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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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一〇八回の爆発

 私達は一二月三一日の仕事を終える。まあ、私には最後の仕事が残っているんですけどね。その後には街でのライブ公演まであるんだから、大忙しだ。


 三一日の夜、私はダンスや歌の練習を珍しくした。部屋の中で鏡を見ながら動きを確認する。


「ん~。なんかもう、こうグワッとしたいんだけどな……。フッとやってパッとなってどりゃあっとなる感じ……」


「キララ様の言っている感覚がよくわかりませんね……」


 ベスパは私の動きを斜め上の方から観察していた。


「ベスパ、今の動きを私のマネキンにさせられる?」


「はい。可能ですよ」


 私は目をギュッと瞑り、両手で耳を塞いでまつ。


「キララ様、準備が完了しました」


 ベスパからの合図を貰い、私は目を開ける。目の前には私のマネキンがいて、誕生日公演の時に着ていた衣装を身にまとっている。


「では、踊りなさい」


 ベスパが合図を出すと、マネキンは私の動きを完璧に再現したダンスをして見せた。


「おお~、すごいすごい。完璧に私が踊っているように見える~。でも、やっぱり何か引き付ける動きが少ないな……」


 私は自分の動きを俯瞰できる能力を手に入れた。


「手をハートにして、キラキラ~ずっきゅ~ん。なんて……、流石に幼稚か……」


「ぐはっつ!」


 ベスパは壁に吹き飛び、ずるずると床に落ちる。いったい何に攻撃を食らったんだ。


「ベスパ、何してるの?」


「い、いえ……。キララ様があまりにも可愛いので、吹き飛ばされました」


「どういう原理……。ま、可愛いのは当たり前だけどさ」


 私はマネキンにも同じ動きをさせて、見てみる。


「ぐはっつ!」


 私は布団に吹き飛び、自分の可愛さに悶えた。さすが私、可愛すぎる。こんなことをしてしまったら、街の人達の心臓が持たない。封印しておこう。


「もう少し別の動きで威力が欲しいな……。決めポーズは天井にピースをするだけでいいよな。とても質素だけど、終わりが纏まって好きなんだよ。神様にも届いてますか~って意味を込めてるし、このままでいいな。ん~」


 私は聖典式のさい、神父から踊りと歌を行ってほしいとお願いされている。同じ曲や踊りでもいいが、どうせなら違う踊りや歌も披露したい。どれだけ盛り上げられるかによって神様へのお供え物が豪華になるらしいし、嬉しがるとも言っていたな。

 駄女神は私のファンっぽいし、どんな風にしても喜んでくれる気はするけど、元プロとして妥協するわけにはいかない。


「ふぅ……。夏よりも体力はついてるし、少し激し目の動きをしても最後まで持つかな」


 私はアイドル時代に歌っていた曲を思い出しながら、振り付けで一、二を争う激しいダンスを行う。五分ほど踊り続けた結果……。


「う、うぉぉ……。体が動かん……」


 私の体は悲鳴を上げ、床にへばりつき、苦しんでいた。五分踊っただけでもう、動けない。


 誕生日から三カ月ほど経っているのに、これほど成長しないのも珍しい。体力はつきにくい体質なのかもしれないが、諦めるのはまだ早い。最後の最後でもってこればいいのだ。初めと中盤は最後を盛り上げるための前座に過ぎない。そう言い聞かせて、演出もこる。


 一度外に出て夜空で試してみた。


「よし、ベスパ。私が生み出した三匹の魔力体を上に飛ばしてくれる」


「了解です」


 一匹に、大量の魔力が込められている魔力体のビー達が空に向かってふわふわと飛んで行く。


 時間差があり、五秒ずつずらした。ベスパの復活速度を考えれば十分な時間だ。


 ベスパは空中で待機しており、一匹の魔力体がベスパに近づいていく。


 私はベスパのお尻に『ファイア』の魔法陣を出現させた。


 フワフワと浮いている魔力体が『ファイア』の魔法陣を通過すると当たりを一気に照らすほどの火球が生まれ、ベスパに衝突する。


 ベスパはミラーボールのように光っており、爆発と共に七色の光を放って散った。すると、空中に巨大な花が咲き、夜空を彩る。年明けを喜ぶための花火だ。三回連続で成功し、街公演の時にも十分使えそうだと判断した。


