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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
魔物の大量発生 ~肉と卵が欲しかっただけなのに編~

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昔は誰かのために、今は自分のために……。

 ――二○歳の時か。私も迷ったな。アイドルを続けるか、引退するか……。あの時が丁度境目だった気がする。


 私は結構長い間アイドルのトップを取り続けてきたけど、二○歳の時、所属していたアイドルグループが解散してしまった。

 特に大きな理由はなく、新メンバーを入れずに全員が二○歳を超えたからだ。皆も解散したがっていた。もちろん私も流れに沿って辞める方向性だったのに……。


「失礼する……」


 ドラマ撮影の際、主演の私の楽屋に清潔感抜群になった脚本家さんがやってきた。出会った時は、髪はボサボサ、服はよれよれ、髭も濃くて眼の下は真っ黒の印象最悪な人だったのに、イケメンになってしまったのだ。


「あ、脚本家さん。急にどうしたんですか?」


「キララ……、アイドルを止めるのか?」


「え……。まぁ、私も二○歳になっちゃいましたし、世代交代かな~って思ってますけど」


「辞めないでくれ……」


「え? 辞めないでくれって言われても……」


「キララにアイドルを辞められたら俺は生きていけない……」


「いや、言い過ぎですって。脚本家さんも本調子になってきたじゃないですか。この前のドラマの受けもよかったですし、映画だって、何もかも順調そのものですよ」


「全部、キララが主演だ。そうしないと俺は脚本が書けない……」


「ん~、まぁ、お仕事を貰えるのは嬉しいですけど、私は女優じゃないですし、そもそもお芝居をする人間じゃないですし……」


「頼む! アイドルを辞めないでくれ! キララ主演の作品があと八○本以上あるんだ! 俺はキララが主演で全部見たい!」


 脚本家さんは楽屋で土下座をして来た。


 ――いや、どれだけ考えてるんだよ。天才過ぎて困る……。土下座をしてまで頼むなんて……私にどれだけ仕事をさせる気なんだ。


「お、落ちついてくださいよ。私も人間ですし、主演を八○本もやったらさすがに身が持ちませんって。私以外の可愛い子で演技が上手い役者にでも……」


「駄目だ。キララじゃないと駄目なんだ。何度も何度もキララ以外で書こうとしても、一文字も出てこない。俺にはキララが必要なんだ。頼む、このままアイドルを続けてくれ!」


「………………じゃあ、私が五○歳とか、六○歳、なんなら八〇歳になってもファンでいてくれますか?」


「当たり前だ! 俺はキララのファンでずっとい続ける! この眼を見ろ! 俺が嘘をついていると思うか!」


 脚本家さんは私の肩を持ち、眼を覗き込んでくる。


「ちょ、ちょちょ……、ち、近いです……」


 いつ見ても澄み切った綺麗な眼だった。曇りなき眼に吸い込まれそうになる。


「い、今すぐには決定できないですけど……、前向きに検討します……」


「ほ、本当か! ありがとう! 今度のライブも必ず行くからな! 最前列で応援する!」


「ライブはあと数回で終わりなんですよ。解散するって話ですから。それなのに、私だけ残るって……、なんか皆に悪いですよ」


「なにも悪くない。キララの思う道を行けばいいんだ。俺はどんな形でも、キララが輝いている姿が見たいんだ。キララが頑張って生きていてくれれば俺も生きていける。キララは俺の光なんだよ!」


「ほんと、臭いセリフ……。アニメの見過ぎですよ……」


「おっと、悪いな。最近、脚本を頼まれていて書いてるんだ」


「へぇ、アニメの脚本を書くなんて珍しいですね。いつも映画とかドラマばかりなのに……」


「キララを主人公にしたアニメの脚本を書く。俺の夢の一つだった。やっと叶えられそうだよ」


 脚本家さんは屈託のない笑顔で笑っていた。


 ――ほんと、私を世界の中心みたいに考えるファンだったけど、良い人だったな。


 昔の私は力強い事務所の後押しもあって、アイドルの七人が抜けて一人だけ残った。


 アイドルグループの名前は名乗らず、キラキラ・キララの芸名だけで生きていた。まさか二年も持つとは思わなかったし、死んだ日の後も仕事でパンパンだった。もう、八年後まで仕事がびっちり。誰と結婚すればいいんだという状態。もう、仕事が恋人だったなぁ~と今になって思う。


