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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
魔物の大量発生 ~肉と卵が欲しかっただけなのに編~

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妖精にモテモテの男

 ブラッディバードの女王が帰ってからも二頭のブラッディバードだけは未だに戦っており、しんがりの役目を務めている。騎士達が攻撃を加えるものの、なかなか倒れず、最後まで抗っていた。時間をなるべく稼ぎ、女王を森へ無事に返すためだろう。


「『グランドクロス』」


 チャーチルさんは地面に刺さっている剣の柄を両手で持ち、捻る。すると、ブラッディバードがいる地面から八メートルを超える二本の槍が飛び出し、下半身から串刺しにした。


 魔石を壊されたのか、ブラッディバードの二頭は絶命し、動かなくなる。


 チャーチルさんは握っている剣を地面から引き抜き、砂埃を一振りで払った。すると剣身から光が無くなり質素な剣に戻る。流れるような納刀を見せた。その瞬間、力が抜けたのか膝を折り、地面に座り込む。


「はぁ、はぁ、はぁ……。あ、あれ……。俺は……。も、もしかして」


 チャーチルさんは装飾品塗れの鞘を見る。


「七つの魔石の内、土属性の魔石が一個無くなっている。ま、まぁ……仕方ない。って、あれ、どこだ。俺の金のエッグル。俺にこそ相応しい黄金のエッグルはどこに行った!」


 チャーチルさんの雰囲気は元に戻り、体中をパンパンと叩き、財布をなくした時のような不安そうな表情を浮かべている。


「まさか、返してしまったのか……。く、くそぉ……、一生モテモテ生活が出来ると思ったのに……。俺の馬鹿……。くっそぉお、どうしてだよぉお~!」


 チャーチルさんは四つん這いになりながら、地面を叩き、泣き叫ぶ。あんまりに叫ぶので騎士団の皆さんは完全に引いた。


「チャーチルさん。一人で場を鎮めちゃったよ。普通に凄い……。妖精の力を貸してもらえるなんて、どう考えてもスキルだよね?」


「そうでしょうね。妖精の力により、男性の力が上昇していたとみてとれます。あの妖精もまだまだ力を完全に出している訳ではなかったですし、さらに強力な攻撃を放てると思われます」


 ベスパは腕を大きく広げ、度合を見せる。

 

「ひえぇ……、あんなに大きな杭を出しておきながらまだ本気じゃないのか。普通の魔物なら簡単に倒せちゃうんじゃないかな」


 チャーチルさんが剣を鞘に戻してから数秒後、突出していた物質が砕け、サラサラの砂となり、風で吹き飛んで行く。砂金かと思うほどキラキラとしており、魔力が含まれていたのだなとすぐにわかった。


 私は怪我をしている女性騎士達の安否をビーに確認させる。皆、息はあるものの重軽傷を負っており、すぐに立ち上がれないようだ。


「あ、あぁ。じょ、女性の方々が怪我をしている……。ど、どうする。どうする。くっ仕方ない……。癒しの聖霊ウィンディよ、チャーチル・キンチの名において、顕現せよ」


 チャーチルさんは緑色の魔石を鞘から取り、剣で壊す。


「ふぃ~、あれあれ~。珍しいなぁ、こっちのチャーチル君が私を呼ぶなんて」


 チャーチルさんは先ほどの茶色っぽい妖精に変わり、緑色っぽい妖精を呼び出して会話をしていた。私にも声が聞こえるのはベスパの耳を介してもらっているからだと思う。見えている理由もベスパの眼と繋がっているからろう。


「ウィンディ、俺に癒しの力を付与してくれ」


「りょうか~い。ま、魔石の質が普通だから、中級までしか扱えないけど、それでもいい?」


「ああ、十分だ」


 妖精がチャーチルさんの周りを数回飛ぶと、体から緑色の淡い光が放たれていた。


 私は四人の女騎士を浮かび上がらせ、チャーチルさんのもとに運ぶ。いきなり体を浮かせられた四人は一瞬焦っていたが、私の姿を見るとおとなしくなった。逆にチャーチルさんの方が驚き、私の方と浮いている女騎士の方を何度も見まわしている。


