街での起床
次の日の朝
「ん…ん、ああもう朝か…」
真っ暗だったはずの窓から差し込むのは寝起きには眩しすぎる光。
私は、ベッドの上で疲労によって凝り固まった体を伸ばす。
「ん~!はぁよく寝た」
寝ていたベッドは私の体温で温かい…やはりまだ朝は冷えるため、この温かいベッドにもぐりこみたいという気持ちが込み上げてくる。
その気持ちをグッとこらえ…私はベッドから降り、目を覚ますため顔を洗う。
ベッドの傍においてある、ポットには水が入れられており、そのすぐ傍には大きめのボウル型容器が備え付けられている。
どうやらここで顔を洗ってもいいみたいだ。
私はボウルに水を注ぎ入れ、少量を手ですくい顔に掛ける。
水は目を覚ますにはちょうどいい温度だった。
冷たすぎずぬるすぎなその温度は、私のほてった体温を一気に冷ます。
目の前がハッキリと見えるまで意識が戻り、ポット内に残っている水を少量コップに灌ぎ、一気に飲み干す。
のど越しの良い冷えた水だ…からっからに乾いた体に染み渡る。
「はぁ、良し!」
私は目覚めがいいほうだ。
いつも、牧場に行くため朝早くの起きているため、もう朝早く起きるのは苦ではない。
ただ今日起きた場所が家ではなく、病院であったたため朝早く牧場にも行けない。
そうなると朝早く起きたのがもったいないと感じてしまった。
どうせ朝早く起きたのならば、皆の小屋、厩舎を掃除して干し草をあげたかった。
なぜ今このようなことを考えているかと言えば、昨日のことを思い出したくないからである。
私のトラウマとして植え付けられたブラックベアーに再度殺されそうになったのだ。
今は習慣にしていたことを行い、昨日のことを考えないようにしているが、気を抜くとあの姿が私の脳裏に焼き付いてしまっていることに気づいてしまう。
何とか無事だったが、あの時フロックさんが助けてくれなければ私はきっと死んでいただろう。
何故だろう…フロックさんのことを思い出したら頬が熱くなってきた…。
さっき使った水が冷たすぎたのだろうか。
窓を開け、心地よい風に、熱くなった頬をあて何とか冷ます。
風が病室に吹き込み、私の長くも短くもない髪が揺らぐ…。
「おはようございます、キララ様。よく眠れたようですね」
「うん、昨日あんなことがあったのによく眠れたよ」
「それは良かったです」
「それじゃあ早速、私たちの目当てにしてたやつ買いに行こうか」
「そうですね、朝早くなら人も少ないと思いますし」
私たちはベッドを整え、病室から出た。
私はレクーを迎えに病院近くの厩舎を尋ねる。
「おはようレクー昨日は心配かけてごめんね。お腹すいたでしょ、何か食べられるものを買ってあげる」
「キララさん、その様子からすると元気になったみたいですね。良かったです」
私はレクーを厩舎から出し、少し歩く。
レクーの足を慣らした後、レクーにまたがりベスパの後を追った。
「やっぱり朝は人通りが少ないですね」
昨日人でいっぱいだった大通りは、早朝の為かレクーに乗っていても余裕で通れるほどの道幅が開いている。
しかし、朝早すぎて出店はあまりやっていない。
「ん~、どこかで時間をつぶすしかないかな。レクーのご飯を買えるところがいいよね…」
「キララ様、あそこなどはどうでしょうか?」
ベスパが示す先には、バートン達を走らせるレース場のような場所があった。
「そうね、あそこなら牧草も売ってそうだし。時間もつぶせそうね。レクー向ってくれる」
「分かりました」
レース場に着くと既に多くのバートン達が走っている姿が見える。
「まずは、干し草を買わないと…」
私はレクーから降り、入口を探す。
周りを見渡し、くまなく確認していると。
「あった、ここかな…」
そこには、バートン飼育場と書かれた看板が立てかけられている。
「ベスパ、レクーを見ててね」
「了解です」
私は入り口から中に入る。
少し歩き、中の様子をうかがいながら、関係者を探した。
すると、中で厩舎の掃除をしている関係者らしき人物を見つけた。
「あのーすみません!ちょっといいですか?」
「はい、何でしょう?」
「私の乗ってきたバートンに朝ご飯を食べさせてあげたいんですけど、干し草を売ってもらえませんか?」
「干し草ですか?いいですよ、銅貨5枚です」
「ありがとうございます!」
その人はあっけなく、了承してくれた。
私はレクーのもとに戻り、手綱を引く。
「レクー干し草を買ったから、食べに行こう」
レクーを関係者が案内するところまで連れて行き、干し草を食べさせた。
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