 脚本家さんが書いたアニメはすごく見たかったけど……、見れなかったな。


 脚本家さんは私にアニメの声優はさせてくれなかった。テレビで見てほしいという彼なりのプライドか何かかな。アニメを一気見するためにせっかく取り溜めをしてたのに、私は途中で死んじゃったし、もったいないことをした……。


 ――はぁ~、どんなアニメだったんだろうか。


 私は食事中にボーっと考え事をしていた。お父さんとお母さんのなれそめの話を聞いて脚本家さんを思い出してしまったのだ。


 ほんと、気持ちくらい伝えておけばよかったな。「ありがとう」くらい言っておけばよかった。


「お~い、お姉ちゃん。寝てるの~」


「おい、シャイン。姉さんは疲れてるんだよ。あんまり起こすな」


「え~、まだ料理が残ってるからさ、食べてあげようかな~って思ったのに」


「姉さんが食べ物を残していた日は一度もないだろ。冷めてても食べるよ」


 私は双子の声で現実世界に戻った。


「あ、食べてなかった……。ハムハム……、ハムハム……」


 私は残っていた料理を全て平らげ、手を合わせて感謝する。


「母さん、今日も綺麗だよ……」


「もう、あなたったら……」


 お父さんとお母さんはお酒の影響かイチャイチャし始めたので、私達子供は自分たちの部屋にさっさと戻ることになった。


 私は汚れた体を拭くのが面倒だったので、ライトに『クリーン』を掛けてもらった後、自室に戻る。


「さてと、裁縫の続きだ……」


 ボーっとしていた私は手が何度も狂い、指に針が突き刺さる。もう、傷を塞ぐのも億劫になり、血を流しながら服に開いた穴をすべて当て布で塞いだ。薄黄色だった服に赤い斑点が何個も入り、少々怖くなってしまった。ライトに魔法で落としてもらおう……。


 食事が終わった時間が午後八時頃。裁縫が終わったのは午後一〇時頃だ。


「はぁ~終わった。裁縫って難しいなぁ……。ネアちゃんに頼めば一瞬で終わってたんだろうけど……私自身の力でやりたかったし、達成感がすごいからいいか」


 私が伸びをする頃には指から出てきていた血が止まり、傷が塞がっている。最近は魔力のせいで体がひとりでに回復してしまうようになっていた。


 どこまで大きな怪我をしても大丈夫なのかはわからないが、火傷程度ならすぐに治癒できてしまうようだ。普通は治りにくい傷なのに、火傷を負ったはずの手の平や甲を見ても傷痕が全くわからない。もう、火傷をしていたのかすらわからなかった。人を完全に辞めている……。

 

 ――私の体はどうなってしまったのだろうか。……あまり考えないようにしよう。


「さてさて……。もう夜、遅いけど勉強をやりますかね~。学園の入学試験まであと一年とちょっとしかない。でも仕事をしていたら時間なんてあっという間に過ぎちゃうし、ちょっとした時間でも勉強しないと、他の優等生に負けちゃう」


 私は何でもできるように思われがちだが、実際は特段普通である。


 今も昔も……負けるのは悔しいから頑張っている節はあった。


 過去の私は「脚本家さんに見限られないようにあの人が私の押しである限り、努力しよう」と決めていた。いつしか「脚本家さんが私で脚本が書けなくなったら引退しよう」と思うようになっていた。これもまた誰かのためだったのだから、アイドル精神が強すぎるな。


 やっぱり私はアイドルが天職だったのかもしれない……。


「今の私は……、誰かのためじゃなくて自分のために努力をしている。結果として世界の皆が笑顔になってくれればいいな、くらいの考えだ。でも私は自分のためだけに努力し続けられるのかな……」


 私は紙に魔法陣を描きながら、考え事をしていた。もちろん、上手く描けず文字もグチャグチャ。昔は大河ドラマに出て習字とか結構頑張ったんだけどな……。魂で覚えていても体が覚えていない。一時がんばっただけでは体に沁みついていなかった。

 そう考えると、歌やダンスなんかは相当頑張っていたことがうかがえる。


 私は一〇枚の魔法陣を描き、勉強を終えた。眠った時間は午後一一時頃。明日の起きる時間は午前四時三○分ごろ。睡眠時間はアイドルをしていた時とほとんど変わらない。


 子供の正常な睡眠時間じゃないよな……。生活習慣を見直さなければ。


 私はベッドに寝ころがり、数分後に眠りについた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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