「チャーチルさん。驚かないでください。少し浮かせているだけです」


「嬢ちゃん……。俺は金のエッグルをどうしたか見てた?」


「投げてました」


「ああ、やっぱりか……」


 チャーチルさんは並べられている四人のもとに向かい、地面に魔法陣を出現させ、詠唱を放つ。


「『ヒール』」


 魔法陣は緑色に輝き、四人の騎士達の体が治っていく。


「むむむ~、君は誰かな~。妖精族じゃないのに、私の体が見えているの?」


 チャーチルさんが呼び寄せた妖精さんがベスパに睨みを聞かせ、蝶々のような綺麗な翅をひらひらと動かし、飛び回っていた。妖精さんもベスパが何かおかしいと思っているのかもしれない。


「初めまして、私の名はベスパと申します。以後お見知りおきを」


 ベスパは妖精さんに頭を軽く下げ、挨拶をした。


「君、ただのビーじゃないよね。魔力体になれるなんて普通じゃないよ」


「私はキララ様のスキルです。魔力体なのはキララ様が私の体が嫌いだからだそうですよ」


「スキル、なるほどね。君がこの子の主なんだ~。へぇ~、私には劣るけど、可愛いじゃん」


 妖精はヒラヒラと私の周りを飛ぶ。鱗粉なのか、魔力なのかわからないが、綺麗な光をふりまきながら飛んでいるので、華やかに見える。顔は幼いが、色気のある美少女。緑色の短髪に瞳。耳が細長く、森の民に似ていた。体長は二○センチメートルくらいだろうか。服装は……、布の胸当てとパンティーのような肌面積が多い衣装を着ていた。


 ――妖精の方は可愛いから張り合う気はない。ここは負けを認めておこう。こういう自信過剰なやつには深くかかわらない方が楽だ。


「そうですね。あなたの方が可愛いです。えっと、妖精さんは初めて見たんですけど……、この世に何匹も飛んでるんですか?」


「ま、私は中級の妖精だから、自我を持っているの。魔石がもっと質の良い物だったら上級や特級の妖精になれる。低級は結構いっぱいふよふよ浮いていわよ」


「へぇ……。チャーチルさんとはスキルで繋がっているんですか?」


「まあね。こうやって喋れるのはもちろん、力の付与も出来る。あなたにはそこの妖精紛いな生き物がいるから、私と会話出来てるみたいね。ほんと、珍しい。普通の人と会話なんてほとんどできないのに」


 妖精さんは私の周りをクルクルと回りながら話す。落ち着いて話が出来ないのだろうか。


「ウィンディ。四人の回復が終わったよ。ありがとう」


「も~、良いの良いの~。チャーチル君のお願いだったら何でも聞いちゃうんだから~」


 妖精はチャーチルさんの頬にチュッチュ~っとキスをして、飛び回っている。少しすると、妖精は煙のように消えていなくなる。


「あ、消えた……」


「魔石の効力が切れると消えてしまうんだ。って、嬢ちゃんも妖精が見えるのかい?」


 チャーチルさんは今さら驚き、私の方を見る。


「まぁ、見えてました。あなたは妖精さんにはモテモテのようですね」


「妖精にモテても嬉しくないよ……。俺は人族なんだから、妖精族にモテても意味がない」


「なぜですか? 妖精さんから力を貸しておいてもらって意味がないなんてひどい言いようですね」


「いや、力を貸してもらっていることには感謝しているけど……、もっといろんなことが出来ないじゃないか」


「いろんなことって何ですか?」


「そ、それは、その、えっと、ん、何だろうな……、合体とか……」


 ――合体って。欲求不満なんだな。まぁ、年頃の男はみんなそうか。普通の女性にモテるより、妖精にモテる方が何倍も難しい気がするけど、この人は全く以て自分の価値がわかっていないようだ。


「はぁ、じゃあ、今さらですけど自己紹介でもしましょうか。私の名前はキララ・マンダリニアと言います。牧場の経営をしている一一歳の少女です」


「一一歳で経営者とは……。まぁ、いい。えっと俺の名前はチャーチル・キンチ。伝説の冒険者になってモテモテになりたい男だ!」


 チャーチルさんは胸を張り、堂々と答えた。


「最高にダサい動機ですけど、そんな堂々と言われると応援したくなりますね……」


「ありがとう、私の愛好者(ファン)にでもなってくれるのかな?」


「もう一人のチャーチルさんになら、声援を送ってあげてもいいですけど、今のチャーチルさんはダサいので遠慮しておきます」


「キララちゃん、口が結構悪い子なんだね……」


 チャーチルさんはふさぎ込み、どんよりとした空気を頭上からかぶっていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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