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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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八日間の休み

 一二月の二五日、地球だとクリスマスな訳だが……、この世界ではただの一日だ。


 正教会が信仰する神様の誕生日でもないらしい。


 午前四時頃。


「ふわぁ~。今日も仕事か~。冬の備蓄はまだまだあるし、あまり仕事をしすぎなくてもいいと思うんだけどな~」


 私は羽毛布団にくるまりながら、外に出たくないという気持ちのもと、芋虫のようにベッドから這い出る。木製の床が冷たすぎて凍死してしまいそうだ。


 ――ライトが作った暖房の魔法陣を早く付けなければ……。


 私は暖房代わりの魔法陣に触れ、部屋を暖める。いつもながら、すぐに温かくなり、目が覚めてきた。


「ん~っと。さてさて、牛乳配達の後は聖典式の準備、もう、あと六日で年が明けるし、年明けは聖典式がある八日まで休むぞ~!」


 この世界に主な祝日は無い。


 もちろん、今の私達に冬休みや夏休みはない。

 学生になったら長期休暇があるみたいだけど、今は学生ではなく社会人同然の一一歳児だ。それなら、少なくとも休みになりそうなのが年明けの休みな訳だが……、この世界には正月休みもない。

 全員働きすぎだろと言いたい……。


 まぁ、普通の人たちは毎日働かないと明日の食事がままならないのだ。それなら、毎日働くのも仕方ない。そう思い続けて早七年。ようやく、私達に余裕が生まれた。


 とある家族会議の時、私は提案したのだ。


「今年の年明けは八日間休みにしようと思う」


「え…………?」×ライト、シャイン、お父さん、お母さん。


 皆は目を丸くし、呟いた。


「今年の年明けは八日間休みにしようと思う」


 私は大切な話なので二回言った。


「ね、姉さん、どうやって八日間も休むの? 今だって七日に一回休むのが限界じゃん。八日も休んだら動物たちがみんな死んじゃうよ」


 ライトは現実的な話を私に持ちかけてきた。その点はもちろん重々承知だ。


「私のスキルでビー達に無理やり働かせる」


「え……、いや、流石に可愛そうじゃない? ベスパだって休みたいはずだよ」


 シャインはベスパの心配をしてくれた。だが……。


「ちっちっちっ……。シャイン、ベスパはね、頭のねじが何本も外れているの。だから……」


 私はベスパを顕現させる。


「ひゃっほ~! キララ様、私達を仕事漬けにしてくださるのですね。ありがたき幸せです! 何と八日間も仕事漬けとはひぇぇ~。八轍も出来るじゃないですか~」


 ベスパは食卓テーブルの上で陽気に踊っていた。私の踊りをまねているのか、案外うまくてうざい……。


「………………」×ライト、シャイン、お父さん、お母さん。


 四人は中央で陽気に踊るベスパをみて、無言になった。そりゃあ、人間なら八轍と聞いて即座に死と言う言葉が出てくるだろう。どう考えても行えるわけがない。でも、ベスパに掛かれば可能なのだ。


「えっと、四人に見てもらった通り、ベスパは仕事を貰えてうれしがってるんだよ。つまり、私達は八日間も休めて嬉しいし、ベスパ達は八日間も働けて嬉しいの。どちらもうれしいのなら、ベスパ達に任せてあげても良いと思わない?」


「だ、だが……。ビー達だけでどこまで出来るんだ?」


 お父さんは仕事が滞るのを恐れていた。その点は何ら問題ない。


「ベスパ、私達の仕事をビー達だけで完遂できる?」


「もちろんです。私達の数はすでに数えるのも面倒になっています。何なら、人型の模型を生み出して作業させることもできますよ」


 ベスパは帯びたたしいほどのビーを家の中に呼び出して私の等身大のマネキンを生み出した。すべてビーだと考えると恐ろしい。


「『スクリーン』」


 私が魔法の詠唱を放つと、ビー達が光り出し、私の立体(三Dモデル)が生まれた……。


「ね、姉さんが二人……。ど、どうなってるの?」


 ライトは私と私そっくりのマネキンを見回し、口を開けながら驚いていた。


「キララ様の体を再現して作り出した模型です。服も全て映像を映しているだけなので脱げたりしません。もちろん脱ごうと思えば脱げますけどね」


 ベスパは私のモデルに服を脱がせる動作をさせた。すると、上手く映像とビーが動き、服が捲れる。内着姿になった私が映し出され、服は地面に置かれている。あの服もすべてビーなのだと考えると気持ち悪い。


