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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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神官の仕事

「えっとキララちゃん。手すりなどを拭く必要性と口当てをする必要性はいったいどいう理由なんだい?」


 リーズさんは私に聞いてくる。


「簡単に言うと人の手には風邪を引く原因となる瘴気が少なからず付いています。瘴気が付いている手で他のものを触ると瘴気が触った物にくっ付いてしまうんです。その上から他の人が同じドアノブを触ると……瘴気がくっ付いて風邪を引きやすくなるという接触感染が起きます」


「な、なるほど……。流行り病はそうやって広がるのか。じゃあ、口当てのほうは?」


「風邪を引いている人が咳やくしゃみをすると、見えにくいですけど唾液が飛び散ります。二メートルから三メートルくらい飛び散る時もあるんですよ。唾液にも風邪の素が含まれていますから、空気中を辿って他の者が風邪の素を吸い込むと同じような風邪を引いてしまいます」


「なるほど……」


「流行り病がくしゃみや咳で広がるのを防ぐために口当てを付けるんです。空気中に漂う異物を吸い込んで風邪が移る状況を空気感染と言います。風邪は主に空気感染と接触感染の感染経路で広がりますから、この二つを対策すれば莫大な広がりを少しは押さえられるはずです」


「す、すごい……。何もかもつじつまが合う……。い、今すぐ報告書を作ります。キララちゃん、ありがとうございます。今回の話はルークス王国の民を救うかもしれません! 名前は伏せますが、報告させてもらいます!」


 リーズさんはメモを取りながら私の話を聞いていた。そりゃあもう、入念に……。私は病気の治療法ではなく、ただの感染経路を教えただけなのに、何をそこまで慌てているのだろうか。一度広がってしまったらなかなか抑え込むのが難しいのに。


 私はリーズさんから離れ、メリーさんとレイニーがいる病室に戻って来た。


 病室の扉が少し開いており、私は驚かせようと忍び足で入る。


「ねえ、レイニー。疲れてるのなら、無理にこの街で働かなくてもいいんだよ。教会の皆で、キララちゃんの村にお世話になろうよ」


 メリーさんはレイニーに話し掛けていた。


「それは出来ない……。子供達はさておき、俺は出来ない……」


「どうして? マザーが一人になるからとか?」


「教会は今回の聖典式で使われる。ざっと五から六年ぶりだ。でも、神官がいない。誰かが神官をやらないといけないんだ」


「え……、何で神官がいないの? マザーは?」


「マザーは……、死んだ」


「え……。う、嘘……。な、何で? あのマザーが死ぬの?」


「ああ……、今年の七月にあった巨大なブラックベアー騒動は知っているか?」


「まぁ、キララちゃんから聞いたくらい……かな」


「今も街の所々に巨大なブラックベアーが暴れた跡が残ってる。マザーはブラックベアーの暴走に巻き込まれて死んだ……」


「そ、そんな……。う、うう……。ご、ごめん、レイニー。私、知らなかった……」


「泣くなよ……。お前が泣いてたら、俺まで悲しくなるだろ……」


 レイニーは大粒の涙を流しているメリーさんの肩を抱き寄せ、慰めている。


「で、でも。マザーはレイニーにとって本当のお母さんみたいな存在だったでしょ。それなのに、マザーが死んじゃったなんて……。私も、マザーが大好きだったから、すごく……悲しいよ」


 実際、マザーは昏睡状態なだけだが、レイニーは私との約束をしっかりと守っていた。マザーのことを誰かに話すときは死んだことにするという約束を……。


「メリー、マザーのために泣いてくれてありがとう。マザーもきっと喜んでる」


「そうかな……。え……。それじゃあ、レイニーは今までずっと一人で子供達を支えてきたの?」


「ああ。そうだ。俺以外に子供達を助けられなかったからな。だが、最近は結構普通の生活をしているんだぜ。俺でも働けるようになったし、キララたちも手を貸してくれる。当時よりも全然生きやすい。だから、心配しなくていい」


 レイニーはメリーさんの頭を撫で、微笑みかける。メリーさんの表情はどんどん赤くなり、耳まで真っ赤だ。


「ねえ、レイニー。聖典式はどうなるの?」


「その点は俺が神官をする。昔、マザーが行っていたのを見ていたからな、俺にも出来るはずだ。神様も、教会の場所を把握してくれているはず。神を崇拝する思いがあれば、祈りはとどくはず……なんだ」


