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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
魔物の大量発生 ~肉と卵が欲しかっただけなのに編~

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モテたい男

「あの、金色のエッグルはどこで手に入れたんですか?」


 私は臭い男性に聞く。


「この黄金に輝くエッグルは洞窟の中から俺が見つけてきたのだ。この優美で輝かしい見た目の俺にこそ、相応しいエッグルだと思ってブラッディバードの巣から取ってきたんだ。いやぁ~、流石俺。完璧な作戦でエッグルを見事手に入れられた。自分の天才加減がはかり知れないな~」


 目の前の男は長い前髪を無駄にふぁっさ~っとなびかせ、鼻高々に答える。やはり、この男が女王のエッグルを盗んだんだ。


「あの、そのエッグルをブラッディバードの女王に返してあげてください。そうしないと、街で暴れ出してしまいます」


「ん? ぎゃわわわあああ~! な、なんでこんな所まで!」


 男性は立ち上がり、振り返ったとたん情けない声を出しながら体制を崩し、地面に尻もちをつく。エッグルを抱きかかえるように持ち、後ずさりしていた。


『グギャアアアアアアアアアアッ!』


 女王の叫び声から相当怒っていると、うかがえる。


「ぎゃわわわあああ~! すみません、すみません!」


 男性は女王の叫び声を聞き、土下座しながら頭を何度も下げた。謝っても女王には許してもらえそうにない。


「そのエッグルを女王に早く返してください。そうしないと、あなたは死にますよ」


「な、何を言う。この俺が死ぬわけないだろ。す、少し恐怖したがあの程度の魔物。俺が持っている伝説の聖剣で一刀両断してくれる!」


 うざい男はエッグルを左手で抱え、右手で剣を引き抜く。昨日ニクスさんが使っていた剣よりも明らかに光具合が滞っている。聖剣と言うにはあまりにもみすぼらし。本当に聖剣であるのならば、とんでもなく強いのかもしれない。見せてくれるかな。


「なら、その聖剣であの女王を倒してきてください。それが出来るのなら、金のエッグルはあなたの物です。盗んだのなら最後まで責任を取ってください。あなたが逃げ回るせいで、いったい何人の方が亡くなるでしょうか。しっかりと考えて行動をしてくださいね」


「う、うぅ……」


 男性は萎縮し、冷や汗を垂らしながら喉仏を動かす。どうやら威勢がいいだけの、弱虫らしい。剣の強さが見られないのは残念だが、やむを得ない。私が金のエッグルを返しに行こう。


「この場で固まるのなら、金のエッグルを私に手渡してください。全部丸く収めてきます」


「い、嫌だ! これは俺が見つけてきたんだ! だから俺のだ!」


 男性はエッグルをギュッと抱きしめ、子供みたいに仰向けになりながらごねだした。


 ――いったい何歳だよ。うちの牧場で働いている子供達でも、あんたより子供っぽくないぞ。


「あの……、早くしないと女王がやって来るので、エッグルを貸してください」


「嫌だ、嫌だ! これで俺は有名になって女の子にモテモテになるんだ!」


 ――うへぇ、すっごい薄い願望。この人も欲求に忠実だな。でも、そのザコザコメンタルを何とかしないとどの女性もあんたに魅力を感じないぞ。わかってないのかな。


「はぁ、女性にモテたいのなら、お金と地位と顔があれば大概はモテますよ。でも、見せかけの愛かもしれないですけど……」


「俺には金と地位、顔がある。ならなぜ俺はモテないんだ! 俺ほどまで完璧な男はいないだろ。なのになぜモテないんだ! くそくそ! カイリなんて超美人で優しくてエチエチな第三王女と結婚してるのに! なぜなんだ~!」


 目の前にいる自称完璧男は地面に背を付けてゴキブリがひっくり返った時の動きをする。情けないの一言以外思いつかないのだが、カイリさんを知っているようだった。


「えっと、その……。あなたはカイリさんを知っているんですか?」


「知っているも何も俺の幼馴染だ! 冒険者になればモテると思ってたのに! 全然モテないじゃないか~! と言うか、カイリはこんな美少女にもモテているのか! くっそ~! どうしてだよぉお~!」


