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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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王都で猛威を振るう流行病

「僕も僕も~仕事頑張るよ。キララお姉ちゃん、ライトは、ライトは~?」


 クマタロウは檻を掴み、ガッシャンガッシャンと動かす。すでに力が強すぎて私には制御不能だ。

 彼はライトにべらぼうに懐いており、ライトもクマタロウを相棒と認めているらしいので凶悪なコンビが誕生した。もう、誰にも止められないかもしれない。


「じゃあ、クロクマさん。いったん『転移魔法陣』の中に入れますね」


「はい。よろしくお願いします」


「じゃあ、母さん。頑張ってきてね」


「お母さん、頑張ってね~」


 コクヨとクマタロウはクロクマさんに応援を送る。


「ええ、しっかりと働いてくるわ!」


 私は檻内部に『転移魔法陣』を発動し、ブラックベアー用のサモンズボードにクロクマさんを入れる。巨体のクロクマさんをたった一枚の板で持ち運べるなんて便利にもほどがあるよ。まあ『転移魔法陣』で運べる生き物は『魔法耐性』がある一部の魔物限定なんだけどね……。


「じゃあ、私はこれで失礼しますね」


 私はコクヨの頭とクマタロウの頭を撫で、檻をあとにする。


「ギャアアア! ギャアアア!」


 ブラックベアーの檻の近くにはブラディバードの小屋もある。最近はヒヨコのような個体が増えた。寒い時期には繁殖しないと思っていたが、ライトの計らいで気温を一定に保てるようにすると、ポンポンと有精卵が生まれ、数が増えている。

 最近は増えまくる一方なので、卵を採取しやすいように鶏卵場でも作ろうか迷っている。

 エッグルも、少しずつ溜めており、倉庫の中には紙の卵パックに入っているエッグルが結構備蓄されていた。

 一ヶ月は賞味期限が持つ。でも在庫が溜まるまでは商品化しにくい。


「着々と増えてはいるんだよな。今のところ小さなブラッディバード達が病気と言う訳でもないし、全員、健康体で一日一個は卵を産んでくれている。ほんと、君たちも働きものだな……。雄は怠け者だけど。まあ食べてやるからいいか」


 私は卵を温めている雌を見て、魔物にも母性は一応あるんだと再確認する。まあ、本能にしたがっているだけかもしれないけど……。


 私は牧場まで走り、休憩小屋の前にある畑に通り掛かる。少し前までトゥーベルが埋っていたのだが、今はフカフカの状態で、何を植えても育てられる環境を整えてある。春頃にもう一度、トゥーベルとビーンズを植える予定だ。


「ベスパ、お待たせ」


「いえ、キララ様の方こそ、お疲れ様です。出発の準備が終わりました。街に行くまでの道が少々危険ですので、ウシ君で移動した方がいいと思われます」


 ベスパは荷台の前で浮遊し、待っていた。


「わかった。じゃあ、ウシ君を連れてくるよ」


 私は厩舎に向かい、ウシ君を探す。だが、久々に厩舎にやって来た私を見てモークル達が嬉しがってしまい、群がって来た。


「うわ~、キララお姉ちゃんだ~! 遊んで遊んで~」


「キララお姉ちゃん、撫でて撫でて~!」


「キララお姉ちゃん、私、皆と早く一緒に仕事したよ~」


 モークル達は私にベタベタと甘えてくる。大きさが全然違うので、私は圧迫死するかと思った。


「こらこら、キララさんを困らせちゃ駄目でしょ」


 厩舎の番長ことチーズが声を掛けると皆、スッと大人しくなり私は助かった。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ありがとう、チーズ。助かったよ」


