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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
魔物の大量発生 ~肉と卵が欲しかっただけなのに編~

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八歳児のどろどろ関係

 九月は仕事をしまくり、勉強もしまくり、運動もしまくった。子供の体でここまで頑張れるとはと思うほど、努力してやった。そんなこんなしている間に、一〇月がやってくる。


 一〇月五日。私達がお休みの日にネード村へと向かった。


 レクーに荷台を引いてもらい、私は前座席、ライトとシャイン、ガンマ君は荷台の中だ。


「ふわぁ~。今日も朝早いな……」


 私は大きくあくびをしながら、足をぶらつかせる。別に持たなくてもいい手綱をしっかりと握り、バートンを操っていますよ感を出していた。


「姉さん! もっとシャキッとしてよ! 今日は僕の良いところをデイジーさんに見せる時なんだ!」


 ライトは朝っぱらから気分(テンション)が高かった。握り拳を掲げ、やる気に満ち溢れている。弟は私が誕生日にあげた黒いローブを着ており、カッコよさがより一層増していた。


「ねえ、ガンマ君もネード村に行くの? きょ、今日はテリアちゃんと遊んでた方が……」


 シャインはガンマ君にネード村に来てほしくなかった。なんせ、ネード村には強敵のデイジーちゃんがいる。シャインほど可愛い女の子でも、デイジーちゃんの元気溌剌な笑顔には未だ敵わない。


「テリアはカイト君と遊んでいますから僕は必要ないみたいです。シャインさんが村にいないと暇ですし、デイジーさんが手伝ってほしいと言っていたのなら、僕も手伝いますよ。皆さんも手伝いに行くのでしょ。なら、僕も遊んでいられません」


 ガンマ君はシャインの思惑通りにはいかず、すごく良い子だった。


「ふわぁ~。別にこんな人数いらないんですけどね……」


 ベスパは私の頭上であくびをかましながら飛行している。もう、冬が近いので朝でも真っ暗だ。ライトが魔法で道を照らしてくれているが、それでも暗い。


 現在の時刻は午前四時〇〇分。わざわざこんな早い時間から行かなくてもいいのに……、門が開いてないと思うが、ライトがどうしても早く行きたいというので仕方がなくこの時間に移動している。


 暗い時間帯に子供だけで移動するのはもちろん危険行為だ。森の中には山賊と言う悪い人達がいるらしく、荷台や貨物を襲うらしい。でも、私達に絡んでくるような山賊はおらず、いたとしても数秒で締められて終わりだ。


 そもそも、私達のバートン車に近づくことさえ難しい。


「キララ様、ボワが暴れています」


「そう、何メートル先?」


「南西に約八八キロメートル先の罠です」


「馬鹿なの? それは私達が仕掛けた罠じゃないでしょ」


「あれ? そうでしたっけ」


 ベスパは寝ぼけていた。いったん燃やして眠気を覚まさせてやろうとも思ったが、まぁ、私達には関係なさそうなので止めておく。


「あの、キララさん。僕たちは何をしに、ネード村に行くんですか?」


 概要を知らされていなかったのか、ガンマ君は私に質問してきた。


「えっとね。ネ―ド村の広大な畑に種をまくんだよ」


「今の時期からですか? もうすぐ寒くなりますし、育つんですか?」


「育つよ。何たって、私が作った土だもん。育たない訳がない」


 私はどや顔で言った。現に、私の畑は順調そのもの。あまりにも出来がいいので怖いくらいだ。もう少しでジャガイモ(トゥーベル)と大豆(ビーンズ)が収穫できそうなので、楽しみで仕方がない。


「キララさんが言うと説得力が違いますね……。よし! 僕も頑張りますよ!」


「が、ガンマ君は別に頑張らなくてもいいから……。私とお姉ちゃんだけで終わらせるからさ、ガンマ君は遊んでていいよ」


 シャインは未だにガンマ君とデイジーちゃんを引き合わせたくないと思っているらしい。


 シャインの胸には男の性欲を破壊する兵器を持っているのだから、使えば良いのにと思ったが……、ガンマ君は貧乳派だったはずなので、破壊兵器は全く以て役に立たず、逆に自分の方に向いている状態だ。