「まだ、出来るとはわかっていないんだね……」


「ああ……。出来ない可能性も十分ありうる。その時は一年間、スキル無しで生活してもらうしかない……。でも、俺は成功させるさ」


「レイニーなら、出来るよ。私、キララちゃんの村で聖典式を受ける予定だけど……、レイニーにお願いしようかな……」


「な……。馬鹿やろう。メリーはもう、一四歳だろ、すでに四年もスキル無しで生活しているんだ。スキルはさっさと貰っておけ。その方が持っていないより断然ましだ」


「でも……。私、レイニーからスキルを貰いたい……。どうせもらえるなら、レイニーからがいい。逆に考えて、私は一四歳だけど、スキルが無い生活には慣れてるの。だから、失敗しても全然問題ないよ」


「う、ううん……。そう言われてもな……」


 私は二人の話合いを聞き、レイニーに神官が務まるのかを考えた。


 ――神官は何か特別なスキルがいるんじゃないのかな。なんならあの人たちが特別なんじゃないの? そう考えると、レイニーが神官として行をなせるのだろうか。ん~。わからない。神様に直接頼んだりできないかな……。マザーの代わりとして神官の役割をレイニーに務めさせてあげたい。無理なら別の方法を考えるしかないか。


 私は出にくい空気の中、今帰って来たかのようにふるまい、二名に話かける。


「はぁ~、疲れました……。さ、二人共、教会に行きましょう」


「キララちゃん。キララちゃんはマザーが死んでたって知ってた……?」


 メリーさんは少々怒った表情で私に聞いてくる。


「はい。知っていましたよ」


「な、何で教えてくれなかったの……。知ってたら、私もレイニーを助けられたのに」


「私はマザーとメリーさんに共通点があるなんて知りませんでした。知っていたとしても隠していたと思います。なんせ、村にいる子供達のお母さん的存在のメリーさんが不穏な表情で過ごしていたら皆、不振がります。楽しいはずの生活が楽しくなくなると思ったんです。だから、今まで話しませんでした」


「そ、そうなんだ……。確かにあの時、マザーが死んだなんて言われていたら、平常心でいられなかったかも……。でも、今なら平常心でいられる」


 メリーさんはレイニーに抱き着き、抱擁していた。レイニーは一瞬驚くも、メリーさんの背中をさすり、平常心になり切れていない弱い女の子を慰めていた。


「キララ、さっきの話、聞いてただろ」


「え……。バレてたか……」


「当たり前だ、キララの存在なんて部屋に入る前から気づいてた。お前の馬鹿みたいに多い魔力が体から滲み出てんだよ。俺も、最近は魔力を感じられるようになった。コソコソのぞき見なんてしてるんじゃねえぞ、趣味が悪い」


「ご、ごめん……。レイニーを見くびってたよ」


 私はレイニーに初めて怒られた。怒られるのが当たりまえの行動をとっていたので何も言い返せず、普通に謝る。


 私達は病院の外に出て、レクーの背中に乗った。


「レクー、三人だが、お前ならいけるよな」


 レイニーはレクーの頭を撫でながら言う。


「ええ、余裕ですよ」


「じゃあ、教会まで行くぞ」


「了解です」


 レイニーは『バートンと友達になれる』と言うスキルによって、レクーと会話が出来る。加えて、バートンを完璧に乗りこなすことも可能だ。


 私は三人乗りなんてした覚えがないので、レイニーにお願いして手綱を握ってもらった。レイニー、私、メリーさんの順に座り、移動している。メリーさんの大きな胸が私の背中に当たっており、メシウマなのだが、レイニーには悪いと思う、私には胸が無いので男の子の憧れは与えてあげられない。


「やっぱり、レクーに乗ると気分が上がるな……。乗り心地が他のバートンとけた違いだ」


「へぇ、やっぱりレクーはすごいんだ。でも、レイニーのバートン扱いも凄い上手だよね。スキルのおかげなのかもしれないけど」


「ま、スキルのおかげなのは否めないが、今思うと悪くないスキルだ。こうやって二人の役に立てている訳だからな」


 レイニーは無邪気な笑顔を浮かべる。カッコいいじゃんって不意にも思ってしまった自分がいる。メリーさんの力が強くなり、私の肋骨が悲鳴を上げ始めた。メリーさん、興奮しすぎ……。


 私達は教会に到着した。

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