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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
流行病と聖典式 ~街で公演ライブ編~

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夢を与える者

「リーズさんが冒険者を辞めたくなった理由は何ですか?」


 私はリーズさんに聞いてみた。


「んー、そうだな……。冒険者は安定しない職業だからかな。冒険者をしながら結婚を考えると難しかったというのが大きい。妻との生活を考えたら冒険者は得策な仕事じゃないよ。ま、冒険者同士の夫婦は今でも現役で頑張っている人がいるけどね。子供は祖父や祖母に預けて冒険者の依頼をこなすという家庭もいる。冒険者の方は病院にも来られるから、結構知っているよ」


「冒険者は生活がやっぱり安定しないんですね……」


「でも、悪いことばかりじゃない。今の時代は会社のために働いても貰えるお金は全く増えない。それなら、冒険者をして高級な素材を手に入れたあと貴族に高額で売った方がはるかに儲かる。医者の私よりも稼いでいる冒険者は何百人といるよ」


「なるほど、冒険者は夢のある職業と言う訳ですか……。でも、夢半ばで終わる人も多いと……」


「その通り。夢は追い続ければ続けるだけ、抜け出せなくなります。夢は本当に儚い……。だから夢なんだけどね」


「リーズさんは夢を与える仕事をどう思いますか……?」


「え? 夢を与える仕事……」


「はい。言うなれば、Sランク冒険者みたいな人達のことです。彼らは強くてカッコよくて人々の英雄みたいな存在だと思います。それを見た子供達が自分もああなりたいと思わせる人達のことを、夢を与える仕事と相しました」


「ん~、夢を魅せるのは悪くないと思う。夢は希望にもなるからね。夢が子供達の生きる糧になったりするんだ。大人になるにつれて夢が薄れていくわけだけど、子ども時代を生き残れるのは八割ほど。貴族の子供達を抜けば、約六割から、五割。貧民街のみにするなら、約三割しか大人になれない。今回のように流行病に倒れ、寒さの中、凍え死ぬ子供達が後を絶えない世の中なのが現状だ。彼らに夢と希望を与えられるのなら、素晴らしい職業だと思うよ」


「…………そうですね」


 私は自分の才能の活かし方を考えた。


 ほんと単純だが、皆に夢を与えられる人に私はなれる。なんせ、元トップアイドルなんだから。


 私の可愛さはこの世界でも変わらない。


 前世では嫌で嫌で仕方がなかったのに……。皆に夢と希望を与えられるのなら、私は……この世界でもアイドルになってやる。お菓子も作って食べて、料理を開発して人々の生活をすくったら~い! と心の中で小さく叫ぶ。


 たった一人のか弱い女の子が世界を変えられるのか。そんなの私にはわからない。

 

 地球で世界を変えたと言える人物は数少ない。国を変えた英雄は数多くいるが、世界を変えた人物は本当に数少ない。

 電気を普及させた発明家、物理学の天才、コンピューターを作った悪魔、通信ツールをたった一〇年足らずで世界に普及させた演説者……。

 ほんと指の数で足りるくらいの人しか、世界を変えたと言えないだろう。


 一個人の私が、通信機器も発達していないこの時代で世界を変えられるのだろうか……。

 でも、大きな野望を持つことは悪いことじゃない。小さな目標をコツコツ続けて行けば、何かを変えられるかもしれない。そんな淡い期待を抱くほど、私はやる気に満ちている。ほんと単純で周りに流されやすい性格は変わらないな。私……。