「この姿でお手伝いも出来るのですよ」


 ベスパはビー達に命令し、私のモデルを使って食器を片付け始めた。形が崩れたりせず、手が食器を持っている。訳がわからない。


「べ、ベスパもういいよ。そんなに数が集まると気持ち悪すぎて困る……」


「わかりました」


 ベスパは光り、食器を台所に運んだ私のモデルは散り散りになり、ビーになって窓から出ていった。


「どうでしょうか。あのように、キララ様のご家族の体を作り出すことも可能です。販売所でも仕事が可能なので、何ら問題ありません」


「そ、そうなのか……」


 お父さんは驚きのあまり、絶句している。


「でもでも、この前見たく姉さんが魔法で村を焼いちゃったりしたら……、ビー達は燃えちゃうでしょ」


 ライトは無詠唱で手の平に火を生み出し、ベスパに見せる。


「その可能性は否めませんが、キララ様の魔力を身に纏えばある程度の炎に耐えられます」


「えぇ……。じゃあ、僕の『クリア』はどうなるの?」


「それだけがどうしてもできないんです。ライトさんの『クリア』さえできれば、牛乳の製造まで出来たのですが、私達には出来ません。まぁ、八日後の仕事でライトさんが一斉に『クリア』をしてくれれば済む話なので、作り置きしておきます」


「ま、それでも対応できるのか……。じゃあ、本当に僕たちは八日間も休めるの……」


 家族の皆が顔を合わせる。その後、私の方に向けた。


「年明け、休みたい人! 手を上げてくださ~い!」


 私は意気揚々と手を上げる。


「は~い!」×家族全員。


 皆、両手を上げ、万歳した。


 こうして私達マンダリニア家は初の正月休みを取り入れることとなった。


 まぁ、他の子供達に「八日間休んで」と伝えたら、「仕事をしたい」という子達ばかりだったので、有給と言う形でお金だけを渡すことにした。

 すると子供達は「働いてないのにお金がもらえるという状況がわけわからない」と言いたげな表情をしていた。

 私は「今までグレー企業だったのを出来るだけオフホワイト企業にしたかった」と言いたかったが、理解してもらえなさそうだったので「仕事も適時休んだ方が効率が上がるから、休むのも仕事のうちなんだよ」と教えておいた。すると、皆、納得してくれたらしく、ワイワイと喜んでいた。


 私は暖かくなった部屋でベスパに話し掛ける。


「さてと~。ベスパ、試運転はどうかな?」


「滞りなく進んでおります。ビーの数の調整を考えているので、皆さんの仕事を邪魔しないよう、試運転してます」


「そう。結構結構。じゃあ、私はビー達の仕事っぷりを見に行こうかな。遠目からだけど……」


 私は温かい恰好をして家を出る。もう、寒さは日本とさほど変わらない。厚着をしないといけないくらい寒い。ライトが描いた魔法陣が無かったら暖炉の前で凍えているくらいだ。


「にしても、ビー達は冬でも盛んに仕事をしているんだね。ディアとネアちゃんは動きが遅くなっても、ビーだけはよく動いてる」


「キララ様の魔力のおかげでもありますが、私達は元々環境に適応しやすいんです。なので、冬でも動けます。他の生き物が冬眠していたり、凍死していたりする中、私達は冬の間に生き延びて増えていけるんですよ」


「冬に生き残るなんて中々の生命力だね。暖房も無しによくやるよ。人も体温調節が出来なかったら三時間で死んじゃうし。ビー達は虫なのによく出来た構造をしてるなって思う」


「お褒めいただきありがとうございます。この体のおかげで冬でもキララ様の手助けが出来ると思うと感無量です」


 ベスパはペコリと頭を下げて私に感謝してくる。どうやら、仕事させてもらえている状況が嬉しいようだ。


 私達が朝の牛乳配達を見に行くとシャインとライトたちは普通に配っているが私の荷台だけビー達が動かし、牛乳を配っている。その際、私のマネキンが村人にお金と牛乳を交換していた。


「なんか、私のマネキンがいるんだけど……」


「ビーの姿そのままだと、驚かせてしまいますから見慣れているキララ様の姿を模して配達しています」


「へぇ、まぁ理屈はわからなくないけど、この村に私がもう一人現われているみたいで少し怖いな……。ま、ビー達だってわかるからいいけど」


 私にはマネキンがビー達の集合体にも見えるので、見間違えることはない。ドッペルゲンガーとしか言いようのないマネキンに恐怖する必要は無いのだ。


 ビー達は仕事をしっかりとこなしていた。多くの仕事がある中、人に負けず劣らず完璧に仕事をこなしていく。ほんと便利な虫たちだ。

 仕事が好きと言うだけで価値がありそうだけど、寿命が来て地面に落ちている個体も少なからずいる。仕事だけの一生に意味があったのだろうか。そう思っていると、


「キララ様のために働いていたのですから意味はありますよ。あれだけ安らかに眠っているのですから、生を全うできたのでしょう」


 私にはただの怖い蜂の顔にしか見えないのだが、安らかに眠っているようだ。私は数億匹の命を預かっていると思うと少し荷が重い。

 虫の命の価値が低いとしても、生きとし生けるもの尊重し合わなければ多様性の世界で残れない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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