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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
魔物の大量発生 ~肉と卵が欲しかっただけなのに編~

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トゥーベルバター

「じゃあ、お母さんも手伝って」


「もちろん手伝うけど、何をすればいいの?」


「まずはこのトゥーベルを水で洗っていくの。私が『ウォーター』で水球を作るから、出来るだけ綺麗に洗って」


 私はバケツの中に入っているトゥーベルを指さしながら言った。


「わかったわ」


 私はお母さんにも手伝ってもらい、トゥーベルに付いた細かい土を水で洗い流していく。バケツの中に入っていた三〇個ほどのトゥーベルを綺麗に洗い終わった。


 ――ベスパ、森から綺麗な湧き水を鍋に汲んできてくれる。


「了解です!」


 ベスパは大きめの鍋を持ち、窓から飛び出していく。五分ほどして澄み切った天然水を汲んできた。一応遠心分離を行い、ゴミやチリは分離しておく。どうせ煮沸するので大丈夫だと思うがどんな病原菌がいるかは把握できないので、出来る処置はしておきたい。


「よし。この水の中にトゥーベルを入れて~、火にかける。この量だと二〇分くらい掛かるかな~」


 私は皮ごとトゥーベルを鍋に沈めた。一個が大きいので、三〇個一気に調理することが出来ず、別の鍋を使い残りのトゥーベルを調理する。


 二〇分後。


「えっと、カロネさんから貰った一分の砂時計を二〇回ひっくり返したから、もう、二〇分経ってるよね。じゃあ、串をトゥーベルにプスっと刺しまーす」


 私はベスパに作ってもらった木製の長い串をお湯の中にあるトゥーベルに突き刺す。すると、薄い皮を用意に貫通し、カッチカチのトゥーベルが柔らかくなっていた。


「よし! しっかりと茹でられてる。蒸しでもよかったけど、茹でる方が早いし、一気に作れる。蒸しはまた今度かな~。蒸しは栄養を損なわない調理法だし、出来るようになっておかないと。今回は時間が無かったから仕方ないけど~」


 私は独り言を漏らしながら料理を続けた。お母さんに引かれていた気がするが、気にしない。


 ゆで上がったトゥーベルは水切り用の笊に移し、水は捨てる。


 お母さんはもったいないというけれど、やはり衛生面が怖いので捨ての一択だ。


「もう、キララは水をもっと大切にしないと駄目よ。いつもいつもすぐに捨てちゃうんだから。近くに川があっても、いつ断水になるかわからないんだからね」


「わ、わかってるよ……」


 物知りのライトが言うには、水は貴重な資源だという。私の周りには水が溢れており、水が普通にある世界だと思っていた。

 でも遥か昔、ルークス王国の初代国王は水が良く湧き出る場所で建国したらしい。地球の河川で文明が発達したのと同じ法則だ。やはり、水の多い場所で文明は広がっていくらしい。


 水不足の国は多く、他国から買ったり、河川水や地下水の利用料を払ってたりして真水を使わせてもらっている地域もあると言う。魔法で綺麗な水を出せる者が少ないのかな……。


 私達の住んでいる地域は温暖湿潤気候だと思われる。簡単に言えば日本と同じだ。翌々考えれば、今いる場所の環境は私のお爺ちゃんお婆ちゃんが住んでいた福井県に酷似していた。村の近くに海は無いが川に山、雪など、とても身近に感じられた……。だから、無性に落ち着く環境だったのかもしれない。


「神様が配慮してくれたのかな……」


 私は駄女神でもやる時はしっかりと仕事するんだな~っと上から目線で物事を考えていた。どう考えても神様の方が位は上なのにね。


「よし! 皿に盛りつけ完了!」


 私はベスパに作らせた紙皿にトゥーベルを置き、ナイフで十字に切り込みを入れて食べやすくする。

 後はこの上にバターを一欠けら置くだけだが、今置いたら美味しさが減ってしまう。


 本当は出来立てを食べてほしかった。でも、茹でてからもう三分くらいたっている。仕方ないから、ライトがトゥーベルを『ホット』で温め直したときにバターを乗せて食べよう。