「いえいえ、それよりも、早く夫を連れて行ってください。だらしない恰好になっちゃって情けなくて情けなくて」


 チーズは後方を向き、グデ~っと寝転がるウシ君を見た。冬の間は仕事がほぼ無かったウシ君がニート化しており、ミルクにベタベタと甘えている。


「ミルク~。イチャイチャしようよ~。もう、我慢できないぜ~」


「もぅ~。だ~め。今は我慢しないといけないってキララさんに言われてるでしょ。ほら、噂をすれば……」


「何だよ~、キララなんて俺が説得して……」


 ウシ君は私の存在に気付き、一瞬で起き上がった。油がノリ、霜降り肉になっている。今、食べたらとても美味しそうだ。


「やあやあ、ウシ君。ぐ~たら生活はどうかな~。んー、美味しそうな体。今、一番美味しい時期かも」


「あ、あはは……。滅茶苦茶仕事したくなってきたぜ……」


 私はウシ君のお尻をパシパシと叩きながら歩かせる。


「牧場はニートに食わせる飯はない。働け働け」


「は、はい。働きます! 働くのでお尻を叩かないでくれよ!」


 ウシ君と私は厩舎を出て荷台のもとに向かう。

 縄を使ってウシ君と荷台をつないだ後、私は荷台の前座席に乗って、革で作られたお手製の手袋をはめる。

 冷たい風と空気を共に防げるのに加え、手綱から手の平を守ってくれる優れものだ。何度も使って革に艶が出ており、手に馴染む。とても使い心地がいい。


「よし、出発しよう」


 私達は街に向って移動を始めた。道はビー達によって除雪されており、荷台の幅くらいの道が開いている。地面が少しぬかるんでいるが、ウシ君なら何ら問題ない。


「ベスパ、森の魔物が襲ってこないよう、警戒しておいてくれる」


「了解です。八匹のビーに偵察させます」


「ありがとう」


 私はお父さんが言っていた冬眠していない魔物や動物に遭遇しないよう警戒態勢をとっておく。

 ローブの内側からサモンズカードを取り出し、魔力を流す。そのまま出口の『転移魔法陣』を発動すると、私の膝の上にぬいぐるみ程度の大きさになっているクロクマさんが落ちて来た。


「ふわぁ~。この姿になると、キララさんの方が大きく見えて不思議な感覚になります……」


「クロクマさんがこんなに小さいと、すごく可愛いですよ。大きいと勇ましすぎますけどね」


 私はクロクマさんのお腹に顔を埋めモフモフする。通常のブラックベアーの毛はゴワゴワしており、肌触りは決してよくはない。

 だが、子どもの状態になったクロクマさんの毛はとても柔らかくふわふわだった。生まれたての産毛が柔らかいのと同じで、幸せな気分になる。


「もう、キララさん。私は犬じゃないんですから」


「そうですね」


 私はクロクマさんを膝の上にのせ、抱きかかえるようにして持つ。護衛はビーとブラックベアー。なかなかに強固な体勢になった。ここまでガチガチに固めれば山賊や盗賊が襲って来ても怖くない。


 私達が移動し始めて六時間ほど。ようやく、街の壁が見えて来た。


 街の門に到着すると、兵士のおじさんがボーっとしながら立っていた。


「おはようございます。おじさん。今日も眠たそうな顔をしていますね」


「あぁ、嬢ちゃんか。最近はちょっと忙しくてな。夜まで仕事が立て込んでるんだ。ふわぁ~。でも、聖典式が終わればいつも通りに戻るさ。あと少しの辛抱だ」


「そうですか。体に気をつけてくださいね」


「ああ、嬢ちゃんもな。流行病が王都で猛威を振るっているらしいから、嬢ちゃんも風邪には十分注意するんだぞ」


「は、はい。わかりました」


 私は兵士のおじさんに頭を下げる。


 ――風邪が王都でまだ流行ってるんだ……。大丈夫かな。


 私はいつも通り、ウロトさんのお店に向った。


 ウシ君を道の端に寄せ、私は前座席を降りる。そのままクロクマさんを前座席に乗せて置き、盗難防止に努めてもらおう。


「ベスパはクーラーボックスを持って私について来て」


「了解です」


 私とベスパはウロトさんのお店の前に移動し、扉を叩く。


「ウロトさん、キララです。牛乳の配達に来ました」


「キララか……。すまないが、今日は対面出来ない……。ゴホッゴホッ……、どうも風邪を引いちまったみたいだ。風邪をキララにうつすわけにもいかないからな……、金を外に出すから、店の前に素材を置いておいてくれないか」


 お店の扉が開き、革袋を持ったウロトさんの手が伸びてきた。革袋を地面に置いて扉が閉まる。


 ――ウロトさんも風邪を引いちゃったのか。危険な風邪じゃないといいけど……。


「わ、わかりました。じゃあ、クーラーボックスをお店の前に置いておきますね」


「ああ、すまないな……。ゴホッゴホッゴホッ……」


「風邪なら、しっかりと休まないと悪化しますからね。今日は潔く寝てください」


「ああ……、そのつもりだ」


 ウロトさんの枯れた声がとても弱弱しい。


「じゃあ。私はこれで失礼します……、お大事にしてください」


 私は金貨が五枚入っている袋を手に取り、荷台に戻る。


「ウロトさんも風邪を引いちゃったなんて。やっぱりこの季節は風邪がはやるんだな……。もうすぐ聖典式なのにお客さんが皆、風邪をひいていたら最悪だよ」


「そうですね。最悪の場合、風邪を更に蔓延させてしまう可能性があります。王都ではいったいどのような対策が取られているんでしょうね。風邪を放っておけば一大事になりかねないというのに……」


 ベスパは顎に手をおいて考えていた。


「本当だよね……。とりあえず、私が風邪をひかないようにしないといけない」


 私はすでに魔力で口周りを覆っているので細菌やウイルスを吸い込んだりしないと思うが、実際のところはわからない。

 この世界の風邪と地球の風邪では発生方法が違ってくる可能性だってある。私が立てているのは仮設だけで瘴気とウイルスが必ずしもイコールで結ばれるとは限らないのだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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