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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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ただの一般男性

「キララ様、まさかの抜刀速度で不意を突かれてしまいました。やはり、キララ様の魔力が濃いと魔力体でも気づかれやすいようですね。ただのビーの方が気づかれないかもしれません」


 ベスパは殺されかけたのに淡々と事後報告してきた。


 ――なるほどね。なら、魔力をもう少し薄めてカロネさんの耳もとに移動して。


「了解です」


 ベスパは体を限りなく小さくし、コバエ程度になった後、もう一度カロネさんの耳元に移動する。


「キララ様、移動が完了しました」


 ――ありがとう。じゃあ、ビー通信で声を届けて。


「了解です」


「カロネさん……。キララです。牛乳の配達に来たんですけど……、今の時間は厳しいですかね?」


 私は小声で喋る。


「え……。キララちゃん……。あっ! もう、こんな時間!」


 カロネさんは勢いよく立ち上がり、お店の扉の方にやってくる。勢いよく扉をバンっと開くと騎士の二人が吹っ飛び、私の横に倒れ込む。


「キララちゃん、ごめんね~。今、昔の友人が来てるの。それでもいいかな?」


「えっと、逆に私が入ってもいいんですか?」


「全然いいよ~。キララちゃんにはただのおじさんにしか見えないと思うけどね」


 ――おじさんって……。王子をおじさん呼ばわりするのは流石カロネさん……。


「カロネ、私をおじさん呼ばわりするな。まだ、三〇歳にもなっていないのだぞ。そもそも、なぜ、そのような子供を私との会話に入れるのだ」


 王子は入口の方を向き、小言を呟く。


「もう、昨日からずっと居座られてるこっちの身にもなってくださいよ。お金を貰っているとはいえ、あなた以外にも私のコーヒーと紅茶を楽しみにしているお客さんがいるんです」


「そ、それもそうだな……。すまない」


 王子はシュンとして椅子に縮こまる。なんか、可愛らしい王子だな。


「ささ、キララちゃん。上がってあがって~」


 私はカロネさんに手を引かれ、お店の中に連れ込まれた。どうやら、カロネさんも王子と長時間一緒にいるのは堪えるようだ。


 ――ベスパ、クーラーボックスを持って来て。


「了解です」


 ベスパはカロネさんの耳元から飛びだし、いつも通りの大きさに戻った後、クーラーボックスを持ってお店の中に入る。


「や、やあ、どうも。私はただの一般男性だ。よろしく……」


 王子は視線を物凄く動かしながら挨拶してきた。さすがに身分を明かすわけにはいかないという配慮だろうが、知っている人はほぼ知っていると思うんだけど……。まぁ、私が平民だからかな。


 ――にしても、演技下手だ~。これじゃあ、ハリウッド映画には出れないな。いや、子供が苦手とか、そう言う話しかもしれない。


「初めまして、私の名前はキララといいます。性の方は控えさせていただきますね」


「キララか。にしても、カロネと接点があるとは思えないな」


「キララちゃんは、私のお店に欠かせない品を降ろしてくれているんですよ」


 カロネさんは私の頭を撫でながら言う。


「そうなると、商人という訳か?」


 王子は私の顔を覗き込むように首を傾げた。


「商人ではなく、牧場から品を運んでいるので、牧場経営者ですね」


「なるほどな……。子供にしては大人びている。私はただの一般男性なのだが、相対しているキララはどうも緊張しているように見えるな」


 ――そりゃあ、緊張するでしょうよ。数あるイケメンを見て来た私でも、王子レベルのイケメンは中々お目に掛かれなかったからな。それこそ、ハリウッド映画に出た時くらいにしか見た覚えがない。あの時の脚本もいつもの人だったし、って、やっぱりあの人、天才だったんだな。


 私はイケメンに加え、ルークス王の次くらいに権力がありそうな男を目の前にしているのだ。どう考えても緊張するに決まっている。

 日本で言うところの天皇陛下のご子息とお話しをしているような状態なのだから、気を遣うのが当たり前でしょうが。


「え、えっと……。目上の方に丁寧な言葉使いをするのが礼儀だと教えられたので、堅苦しいかもしれませんが、ご了承ください」


「まぁ、私は構わない。気になったのだが、何が浮いているんだ?」


 王子はクーラーボックスを指さした。空中に浮いているように見えているらしく、得体のしれない物体だと思われたようだ。


 ベスパはクーラーボックスをテーブルの上に置く。


 ――ベスパ、他の品も持って来て。


「了解です」


 ベスパはクーラーボックスをテーブルの上に置いた後、レモネの入った木箱や紙コップなんかを持ってきた。


「な、何が起こってるんだ。次から次に物が飛んできている……。魔法を使っている素振りはないから、キララのスキルか?」


「はい、私のスキルです」


「スキルを使えるということは、一〇歳以上。物腰の柔らかさと、話しやすさ、会話の返しなどから考えて……、成人しているな。現場慣れしすぎているところを見るに三〇歳を超えている。……はあり得ないな」


 ――え、なになに、私、年齢当てゲームされてるの。というか、成人してないんですけど。私、そんな老けてみますかね?