 準備が終わったころには一二時の鐘が鳴り、お昼休憩となった。


「じゃあ、ベスパ。牧場の広場に料理を運んで」


「了解です」


 ベスパは紙皿を持ち、他のビー達も数匹かかりで他の紙皿を持っていく。


「ほんと、キララのスキルは便利ね~。あっという間に料理が無くなっちゃったわ。でも……」


「はわわわわ……。怖い怖い……、怖い怖い怖い……」


 私はお母さんに抱き着き、ビー達の恐怖から少々守ってもらった。


「まだ慣れてないのよね……、ビーに」


 私は守ってもらったお礼と言っては何だが、お母さんにトゥーベルを試食してほしくなり、出来立てほやほやのジャガバターを作った。お母さんに食べてもらおう。


「お母さん、料理と言っては名ばかりだけど、茹でたトゥーベルにミグルムとバターを乗せた料理、ベルバターだよ」


「ベルバター。また何とも豪華な料理……。これ一食でいったいいくらするのかしら……」


「ん~。そうだな~、バターが高いから、金貨一枚とかするかもね。高級レストランだと思って食べてみたらいいんじゃない?」


「はぁ……。金貨一枚の食事なんて私達にとったら最高級じゃない……。さらっと家で出して良い品じゃないわ。全くもう……」


 お母さんはブツブツ言いながら、棚から真っ白な大きめの布巾と少々良いナイフとフォークを取り出し、テーブルに並べる。首元に前掛けをしたと思ったら、ちょっと良い葡萄酒とグラスを取りに台所に戻り、椅子に座った後、グラスに葡萄酒を注ぐ。


「これくらいしないと釣り合わないわよ」


 お母さんのノリ突っ込みは異様に長い。まあ、当の本人は本気なんだけど……。


「さ、流石に凝りすぎ……」


 私はテーブルに敷かれた白い布巾の上にベルバターが盛られた皿を置く。


「じゃあ、いただかせてもらうわね」


 お母さんは両手を握り、神に祈りをささげたあとナイフとフォークを持ってトゥーベルを切っていく。


「うわ……、なにこれ。ナイフを入れただけで切れるほど柔らかいんだけど……。え、えぇ……。茹でてるとはいえ、トゥーベルがここまで柔らかくなるものなの……」


 お母さんはナイフを入れた時点で驚いていた。芋なのだから、茹でたらでんぷんがふやけるのは当たり前だと思うけど……。


「では、いただき……」


「お母さん、ちょっと待って。一つ忘れてた」


「え?」


 私は指先に火をともし、ガスバーナーのようにトゥーベルの断面に吹きかける。じゅ~っと焼けていき、焦げ茶色の美味しそうな焼き目を入れた。これだけで味が変わる。トゥーベルの焼けた芋のにおいとバターの優しく甘い香りが合わさり、においを嗅ぐだけで美味しい。


「お、おぉ……。また一段と美味しそうになったわね……」


 お母さんは焼けたトゥーベルをナイフで切り、フォークを刺しこんで口に運ぶ。


「はふっ、はふっ、はふっ……。んんんんっ!」


 トゥーベルが結構熱かったのか、お母さんは口内で冷やしながら食していた。


「どう、お母さん。ベルバターは美味しい?」


「トゥーベルが口の中でほろほろって解けてなくなっちゃったわ……。柔らかい皮だけが口残っていて少し食べ応えもある。バターの甘みとトゥーベルのうま味が合わさってミグルムの刺激で全体が纏まっている……。こんなの、食べた覚えがないわよ……」


 お母さんは葡萄酒を少し口に含み、泣きそうになりながらベルバターを食していた。本当に簡単な料理なのにここまで喜んでくれると私としても嬉しい。


「じゃあ、お母さん。私は牧場で皆の反応を見てくるね」


「ええ。行ってらっしゃい。道が雪で滑りやすくなっているから、気をつけてね」


「は~い! うわっ!」


 私は家の中でずっこけた。ドジにもほどがある……。


「はぁ……。これから大丈夫かしら……」


 私は家を飛び出して牧場に向った。広場に到着すると、皆が揃い組で眼を輝かせている。手もとには周りとの気温の差で湯気をあげているトゥーベルだった。


「姉さん! これ、食べていいの! 早く食べたいだけど!」


「お姉ちゃん! 私達を犬みたく待てさせようとしても無理だからね! 絶対食べちゃうからね!」


 ライトとシャインは涎を垂らし、今にも齧りつきそうになっていた。


 私は皆のトゥーベルをライトと一緒に再度温め直し、バターを一欠けら乗せる。指先からファイアを出し、断面を少し焦がす。炎の熱とトゥーベルの荒熱でバターが溶けだし、浸透性のあるデンプンの中に沁み込んでしまった。これでバターを一滴も無駄にすることなく、美味しくいただける。


 子供達が手に持っている紙皿に乗ったトゥーベル全てに同じ工程を行った後、皆で神に祈りを捧げた。皆はトゥーベルのほかに、チーズや黒パン、牛乳、ビーの子などが配られている。昼食は皆の楽しみの時間だ。この時間に、最高の一品を食べた時、更なる最高な時間へと昇華する。


「じゃあ、いただきます!」


「いただきま~す!」×子供達。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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