 現にシャインは胸を布でギッチギチに締め付け、なるべく小さくなるように見せかけている。顔色が悪いのはそのせいだ。


「はぁ、皆は少し手伝ってくれるくらいでいいからね。あんまり目立つような動きはしないでよ。もし、大事になったら面倒でしかない」


「大丈夫だよ、姉さん。僕は姉さんみたく、恒星をつくり出したりしないから!」


「別に私も作り出したわけじゃないし……。勝手に発生しちゃっただけだし……」


 私とライト、シャインとガンマ君が喋っていたら……、荷台が石を乗り上げ、少し浮いた。そのまま地面に衝突してしまい……。


「いったい!」×キララ、ライト、シャイン、ガンマ君。


 全員が舌を噛んで痛い目を見た。暗すぎて石が見つけられなかったのだ。


 私は舌から血が出ていたがすぐに止まる。


 シャインはもとから全身が頑丈なので、舌から血が全く出ていない。


 ライトは舌の傷を魔力で覆い、止血している。


 ガンマ君は舌を噛み千切って死にかけている……と言うのは冗談で、一人悶絶して転げ回っていた。


「お、お姉ちゃん、ガンマ君の舌が怪我しちゃった。舌ってどうやって舐めたらいいの! わ、私が直接舌で……」


「舐めなくていい!」


 舌を噛んで怪我をした子に、舌を絡ませようとする馬鹿がどこにいるんだと言いたかったがまぁ、シャインは八歳児だ。沈まれ沈まれ……。


「口の中は怪我が治りやすいから、舐めなくてもいいんだよ。と言うか、傷口は舐めたら駄目だからね」


「そ、そうなんだ。よかった……」


 シャインは安堵し、ガンマ君は涙目になりながらも上半身を持ち上げた。


 私達は話合いながらネード村に向かい、四時三〇分ごろに入口に到着した。


 鍵を開けてくれるデイジーちゃんのおじいさんはすでに起きており、私達を村にさっと通してくれた。やはり、歳をとると朝が早くなっていくのだろうか。夜寝るのが早いからかな。


 私達がデイジーちゃんのお家に付くころには、皆、眼が冴えており、やる気満々の状態。


「みんな~、おはよう~。来てくれてありがとう!」


 少々癖っ毛な茶色の長髪をたなびかせ、笑顔がお日様のようなデイジーちゃんは両手をふり、ピョンピョンと飛び跳ねている。服装は農業がしやすそうな上下がつながった服で、つなぎとそっくりだった。


「おはよう、デイジーちゃん、朝っぱらから凄い元気だね」


 私はデイジーちゃんに挨拶をする。


「はい! だって今日は種まきの日ですからね。気合いが入りますよ!」


 デイジーちゃんは握り拳をつくり、やる気をみなぎらせていた。


「で、デイジーさん、おはようございます」


 ライトはガッチガチに緊張し、かたごと気味になりながら挨拶を交わす。ロボットのような硬い動きで荷台から降り、デイジーちゃんのもとに向った。


「ライト君、おはよう。今日も来てくれてありがとうね」


 デイジーちゃんは向日葵が振り向きそうなほど明るい満面の笑みをライトに向ける。


「い、いえ。デイジーさんに頼まれたら来るなんて当たり前じゃないですか~」


 ライトはデイジーちゃんの笑顔に当てられ、猿のように鼻の下を伸ばしきったデレデレの顔をしていた。ライトが普通の人間でいられるのは彼女のおかげかもしれない。


「お、おはよう、デイジーちゃん」


 シャインは少々警戒しながら荷台を降り、デイジーちゃんにぎこちない挨拶をした。


「あ、シャインちゃんも来てくれてありがとう。シャインちゃんが手助けに来てくれたら百人力だよ」


 デイジーちゃんはシャインと裏腹に、満面の笑みで返す。


「はぁ……。舌、痛い……。あ、デイジーさん、おはようございます。今日も明るくて良い笑顔が素敵ですね。新しいヘアピンを作ったんですか? すごくよく似合ってますよ」


 ガンマ君はデイジーちゃんの変化にいち早く気づき、微笑みながら的確に褒めた。


 ――この男、出来る。


「が、ガンマ君……。今回も来てくれたんだ……、あ、ありがとうね……」


 デイジーちゃんはまんざらでもなさそうなほど嬉しがり、顔を熱らせていた。


 ――うん、こりゃあ、デイジーちゃんの初恋はガンマ君に完全に奪われてるな。


 今のところ、ガンマ君がデイジーちゃんへの好意を持っていないという点だけがどうにかこうにか、二人の間がくっ付かないように制御している。


 なんせ、ガンマ君はとんでもなくシスコンなのだ。シスコンを治したいが治した場合、シャインに向かうのではなくデイジーちゃんへ向かってしまう可能性がある。


 無暗にシスコンを治そうとすれば、ガンマ君が二分の一でデイジーちゃんに奪われてしまう。


 そうなったら最悪だ……。いや、私にとってはそのくっ付き方も悪くないのだが……、一つ問題がある。

 

 デイジーちゃんとガンマ君がくっ付いたら、デイジーちゃんのことが好きなライトも負けることになる。


 私の弟と妹の恋愛力が無さすぎるのは家族っぽいなとは思うが……、そこまでになくてよかったのにと考えなくもない。


 このような血みどろの戦いが八歳児の間で行われていた。


 デイジーちゃんとガンマ君は何ら関係なく、ライトとシャインだけがとんでもなく気にしている。


 早く告白しておけばよかったのにと思わなくもないが、いかんせんまだ八歳児だ。成人まであと七年もある。もっと成熟する二〇歳になるのもあと一二年だ。この間に沢山いい男や女に合うと思うけど、やっぱり初恋は特別なんだろうな。


「シャイン、ライト。二人共顔が怖いよ。ほら、笑顔笑顔~。私と一緒に笑顔になろう」


 私はデイジーちゃんにも負けない一二〇パーセントの笑顔を双子に見せる。


「ね、姉さん……」


「お、お姉ちゃん……」


 ライトとシャインは無理やり口角を上げるも、双子の笑顔は全く以て笑顔になっていなかった。


「あちゃちゃ……」


 双子からガンマ君とデイジーちゃんへの憎悪が顔からにじみ出ている。このままではガンマ君とデイジーちゃんに良い印象を与えるなんて不可能だ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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