「もう、何を言ってるんですか。キララちゃんはまだピッチピチの一一歳ですよ」


 カロネさんは私の両肩を持ちながら言う。


「は? そんな訳ないだろう。一一歳で田舎者の農場娘がここまで丁寧に話せるわけがない。仕事の仕方も素早く、迅速だ。無駄なことが一切ない。仕事を相当やりなれている。まだ、成人すらしていないなんてありえないだろ」


 王子は私の核をついてくるような鋭い観察眼を持っていた。


「あ、あはは……。わ、私、五年間くらい教会で仕事をしていまして神官の話方を聞いていたら、いつの間にかこんな風になってしまったんです……」


 私は王子に素性を見抜かれまいと嘘をつかずに、それっぽいことを言う。


「教会で仕事……。んぅ……、無くはないか」


 王子は顎に手を置き、考え込んでいる。


 この人、頭が良いという王様の血を色濃く継いでいると思うのですが……。なんなら、精神年齢はほぼ当てられてしまったし……。


「ほんとうに面倒臭い人ですよね。ささ、キララちゃん、私達は私達でお仕事をしましょうね」


 カロネさんは私を椅子に座らせる。


「ちょ、カロネ。得体が知れない者と関係を結ぶのは危険だ」


「もう、得体が知れない者なんて言い方はしちゃ駄目ですよ。キララちゃんはすごいんですからね。魔法も頭のきれも、想像力すら豊かなんですから」


「魔法……だと?」


 王子は目を細め、私を見てきた。


 ――あわわわ……、カロネさん、あんまり喋ると頭がきれる王子に色々感づかれちゃいますって。


「ま、魔法と言っても初級魔法の『ファイア』しか上手く使えませんから……」


「どこで教わったんだ?」


「は、母が魔法を使っている場面を見て覚えました……」


「ただ見ていただけで魔法を使えるようになったと……」


「そ、それは……、そうですね……」


 私は王子から視線をそらし、少しでも感づかれにくい嘘を言う。実際はコツを教えてもらった。まぁ、大体的な授業を行っていたわけじゃないから、犯罪ではないと思うけど……。


「むむむ……。天才なんだな」


「て、天才……。いやいやいや。とんでもない、私が天才だったら、他の人は大天才ですよ」


「だれからも学ばずに魔法を使うなんて使い方のわからない道具を使うようなものだ。凡人には決してできない。天才にのみ多くのことを考えるという回路が備わっている。キララは凡人ではないだろうな」


「は、はは……」


 ――私はただの凡人なのに、年齢と喋り方、魔法が少し使えるだけで天才呼ばわりされてしまっている。もう、止めてえぇ……。


「ふっ、ふっ、ふっ……。キララちゃんがすごいのは魔法だけじゃないんですよ。キララちゃんが持って来てくれる食材は王都の品を越えているんです!」


 カロネさんは熱弁し始めた。


「なに……。そんなことがあるわけなかろう」


「それがあるんですよ。特に牛乳が絶品で……」


「牛乳だと! カロネ、牛乳といったか!」


 王子は立ち上がり、大声を出した。おしとやかな王子かと思っていたので、あまりの声の大きさに私はぎょっと驚いてしまった。


「え、ええ……。牛乳といいましたけど……」


「な、なぜ、カロネが牛乳を知っているんだ……。あれは父上への献上品だぞ……。一日一本飲まないと、博識の父上が狂いだしてしまいそうなくらいになる牛乳だぞ……。私も飲んだが、思い出しただけで体が震える……。あれほど美味な液体は飲んだ覚えがなかったからな……、鮮明に記憶している」


「お、落ちついてください。とりあえず、紅茶をどうぞ」


 カロネさんは紅茶をカップにささっと注ぎ、王子に渡す。


「す、すまない」


 王子はグビグビと飲み、心を落ち着かせた。


「はぁ、はぁ……。牛乳は匿名での献上品だ。その牛乳がなぜキララからこの店に卸されてくるんだ」


 ――や、やべぇ……。私が匿名で牛乳を王様に献上しているのに、実子である王子にバレそうなんですが。というか、王子も身分を隠しているはずなのに献上品なんて言ったら自分の父親が王様だって言っちゃってるようなものだし。それくらいてんぱらせてしまっている訳ですか。はぁ、まぁ、この王子は口が硬そうだし、言ってもいいかな……。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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