 私とリーズさんは教会に到着した。


「キララちゃん。遅かったね」


 私達が教会に入るとセチアさんが子供達の頭を撫でながら、看病していた。


「ごめんなさい。病院が込み合っていて、リーズさんをなかなか連れてこれなかったんです」


「そうなんだ。でも、子供達の状態は安定しているよ。キララちゃんは本当にすごいね」


 セチアさんは笑顔を私にくれた。


「この子達が流行病に掛かっていたんだよね……」


 リーズさんは寝ている子の瞼や口を開けたり、首を触ったり、体温を測ったりして、状態を見ていく。最後に手の平に緑色の魔力を溜めて体を透かすようにゆっくりと動かす。


「うん……。流行病の瘴気が発見できなかった。治療の必要はなさそうだね」


 リーズさんは子供達一人一人をしっかりと診察していた。無償なのに嫌な顔一つせず、真剣に診察してくれるのだから、ほんと頼りになる……。こんな人が家では妻にデレデレだと思うとまた、体温が上がるな……。加えて血圧も上がってしまう。


 リーズさんの姿を見ると、かつて私も参加した赤色の十字団体も、リーズさんのような人たちばかりだった。

 世界はお金で回っている。されど、愛が無ければ人は救えない。なんせ、お金で愛は買えないのだ。お金で買える愛なんて、売れないアイドルの握手会くらいだろう。


 リーズさんの診察が終わり、子供達の無事は確認できた。これで私も家に潔く帰れる。


「はぁ~。聖典式の衣装を買いに来たと思ったら、病気の子供達に会うなんてね。早めに会えてよかったよかった」


 私は胸をなでおろし、緊張が解ける。


「キララちゃん、この教会の中はとても暖かいね。加えて湿っぽい。どこもかしこも綺麗に掃除されている。この環境が、子供達にとって良い環境なのかい?」


「えっとですね。子供達にとっていい環境と言うよりかは、病気の素にとって辛い環境になります。寒くても、空気の入れ替えは必須です。なるべく乾燥した空間も避けないといけません。夏に病気が少ないのは空気が湿っているおかげで病気の素が動きにくいのと、体温が高くなって体が病気に耐えられるくらい強くなるからです」


「確かに統計から考えると冬の方が風邪を引く割合が高いけど、そう言う理由も考えられるだね……。私の病院にも取り入れさせてもらってもいいかい?」


「もちろんです。と言うか、取り入れていなかったんですか?」


「キララちゃんが言っていたような話しは全く知らなかった。でも、よく考えてみたら辻褄が合うんだ。キララちゃんを見ているとスキルに頼り過ぎる世の中はやはり不条理なのだと思い知らされるよ」


 リーズさんは一子供の発言を信じ、病院でも取り入れると言った。


 まぁ、地球では当たり前の方法だから、この世界でも間違っていないと思うけど……、皆からの反感は買うだろうな。寒いんじゃ~って。


「えっと、換気をする時は部屋を十分に暖めてからにしてくださいね。寒すぎると逆に風邪を引きますから」


「はい。わかりました。じゃあ、早速取り入れたいから今すぐ戻ろう」


 私とリーズさんは病院にとんぼ返りし、窓を全開にして病院内の空気を完全に入れ替える。


 患者さんがいる部屋は『ヒート』で温めてから窓を開けていった。


 空気が入れ替わるだけで病院内のよどみが無くなり、体が軽くなる。ついでと言わんばかりにブラットディア達に病院内を掃除をさせた。もちろん、他の人にバレないよう、超高速で動いてもらって一瞬で終わらせてもらう。

 すると、床や壁がピッカピカになり、顔が反射しそうなくらいだった。ウイルスや細菌はツルツルの面にくっ付きにくい性質がある。もう、ガラスくらい凹凸がないので細菌も壁にくっ付いたりできないだろう。接触感染もなるべく避けたかったので、いい心がけだ。


「リーズさん、最後に言っておきます。手すりとか、ドアノブは出来るだけ綺麗にしてください。特にトイレとか、診察室のドアノブは一人使ったら『クリーン』で綺麗にするくらいの頻度でお願いします。後は……口当てとかをしてもらえたら嬉しいんですけど、見たところ誰もしてないんですよね……」


 私は病院内を見渡してみても、誰一人としてマスクのような口当てをしていない。くしゃみや咳をしている人は多いのに、口を隠そうとする人がいないんだよな。何でだろう。

 くしゃみや咳をする時に口を隠すと言う文化がないのかな……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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