるくらいなんですからね!」


 マイアさんは髪を解き、手鏡で顔を何度も身まわして服装の乱れが無いか確認している。


「ま、マイヤさん……、化粧がちょっと濃すぎなんじゃ……」


 ――この世界にも化粧ってあるんだ……。まぁ、私は子どもだし面倒臭いからしないけど。


「スゥ……はぁ……、スゥ……はぁ……。よし、心の準備は大丈夫。あとはしっかりと見るだけだ!」


 フレイさんは顔が真っ赤になっており、見る前から緊張していた。そんなに上がり性だったのかと思うくらいに心臓の音が聞こえてきそう。


「フレイさん、水を飲んだほうがいいですよ。汗がすごいです」


 ――高校生くらいの皆さんがここまで待ち望むほどアレス王子ってすごいんだ。でも、結婚しちゃってるわけだし、皆さんが王子と会ったからってどうなるわけでもない。あれかな、既婚者超絶人気俳優が訪れるみたいな感じか。ん~、私は会える嬉しさがわからない。直接会っても、相手はただの人間だし……。


 私の感性は壊れていた。アイドル時代にテレビの中の人と何度も何度も会っていたから彼らがただの人間であると知っていた。アイドルや俳優が神の存在であるかのように見ている人も少なからずいるだろう。でも、彼らとてただの人間なのだ。


「ふわぁ~。私は王子に全く興味がないので帰ってもいいですか……」


「駄目!」


 私は四人の女騎士に四肢を持たれ、運ばれる。


「ちょ、ちょっと! 皆さん、落ちついてください。み、見ますから、おろしてください!」


 私は地下倉庫から外に移動させられ、建物の前の道に置かれているベンチに座らせられる。


 ――こんなところに座っていたら、アレス王子にもろ見えなんですが……。さすがに困る。


「あ、あの……。すみません、私はもっと遠くからで……」


「何言ってるの。せっかく空いている時間に来たんだから、一番よく見えるところを陣取っておかないともったいないよ。私達は整列していないといけないからこんなまじかで王子が見れるなんて羨ましいよ」


 ロミアさんはしくしくと泣きながら悲しんでいた。

 そこまでして間近で見たいのかと私は不思議に思った。


 私がベンチに座ってから五分後……。辺りが人だらけになってしまった。あんまり集まると風邪が移るというのに……。


 騎士団には人気アイドルのコンサートかと言うくらいの人々が集まっていた。人々がぎゅうぎゅう詰めになり、王子を見るなんて余裕はない。


「べ、ベスパ。魔力で人の口周りを覆って……。こんなに人が集まると思ってなかった……」


「了解です」


 ベスパは人々の口と鼻周りに魔力を張り付ける。瘴気や細菌を高濃度の魔力によって弾くのだ。


 私は圧死されまいと、人々の間を抜けて移動していく。

 少しすると、キャー! やら、わぁー! やら、黄色い声援が飛びかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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