「ああ、今日が終わったら年が明けるのか……。何か物足りないな」


 この世界に除夜の鐘など無い。それなら一〇八回の花火でも打ち上げようか。


「ね、ベスパ。なんか物寂しいでしょ」


「つまるところを、私は一〇五回爆ぜなければならないと……」


「嫌ならいいんだよ。普通に『ファイアーボム』を使えるライトにお願いして、一〇八回の爆発を起こしてもらうから」


「い、いえ。私がやりますよ」


 ベスパはニヤつきながら、爆発したいと申し出る。もう、どれだけ、爆発するのが好きなんだよと思ったが、私もベスパを爆発させるのが好きなので、お相子か。


 私はベスパが復活するたびに『ファイア』を打ち込み、合計一〇八回の爆発を起こした。


 爆発を楽しんだ私達は家の中に戻る。


「なむなむ……、なむなむ……」


 ベスパは一〇八回爆発されたあと、煩悩をすべて燃やされてしまい、仏様みたく欲が無くなってしまったようだ。両手を擦り合わせ、座禅を組みながら呟いている。


「さてと~。そろそろ服を脱ごうかな~」


「なむなむ……、なむなむ……」


 ベスパは手を擦り合わせ、神に祈りを捧げている。


「よいしょっと……。ふぅ……、部屋の中、ちょっと熱いかな。体に汗を沢山掻いちゃったよ。うわ、内着までビチャビチャだ」


「な、なむなむ……、なむなむ……」


「ひゃっ、水、冷たい……。こんなんで拭かないといけないのか……。ま、温めればいいだけだよね」


「むむむ……、ぐぬぬぬ……」


「うんしょ……、うんしょ……。拭くの気持ちいいな~。汗を掻きやすい所は念入りに拭かないと……ね」


「ぐぬあぁああ~!」


 ベスパは私の方を向いた。


「あれ? キララ様、体を拭ていたんじゃ……」


「残念でした~。洗濯をしていただけです~。このスケベ~」


 私は自分で脱いだ服を温めたお湯で洗っているだけだった。ベスパの行動には煩悩が抜けきっていないことを証明するに値し、有罪判決を下す。


「被告虫、ベスパに、今日の洗濯物を洗う罪に処する」


「く、くそぉおお~!」


 ベスパは迫真の演技で本当に嫌そうな雰囲気を出した。その後はケロッとして桶に入っている洗濯物を揉み込みながら洗い始める。


「へへへ~。キララ様のおパンツはどれかな~……。おっと、違う違う……。そんなことを考えてはならないのですよ」


 ベスパは服を洗っていき、絞って外に干す。寒すぎて簡単には乾かない。ま、魔法ですぐに乾かしてもいいけど、あまりに多用すると家事も出来ないぐうたらな娘と思われそうで嫌なのだ。


「とか思っているキララ様。すでに、ベッドの上でぐ~たらしているじゃないですか!」


 ベスパは私の頭上に飛んできてブンブン飛び回る。


「ベスパはスキルだから関係ないの~」


「もう、明日からお休みだからって、暢気すぎますよ!」


「いいじゃ~ん。たまの休みくらいさ~」


 私が歯を磨き寝る準備を完璧にしたのち、羽毛布団に包まれながらでぬくぬくと眠りに着こうとふかふかの枕を抱きしめ、目をつぶる。すると扉がドンっと開き、何かが部屋に入って来た。


「姉さん、休みの間ずっと勉強出来るね! さ! 今日はいつもの倍の量、勉強しよう!」


 私の部屋に入ってきたのは『絶対合格』とルークス語で書かれている鉢巻を撒いた、ライトだった。どこの受験生だよと突っ込みたくなったが、なぜライトが鉢巻きなんて付けているんだ……。


「…………」


 私はライトが入ってきたという事実を受け入れられず、羽毛布団にくるまり、繭のように籠った。


「もう、姉さん。何で布団にくるまってるの。今日は勉強したの? 明日休みだからって勉強は休んで良い訳じゃないよね」


「う、うぅ……。今、私は全裸だから……、は、入ってこないでよ……」


「別に姉さんの全裸なんて見ても嬉しくないよ」


「何だと……。そんなにはっきり言われると、心に来るな……」


 私は寝間着をしっかりと着ており、ライトを部屋から退出させるための嘘だったのだが、不発に終わった。


「はぁ……。ちょっと仮眠してから勉強しようと思っていたんだよ」


 私は布団から頭を出してライトの方を見る。


「ベッドで仮眠なんてしたら、姉さんはすぐに寝落ちしちゃうでしょ。自分の性格がわかっているんだから、ベッドから早く出て椅子に座って」


 ライトは布団の中に手を突っ込んできた。そのまま腕を掴まれ、引っ張られる。ずるずると引っこ抜かれ、私は殻を失ったカタツムリのように死にゆく……、わけではないが普通に勉強をするのが億劫だ。


「はぁ~、たまの一日くらい、勉強をさぼってもいいじゃん。ライトも勉強、勉強言っていたら息が詰まるでしょ。勉強なんてたまに休むくらいでちょうどいいんだよ」


 私は椅子に座り、筆を持つ。レクーの尻尾から取った質の良い馬毛ならぬ、バートン毛を使い、簡単な筆を作ったのだ。炭を使った墨汁もある。ライトたちにはしっかりと掛ける羽ペンの方が使いやすいそうだが、私は習字をやっていたというのもあり、なんかしっくりくる。もちろん使うのは家だけなので、別に構わないだろう。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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