「び、美少女……。ま、まぁ~、当然ですね。でも、私もカイリさんは嫌いですよ」


「カイリが嫌いなんて嘘つくなよ、あいつは強くてカッコよくて頼りがいのある凄い奴じゃないか。誰にでも紳士で、清潔感満載、いったい絶対どうなってるんだよぉお~!」


 ――はぁ、誰かこの男摘まみ出してくれないかな。面倒臭すぎる。カイリさんと幼馴染と言うことはフロックさんとも幼馴染の可能性がある。こんな情けない精神の持ち主がSランク冒険者の二人の幼馴染……。変なの。


「もう、いい加減にしてください。モテたいのならモテる、努力をしてください。あなたは何か努力をしているんですか?」


「ど、努力……。努力などしなくてもカイリはモテていたぞ。やることなすこと全てにおいてあいつはモテていた。剣術、魔術、槍術、学問、食事、運動……、あげればきりがない。どうしてあそこまでモテるのか尋ねたら『別にモテたいわけじゃないだけどね』と澄ました顔で言いやがった……。どうしてだよぉお~!」


 男は地面でじたばたしながら、叫んでいる。全く人生のどん底でもないのに、なんでそんなにどん底みたいな叫び声をあげられるのだろうか。


「カイリさんにはモテたいわけじゃないと言うのは本音です。でも、その余裕のある姿がカッコいいとなる女性が多い訳ですよ。あなたには余裕が全くない。せわしない、子供っぽい、ガキ臭い。うん、どう考えてもあなたは……」


「お嬢ちゃん、それ以上先を言うと俺の家が黙っちゃいないぞ」


 男性は勢いよく立ち上がり、私の方に歩み寄ってくる。


「あなたには女性経験がないんですね」


「ぐほっ!」


 男性は私の眼の前で前屈みに倒れ込んだ。渾身の一撃が入ったらしい。


「もう、卵を割らないでくださいよ……」


 私は黄金のエッグルの様子を見るため、男性のお腹を覗く。硬い殻で覆われていたからか、金のエッグルは潰れていなかった。


「早く起きてください。たった一撃で倒れ込むなんて情けないですよ~。モテたいのなら何度殴られても起き上がるくらいの忍耐力が無いといけません。弱い男性に女性は惹かれませんよ~」


「う、うぐ……。いったい君は何者なんだ。俺をここまで痛み付けるとは……」


「痛め付けている気は全くないんですけどね」


『グギャアアアアアアアアアアッ!』


 女王が大声を出し、エッグルを盗んだ者に怒りをぶつけている。


「うわああああ~! 来てる、来てる! 逃げないと!」


 男性はエッグルを持ち、逃げ出そうとした。


 ――ベスパ、マントを針で地面に固定して。


「了解です」


 ベスパはお尻から針を出し、男性の赤いマントに急降下する。地面に針で固定すると、走っていた男性はひっくり返った。


「えっと、朗報ですけど、今戦っている女性騎士の四人は彼氏がいません。皆さん可愛いですよ。彼女らにモテたいとは思いませんか?」


「お、俺は成人女性であればどんな方からでもモテたい!」


「モテてどうするつもりですか?」


「え……。そ、そうだな……、モテたら良い男ってことだろ。だから良い家の嫁を貰えるんじゃないか?」


「考えが甘いですね。家柄重視なら、カッコよかろうが可愛かろうが、不細工だろうが、貴族なら関係なしに結婚させられるんじゃないんですか?」


「そ、そもそうか……。じゃあ、俺は何でモテたがっているんだ? 嬢ちゃんはわかるのか?」


「知らないですよ、そんなの! 私が知っている訳ないじゃないですか! ともかく、金のエッグルを早く渡してください。いま直ぐに!」


「だ、だが……」


「決められないのなら、あなたとエッグルを女王のもとに移動させます」


 ――ベスパ、男性を持ち上げてブラッディバードの女王の方に持って行って。


「了解です」


 ベスパは針を抜き、男性を持ち上げ、クレーンゲームのようにスーっと移動する。


「ちょ、まてまて。どうなってるんだ。魔法か、スキルか。って、そんなことはどうでもいい。あんなデカすぎる魔物のところに行ったら死んじまう!」


 ――人を変えさせるためには恐怖心が一番。さてさて。変われるかはたまた、恐怖のあまり自滅するか。私も鬼じゃないから死にそうになったら助けてあげるけど、あの男性は好機を掴み捕れるのかな。


 ベスパは男性を迫りくる女王の一直線上に置いた。男性の前方には女騎士の四人が戦っている。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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